里親

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里親(さとおや)という名称自体は古く平安時代から存在し、第一義は「やしない親」「しとね親」である[1]

そこから派生して、通常の親権を有さずに児童養育する者や、見捨てられたペットの引き取り手などを里親と呼ぶ。最近では、環境保護目的で森林を買い取る者や、自発的に公園・道路の管理・清掃などをする者などを、「森林の里親」「公園・道路の里親」等と呼ぶ。

通常の親権を有さずに児童を養育する者は、個人間の同意の下で児童を養育する「私的里親」と、児童福祉法に定める里親制度による「公的里親」がある。

公的里親の大部分は、養子縁組を目的とせずに、児童相談所から委託された要保護児童を、国と地方自治体から児童を養育するに充分な養育費と里親手当てを受給して一定期間養育する「養育里親」である。

また、児童養護施設などが独自に採用してる制度で、児童養護施設の収容児童を週末や夏季、年末年始のみ預かる者を、「週末里親」「季節里親」などと呼ぶ。

東京都では、「里親」という言葉が養子縁組と混同されて誤解を招いているとして、養育里親については「養育家庭」という用語を用いている[2]

また、「養育里親」から里子への児童虐待は、施設の3倍という高確率で発生しており、養育里親家庭は日本において最も児童虐待が発生しやすい場所である。


里親団体による言葉狩り問題

『全国里親会』や『東京養育家庭の会』などの里親団体は、「犬猫の引き取り手に対して里親という言葉が使われていることに、里子である子どもたちは傷ついている」として「ペットの飼い主を『里親』と呼ぶな」と主張しているが、当の里子たちは「犬や猫も良い里親に出会って幸せになってほしい」「里子をペット扱いしているのは(人間の)里親ではないか」「里親名称問題で傷ついた非実在の里子より、里親からの虐待で傷ついた実在する里子を救済するのが先ではないか」「(里親呼称問題に)興味がない、どうでもいい」等、里親側と里子側では、かなり温度差がある。

また、『東京養育家庭の会』の竹中勝美氏が運営する『シドさんの里親のホームページ(人間の)』の掲示板に、里子から「この(里親呼称)活動自体が里子への偏見を助長している」「迷惑だからやめてほしい」などと書き込みがあったが、それに対する里親らの返信は酷く辛辣で、里子の子供を傷つけかねない内容であった。里親らは普段「一人でも傷つく里子がいるかぎり、この活動を辞めない」と主張しているが、他方で里親の意見に反対する里子を傷つける発言をする等の矛盾する対応から、里親団体の偽善的な体質が浮き彫りとなった。[3]

児童福祉法による公的里親の概要

公的里親の8割以上を占める「養育里親」は、養子縁組を目的とせずに、実親と一緒に暮らせない児童がふたたび親と一緒に暮らせるようになるまで、期間限定で一時的に預かる制度である。

児童福祉法による「養育里親」の役割は、さまざまな事情で実親と暮らせない児童の家庭復帰をサポートするものと位置付けられており、児童の親に「なりかわる」ものではない。

「養子縁組を目的とする里親」は公的里親全体の1割以下であり、不妊などで養子を望む夫婦の多くが民間団体から養子を迎えている。また、「養育里親」などに支給される里親手当は、「養子縁組を目的とする里親」には支給されない。

「乳児院」に配置されている家庭支援専門員等は、里親への支援等に努めることとされている(「里親制度の運営について」2002年9月5日付厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知)。

欧米諸国においては、要保護児童のケアにあたっては「パーマネンシー(施設でもない、里親でもない、永続的な家庭で育つこと)」が重視され、児童を実親の元に戻すための親子を一つの単位としたケアが最優先される。それが困難な場合は積極的に養子縁組を推進する傾向にあり、日本の「養育里親」に相当する里親制度は縮小傾向にある。

日本では諸外国に比較し委託期間が長いケースが多く、3分の1が5年以上である。その背景には、実親への支援が不十分であると指摘されている。また、里親の一方的な都合で児童を児童相談所に返却する「里親不調」も4分の1の確率で発生している。そのため、児童相談所は、里親委託は慎重になる傾向がみられる。[4]

