パワーハラスメント

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パワーハラスメント和製英語: power harassment)とは、職場内虐待の一つ。職場内の優位性を利用した、主に社会的な地位の強い者(政治家、会社社長、上司、役員、大学教授など)による、「自らの権力や立場を利用した嫌がらせ」のことである[1]。略称はパワハラ。当初のパワハラの定義は、社会的な強者による「権力や立場を利用した嫌がらせ」のことであったが、パワハラの用途が変化しており、より広義な意味では「地位や権力」などに必ずしも対応したものではなく、上司などからのいじめに近い概念としての理解に変わってきた[2]

加害者は暴力を振るえば「傷害罪」や「暴行罪」、精神的に攻撃をすれば「名誉毀損」や「侮辱罪」に問われる可能性もある。民法不法行為労働基準法違反も成立することがある[1]。加害者を雇用している企業がパワーハラスメントを放置した場合、職場環境調整義務違反に問われ、加害者やその上司への懲戒処分などが求められる[1]。加害者に自覚がなく指導と思いこんでいるケースが多く、対処法としては、記録を残し、行政機関など外部への告発が有効とされる[1]

国際的に1993年以降、欧米諸国で法制化が行われ、日本では2001年にパワーハラスメントという言葉が提唱され[2]、2019年にはこれを禁じる国際労働機関 (ILO) 第190号条約が制定された(2019年の暴力及びハラスメント条約)[3]厚生労働省によれば、典型例は、身体的な暴力、精神的なものである強迫や暴言、人間関係の切り離し、遂行できない過大な要求、程度の低いことを命じる過小な要求、私的な領域への侵害となる[4]。影響は、法的責任やその訴訟に関わるコストだけでなく、健康被害、職場の生産性の低下による損失がある[2]。対策には、相談窓口の設置、管理職の研究会への参加、就業規則に盛り込むといったことが挙げられる[5]

定義[編集]

パワーハラスメントとは、2001年(平成13年)に東京のコンサルティング会社クオレ・シー・キューブの代表取締役岡田康子による和製英語である[2]。セクハラ以外にも職場にはさまざまなハラスメントがあると考えた岡田らは、2001年(平成13年)12月から定期的に一般の労働者から相談を受け付け、その結果を調査・研究し、2003年(平成15年)に「パワーハラスメントとは、職権などのパワーを背景にして、本来業務の適正な範囲を超えて、継続的に人格や尊厳を侵害する言動を行い、就労者の働く環境を悪化させる、あるいは雇用不安を与える」と初めて定義づけた[6]

東京都は、1995年(平成7年)から「職場において、地位や人間関係で弱い立場の労働者に対して、精神的又は身体的な苦痛を与えることにより、結果として労働者の働く権利を侵害し、職場環境を悪化させる行為」という定義のもとで労働相談[7]を受け付けている[8]

2009年(平成21年)の金子雅臣の『パワーハラスメント なぜ起こる? どう防ぐ?』 による定義は、「職場において、地位や人間関係で弱い立場の相手に対して、繰り返し精神的又は身体的苦痛を与えることにより、結果として働く人たちの権利を侵害し、職場環境を悪化させる行為」で、ハラスメントであるか否かの判断基準は、「執拗に繰り返されることが基本」であり、しかし「一回限りでも、相手に与える衝撃の大きさによって」ハラスメントとみなされる[8][9]

「パワーハラスメント」は日本独特の用語であり、国際的には「ハラスメント」は、性別、人種、信教などに基づく差別的な行為を指す意味合いが強く、職場で繰り返される不快な行為は「いじめ: mobbing, bullying)」と捉えられることが多い[2]。こうしたいじめ・嫌がらせ行為への対策は1993年のスウェーデンでの防止規則を皮切りに欧米諸国での法制化が行われてきた[2]。日本は取り組みが遅かったが、2011年には厚生労働省によるワーキンググループが組織された[2]

厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ」(2012年)は、「職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性(※)を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えるまたは職場環境を悪化させる行為等をいう。※上司から部下に行われるものだけでなく、先輩・後輩間や同僚間、さらには部下から上司に対して様々な優位性を背景に行われるもの等も含まれる」という定義を提案した[10][11]

