エレクトロニック・ハラスメント

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エレクトロニック・ハラスメント英語: electronic harassment) は、電波電磁波レーザー超音波などの媒体を意図的に人体に照射したり、身体にデバイスを埋め込まれたりすることで、人々に痛みや不快感その他の疾患を引き起こしたり、に音声や映像情報を伝えるなど、身体に悪影響を与えるという犯罪である。高度な軍事技術が使用されているという被害者たちの主張の一方で、複数の医学的専門家は、統合失調症などが原因の妄想である、と断定的に主張を繰り返している[1][2]

概要[編集]

エレクトロニック・ハラスメントとは、超音波や電磁波、レーザーなどを悪用し遠隔から特定の個人を攻撃する行為を指すと主張する団体がある[3]。 元英国軍情報部第5課(MI5)所属のバリー・トゥロワー博士や元CIAの諜報部員であったカール・クラークは、マイクロ波兵器使用により対象者の脳に音声幻覚を引き起こす事が可能であり精神疾患や癌等の病気を誘発できる、マイクロ波兵器による市民への人体実験が行われていたと証言している[4]。 その一方で、統合失調症などの精神疾患による妄想の可能性があると指摘している精神科医などの専門家もいる。また、その被害の主張者においては、ウェブサイトを通じて、その感情が共有・強化され、科学的な対応も隠蔽と捉える場合もある[5]

アメリカ合衆国では、ミシガン州[6]メイン州[7]マサチューセッツ州[8]州法がこのような行為を禁止している。また、2009年カンザス州ウィチタの裁判所が、エレクトロニック・ハラスメント被害を訴える原告の勝訴の判断を示した例がある[9][10]

体験[編集]

高度な科学技術によるエレクトロニック・ハラスメントを受けていると自覚する被害者は「標的にされた個人」(英語: Targeted Individuals 略語はTI)と呼ばれ、その体験は様々なものである。被害者の頭の中に声を響かせて名前を呼び、その声は幾度も繰り返し被害者や周辺にいる人たちを嘲笑する。火傷のような身体的な感覚を引き起こす[11][5]。被害者は頭が混乱し動揺し、時には恥ずべき体験をするが、すべてが現実である。また、1人以上の加害者による身体的な監視の下にあるとも述べている。政府が科学技術を開発する為に頭の中への音声送信を行ったとの主張を裏付けるために、被害者はニュース記事、軍事雑誌、機密文書の機密解除を引用する。これらの被害者の多くは、正常な心理状態で普通の生活を送っており、その中には、成功したキャリアを持つ人々も含まれる[11]

心理学者のロレイン・シェリダンは、法医学精神医学心理学の機関誌に集団ストーカー(英語: gang-stalking)の研究を共著した。シェリダンによれば、「集団ストーカーのアイディアに打撃を受けた妄想症状を持つ人々に関して彼らに何が起こっているかの説明として、対象者現象を考えなければならない」[12]精神保健の専門家は、対象者が幻覚や標的とされたり、また、嫌がらせされたりすることは妄想障害または精神病から生じると説明できると述べている[11][1][13] [14]。イェール精神科教授のラルフ・ホフマンは、人々はしばしば、政府の嫌がらせ、神、死亡した親戚などの外部の情報源を主張しており、外部からの影響に対する信念が妄想的であると説得するのは困難であると示している[11]。他の専門家は、これらの話を外国人拉致事件と比較する[5]

事件[編集]