制度的には、親権者等の児童の保護者が反対している場合、法的手段に訴えてでも措置を強行する方法があるが(児童福祉法第28条第1項第1号に基づき家庭裁判所の承認を得る)、里親措置制度にはほとんど活用されていない。[5]「いまは引き取れないが、いつでも会いに行けるように、まだ施設で預かっていてほしい」「自分で育てるのは無理だが、手放すのは嫌だ」などの親の意向から、里親や養子縁組が進まないことがある[6]


一方で、「4年も一緒にいたのに、突然連れて行かれて会えなくなってしまった。荷物も置きっぱなしで、さよならも言えなかった」と急な措置解除を不服として、里親が訴訟に至る行政と里親間のトラブルもある[7]


里子だった側からは、「どのような養護を望むか、子どもにも選択肢を与えてほしい」「里親は事前に里子の情報を聞いていても、里子には情報がほとんどない」などの声や、措置解除で他の里親に委託されたことに傷ついた経験を語るものもいる[8]。マニュアルの運転免許を取得するためにアルバイトに明け暮れた男性は、「学校を犠牲にしないでも、社会に出るために必要な資格を取るなどの支援があればいいと思います」と語っている[9] 。なお、埼玉県では養護施設退所後に就職で免許が必要な人(平成28年3月卒業見込み者から対象)に費用として、18万5000円の補助を開始。国、県の補助に県指定自動車教習所協会の支援が加われば、自己負担なく運転免許を取得することもできる事業が始まる[10]


  • 平成25年の厚生労働省「児童養護施設入所児童等調査」によると、里親委託児童数は4,534人(前回3,611人)、児童養護施設入所児童数は29,979人(同31,593人)であり、このうち虐待を受けた経験のある児童の割合はそれぞれ31.1%(同31.5%)、59.5%(同53.4%)だった。今後の見通しでは、「保護者のもとへ復帰」見通しの児童は里親委託児約1割、養護施設児約3割となっている。また調査日(平成25 年2 月1 日)現在で、現に委託されている里親家庭の総数は3,481 世帯となっており、前回調査の2,626 世帯より855 世帯(32.6%)増加している。里親申込みの動機別をみると「児童福祉への理解から」が43.5%(前回37.1%)、「子どもを育てたいから」が30.7%(前回31.4%)、「養子を得たいため」が12.5%(前回21.8%)となっている。前回調査と比較すると、「養子を得たいため」の割合が下がり、「児童福祉への理解から」の割合が上がっている[11]
  • 上記調査によると養護問題発生理由の主なものは、里親委託児の場合には「養育拒否」16.5%(前回16.0%)、「父又は母の死亡」11.4%(前回6.6%)であり、養護施設児の場合には「父又は母の虐待・酷使」18.1%(前回14.4%)、「父又は母の放任・怠だ」14.7%(前回13.8%)、乳児院の場合には「父又は母の精神疾患等」22.2%(前回19.1%)、「父又は母の放任・怠だ」11.1%(前回8.8%)となっている[12]
  • 2010年前後の国際比較では、制度の違いがあるが、里親委託率の上位ではオーストラリア93.5%、アメリカ77%、イギリス71.7%で、低率なイタリアでの49.5%に対し、日本では12%となっている。日本の社会的養護は、施設が9割で里親は1割であり、欧米諸国と比べて、施設養護に偏っている[13]
  • 里親等委託率には自治体間で大きな差があり、新潟県で33.6%など、里親等委託率が3割を超えている県もあり、最近6年間で福岡市が6.9%から24.8%へ、大分県が7.4%から22.7%に増加させるなど、大幅に伸ばした自治体もある [14]
  • 昭和30年には登録里親数が16,200人、委託里親数が8283人、委託児童数が9111人だったのに対して、平成25年には登録里親数が9441人、委託里親数が3560人、委託児童数が4636人となっている[15]
  • 里親制度としては、養育里親、専門里親、養子縁組希望里親、親族里親の4つの類型がある。委託費用として、養育里親72,000円(2人目以降36,000円加算)ほかに一般生活費乳児54,980円、乳児以外47,680円が支給され、幼稚園費等も加算される[16]
  • 委託を受けている児童は、所得税法上の扶養親族とみなされ、扶養控除の対象となる[17]
  • 費用の観点から、施設養育中心主義からの移行は説得的であるとする主張もあり、たとえば0歳から18歳まで大都市の乳児院および児童養護施設で育つならば、1 人8,373 万2,000 円の経費がかかり、里親宅で生活するならば3,200 万円から3,800 万円で済むとの試算がある[18]
  • 施設別の社会的養護の費用比較では、東京都では2015年現在、次のとおりとなっている[注釈 1][19]