厚生労働省は、これ以外のパワハラにも十分注意すべきであるとし、2012年(平成24年)1月にパワーハラスメントの典型例を示した[4]

  1. 暴行・傷害(身体的な攻撃)
  2. 脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)
  3. 隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)
  4. 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)
  5. 業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)
  6. 私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)

厚生労働省はパワハラの被害者に対して、総合労働相談コーナー[12]などの職場の外部の相談窓口への相談を勧めている[13]

厚生労働省の外郭団体である21世紀職業財団が、パワハラの類型を提示し、啓発ポスターなどに取り入れている[14]

  1. 「公開叱責(多数の面前での叱責)、人格否定」
  2. 「感情を丸出しにするモンスター上司、給料泥棒呼ばわりする」
  3. 「退職勧奨や脅し」
  4. 「無視の命令」
  5. 「困難な仕事を与えて低評価にする、過剰なノルマ」
  6. 「パワハラの訴えを聞き流す」

パワハラを受けたことが原因で、さらに無視や仲間はずれなどの職場いじめに発展する場合もある。叱責、教育や研修という名目で行われる場合ならば、いかなる方法をとっても許されるのではなく、物理的もしくは精神的な暴力手段や非合理的手段は許されない。例えば、正当な叱責の場合でも、1度ではなく執拗に長期間批判する、大声で怒鳴りつける、多数の面前での見せしめ・懲罰的な「公開叱責」や人格否定など、方法を間違えば違法性が生ずる[15]

ほかの動向[編集]

2007年には裁判によってうつ病と労働環境との因果関係を認定する判決が下され、2008年には厚生労働省も各都道府県労働局に対し通達を行ってきたし、2009年には労災基準に嫌がらせや暴行といったものを追加した[16]

パワーハラスメントの定義・指針を策定した9県は、岩手(2005年)、大分(2006年)、佐賀(2007年)、熊本(2007年)、富山(2008年)、兵庫(2009年)、和歌山(2009年)、静岡(人権啓発センター:2009年、人権問題に関する調査・職場における人権問題)、沖縄県教育委員会(ホームページでもパワハラ定義を公開2010年)。岩手、大分、佐賀、熊本の4県は、「コンプライアンス基本方針」や、セクハラも含む「ハラスメント要綱」などの一部に盛り込んだ。

日本の企業では相談窓口の設置や、管理職に研究会に参加させる、就業規則に盛り込むといった厚生労働省の推奨している予防策の実施が上位3位となっている[5]。厚生労働省のアンケートでは、8割の企業が相談窓口を設置し、6割の企業が就業規則に対策を盛り込んでいる[5]。就業規則では懲戒を行うという規定である[17]

2019年5月29日の参議院本会議で「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律案」が可決され、パワーハラスメント防止法が成立した(施行時期は、早ければ大企業が2020年4月、中小企業が2022年4月から義務化する)。

精神的な攻撃の例[編集]

「昇給させないぞ」「給料分は働け」「休憩ばかりでなく仕事しろ」「お前の育ちは…」といった威嚇的な言動は、21世紀には人権侵害だと認識されるようになっている[16]。上司としての適切なコミュニケーションの技術についてはビジネス書でも言及のある範囲であり、例えば感情的に「遅刻したのはなんだ、馬鹿やろう」では説明として具体的なアドバイスになっていないため、どの行動が問題か、遅刻することで何が起こるか、評価がどう変わるか、続くなら減給の処置がありえるといった点を伝えたり(但し、強調しすぎると脅迫になり、これもパワハラになってしまう)、それが確かに伝わったかを確認する必要もある[18]

刑事責任[編集]

パワーハラスメント行為が刑法の規定に触れる場合には、その行為者は刑法によって処罰される可能性もある。

たとえば、「Y1から職場に戻るよう言われた際に、同人や作業長ら(に)……腕をつかんで引き戻されるなどし」「右上腕内部に皮下出血」[19]を生じた場合は傷害罪(刑法204条)に該たるし、「全従業員の面前で……横領事件(があったこと)を告げた上、(被害者)らに対し、『二年間も横領が続くことは誰かが協力しないとできないことだ。』、『(被害者)ら二人は関与しないはずはない。』、『正直に言うならば許してやる。』などと告げ」[20]れば名誉毀損罪(刑法230条)に該たりうる。同様に、事実を摘示せずに侮辱すれば侮辱罪(刑法231条)に該当しうるし、と、パワーハラスメント罪というものがない限りは、刑法の適用においてはパワーハラスメント以外の場合と同じ扱いを受けることになる。

