育児休業

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

育児休業(いくじきゅうぎょう)とは、子を養育する労働者が法律に基づいて取得できる休業のことである。本項目では、日本において、1991年に制定された育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号)(通称:育児介護休業法)によって定められた育児休業について説明する。

  • 育児介護休業法については、以下では条数のみ記す。

休業取得の条件[編集]

育児休業を取得するには、以下の条件を満たすことが必要である。取得する者の男女は問わない。また、子が実子であるか養子であるかも問わない。家族などで事実上、子の世話が可能な者がいても、それに関係なく取得は可能である。事業所によっては就業規則などで独自の上乗せ規定を設けている場合もある。

事業主は、労働者からの育児休業申出があったときは、当該育児休業申出を拒むことができない(第6条)。ただし、労使協定に定めることにより、以下の労働者については、育児休業を認めないことができる(施行規則第7条)。

  • 当該事業主に引き続き雇用された期間が1年に満たない労働者
  • 育児休業申し出があった日から起算して、1年以内に雇用関係が終了することが明らかな労働者
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない(第10条)。

雇用の形態[編集]

労働者(日々雇用される者を除く)が対象となる。ただし、有期雇用労働者については次のいずれにも該当していなければならない(第5条1項)。

  1. 当該事業主に引き続き1年以上雇用されていること。
  2. 子が1歳に達する日を超えて引き続き雇用されることが見込まれること。
  3. 子が1歳に達する日から1年を経過する日までの間に労働契約期間が満了し、かつ当該労働契約の更新がないことが明らかでないこと。

平成29年1月より、2,3の要件に代わり、「子が1歳6か月になるまでの間に雇用契約がなくなることが明らかでないこと」となる。つまり、申出時点で雇用契約の継続があるかどうか不明の場合でも取得できるようになる。

期間[編集]

育児休業は、子が1歳に達するまでの間に取得することができる(第5条1項)。女性労働者の産後休業期間(出産日の翌日から8週間)は育児休業の期間に含まない。ただし、1歳到達日において育児休業をしている場合で次のいずれかの事情がある場合には、1歳到達日の翌日から1歳6か月に達する日まで育児休業をすることができる(第5条3項)。

  1. 保育所に入所を希望し、申込みをしているが、入所できない場合(規則4条の2第1号)
  2. 子の養育を行っている配偶者が、やむを得ない事情で養育が困難となった場合(同条2号各号)

育児休業は原則として同一の子について労働者一人につき1回限り行うことができるが(第5条2項)、産後8週間を経過する日の翌日までの期間に父親が育児休業を取得した場合は、1歳到達までの間に再度父親が育児休業を取得することができる。

両親がともに育児休業をする場合であって、以下のいずれにも該当する場合、子が1歳2か月になるまでの育児休業を取得することができる(パパ・ママ育休プラス、第9条の2)。

  1. 労働者の養育する子について、その労働者の配偶者が子の1歳到達日以前において育児休業をしていること。
  2. 1歳2か月までの育児休業の開始予定日が、子の1歳到達日の翌日後でないこと。
  3. 1歳2か月までの育児休業の開始予定日が、労働者の配偶者がしている育児休業期間の初日前でないこと。
  4. 両親それぞれの育児休業の期間が1年以内(母親の場合は、産後休業と育児休業を合わせて1年以内)であること。
    • 例えば、平成27年10月1日に出生した子について、母親の育児休業を平成28年9月30日(1歳到達日)に終了する場合、父親は平成28年10月1日から11月30日までの育児休業を取得することができるし、それ以前から父親が育児休業を取得していた場合も同様であるが、平成28年10月2日以降に父親が育児休業を開始することは2の要件に該当しないのでできない。

厚生労働省「平成27年度雇用均等基本調査」によると、育児休業制度の規定がある事業所において、子が何歳になるまで育児休業を取得できるかについてみると、「1歳6か月(法定どおり)」が84.8%(平成26年度同調査では84.9%)と最も高くなっており、次いで「2歳~3歳未満」9.2%(同7.6%)、「1歳6か月を超え2歳未満」4.0%(同4.6%)の順となっている。

手続き[編集]

子の氏名、生年月日、続柄、休業開始及び終了の予定日を明らかにして、1歳までの育児休業はその1ヶ月前、1歳から1歳6か月までの育児休業については、その2週間前までに申し出る。

育児休業給付制度[編集]

育児休業期間中の賃金については、法令上は賃金の支払いを事業主に義務付けておらず、各事業所の就業規則等による。厚生労働省「平成27年度雇用均等基本調査」によると、育児休業中の労働者に会社や企業内共済会等から金銭を支給している事業所割合は15.2%(平成24年度同調査では18.9%)であり、このうち「毎月金銭を支給する」は8.6%(同10.3%)にとどまっている。

育児休業のために賃金の支払いを受けられない者に対して、雇用保険法(昭和49年法律第116号)第61条の4の規定により育児休業給付金の支給を受けることができる。休業は法律により定められている労働者の権利であるため、事業所に規定が無い場合でも、申し出により休業することは可能であり、問題がある場合には事業所に対して厚生労働大臣から助言・指導・勧告がなされる。 次の条件をすべて満たした場合、育児休業給付を受けることができる。

  1. 一般被保険者(短時間労働被保険者を含む)である
  2. 育児休業開始日の前2年間に、賃金支払い基礎日数11日以上の月が12か月以上ある。
  3. 各支給単位期間(育児休業開始から1か月毎の区切り)に、就業している日数が10日以下である。
  4. 各支給単位期間において、休業開始時の賃金に比べ、80%未満の賃金で雇用されている。