・民間(=社福)児童養護施設(社会的養護の必要な児童を養育する施設) 予算額 111億313万円、予算規模 2,803人、児童一人当たりの予算額 396万1千円(民間グループホームの一部経費を含む。予算規模には、民間グループホームを含む。)

・民間(=社福)グループホーム(地域の中で家庭的な雰囲気の下、6人程度の児童を養育する小規模施設) 予算額 22億4千338万3千円、予算規模  852人、児童一人当たりの予算額 263万3千円(民間児童養護施設に含まれるものは除く。)

・乳児院(社会的養護の必要な乳幼児を養育する施設) 予算額 34億5千609万7千円、予算規模 507人、児童一人当たりの予算額 681万7千円

・ファミリーホーム(養育者の自宅で5~6人の児童を養育する事業) 予算額 3億5千53万1千円、予算規模 123人、児童一人当たりの予算額 285万円

・養育家庭等(所謂里親・児童を養育する家庭) 予算額 7億6千3百万9千円、予算規模 419人、児童一人当たりの予算額 182万1千円

日本における里親慣習の歴史

社会慣習として育まれた制度

日本では里親は古くから存在し、その歴史は平安時代中期まで遡る。当時、貴族が村里に子女を預ける風習に由来するもので、里子は「村里に預けた子」を意味する言葉であった。

やがて、他人に預けて養育を託した子供のことを里子、里子を預かる者を里親と呼ぶようになり、武家や商家、農村など、社会のあらゆる階層に広まった。

養子縁組は、血縁関係とは無関係に親子関係を発生させる制度で、奈良時代に法制化されて以降、現代まで途絶えることなく明文化された法制度として存在する。氏姓制度家父長制度の確立に伴い、養子縁組は家制度を維持するため、あるいは政治的意図の下に行われる性質のものであるため、強制力のある法として明文化する必要があった。

それに対し、里親を定義づける法律は制定されておらず[20]、里親は社会通念上の概念、もしくは社会慣習の一形態に過ぎない[21]

里親慣習は、里親と里子の間に親子関係が発生しないこと、里子は家督や財産などの相続権を有さないことから、養子縁組のような明文化された法制度に比べて、より緩やかな社会慣習として市井の中で発展した制度といえる。

里親慣習の形態

里親慣習は、生みの親と里親の間の同意の下に行われる、契約型の慣習である。

この慣習が発生した平安時代は、里親は無料か極めて安価な養育料で里子を預かった。当時、身分の高い人の子を預かるのは名誉なことであり、里子が実家に帰った後も、里親は節句などの折に里子を訪問して貢物を献上するなど、里子との交流を生涯重んじ、成長した里子が里親のところに訪問するのを、ありがたいことと受け止めた。その名誉を前に、養育料は問題にならなかった。

やがて、生みの親が里親に金銭を渡し、子の養育を委託する形態が主流を占めるようになった。子が里子に出される理由は、母乳不足、迷信に基づく慣習、私生児の処置、母親の死亡、貧困による口減らしなどが挙げられる。金銭の受諾は、子を託す時に一度だけ行われる場合もあれば、月いくら、日当いくらというように、子が預けられている間、継続的に行われる場合もあった[22]