民事責任[編集]

パワーハラスメントによって被害者に損害が生じた場合には、行為者は民法上の不法行為責任(民法709条)により財産上の損害を賠償する責めを負い、また710条により慰謝料を支払う義務を負う[21]

また、パワーハラスメントが事業の執行に関してなされたものであれば、民法715条によって使用者もこの不法行為の損害賠償責任を負う[22]。さらに、使用者がパワーハラスメントが行われていることを認識していたにもかかわらずこれを防止する措置をとらずに放置していたという事情がある場合には、使用者は雇用契約に基づく安全配慮義務違反による債務不履行責任(民法415条)を負い損害を賠償する義務を負う[23]

つまり、民事の場合も、パワーハラスメント以外のケースとそう変わるものではない。

被害者支援[編集]

長嶋あけみ (2010) は、「パワー・ハラスメントの場合には、部署の異動や、加害者への処分を希望すれば、担当部署と連携して解決に当たる」と述べた[24]

また、「心身の健康を取り戻し、失った自信や自尊心を回復することのお手伝い」などの心理的ケアも行う[24]。心身が不調になる場合や心的外傷後ストレス障害 (PTSD) が発症する場合もあり、「医療が必要な相談者には、医療機関への受診を勧め、治療と並行しながら、支援を進めていく」と述べた(詳細は「心的外傷後ストレス障害 (PTSD)#治療」を参照)[24]

影響[編集]

ほかの被害として、仕事への意欲や業績の低下、心身の健康被害、会社全体の士気や忠誠心の低下、そうしたことによる優秀な人材の流出もありえ、生産性が低下すれば会社は損失を被る[2]

背景[編集]

日本の職場でパワハラが生じやすい理由として、組織が閉鎖的で上下関係が固定的になり、パワハラそのものが外部に表面化しにくいことなどがあげられている。また上司と部下の双方が、互いに相手からの承認に強く依存する関係にあることが指摘されている[25]

事例[編集]

