内部告発

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内部告発(ないぶこくはつ)とは、組織企業)内部の人間が、所属組織の不正や悪事(法令違反など)を、外部の監督機関(監督官庁など)や報道機関などへ知らせて周知を図る行為である。組織の不祥事やその隠蔽は、この内部告発によって明らかになるケースが多い。クリアストリームの匿名口座は、内部告発によって発覚した世界的事例である。ABBグループは2007年と2014年の両方においてカルテルを最初に告発して欧州委員会に制裁金を免除されている。

なお、社内の監査部門に対して行われるそれを「内部『通報』」、企業外部(マスメディアや役所等)に対して行う「内部『告発』」と言葉を分ける場合も多いが、いずれも奨励されるべき行為と認識されている点は共通している。前者について、経営陣が支店等現場での不正や不祥事を知る手段として、内部通報の制度を作る企業もある。だが、制度だけでは内部告発は設計意図どおりには機能しない。告発を勧めるためには、制度設計の他にも社員教育による意識の改革が必要となる[1]

日本における内部告発に関する法律としては、公益通報者保護法がある。

内部告発の必須要件[編集]

真実性
通報対象事実、つまり告発内容の正当性を立証できる根拠、証拠が必要。
目的
公益性があり加害目的がないこと。
告発先
企業内の公益通報窓口(ヘルプライン)が有効に機能している場合は、まずは企業内部での改善努力を求める意味で、最初にそれが選択されるべきとされる。その他、監督官庁・マスメディア・一般住民などの第三者が選択される場合もある[2]

保護制度[編集]

過去の慣例からすると、内部告発をするということは、組織からすれば裏切り行為と見なされることが普通であった[3]。従って、告発者は必然的に組織や関連業界が好ましからざるものと認知されやすい。これにより、公益のために組織の不正や悪事を公表した者が、その組織や関連業界に報復人事などの不利益な扱いをされたり制裁を加えられたり、業界から追放されてしまう事例が相次いだ。

組織の不正を知り、正すためには内部告発が非常に重要な働きをする。そのため、こうした組織による不適切な報復行為から内部告発者を保護する必要性があり、各国で法整備が進められていく。

米国では1989年に「内部告発者保護法 (Whistleblower Protection Act)」、英国では1998年に「公益開示法 (Public Interest Disclosure Act)」が制定。日本ではこれに相当する法律として、2004年平成16年)に「公益通報者保護法」が成立した。

Government Accountability Project というNPOエドワード・スノーデンなどを支援している。

公益通報者保護法[編集]

2006年4月1日に施行された日本の法律。内部告発を行った労働者を保護することを目的とする。内部告発の正当性の判断は、同法の保護要件に基づいて判断される。

同法はあくまで「内部告発者を守る法」であり、組織の不正行為を摘発することが主軸ではない。したがって、内部告発者の保護はなされても、組織の不正行為の摘発および是正に必ずしも結びつくとは限らない。

同法の施行後も、内部告発者に対する企業による制裁は行われている。また、保護される告発・通報の要件が色々と限定されており、告発者の立場[4]や通報先にも縛り[5]がある。こうしたことから、一部からは同法は内部告発者の保護が不十分であるという指摘を受けている[6][7]

弁護士会の相談窓口[編集]

内部告発者を考えている者の相談窓口として、弁護士会は無料もしくは廉価な相談窓口を開設している(記事末尾の外部リンク参照)。同法では内部告発者が保護されるための様々な要件が決められており、不用意に企業の外部へ内部告発を行うと保護の対象にならない。その点、弁護士には守秘義務があるので、内部告発の相談を行っても、企業外部への告発とみなされることなく、告発の方法や身分の保護について確実な手順を示してもらうことができる。

告発者となる危険性[編集]

告発者に対する制裁・報復[編集]

日本国内において、告発者に対して組織が制裁・報復行為(不利益処分としての不当懲戒処分)をした実例を例示する。

監督省庁の不手際・隠蔽[編集]

内部告発は組織の不正を正すために重要な要素を持つ行為であるが、内部告発者の身を危険に晒す原因を作り上げたり、内部告発を放置して被害を拡大させてしまうなど、内部告発を受け処分する側であるはずの監督省庁の姿勢・対応の悪さがたびたび問題となる。

内部告発者の個人情報通知[編集]

企業の内部告発者に対する不当な制裁・報復行為を誘発する恐れが高いにもかかわらず、内部告発者の個人情報(氏名など)を企業に対して提供する問題が発生している。

2002年に発覚した東京電力の原子力発電所トラブル隠し問題において、内部告発を受けた経済産業省原子力安全・保安院が、その内部告発者の氏名を含む資料を電力会社側に通知していたことが判明している[16]