また、漁農村では労働里子の慣習が見られ、里親は里子に衣食住を提供し、その代償として、里子は労働力を提供した。この慣習は、都市部の工商階級にも散見し、奉公人との区別がつきにくいが、奉公人は、雇用人が労働対価を支払う労働契約に基づく関係であるのに対し、里子の労働対価は「育てて貰う代償」に相殺された。

いずれの場合も、“多くの児童の奴隷化、労働力の搾取、あるいは児童虐待、虐殺、養育料搾取などの形をとるなど、まことに忌まわしい事実が、広義の里子として存在した”といわれ[23]、平安時代の貴族的因習とは掛け離れた慣習として広まり、定着していた実態が窺える。

里親による事件

厚生労働省の「被措置児童等虐待届出等制度の実施状況」によれば、養育者による虐待の割合は里親の下の方が、児童養護施設の下より高い[24]

  • 平成22年8月、杉並区内の養育家庭に委託していた児童が死亡し、平成23年8月、当該養育家庭の里母が、傷害致死容疑で逮捕される事件があった[25]
  • 大阪市では市登録の養育里親である里母が、平成21年5月、自宅マンションで里親委託中の里子(5 歳女児)に傷害を負わせたとして、傷害容疑で同年10月に逮捕された[26]
  • 滋賀県では中央子ども家庭相談センター(以下「センター」という。)は、平成22 年4月に、児童福祉施設入所中の子どもが訴えた、平成21 年8月中旬頃の施設入所児童ホームステイ事業(以下「ホームステイ事業」という。)で里親宅に滞在していた際の里父からの性被害について、事実の可能性が高いと判断し、同年5月に同里親に委託中の3人の子どもを一時保護した[27]
  • 夕食準備中にしきりに食事を催促する幼児の臀部に調理中のフライパンを故意に押し当てた。泣き声を上げる幼児を風呂場に連れて行って冷やし、常備薬を塗る応急処置をとったが、病院への受診はなかった。(平成24 年度以前の通告事案)[28]
  • 家の鍵を何度も紛失する児童に対して、厳しく叱責したが、反省の様子が見えないことから、家から閉め出した。児童は10 日間マンションの屋上で生活していた。また、布団叩きで両足を叩いたりもしていた。[29]
  • 施設からのホームステイ事業として里親宅に滞在していた女児Aより、里父から胸を触られた等の訴えがあった。また、当該里親への委託女児Bも、里父から身体を触られた等の証言があった。委託女児Cは叩かれて、臀部に青あざ有り。委託女児Dは、里父から里母へのDVを目撃したと証言した。[30]

諸外国の里親制度

イギリス

里親委託をFoster Careと呼ぶ[31]

ダドリー市では里親自体が3段階に格付けされ、ボランティア里親(レベル1)から専門里親(レベル3)までの昇格制度を取っている[31]。委託期間は24時間から数年まで[要出典]。平均は半年以内の数か月[要出典]。実親子交流は里子支援の中核実務[要出典]。経費は養育費(生活費用)と報酬(手当)は公的里親機関が、独自に決定[要出典]


里親は一定期間以上養育すれば看護権に近い権利を持つものと実務上取り扱われる[要出典]。2000年2月に私的里親制度における虐待死のVictoria Climbié事件により、里親委託制度改革が起こった[要出典]

フランス

個人か公法人と労働契約を結び、労働組合法が適用される職業になる。最低賃金の定めがあり、有給休暇や失業保険適用もある。2004年現在、約38万人が資格を持ち、里子数は5万9千人だが、78万人の受け入れ態勢がある。パリの里親の月給は子供一人当たり8万円、生活費は6歳未満で2万7千円[32]。実親の面会や引き渡しの要求は通常、親が地方当局を相手どって裁判所にケア命令の取り消しや児童との交流を申し立てるので、常に裁判所の判断を仰ぐことになるため、ほとんど問題にならない[要出典]

ドイツ

家庭養育Familienpflegeと呼ぶ。親族里親は里親全体の22%を占める。扶養料は0~7歳で4万8千円。ほか教育手当などある。委託期間は通常18歳まで可能。里親委託期間は育児期間として里親の年金に算入される[33]

