化学及血清療法研究所

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一般財団法人化学及血清療法研究所
Kaketsuken.JPG
本所
正式名称 一般財団法人化学及血清療法研究所
英語名称 The Chemo-Sero-Therapeutic Research Institute
略称 化血研
組織形態 一般財団法人
所在地 日本の旗 日本
860-8568
熊本県熊本市北区大窪一丁目6番1号[広報 1]
法人番号 6330005006672
人数 1968人[広報 2]
理事長 木下統晴[広報 2]
設立年月日 1945年12月26日[広報 2]
前身 熊本医科大学実験医学研究所[広報 3]
関連組織 熊本保健科学大学
城南病院[広報 4]
ウェブサイト http://www.kaketsuken.or.jp/
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化血研東京事務所・東京営業所

一般財団法人化学及血清療法研究所(かがくおよびけっせいりょうほうけんきゅうしょ、The Chemo-Sero-Therapeutic Research Institute)は、熊本県熊本市北区に本所を置く一般財団法人である。 製薬メーカー。通称は化血研(かけつけん)。

2016年(平成28年)1月時点で、人体用ワクチンの国内製造6社[1]、人体用血液製剤の国内製3社の一角を占めている[1]

国内製造シェアは2015年(平成27年)時点で、A型肝炎ワクチンが100%[2]B型肝炎ワクチンが約80%[2]日本脳炎ワクチンが約40%[2]インフルエンザワクチンが約30%[3]

また、2016年(平成28年)11月時点で動物用ワクチンの国内製造大手3社でもある[4]

概要[編集]

各種人体ワクチンや血液製剤の他、抗がん剤、動物用ワクチンの生産・販売を行う[3]

各種人体ワクチンで、遅くとも1974年(昭和49年)ごろから、製造時に添加剤の量の変更や国の承認書にない添加剤の添加などを行ったり、加熱方法を変更するなど、 本来の製造方法の一部変更の承認手続きを踏むことなく、血漿製剤を承認書と異なる方法で違法に製造し始めた[3]

こうした法令違反の発覚を避けるために、1997年(平成9年)ごろから製造記録を実際のものと査察用に分けるなど組織的な隠蔽工作を続け、 2015年(平成27年)時点では製造していた血液製剤全12製品で31の工程での不正が行われるようになっていた[5]

2015年(平成27年)5月にこうした不法行為が匿名の投書で厚生労働省へ内部告発されて発覚し[6]、同月に事前通告なしに立ち入り調査を行ったことを皮切りに[6]、 同年12月までに3回の立ち入り調査を行って不正の証拠を確認した[7]

この不正に関連して、2015年(平成27年)9月に厚生労働省からワクチンなどについても出荷しないよう求められて出荷を自粛したため[8]A型肝炎ワクチンが100%[2]B型肝炎ワクチンが80%[2]日本脳炎ワクチンが40%[2]インフルエンザワクチンが約30%などは同年末には一部医療機関で不足に伴う接種の停止するなど混乱が生じ[2]2016年(平成28年)1月29日に安全性が確認されたとして厚生労働省から出荷自粛の要請を解除された[8]

そして、2015年(平成27年)12月14日に厚生労働省から製品の質や安全性の確保について行政指導を[9]2016年(平成28年)1月8日には厚生労働省から医薬品医療機器法に基づき全35製品のうち8製品を対象とする110日間の業務停止命令を受け[10]、同年1月18日から[11]5月6日まで製造・販売を停止した[12]

さらに、2016年(平成28年)1月21日には日本製薬工業協会からの除名の処分も受けた[13]

また、この不正を受けて2016年(平成28年)1月19日付で厚生労働省が全国の医薬品メーカー約1200社に対して国に承認された方法通りの製造方法が守られているかどうか製造部門以外の担当者による自主点検を求める通知も出されることになった[14]

この処分の際に、「本来は医薬品製造販売業の許可の取り消し処分とすべき事案」として事業譲渡も含めた組織の見直しを求めたことから、2016年(平成28年)4月7日アステラス製薬へワクチンや血液製剤の製造事業を譲渡する交渉に入った[15]。 しかし、同年9月5日に「交渉先が厚労省に指定され譲渡価格などで公正な交渉ができない」などとして事業譲渡の断念と自社での存続を厚生労働省へ表明し[16]、同年10月19日アステラス製薬も事業譲渡の協議終結を発表して白紙撤回された[17]

また、動物用ワクチンでも、遅くとも1985年(昭和60年)ごろから加熱処理をしないなど承認書と異なる方法で違法に製造し始め[18]2015年(平成27年)2月に同様の不法行為が見つかったことが農林水産省へ報告されて発覚し[19]、同年12月9日に立ち入り調査を行ったことで不正の証拠を確認され[19]2016年(平成28年)1月19日に農林水産省から医薬品医療機器法に基づき動物用ワクチンや診断薬全44製品のうち34製品を対象とする1月26日から2月24日まで30日間の業務停止命令を受けた[18]