  • アカス紙器茨城県水戸市)で、社長が知的障害者の従業員への障害者虐待を日常的に行っていたことが1999年に発覚した[26]。この事件を題材としたテレビドラマが制作されている。
  • 串岡弘昭が、トナミ運輸勤務中に内部告発を行ったため、研修所に異動後は雑用を強いられた上に昇給すらなく、暴力団からも脅迫され冷遇されたとして、2002年(平成14年)に訴訟を起こした[27][28]
  • 日研化学(現・興和創薬)のパワーハラスメントが原因とされる男性会社員の自殺事件について、自殺の原因は上司の暴言にあったとして、2007年に東京地裁が初の労働災害認定を行なった。労働基準監督署が労災として認めなかったため争われていた裁判だが、この事件がパワーハラスメントに起因する自殺を労災と認めた初の司法判断となった[29]
  • 前田道路社員の男性(当時43歳)は、愛媛県内の同社営業所に勤務していた2004年(平成16年)7月頃から、四国支店(高松市)の上司に何度も呼び出され「この成績は何だ」「会社を辞めれば済むと思っているんじゃないか」などと叱責され、同年9月に自殺した。新居浜労働基準監督署は労災認定し遺族側に通知した。自殺した男性はパワーハラスメントを受けていただけでなく、下請け会社への未払いの工事代金まで家計から穴埋めしていたという[30]
  • 秋田県警察で、当時本荘署(現・由利本荘署)に勤務していた当時48歳の男性警部が、上司の副署長から大声で叱責を繰り返されるなどパワハラ行為を受け、2005年(平成17年)2月に自殺した。県警は、その後交通部長となっていたこの元副署長について、本部長訓戒処分としていたが、「関係者へのプライバシーの配慮」を理由に、2014年(平成26年)3月に報道されるまで公表していなかった[31]
  • 大東建託社員の男性(当時42歳)は、静岡県藤枝市の支店に勤務していた際、2005年に担当したマンションの建築工事における損失の一部約360万円を自己負担するよう会社側から強要され、精神的に追い詰められて2007年(平成19年)10月に自殺した。遺族が損害賠償を求めて同社を静岡地裁に提訴し[32]、自殺の原因は上司からのパワーハラスメントであるとして、島田労働基準監督署(静岡県島田市)が労災認定した[33]
  • 松戸市消防署で、暴言や暴力などのパワーハラスメントを受けたとして新人訓練生から損害賠償を求める訴訟を起こされ、2009年に訓練指導員と上司の計11人が処分された[34]
  • 熊本県農水商工局の男性係長と男性技術参事の2人が、2009年(平成21年)6月から2011年(平成23年)7月頃にかけ、部下の職員が公用車の運転中に道を間違えたことをきっかけに、寿司ウナギなどの昼食を次々に奢らせたり(最終的には100万円以上に達した)、正座を強要するなどのパワハラを執拗に繰り返し、2011年(平成23年)12月26日に停職6ヵ月の処分となった[35]
  • いわしんビジネスサービス磐田信用金庫関連会社、静岡県)の男性職員が、同社社長と社長代理の2名から、2009年(平成21年)10月頃から2010年(平成22年)4月にかけてパワーハラスメントを受け、うつ病を発症。2012年(平成24年)4月審査請求を経て労災認定された[36]
  • 横浜美術短期大学(現・横浜美術大学)の元総務課長の男性は、同学の4年制大学への移行に向けて文部科学省との折衝担当となったが、認可直前の2009年(平成21年)9月から、上司らによるパワハラ・退職強要等の嫌がらせを受けうつ病を発症した。2011年(平成23年)に横浜北労働基準監督署は男性への上司らのよるパワハラ・退職強要とうつ病発症の因果関係を認め労災認定した。男性は労災とは別に上司3人と、同学を運営する学校法人トキワ松学園に対し損害賠償を求める訴訟を横浜地裁に起こしていたが、2013年(平成25年)5月東京高裁で学園側が和解金を支払い、再発防止義務を負うことで最終的に和解が成立した[37]
  • 2010年(平成22年)11月に、飲食店チェーンサン・チャレンジが運営する「ステーキのくいしんぼ」で店長として勤務していた当時24歳の男性が自殺。男性の遺族は、サン・チャレンジや当時の上司らに対し、約7,300万円の支払いを求め東京地方裁判所に提訴した。この男性は、東京都渋谷区の2店舗での勤務時、1日当たりの勤務時間が12時間を超えており、休暇もほとんど取れない状況だった。また上司から暴言や暴行を何度も受けており、これらが元で強度の心理的負荷が生じていたとされた。2014年(平成26年)11月4日に同地裁は遺族の主張を認め、パワハラ等以外の原因は認められないとした上で、サン・チャレンジに対し約5,800万円の支払いを命じた[38]
