ブラッドタイプ・ハラスメント

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ブラッドタイプ・ハラスメント(略称ブラハラ: blood-type harassment)とは、日本において社会的少数者である血液型であるAB型に対する不当な評価であり、血液型について会話することで心理的な苦痛を与えていることである[1]。次に少数なのはB型で、嫌な思いをしやすいとされる[2]。血液型によって人の印象を決める文化のある日本語圏で使われる言葉[3]。日本の心理学者サトウタツヤが1994年に提唱した[1]。しかしその後、2009年までにAB型に対する世間のイメージは向上しており、この年度ではB型のイメージが最も良くない[4]。アンケート調査によると、2割の人がブラハラの言葉を聞いたことがある[5]

日本での提唱[編集]

1994年、当時福島大学の助教授(後に立命館大学教授)であった心理学者のサトウタツヤ(佐藤達哉)は、少数派の集団の方が評価が低いという2個の研究を元にして、このことが日本での血液型の小集団であるAB型の人々の印象が悪かった調査結果の原因だと考え、不当な評価が行われる小集団のAB型の人々は苦痛になっている可能性が高い、とした[1]。このことは、血液型と性格に関係があるかどうかということではない[1]。単に人数的に少数というだけで、セクシャルハラスメントのような嫌がらせを受けることにつながるため、ブラッドタイプ・ハラスメントという用語を作り『現代のエスプリ』で発表した[1]。加害者は、多数派の血液型であることが想像されるとし、血液型を話題にすることで、ある一部の人に心理的な苦痛を味わわせている、とした[1]

心理学者の菊池聡は、1997年に思想雑誌『望星』でこの考えを紹介し、B型やAB型は、わがまま、自己中、二重人格とよくないイメージで表現され、これは人口比が少ないことと関係があり、こうした人が血液型の話題を持ち出された時の嫌な思いは、多数派にはなかなか理解できないとしている[2]。菊池聡は1998年に文化雑誌『月間百科』でも佐藤によるAB型の評価の研究を紹介しながら、特にAB型によくない評価が集中する少数派差別の構造的な差別性に言及し、ブラッドタイプ・ハラスメントという言葉で取り上げられていると紹介する、また講義でこのように紹介していくと最後に学生が「ところで先生の血液型は?」と質問するので心理学者の戦いは続く、と結んでいる[6]

サトウの1992年の論文「血液型性格関連説がなぜ日常生活に欠かせない話題として定着しているのかを考察するために」や大村政男の著作のように血液型論が持続する原因を考察した場合、血液型についての非科学的な考えだが人間関係の構築を促す側面があるため役立つ面が多く、そのため受け入れられている状況が続いているとしている[7]。血液型論の批判者にとっても、肯定的にとらえた場合には人間関係構築という利点が見出され、否定的にとらえた場合にはハラスメントや差別を生み出されるものとなる[7]。話題として喚起することで「サトウがブラッドタイプハラスメントという少数者差別を作り出している」と批判を受けたこともある[8]

報道[編集]

英国放送協会 BBC は2012年に日本の文化としての血液型分類を紹介し、少数派のAB型とB型が悪く言われ差別されることがあるため、日本ではブラハラという言葉まで存在していると報道している[3]

サトウタツヤは2008年に『朝日新聞be』への寄稿でも、少数派の血液型の方が不利な性格が示されており、嫌われないかと思った女性が彼氏に嘘の血液型を教えていた例を紹介して、性格が悪くみられれば偏見や差別につながりかねないとした[9]。サトウは、2013年の『読売新聞』への寄稿でも、少数派の血液型への評価が否定的になりがちで、ブラッドタイプハラスメントだと紹介している[10]。サトウによる問題提起とは異なるが、『読売新聞』がブラッドタイプ・ハラスメントに言及し、1行にも満たない言及で、血液型による人事などでの差別に言及したこともある[11][リンク切れ]

意識調査[編集]