1990年代薬害エイズ訴訟では被告となった。

なお、2016年4月に発生した熊本地震 (2016年)により、製造設備が甚大な被害を受け、全製品の製造が停止している[広報 5]

  • 代表者:早川堯夫
  • 設立:1945年昭和20年)12月26日
  • 主な事業:ワクチン・血漿分画製剤など生物学的医薬品の研究・開発・製造・供給
  • 主な製品:血漿分画製剤(ベニロン、ボルヒール等)、人体用ワクチン(インフルエンザ、日本脳炎、DPT、ビームゲン等)、動物用ワクチン(オイルバックス、ART2等)
  • 本所:熊本県熊本市北区大窪一丁目6番1号。菊池研究所、阿蘇支所、東京事務所、東京・大阪・福岡営業所、長崎出張所のほか、菊池研究所(菊池郡旭志村)内に国内最大規模の遺伝子組み換えアルブミンの製剤工場[20]
  • 売上高457億9,085万9千円(2016年3月期)

沿革[編集]

  • 5月28日 - 及び同月29日医薬品医療機器総合機構によって行われた立入調査で化血研が製造販売する国内献血由来の血液製剤のすべてが承認書と異なる製造方法により製造されていることが判明した。内部告発により判明し、国が承認していない方法で製造を始めたのは1974年からで、製造記録を2通作り、紙を古く見せるために紫外線を当てることまでしていたため、第三者委は「常軌を逸した隠蔽」としている[28]
  • 6月5日 - 厚生労働省は化血研が製造販売する血漿分画製剤のうち12製品26品目について出荷を差し止めるとともに、承認内容の一部変更申請等必要な対応を行うよう指導した[広報 3]
  • 9月 - 厚生労働省から求めに応じてワクチン出荷の自粛を開始[8]
  • 12月2日 - 血漿分画製剤を長年にわたり承認書と異なる製法を行ったことが発覚し、不正の発覚を逃れるため、組織ぐるみで偽造書類を作成するなどの悪質な隠蔽工作を繰り返していたたことにより、役員全員が辞任、辞職した[29]
  • 同月 - 猛毒のボツリヌス毒素を無届けで運搬していたことが判明し、立ち入り検査となった。
  • 1月6日 - 安全性が確認されたとして厚生労働省から血液製剤「献血グロブリン」出荷自粛の要請を解除される[30]
  • 1月8日 - 承認外の方法で血液製剤を製造した問題で、厚生労働省から110日間(1月18日〜5月6日)の第一種医薬品製造販売業及び医薬品製造業を対象とする業務停止命令を受ける[10](過去最も長い記録であったソリブジン事件の105日を超える最長の行政処分。ただし一部の血液製剤とワクチンは除外された)[広報 6]
  • 1月19日 - 承認外の方法で動物用医薬品を製造した問題で、農林水産省は30日間(1月26日〜2月24日)の動物用医薬品34種類を製造・販売停止の対象とする業務停止命令を出した(ただし代替品がなく品不足を招くと懸念される10種類は除いた)[18][31]
  • 1月21日 - 日本製薬工業協会からの除名の処分を受ける[13][広報 7]
  • 1月29日 - 安全性が確認されたとして厚生労働省からワクチン出荷自粛の要請を解除される[8]
  • 2月 - 医薬品医療機器総合機構(PMDA)に問題点の解消を終えたと報告した[32]
  • 4月14日16日 - 熊本地震 (2016年)により、生産設備・機械等に甚大な被害が発生した。前述の被災により当面の操業再開について目途はたっていない。[広報 5]
  • 5月6日 - 行政処分期間が終了[12][広報 8]
  • 8月 - 不祥事が明るみになった後も不正製造はその後も行われており、日本脳炎ワクチンの製造工程の一部で承認書に書かれている原材料の処理を行っていないことが判明し、翌月の立ち入り検査で違反行為を確認。
  • 10月4日 - 厚労省は、日本脳炎ワクチンで新たな不正製造が見つかったと発表し、原因究明と製造販売する全品目を再調査するよう行政処分を行った[32]。化血研が2週間以内に提出する弁明書を踏まえ、業務改善命令を出す予定[32]。厚労省は化血研に対し「このような事態が続く場合には、医薬品製造販売業許可の取り消し処分に進展する可能性がある」と伝えた[32]
  • 10月18日 - 「製造方法は承認された内容の通りであることを確認致した」とする弁明書を提出した[広報 9]。行政処分の通知に対し、製薬企業が争う姿勢を示すのは極めて異例。化血研の弁護士は、「業務改善命令を受けることはないと信じている」と話した[33]