ベルギー

里親をle d'accuilまたはfamille d'accuilと呼ぶ。里親になるのに認定制度はない。里親委託団体が適当と認めたものを里親として選び、措置機関から委託された子供を委託している。そのほかすでに子供を預かっている近親者や知人で里親を希望する者を調査し、里親として追認し、指導している。後者が里親全体の80%を占めている。委託経費は6歳未満で月額4万4千円程度。報酬に相当する里親手当はないが、家族手当を受ける。この手当は委託児童の法律的身分、年齢などにより違いがあり、受給者の社会的地位などにより割り引かれて支給される。しかし障害のある子供の委託では全額が支給される。全里親中、近親者などの追認型里親が80%を占める。他人間の里親が少ない。ただし、実親にアルコールや麻薬中毒の問題があれば、その近親者である里親にも同様の問題が程度の差はあってもあることが問題となっている。親子分離による保護よりもそれを予防することに力が注がれているため、共同体におけるすべての援助と保護措置を最長1年とし、更新は再調査が必要となっている[34]

デンマーク

familieplejeと呼ぶ。任意委託は自治体が親の同意を得て行う(90%)、強制委託は青少年委員会が親の同意なしで行う(10%)が原則として弁護士がつく。委託終了後は原則として実親の元に帰る。里親ケアの委託料は1人1日について68デンマーククローネ(円換算で1020円)から800クローネ(1万2000円)の範囲であるが、月額にすると1999年現在12万~13.5万円となる。養育施設より最も安いといわれている。この費用は福祉機関と市町村が半分ずつ負担している[35]

イタリア

家庭への養育委託 affidamento familiare が里親に相当する。委託経費は原則として実費。期間は一応2年まで。終了後は実親家庭に復帰する。しかし多くのイタリア人は法定親子関係を望んでおり、養育家庭に止まることを満足する者は少ないという「生来の家庭」と養育親との複雑な関係も生じがちで、家庭的養育委託よりも養子縁組、それも国際養子縁組が多用される原因となっているという[36]

アメリカ合衆国

foster parentsと呼ぶ。ルーカス州では8つのタイプ別、レベル別、子供の年齢別に準じて委託経費の日当が規定されている。米国全体では期間終了後家族再統合が66%、養子縁組14%、ガーディアンシップ2%、その他が17%だが、ルーカス州では2000年度は家族再統合は32%だった。里親には手当はないが、養育費用が連邦政府より群か機関を通じて里親に支払われる。家庭復帰に力を入れており、復帰した子供の割合は、2000年の全米平均では66%となっている。[37][38]。2013年現在、アメリカの里親はこの過去20年間、減少の一途をたどった。ワシントン州の里親の数も90年代後半には30パーセント減少。里親が里親業を廃業するにはいくつもの理由があるが、第一に、金銭面も含めた政府側からのサポートの希薄さがある。ソーシャルワーカーは手に余るケースワークを抱えているため、しばしば里親の疑問や要望にこたえられない。そして、何よりも大きな原因は、里子そのものにある。米国の里子は30年前とは様相を異にしている。現在の里子は、親の麻薬常用などの影響をうけ、身体の健康、精神衛生、学習機能、そして社会的な適応など、すべての面で多大な障壁を持って里親の家庭へと入ってくるようになった。里親は訓練をうけはするが、そういった困難に満ちた子どもを育てるだけの経験と許容力を培うまでには、多くの場合いたらない[39]。また里親制度の負の側面として、里子である期間が長期化されればされるほど、里親次第では子供達は次の里親、さらに次の里親と、たらい回しにされ、その度ごとに里親家庭そのものだけではなく、地域、学校、友達等、すべての環境が変わってしまうことを挙げるものもいる[40]

カナダ

family care homesと呼ぶ。ブリティッシュコロンビア州では任意委託では親と省との間で詳細な内容の契約を締結する。約80%が12か月以内に実親復帰する[41]