聖徳大学心理学科講師の山岡重行は血液型によるイメージを調査し、1999年、2005年、2009年の調査でも多数派のA型とO型のイメージが良いのに対し、少数派のB型とAB型は悪かったが、AB型のイメージは2009年に向けて改善されていき、B型よりもよくなった[4]。AB型のイメージが「変人」から「天才」へと言い換えられてきたためで、これに対応して血液型と性格にまつわる不快体験の経験率は、AB型は1999年に約50%だったが2009年には約30%となった[4]。いずれの年度でもB型は約50%、O型とAB型は20%前後と変わりがない[4]

2016年に30超のハラスメントを800人にアンケートを実施したところ、62%の人がすべての種類がハラスメントに該当すると答えたものの、これを除いてハラスメントだと「思わないもの」の2位にブラハラが該当した[12]

約2割がブラハラという言葉を認知しており、約1割が内容を知っており、約4割が経験ありと回答、Timersが2015年に男女649人に実施した「ブラハラに関する意識調査」による[5]。日本の成人男女の中で「血液型を聞かれると不快」との回答は15.7%で、この調査はしらべぇ編集部が2014年から2015年に成人1500名に対し実施した[13]

出典[編集]

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  1. ^ a b c d e f 佐藤達哉「ブラッドタイプ・ハラスメント」『現代のエスプリ』第324号、1994年、 154-164頁。
  2. ^ a b 菊池聡「連載コラム 不思議の裏側(5) ブラッドタイプ・ハラスメント」『望星』第28巻第9号、1997年9月、 89頁。
  3. ^ a b Ruth Evans (2012年11月5日). “Japan and blood types: Does it determine personality?”. BBC. https://www.bbc.com/news/magazine-20170787 2019年2月6日閲覧。 
  4. ^ a b c d 山岡重行「テレビ番組が増幅させる血液型差別 (PDF) 」 『心理学ワールド』第52号、2011年1月、 5-8頁。
  5. ^ a b 2015年・男女649人の調査 田端あんじ (2015年7月25日). “【知ってた?】血液型で偏見を持つコトを「ブラハラ」というらしい! …統計による「的確な分析」との見方も”. Pouch. https://youpouch.com/2015/07/25/287251/ 2019年2月3日閲覧。  “30%の女性が「結婚相手の血液型を意識する」と判明!血液型で不快な思いをする ブラハラ経験者も40%!約85%が血液型性格分類は当たっている、と回答。” (プレスリリース), 財経新聞, (2015年7月16日), https://www.zaikei.co.jp/releases/270168/ 2019年2月12日閲覧。 
  6. ^ 菊池聡「血液型信仰のナゾ・後編」『月刊百科』第425号、1998年3月、 25-29頁。
  7. ^ a b 小山由「トーテミズムとしての血液型人間分類」『常民文化』第37号、2014年3月、 1-30頁。
  8. ^ サトウタツヤ「心理学からみた質的研究 (PDF) 」 『学術フロンティア推進事業プロジェクト研究シリーズ』第7号、立命館大学、2004年3月、 3-43頁。
  9. ^ サトウタツヤ (2008年7月20日). “常識ずらしの心理学3”. 朝日新聞be. http://www.arsvi.com/2000/0807st.htm 2019年2月9日閲覧。 (立命館大学生存学研究センターのサイト内に公開)
  10. ^ サトウタツヤ『読売新聞』2013年10月21日夕刊大阪版10面。(東京版と西部版には確認したが掲載なし)
  11. ^ “科学 血液型と性格「関連なし」…日米1万人超を調査”. 読売新聞(YOMIURI ONLONE). http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20140722-OYT8T50051.html 2014年8月17日閲覧。 
  12. ^ “パワハラ・セクハラ・マタハラ… ハラスメント経験者は4人に1人 上司への相談により退職勧告を受けたケースも!”. 産経ニュース. (2016年11月15日). https://www.sankei.com/economy/news/161115/prl1611150236-n1.html 2018年9月28日閲覧。 
  13. ^ 鎌田真悠子 (2018年7月4日). “そんなことで性格を決めつけないで! 血液型を尋ねられるのが不快な人たち”. しらべぇ. https://sirabee.com/2018/07/04/20161664789/ 2019年2月3日閲覧。