不正製造・出荷停止問題[編集]

エンセバック

2015年6月に化血研が製造販売する複数の血液製剤とワクチンが、承認内容と異なる製造方法により製造されていることが判明したため、血液製剤および既に国家検定も終了していたワクチンについても、厚生労働省は同年9月までの出荷停止を要請した[34]。 対象と成ったのは血液製剤12種類、ワクチン10種類、その他7種類で、主なものは以下の通り。( )内は国内シェア[35]

  • 献血グロブリン
  • 献血アルブミン
  • ヒスタミン加人免疫グロブリン - 「ヒスタグロビン皮下注用」
    • 2016年2月26日・出荷再開
  • 季節性インフルエンザワクチン - 「インフルエンザHAワクチン“化血研”」(29%)
    • 9月18日・出荷自粛要請、10月21日・解除
  • 四種混合ワクチン - 「クアトロバック皮下注シリンジ」(64.2%)
    • 11月26日・出荷自粛要請解除
  • 日本脳炎ワクチン - 「エンセバック」(36.2%)
    • 2016年2月26日・出荷再開
  • A型肝炎ワクチン - 「エイムゲン」(100%)
    • 2016年1月29日・出荷再開
  • B型肝炎ワクチン - 「ビームゲン」(79.9%)
    • 2016年1月29日・出荷再開

なお、2016年1月4日現在の上記を含む出荷状況が発表されている[広報 10]

脚注[編集]

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出典[編集]

  1. ^ a b “化血研不正巡り、専門家ら初会合 厚労省検討チーム”. 朝日新聞 (朝日新聞社): p. 朝刊 6. (2016年1月15日) 
  2. ^ a b c d e f g 竹野内崇宏、福宮智代 (2015年12月19日). “B型肝炎ワクチン、足りない 化血研、不正受け出荷ストップ 小児科、接種中止の例も”. 朝日新聞 (朝日新聞社): p. 朝刊 37 
  3. ^ a b c d “血液製剤不正、40年前から 化血研第三者委「組織的隠蔽」”. 朝日新聞 (朝日新聞社): p. 朝刊 39. (2015年12月3日) 
  4. ^ 沢伸也 (2016年11月13日). “動物ワクチン違法販売 日生研、無資格業者に6年間 都の調査に虚偽報告”. 朝日新聞 (朝日新聞社): p. 朝刊 39 
  5. ^ “化血研に業務停止命令へ 年明け、期間数カ月にも 厚労省”. 朝日新聞 (朝日新聞社): p. 夕刊 13. (2015年12月25日) 
  6. ^ a b 竹野内崇宏、武田耕太 (2015年12月13日). “化血研の血液製剤不正、内部告発で発覚”. 朝日新聞 (朝日新聞社): p. 夕刊 13 
  7. ^ “化血研に業務停止命令へ 年明け、期間数カ月にも 厚労省”. 朝日新聞 (朝日新聞社): p. 夕刊 13. (2015年12月25日) 
  8. ^ a b c d “化血研の出荷自粛、要請解除”. 朝日新聞 (朝日新聞社): p. 夕刊 16. (2016年1月29日) 
  9. ^ “厚労省、化血研を行政指導 安全性の確保要求”. 朝日新聞 (朝日新聞社): p. 夕刊 11. (2015年12月15日) 
  10. ^ a b 竹野内崇宏、福宮智代 (2016年1月9日). “化血研に業務停止命令 過去最長110日間 対象は8製品のみ”. 朝日新聞 (朝日新聞社): p. 朝刊 37 
  11. ^ “化血研、きょうから業務停止”. 朝日新聞 (朝日新聞社): p. 夕刊 10. (2016年1月18日) 
  12. ^ a b “化血研事業譲渡、6月ごろまでに”. 朝日新聞 (朝日新聞社): p. 朝刊 6. (2016年5月7日) 
  13. ^ a b “化血研を除名 製薬協、過去2例目 不正製造問題で”. 朝日新聞 (朝日新聞社): p. 朝刊 7. (2016年1月22日) 
  14. ^ “医薬品1200社に自主点検要請 化血研問題で厚労省”. 朝日新聞 (朝日新聞社): p. 朝刊 7. (2016年1月22日) 
  15. ^ “化血研、事業譲渡交渉 アステラス製薬に 血液製剤不正”. 朝日新聞 (朝日新聞社): p. 朝刊 34. (2016年4月8日) 
  16. ^ “化血研、存続を希望 厚労省に伝達 「事業譲渡難しい」”. 朝日新聞 (朝日新聞社): p. 朝刊 33. (2016年9月6日) 
  17. ^ “化血研との事業譲渡協議、アステラス製薬が打ち切り”. 朝日新聞 (朝日新聞社): p. 朝刊 30. (2016年10月20日) 
  18. ^ a b c d “動物用も業務停止 化血研に30日間命令 農水省”. 朝日新聞 (朝日新聞社): p. 夕刊 10. (2016年1月19日) 
  19. ^ a b “化血研不正製造、動物ワクチンも”. 朝日新聞 (朝日新聞社): p. 夕刊 12. (2015年12月9日) 
  20. ^ 化血研から国内最大規模の組換えアルブミン生産バイオプラントの基本設計/実施設計を受注IHI、2003年6月23日
  21. ^ 内野矜自会長を4選 熊本学園大学同窓会の志文会 任期は2年間くまもと経済:2008年12月9日
  22. ^ 理事長・所長に船津昭信常務理事・副所長 化血研 内野矜自理事長は名誉所長にくまもと経済:2004年8月3日
  23. ^ 理事長・所長に宮本誠二副理事長・副所長 化血研 船津理事長は名誉理事長にくまもと経済:2012年6月26日
  24. ^ 「今期の売上高は400億円の見通し・」・化血研の宮本誠二理事長くまもと経済:2012年8月9日
  25. ^ 細胞培養ワクチンの原液製造棟が完成・化血研の宮本理事長くまもと経済:2013年4月8日
  26. ^ 売上高は10・2%増の408億3500万円 化血研 4種混合ワクチンが貢献くまもと経済:2013年7月9日
  27. ^ 血友病抗体止血治療用製剤の製造販売承認を取得 化血研 7月4日付でくまもと経済:2014年7月22日
  28. ^ 不正製造40年!「化血研」インフルワクチンは安全か?記録でっち上げ”. J-CASTテレビウォッチ (2015年12月3日). 2015年12月4日閲覧。
  29. ^ 弊所製剤の製造にかかる不正行為を受けた役員の処分並びに再発防止策について (PDF)”. 一般財団法人化学及血清療法研究所 (2015年12月2日). 2015年12月2日閲覧。
  30. ^ 竹野内崇宏、福宮智代 (2016年1月7日). “化血研の血液製剤、1種類再出荷へ 厚労省会議、安全確認”. 朝日新聞 (朝日新聞社): p. 朝刊 6 
  31. ^ 農水省も化血研に業務停止命令 動物ワクチン問題、30日間”. 日本経済新聞 (2016年1月19日). 2016年1月19日閲覧。
  32. ^ a b c d 化血研、また不正製造 日本脳炎ワクチン”. 日本経済新聞 (2016年10月4日). 2016年10月21日閲覧。
  33. ^ 日本脳炎ワクチン「不正製造」、化血研が否定”. 読売新聞(YOMIURI ONLINE) (2016年10月19日). 2016年10月21日閲覧。
  34. ^ 血液製剤など10製品出荷止まったまま 製薬会社不正”. 朝日新聞 (2015年11月27日). 2015年12月4日閲覧。
  35. ^ 一般財団法人化学及血清療法研究所の製造するワクチン製剤等に関する意見 (PDF)”. 厚生科学審議会感染症部会 (2015年10月21日). 2016年1月19日閲覧。