オーストラリア

里親はNSW州ではfoster carerと、里親制度をout of home careと呼ぶ。委託手続きの89%が強制命令による。委託経費は2週間ごとに350ドル、これに委託された児童のニーズにより50~100%の付加給付が配分される。委託期間は強制の時14日以上~数年。2年未満が50%強[42]

シンガポール

foster parent(foster mother)と呼ぶ。委託経費は生活費・教育費のみ。3歳以下は月500シンガポールドル、4~18歳は月450ドル+200ドル。身体的・知的障害児童を養育する里親には月600ドルと教育費が108~130ドル支給される。里子にかかる費用の一部は可能な限り実親に負担してもらう。また、幼い子供は大型施設ではなく、1対1のかかわりが望ましいという政府の方針から、日本のように乳児院はない。[43]

香港

foster home(foster care)と呼ぶ。委託経費は生活費月2,800香港ドル、里親手当月1400香港ドル、障害児と緊急里親は1.5倍の手当。普通里親は2年以内、緊急は6週間以内。できるだけ実親の地位を向上させるようにして、子供の家庭復帰を図っている。イギリスで導入された「パートナーシップ・モデル」を実践している[44]

韓国

朝鮮戦争以来、韓国から多くの子どもが養子として米国など海外に渡った。その数は1980年代には年8000人を超えた。88年にソウル五輪を開催して経済成長が世界の注目を浴びるなか、国内の児童福祉政策が不十分な「孤児輸出国」という批判を浴びてしまう。2000年代に入って、里親事業に力を入れた。儒教文化の「血縁重視」の考え方を生かし、祖父母や親類を里親に登録して養育を進める制度も導入して新しい里親を増やした。こうした取り組みで、里親委託された子どもは、2000年の1800人から1万6000人を超えるまでになった。うち9割が祖父母や親族への委託だった。子どもが13歳になるまで毎月10万ウォン(約7000円)の養育費や、障害児童の場合は補助金として月55万1000~62万7000ウォンが支給される[45]

里親を主題にしたフィクション

テレビドラマ

映画

里親体験を描いたノンフィクション

  • 漫画家・古泉智浩 作「うちの子になりなよ」[46]

関連文献

注釈

  1. ^ 施設等の種別ごとの児童一人当たりの年間予算については、グループホームの経費や養育家庭を支援する職員を配置する経費を児童養護施設の予算に計上しているため、算出することは困難。仮に、児童福祉法による児童入所施設措置費等の平成27年度予算額を単純に予算規模で除算した額を児童一人当たりの予算額とした(東京都福祉保健局)。東京都議会平成27年第二回定例会上田令子文書質問趣意書からの抜粋。