  • ゼリア新薬工業2013年4月に入社した当時22歳の男性が、同年5月18日に自殺した。この男性は、同年4月から8月にかけて研修会社が行った「意識行動変革研修」と称する入社研修中に、男性講師から吃音症と決め付けられ、いじめに遭った経験を同期入社の新入社員42人の前で言わされるなどした。これにより男性は精神障害統合失調症)を発症し、東京都内に一時帰宅する途中で自殺。2015年5月に東京労働局中央労働基準監督署は労災認定した。男性の遺族は2017年8月8日、同社に対して約1億510万円の損害賠償を求め東京地方裁判所に提訴した[39]
  • 大阪府警四条畷署刑事課に2013年(平成25年)4月に当時28歳の男性巡査長が新人刑事として配属されたが、上司に当たる49歳の男性警部補らはこの巡査長に対し、連日大声で怒鳴り付けたり回し蹴りするなどのいじめやパワハラを行い、この巡査長は同年9月に首吊り自殺した。府警は2014年(平成26年)3月に、関わった警部補ら刑事課員4人を減給などの処分とした[40]
  • 2014年(平成26年)2月、警視庁蒲田警察署地域課の男性巡査長が署内のトイレで拳銃自殺した。警視庁の調べで、上司に当たる男性警部補がこの巡査長を含む数名の部下の警察官に対し「身の振り方を考えろ」等の暴言を浴びせるなどして辞職を強要していたことが明らかとなり、警視庁は同年4月にこの警部補を減給処分としたほか、当時の地域課長や署長についても訓戒や口頭注意の処分とした[41]
  • 2014年(平成26年)4月下旬、福島県警捜査2課課長補佐の51歳の男性警部と、その上司である指導官の52歳の男性警視が相次ぎ自殺した。県警が調査したところ、当時の捜査2課長である45歳の男性警視が自殺した警部を含む3人の警部に対し、2013年(平成25年)5月頃から2014年(平成26年)4月頃に掛けて「小学生みたいな文章を作るな」「あんたは係長以下だ」等の暴言を浴びせるなどのパワハラ行為を行っていたことが明らかとなった。また指導官の自殺については、警部の自殺に責任を感じてのものと結論付けられた。県警は2014年(平成26年)6月26日付で、当該の捜査2課長を戒告処分とした上、27日付で県警警務部付に更迭した[42]
  • 2014年(平成26年)11月20日、群馬大学大学院医学系研究科の男性教授が、2011年(平成23年)から2013年(平成25年)にかけて、同じ研究室に勤務する部下の助教や講師ら計5人に対し継続的にパワハラ行為を行っていたとして懲戒解雇処分となった。この中には女性に対し「結婚は三角、出産はバツ」という旨の発言をした例もあった[43]
  • 2015年(平成27年)2月20日、大阪府教育委員会教育長が、自らと意見を異にする職員数人に対し配置転換や解職などを仄めかしたり、教育委員の一人に罷免要求をちらつかせるなどのパワハラ行為をしていたと、第三者委員会が報告。教育長は当初続投を希望していたが、同年3月11日に辞任を表明[44]。これを受け、当時の教育委員長も辞任を表明した[45]
  • 関西地区の私立大学に所属する30歳代の女性研究者が、2009年(平成21年)に東京大学大学院医学系研究科の48歳の男性医師と知り合い、共同研究を行うようになったが、この医師は社会的地位を背景に、女性研究者に暴力を伴ったセクハラやパワハラを行うようになり、これが元で女性研究者は心的外傷後ストレス障害 (PTSD) を発症した。女性研究者はこの講師を相手取り神戸地方裁判所に提訴。男性医師は「セクハラではない」と主張したが、2015年(平成27年)7月30日に同地裁は女性研究者の訴えを認め、当該の男性講師に計1,126万円の支払いを命じる判決を言い渡した[46]
  • 阪神高速道路の子会社である阪神高速パトロールに2010年に入社した当時24歳の男性社員は、2012年から上司となった46歳の男性から仕事内容について注意を受けた際に「殺すぞ」などの暴言を受けるなどし、同年5月に自殺した。男性の遺族は神戸労働基準監督署に労災申請したものの棄却されたため、大阪地方裁判所に訴訟を提起。一審では訴えが退けられたが、2017年9月29日の大阪高等裁判所の二審判決では労災認定し遺族への補償を命じた[47]
  • 埼玉県警察秩父警察署地域課の当時52歳の男性警部が、2016年3月から7月にかけて、当時の署長から決済書類を巡り大声での叱責を受けたり、幹部会議で発言した際に強い非難を受けるなどしたことが原因で、精神状態が悪化し同年7月に自殺。地方公務員災害補償基金埼玉県支部は2017年3月に、警部の自殺は署長によるパワーハラスメントが原因であるとして公務災害と認定した[48]