2013年、東京都世田谷区の設置する世田谷保健所は、衛生管理に関する内部告発を行った人物の氏名を企業へ通知した。内部告発者は即日解雇された[17]

2014年、厚生労働省はJ-ADNIのデータ改竄疑惑を告発した検証担当者からのメールをそのまま研究代表に転送。検証担当者は辞職に追い込まれた[18]

内部告発放置問題[編集]

内部告発を放置あるいは無視し、組織の不正摘発に遅れを生じさせるなど、監督省庁に対して行われた内部告発が生かされず、企業の不正が放置され被害を拡大させる問題が発生している。

2007年6月、北海道の食品加工卸会社ミートホープが牛肉ミンチの品質表示偽装行為を長年に渡って行っていたことが報道により公になったが、その1年余り前の時点で北海道庁農林水産省に対し、内部告発が行われていた。しかしながら省庁側の対応が鈍く、この内部告発は事実上放置されていた。その結果、およそ1年間に渡って偽装牛肉ミンチの流通を防ぐことができず、この食品加工卸会社の不正を知りながら不正行為をさせ続けたことになり、問題化した[19]

また、JAS法違反(食品偽装など)を内部告発する公益通報は、公益通報制度が開始された2006年以降5年間で、日本政府や各都道府県に対し計63件が寄せられているが、違反した事業者名が公表される「改善指示」につながった例は1件も出ておらず、制度の実効性に疑義を唱える意見が強くなっている[20]

内部告発の事例[編集]

参考図書[編集]

  • 太田さとし著『内部告発マニュアル』ISBN 482841018X
  • 奥山俊宏著『内部告発の力―公益通報者保護法は何を守るのか』
  • 奥山俊宏ら著『ルポ内部告発』

脚注[編集]

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  1. ^ 『ホットライン機能せず マクドナルドのトップが語る内部告発の限界』2007年12月10日付配信 日経ビジネスオンライン 日経BP
  2. ^ http://www.futoukaiko.com/cont4/page10.html 不当解雇.com
  3. ^ 谷沢永一「こんな日本に誰がした」(クレスト社、1995年)には論語の「子は父のために隠し父は子のために隠す、その中に正直さがある」を引用して「正しいことを道徳の基準として立てるなら何が正しいか果てしない論争になり、場合によっては祖国の機密を敵に売っても正義だとなる」として、ゼネコン談合の内部告発について「自己の会社を売り渡すその心情はソ連に平然と日本国を売り渡した尾崎秀実の相似形であったに違いない」と述べている(P49~50)。
  4. ^ 公益通報者保護法第2条1項2項(公益通報者保護法#保護の対象者を参照)
  5. ^ 公益通報者保護法第3条 - 通報先は労務提供先(事業所)、行政機関(監督官庁等)、その他外部(マスコミ等)の3つに分けられ、後者になるほど保護の要件が厳しい。
  6. ^ 公益通報者保護法の内容と課題(2006年4月15日 講演要旨) 鷹匠法律事務所
  7. ^ 「公益通報者保護法案」に対する意見 日本労働弁護団
  8. ^ 損害賠償金等請求事件(通称 トナミ運輸損害賠償) - 裁判例情報(裁判所ウェブサイト)
  9. ^ 「不正告発で報復人事」 三菱重社員、取り消し申し立て 朝日新聞 2008年9月27日
  10. ^ 内部告発社員に自宅待機を指示 大阪トヨペット - 朝日新聞 2006年6月3日
  11. ^ TBSテレビ噂の!東京マガジン「噂の現場」これでは安心して走れない!手抜き工事発覚!内部告発者の苦悩(2008年4月13日放送)
  12. ^ 社内告発で制裁人事、オリンパス社員が人権救済申し立てへ 読売新聞 2009年2月26日
  13. ^ 「内部告発でパワハラ」提訴…香川 読売新聞 2012年8月18日
  14. ^ 障害者虐待告発で「不当解雇」…審判申し立て 読売新聞 2013年8月29日
  15. ^ 【朝日】2014年1月18日付「告発メールを転送、教授に対応一任 厚労省の告発者漏洩」
  16. ^ 2002年9月13日 日本経済新聞朝刊・夕刊
  17. ^ 世田谷保健所が内部告発情報を漏洩 業者、告発者を即日解雇
  18. ^ 【朝日】2014年1月18日付「告発メールを転送、教授に対応一任 厚労省の告発者漏洩」
  19. ^ 偽ミンチ、内部告発を1年余放置 農政事務所 - 朝日新聞 2007年6月21日
  20. ^ 公益通報制度:5年間で「改善指示」ゼロ 実効性に問題 毎日新聞 2012年1月21日
  21. ^ http://www.asahi.com/sp/articles/ASHD34G0QHD3UBQU00G.html
  22. ^ http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG06HC1_W6A500C1EA2000/

関連項目[編集]


外部リンク[編集]