脚注

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  1. ^ 三省堂『大辞林』による。
  2. ^ 東京都福祉保健局 東京都の里親制度について 2015年10月26日閲覧
  3. ^ 東京養育家庭の会・竹中勝美氏『シドさんの里親のホームページ(人間の)』より
  4. ^ 里親制度の国際比較 湯沢雍彦編 P331ミネルヴァ書房 2004
  5. ^ 里親制度の国際比較 湯沢雍彦編 ミネルヴァ書房 2004
  6. ^ NHKクローズアップ現代 親子”になりたいのに・・・~里親・養子縁組の壁~2014年1月15日放送
  7. ^ 朝日新聞 デジタル 里親「さよならも言えず」 委託解除され、行政と訴訟も」2015年9月3日
  8. ^ 下野新聞 「養護の形、子どもも選択可能に」 栃木県里親大会で意見交換 2015年11月23日
  9. ^ 東京社会福祉協福祉広報 2012年4月号 くらし今ひと 2015年11月24日閲覧
  10. ^ 児童養護施設の子どもの運転免許取得費を支援 埼玉県と教習所協会が協定 福祉新聞 11月30日
  11. ^ 厚生労働省 児童養護施設入所児童等調査の結果(平成25年2月1日現在)
  12. ^ 厚生労働省 児童養護施設入所児童等調査の結果(平成25年2月1日現在)
  13. ^ 厚生労働省「社会的養護の現状について(参考資料)平成26年3 月
  14. ^ 厚生労働省「社会的養護の現状について(参考資料) 平成25年3 月、25 頁
  15. ^ 厚生労働省 里親制度等について 2015年10月29日閲覧
  16. ^ 厚生労働省 里親制度等について
  17. ^ 公益法人 全国里親会
  18. ^ 夢がもてない日本における社会的養護下の子どもたち 国際NGO (非政府組織)ヒューマン·ライツ·ウォッチ 2015年5月14日閲覧
  19. ^ 東京都議会議員 上田令子公式ホームページ 2015年10月07日
  20. ^ 昭和23年に制定した児童福祉法で、主に戦争孤児の救済策として里親制度が制度化されたが、児童福祉法に定める里親制度によらない里親(いわゆる私的里親)も多数存在し、里親自体の法的定義はみとめられない。
  21. ^ 児童福祉法に定める里親制度下の「養育里親」などは、里親の概念から派生した児童の社会的養護の一制度、その呼称に過ぎず、里親自体に法的定義を付与するものではない。
  22. ^ 現在の児童福祉法に定める「養育里親」なども、里子を養育するに充分な養育費のほか、様々な名目の金銭が里親に支払われることから、この慣習に則った制度であるといえる。
  23. ^ 日本児童福祉協会、三吉明編『里親制度の研究』より引用。
  24. ^ 厚生労働省 被措置児童等虐待届出等制度の実施状況について 各年度の報告書内の虐待率より
  25. ^ 東京都 平成23年度東京都児童福祉審議会児童虐待死亡事例等検証部会報告書 2012年1月17日
  26. ^ 大阪市 里親による里子への傷害事例検証結果報告書 平成22年3月
  27. ^ 滋賀県 被措置児童虐待事例検証結果報告書 平成23年(2011 年)12月26日
  28. ^ 厚生労働省 平成25年度における被措置児童等虐待への各都道府県市の対応状況について
  29. ^ 厚生労働省 平成24年度における被措置児童等虐待への各都道府県市の対応状況について 平成26年3月14日
  30. ^ 厚生労働省 平成22年度における被措置児童等虐待への各都道府県市の対応状況について 平成24年1月16日
  31. ^ a b 里親制度の国際比較 湯沢雍彦編 津崎哲雄署部分 ミネルヴァ書房 2004
  32. ^ 里親制度の国際比較 湯沢雍彦 編 中川高男・菊池緑著部分 ミネルヴァ書房 2004
  33. ^ 里親制度の国際比較 湯沢雍彦 編 高橋由紀子著部分 ミネルヴァ書房 2004
  34. ^ 里親制度の国際比較 湯沢雍彦 編 菊池緑著部分 ミネルヴァ書房 2004
  35. ^ 里親制度の国際比較 湯沢雍彦著部分 ミネルヴァ書房 2004
  36. ^ 里親制度の国際比較 湯沢雍彦 編 松浦千誉著部分 ミネルヴァ書房 2004
  37. ^ [www.aiiku.or.jp/~doc/houkoku/h14/h1480209.pdf 平成14年度厚生労働科学研究費補助金アメリカの里親制度(その3)ヘネシー澄子著 2015年10月29日閲覧]
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  39. ^ 粟津美穂著 international forester care alliance 2013年8月29日
  40. ^ アメリカにおける里親制度 池谷和子 2015年10月29日閲覧
  41. ^ 里親制度の国際比較 湯沢雍彦 編 大谷まこと著部分 ミネルヴァ書房 2004
  42. ^ 里親制度の国際比較 湯沢雍彦 編 志田民吉著部分 ミネルヴァ書房 2004
  43. ^ 里親制度の国際比較 湯沢雍彦 編 平田美智子著部分 ミネルヴァ書房 2004
  44. ^ 里親制度の国際比較 湯沢雍彦 編 平田美智子著部分 ミネルヴァ書房 2004
  45. ^ 築島稔著 the asahisinbun globe 2015年10月29日
  46. ^ ウートピ 2015年11月20日閲覧

関連項目

外部リンク