  • 劇団四季の27歳の男性俳優が、横浜市内のマンションの同僚俳優の部屋から飛び降りていたことが、2018年9月に明らかになった。飛び降りた俳優は一命は取り留めたものの重傷を負った。56歳の男性俳優からパワーハラスメントを受けていたためとされ、劇団四季は調査委員会を設置し調査を行ったが、プライバシー保護を理由に当事者の俳優らの氏名は公表していない[49]
  • 2018年12月28日、広島大学は在職中に学生らに暴言を吐くパワーハラスメント行為を繰り返したとして、元教授(60歳代、男性)を諭旨解雇相当に認定したと発表した。認定は同月18日付。元教授は大学の調査に応じないまま、12月上旬に退職した[50]
  • 2018年9月10日、海上自衛隊横須賀基地所属の補給艦ときわ」で、30歳代の男性三尉が自殺しているのが見付かった。これを受け海自は、同年11月末に乗員らに対しアンケートを実施したところ、艦長の男性二佐から「休むな」と指示されたほか、他の上官からも「死ね」「消えろ」などの暴言を受けるなど、パワハラを指摘する記述が多数寄せられた。また艦長は他の乗員にもパワハラをしていた疑いも指摘された[51]。海自はパワハラに関わったとされる艦長について、海上自衛隊護衛艦隊司令部付に更迭した[52]
  • 神奈川県内のスイミングクラブに勤める競泳の元日本代表の45歳の男性コーチが、一部の選手に対し「練習に来るな」などと発言するなどパワハラ行為を繰り返したとして、2019年4月日本水泳連盟から3年間の資格停止処分を受けた[53]
  • 大阪府吹田市内の薬局に勤務していた当時30歳の女性が2016年に自殺したのは、職場の上司や社長らからパワハラを受けたことが原因として、遺族が2019年4月に薬局の運営会社を相手取り、大阪地方裁判所に訴訟を提起した。女性は社員旅行の幹事を担当した際、旅行中に上司から大声で罵倒されるなどしてうつ病を発症し、会社はこれを把握した後も仕事量を減らさず、健康への配慮を怠ったと主張している[54]
  • 2011年からサカイ引越センターパート従業員として勤務していた女性が、上司から「何でいつもへろへろになるまで仕事するの?」など、真面目な勤務態度を繰り返し揶揄されたり、同僚との間で起こったトラブルについて「仕事放棄は人としてどうか」「謝罪がなければ帰って結構だ」などと叱責されたことから、同年10月に退職。女性はパワーハラスメントによって退職を余儀なくされたとして大阪地方裁判所に訴訟を提起した。同地裁で2019年7月11日付で、同社と上司が合わせて100万円の和解金を支払う条件で和解が成立した。この女性はその後も同社のCMが流れると苦痛を感じると話した[55]
  • 2019年5月から6月にかけて兵庫県姫路市中学校(校名は非公表)に教育実習に参加した20歳代の男性が、指導教諭から「こんなこともできないのか」などと他の教諭らが見ている前で繰り返し叱責を受け、また無視するような態度を取られるなどして抑うつ状態となり、2週間ほど休んだ。同市教育委員会は「通常の指導の範囲内だった」としつつ、パワーハラスメントに当たらないか調査を開始した[56]
  • 2019年9月、兵庫県神戸市立東須磨小学校で男性教諭が複数の先輩教諭からパワーハラスメントを受け、精神的に不安定になり自宅療養していたことが明るみになった。この事件はマスメディアでも大きく報じられた。
  • 2019年10月、京都府警察向日町両署の署長が部下に対し、怒鳴り付けたり人格否定の発言をするなどのパワーハラスメント行為をしたして、それぞれ本部長訓戒・本部長注意の処分となった[57]
  • 大阪市高速電気軌道(Osaka Metro)の経理担当として勤務していた当時40歳代の男性社員が、2020年3月に同社本社内で自殺しているのが発見された。同社で調べたところ、この男性の上司に当たる50歳代の男性課長が、2019年夏頃から、当該の男性社員に対し、人格否定などに当たりかねない言葉を執拗に浴びせるなどしていた模様である。また、この男性社員は、2019年1月頃より病気休職から復帰し、産業医の指示で超過勤務を制限されていたにもかかわらず、この男性課長は制限を超えた残業を命じたりしていた。同社はこの課長について、パワハラ行為があったと認めた上で、停職1カ月の懲戒処分とした上で係長に降格した[58]。また、当該の自殺した社員について、大阪西労働基準監督署が、長時間労働によって精神疾患を発症したことが自殺の原因であるとして、労働災害と認定していたことが2021年6月に明らかになるが、パワハラとの因果関係については判断していない[59]