支払われる育児休業給付金の金額は、支給対象期間(1か月)当たり、原則として休業開始時賃金日額×支給日数の67%(育児休業の開始から180日経過後は50%)相当額である。ただし、各支給対象期間中(1か月)の賃金の額と育児休業給付金との合計額が賃金日額×支給日数の80%を超えるときには、当該超えた額が減額されて支給される。

取扱い[編集]

育児休業のほかに、子を養育する労働者の取扱いなどについて、次の規定がある。

  1. 小学校就学前の子を養育する労働者は、その事業主に申し出ることにより、1年につき5労働日を上限とする子の看護休暇を取得することができる。年次有給休暇と違い、使用者は申し出た取得日を変更拒否することは出来ない(16条の2及び16条の3)。
  2. 小学校就学前の子を養育する労働者が請求した場合には、一定の要件に該当するときを除き、1か月24時間、1年150時間を超える時間外労働をさせてはならない(17条1項)。
  3. 小学校就学前の子を養育する労働者は、深夜労働の制限を、事業主に請求することが出来る(19条)。
  4. 事業主は、3歳未満の子を養育する労働者であって育児休業をしていないものに関して、労働者の申出に基づき所定労働時間を短縮することにより当該労働者が就業しつつ当該子を養育することを容易にするための措置(所定労働時間の短縮措置)を講じなければならない。ただし(23条1項)。また、3歳から小学校就学前の子を養育する労働者については、育児休業の制度又は勤務時間の短縮などに準じた措置を講ずるよう努めなければならない(24条1項)。
  5. 事業主は、労働者を転勤させようとする場合には、育児が困難となる労働者について、その状況に配慮しなければならない(26条)。
  6. 事業主は、職業家庭両立推進者を選任するよう努めなければならない(29条)。

公務員の場合[編集]

公務員は、国家公務員の育児休業等に関する法律第3条および国会職員の育児休業等に関する法律、裁判官の育児休業に関する法律、地方公務員の育児休業等に関する法律等により、子が3歳に達する日まで育児休業をすることができる。

育児休業の取得の状況[編集]

厚生労働省「平成27年度雇用均等基本調査」によると、平成25年10月1日から平成26年9月30日までの1年間に在職中に出産した女性のうち、平成27年10月1日までに育児休業を開始した者(育児休業の申出をしている者を含む。)の割合は81.5%(平成26年度同調査では86.6%)、女性の有期契約労働者の育児休業取得率は73.4%(同75.5%)となっている。一方、同期間に配偶者が出産した男性のうち、平成27年10月1日までに育児休業を開始した者(育児休業の申出をしている者を含む。)の割合は2.65%(同2.30%)、男性の有期契約労働者の育児休業取得率は4.05%(同2.13%)となっている。男女間で大きな差があり、現在の日本では男性の育児休業取得率が極めて低いことが、女性の就労や待機児童等の子育て支援問題の原因の一つと目されている。育児休業の取得期間をみても、平成26年4月1日から平成27年3月31日までの1年間に育児休業を終了し、復職した女性の育児休業期間は、「10か月~12か月未満」が31.1%(平成24年度同調査では33.8%)と最も高く、次いで「12か月~18か月未満」27.6%(同22.4%)、「8か月~10か月未満」12.7%(同13.7%)の順となっている。一方、男性は「5日未満」が56.9%(同41.3%)と最も高く、1か月未満が8割を超えている

厚生労働省「平成27年度雇用均等基本調査」によると、育児休業制度の規定がある事業所の割合は、事業所規模5人以上では73.1%(平成26年度同調査では74.7%)、事業所規模30 人以上では91.9%(同94.7%)となっていて、規模が大きくなるほど規定がある事業所割合は高くなっている。特に事業所規模500人以上では100%となっている。産業別にみると、複合サービス事業(100%)、電気・ガス・熱供給・水道業(95.3%)、金融業、保険業(93.6%)で規定がある事業所の割合が高くなっている。

ただし、これらの調査には、第1子出産前に退職した女性は含まれていない。育児介護休業法では育児休業は男女問わず労働者の権利として認められていて、事業主は労働者からの申請に応じて休業させなければならない。しかしながら、日本の社会には、「男と女は異なる社会的役割がある。男は社会で働き家族を養う収入を得る。女は専業主婦として家事や育児をする。」という考えや、「育児休業を取得されたら、同じ職場で働く人にとっては迷惑でしかなく、また経営者にとっては甚大な損害である。」という考えを持ち、その考えに基づいて経営リスクを排除するため、結婚・妊娠・出産した女性を、様々な方法で退職に追い込んだり、降格および減給の対象とする暗黙の人事制度を実施している雇用主も多数存在する(マタニティハラスメント)。

そのような雇用主が多数存在するので、結婚・妊娠・出産した女性の側も、そのような人事制度の職場に在職を続けても仕事と育児の両立は不可能であるので、そのような人事制度の職場を見限って、自分や子供の利益を守るために退職・転職する事例も多数ある。その結果、日本では、結婚・妊娠・出産以前や、子供が小学校高学年や中学生程度の育児負担が少なくなる以後と比較して、結婚・妊娠・出産から子供が小学校低学年の育児期の女性の就業率が低くなっている。

脚注[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]