広報資料・プレスリリースなど一次資料[編集]

  1. ^ アクセスマップ”. 一般財団法人化学及血清療法研究所. 2015年12月3日閲覧。
  2. ^ a b c “法人概要”. 一般財団法人化学及血清療法研究所. http://www.kaketsuken.or.jp/corporationoutline.html 2017年5月31日閲覧。 
  3. ^ a b c d e f 一般財団法人化学及血清療法研究所第三者委員会調査結果報告書(全体版) (PDF)”. 一般財団法人化学及血清療法研究所第三者委員会 (2015年11月25日). 2015年12月25日閲覧。
  4. ^ 事業所・関連法人”. 一般財団法人化学及血清療法研究所. 2015年12月2日閲覧。
  5. ^ a b 「平成28年熊本地震による影響について(第2報)」 - 一般財団法人化学及血清療法研究所 (2016年4月21日、2016年5月12日閲覧)
  6. ^ 医薬品医療機器法違反にかかる行政処分について (PDF)”. 一般財団法人化学及血清療法研究所 (2016年1月8日). 2016年1月19日閲覧。
  7. ^ 日本製薬工業協会からの除名の処分について (PDF)”. 化血研 (2016年1月21日). 2016年10月21日閲覧。
  8. ^ 「今後の弊所の運営体制等について」- 一般財団法人化学及血清療法研究所 (2016年5月6日、2016年5月12日閲覧)
  9. ^ 厚生労働省の報告命令等に対する対応について”. 化血研 (2016年10月18日). 2016年10月21日閲覧。
  10. ^ 化血研からの出荷状況 (PDF)”. 化血研 (2016年1月4日). 2016年1月19日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]