  • 全日本柔道連盟において、複数の職員が先輩職員の一人から、激しい叱責を受けたり、業務時間外に仕事を求められるなど、パワハラを窺わせる言動を受けていた事実が、2021年2月に明るみに出た。当該の幹部職員は、同年2月に自己都合退職。同連盟の山下泰裕会長は「今回は事務局内の案件であり、外部に公表する案件ではないと判断した」としつつ、責任を取る形で会長を退く可能性を示唆した[60]
  • 兵庫県宝塚市消防本部は、西消防署南部出張所の男性消防司令補2名が、同僚に対しオンラインゲームへの参加を強要するなどのパワハラ行為をしていたとして、2021年3月16日に2人をそれぞれ停職10ヵ月と減給10分の1の処分とした[61]
  • 兵庫県警察の50歳代の男性警部補(勤務先は非公表)が、2019年5月から2020年12月にかけ、部下5人に対し立たせたまま説教するなどのパワーハラスメント行為をしていたことが明らかになった。うち、子供がいる部下の一人に対しては、行方不明になっていた警察犬「クレバ号」と同じ名前を付けたらどうか、との発言もあった。県警は20213月5日付でこの警部補を本部長訓戒の処分とした[62]
  • トヨタ自動車の男性社員(当時28歳)が2017年自殺したのは、上司からパワハラを受け適応障害を発症したのが原因だったとして、豊田労働基準監督署労災認定していたことが2019年11月に明らかになった[63]。男性の遺族の代理人弁護士によると、男性は東京大学大学院を卒業後にトヨタ自動車に入社[64]。入社2年目の2016年3月から本社の車両設計部門に配属されたが、上司から「死んだ方がいい」「なめてんのか」「学歴ロンダリングだ」と言われるなどのパワハラを日常的に受けるようになり[64][65]個室に呼ばれ「発言を録音してないだろうな。携帯電話を出せ」と言われたとも相談していたが[66]、同年6月頃には精神疾患を発症した[67]。翌月から3ヶ月間休職し、別のグループに異動して職場に復帰したが、席は同じ上司のすぐ近くだった[65]2017年10月30日、男性は社員寮の自室で自殺した[65]。トヨタ自動車は当初、社内調査を踏まえパワハラと自殺との因果関係は否定したが、2019年9月に豊田労働基準監督署は遺族の主張に沿う形で労災を認定した[68]。豊田社長は男性社員の自殺が報道された後の2019年11月、「ニュースで初めて知った。取り返しのつかないことになってしまい、心からお詫びします」と、遺族を訪ねて頭を下げたほか、和解成立時の2021年4月にも大阪市内で遺族と面会し、謝罪した[68]。和解したのは4月7日付だが、和解金の金額は非公表である[68]
  • ローソン大阪府内の加盟店で2007年から勤務していた男性が、陳列のミスや遅刻をしたことを切っ掛けに、店主から日常的に叱責されたり、殴る蹴るの暴行を受けたりするようになり、また、店の釣り銭の残高が合わないなどとして350万円の賠償を求められ、退職する2014年6月までの約2年間は無給で働かされたほか、377日連続で無休で働かされたりもした。男性は2015年9月に店主とローソン本部を相手取って大阪地方裁判所に提訴。ローソンの本部は「店主に労務管理を指導する義務はない」などと反論していたが、2021年6月10日に、本部側が男性に解決金を支払うことで同地裁で和解が成立した[69]

日本国のパワハラ防止法施行[編集]

日本国では、職場での上司や教員などによる地位を利用したパワハラ被害を防止するため、企業にパワハラ対策を義務付ける法律が2020年6月1日に施行された[70]。大企業は2020年6月1日から、中小企業は2022年4月から義務化されることになった[70]

企業に相談などを行うことを義務付け、相談などを受けても適切な対策を行わないなど悪質だった場合、企業名を公表することが可能となった[70]

また、心理的苦痛による精神障害となった者の労災認定基準も新たに「長時間にわたる執拗な叱責」として改定された[70]

脚注[編集]

[脚注の使い方]
  1. ^ a b c d パワーハラスメント とは - コトバンク
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参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]