  • 2008年、ジェームズ・ウォルバートは、彼の以前のビジネス仲間が不和後に彼を「放射線の衝撃」で脅かし、後で電気ショック感覚のような感覚症状、生成された発信音やその他の奇妙な音が耳に聞こえると主張し裁判所に訴えた。裁判所は、ウォルバートをさらに苦しめる「電子的手段」を禁止する命令を出すことを決定した。報道関係者は、エレクトロニック・ハラスメントの被害者であると思われる個人を明らかにし、場合によっては裁判所に同意するよう説得した[17]
  • 2013年8月にルイジアナ州で発生した人質・殺人事件では、犯人は頭の中にマイクロホンが埋め込まれたと発言していたが、警察は妄想型統合失調症と結論付けている[18]
  • 2013年9月16日、アーロン・アレクシスは「極超長波武器」(my ELF weapon)と書いたショットガンを使用してワシントン海軍工廠12人を致死させ、警察官との銃撃戦で死亡した[19][20][21]FBI連邦警察当局は、アレクシスは「極超長波の電磁波によって制御されたり影響を受けている」という「妄想的な信念」に悩まされていたと結論づけた[22]
  • 2014年11月20日、マイロン・メイはフロリダ州立大学のキャンパスで3人を銃を撃ち負傷させ、警察官との銃撃戦で死亡した。事件の前に、彼は政府の監視下にあり、声が聞こえることがますます不安になっていた[23][24][25]
  • 2016年7月17日、ルイジアナ州バトンルージュで3人の警官を殺害し、3人を負傷させたギャビン・ユージン・ロングは、反政府運動と陰謀説を信じ、リモートブレイン実験、人体全体の遠隔神経監視に苦しむ人々を支援する団体の一員だった[26]
  • 2016年後半以降、在キューバ米国及びカナダ大使館職員と在中国アメリカ領事館職員に対する音響攻撃疑惑が発生した。職員たちは原因不明の体調不良を訴えている[27]

陰謀説[編集]

マインドコントロール陰謀説支持者の場合、2002年の空軍研究所の「マイクロ波を使用して対象者の頭に声を送信する」特許や[11]、「アメリカ人を洗脳する」という旧ソ連の企てを述べている「オペレーション・パンドラ」と呼ばれるCIAファイルの噂を繰り返し引用する。1960年代、モスクワのアメリカ大使館がマイクロ波照射攻撃を受けたことが発覚したモスクワ信号事件以降、アメリカはマイクロ波照射の生物学的および行動上の影響を研究[28]。そして、旧ソ連の意図がマインドコントロールではなく盗聴と電子妨害であることを発見した[11][29]

マインドコントロールを恐れている人々の主張には、「精神工学」と「マイクロ波」を使用する「悪者」が含まれる。CIAのMKウルトラ計画について頻繁に言及し、「変調された電磁気エネルギーに対する人間の聴覚システムの反応」と題された科学論文を頻繁に引用する[30]

1987年、アメリカ国立科学アカデミーは、陸軍研究所によって委託された報告書で、「精神工学は1980年代に事例の解説、新聞、および書籍に最初に浮上したサイキック戦争である」という主張の「派手な事例」の1つと指摘した。報告書には「超空間核爆弾」などの精神工学兵器と、ロシアの精神工学兵器がレジオネア病の原因であるとの信念と、「信じられないほどの範囲から信じられないほどの範囲へ」という主張でのアメリカ海軍の潜水艦沈没が挙げられている。委員会は、軍事的意思決定者による報告や経緯、そしてそのような兵器の潜在的な用途が存在するにもかかわらず、「科学技術文献には精神工学兵器の主張を裏付けるものは何もない」と述べている[31]

精神工学兵器は1990年代にロシアで研究されていたと報告されている。軍事アナリストのティモシー・L・トーマス大佐は1998年に、兵士の心を攻撃するための武器がロシアに存在する可能性を強く信じていたが、装置の動作は報告されていない[32][33]

2012年には、ウラジーミル・プーチン大統領とアナトリー・セルディコフ国防相は、精神工学兵器の開発のための提案を草案する予定についてコメントした。NBCニュースサイエンス編集者アラン・ボイル氏は、プーチン大統領とセルディコフ国防相のコメントには、ロシアが精神工学兵器に深く関わっていることを示唆するものは何もない、と兵器が実際に存在しているという考えを否定した[34]

エレクトロニック・ハラスメントと誤解される技術や実験[編集]

電波で大人しくなる闘牛と闘牛士 - ニューヨークタイムズで報道された、ホセ・デルガド博士により、闘牛士が電波を牛に送信すると攻撃的で無くなるという実験が行われた。この実験により「電波で脳を制御し、性格を操作できる」と認知されたが誤解である。電波はラジコンの技術であり、牛の脳の表面に付けられた受信機で電気信号に変換され、脳に埋め込んだ電極を刺激しているだけである[35]

サポートと支援コミュニティー[編集]

エレクトロニック・ハラスメントを経験していると自覚している一部の人々は、精神工学やその他のマインドコントロール兵器の使用を停止するよう運動をしている[11][5]。これらの運動は公的な人物から何らかの支援を受けているが、2001年の法案で「精神工学武器」を禁止する条項を加えた元米下院議員デニス・クシニッチ[11]、元ミズーリ州議会議員ジム・ゲストも含まれている[5]

オンライン・サポートネットワークと多数のウェブサイトがマインドコントロールを恐れている人々によって維持されている。心理学者は、このようなサイトが精神的なトラブルを強化する一方で、一般的な妄想の共有と受諾はグループの認知療法の形として機能する可能性があるとの意見に同意している。そして、これらの人々をまとめて精神障害と診断する道を開拓しようとしている[5]

精神科医は、2006年の英国のヴォーン・ベルの研究の一環として、統合失調症である可能性が非常に高いオンライン・マインドコントロール・アカウントのサンプルの評価に基づいて「精神病の兆候が強く存在する」と主張した[1]

心理学者のシェリダンは、エレクトロニック・ハラスメントに関するオンラインコンテンツの量は、それが主題に関する議論のない事実であり、対象者にとって有害でイデオロギー的なプラットフォームが生み出されると示唆している[12]

脚注[編集]

  1. ^ a b c Psychotic Websites. Does the Internet encourage psychotic thinking?”. Psychology Today. Sussex Publishers, LLC, HealthProfs.com. 2016年3月19日閲覧。
  2. ^ Electronic Harassment: Voices in My Mind”. KMIR News. 2017年12月7日閲覧。
  3. ^ 「当会からのメッセージ」 特定非営利活動法人テクノロジー犯罪被害ネットワーク
  4. ^ 「テクノロジー犯罪被害者が増えている」『世論時報』世論時報社、2019年3月1日。6-8頁。
  5. ^ a b c d e f Kershaw, Sarah (2008年11月12日). “Sharing Their Demons on the Web”. New York Times. https://www.nytimes.com/2008/11/13/fashion/13psych.html?pagewanted=all 
  6. ^ 2003-PA-025”. Legislature.mi.gov. 2013年4月12日閲覧。
  7. ^ PUBLIC Law Chapter 264”. Mainelegislature.org (2003年1月15日). 2013年4月12日閲覧。
  8. ^ Session Laws: CHAPTER 170 of the Acts of 2004”. Malegislature.gov (2004年7月15日). 2013年4月12日閲覧。
  9. ^ That little voice inside your head Our view • Missouri lawmaker explores the farthest frontiers of science. St. Louis Post-Dispatch , July 07, 2009
  10. ^ エレクトロニック・ハラスメント(電磁波犯罪)の裁判で、アメリカのカンザス州セジウィック郡地方裁判所で... レファレンス協同データベース
  11. ^ a b c d e f g h Weinberger, Sharon (2007年1月14日). “Mind Games”. Washington Post. https://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2007/01/10/AR2007011001399_pf.html 2014年1月12日閲覧。 
  12. ^ a b United States of Paranoia: They See Gangs of Stalkers”. New York Times. New York Times. 2016年7月20日閲覧。
  13. ^ Gang stalking : internet connectivity as an emerging mental health concern”. Smith College Libraries. Smith College School for Social Work Theses 2007. 2016年3月15日閲覧。
  14. ^ Space weapons resolution ’embarrassed’ city and negatively impacted mentally ill, vice mayor says”. Richmond Standard. Chevron Richmond. 2016年3月15日閲覧。
  15. ^ King of the Towels: The Torture and Murder of Pedro Albizu Campos  LATINO REBELS
  16. ^ Federico Ribes Tovar, Albizu Campos: Puerto Rican Revolutionary, p. 136-139; Plus Ultra Publishers, 1971
  17. ^ Court to Defendant: Stop Blasting That Man’s Mind! Wired magazine BY DAVID HAMBLING July 1, 2009
  18. ^ “Jim Mustian, Man who killed hostages in north Louisiana bank had mental illness, March 12”. Baton Rouge Morning Advocate. オリジナルの2014年3月13日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20140313181529/http://theadvocate.com/home/8612131-125/la-bank-hostages-killer-had-no 
  19. ^ Greg Botelho and Joe Sterling (September 26, 2013). FBI: Navy Yard shooter 'delusional,' said 'low frequency attacks' drove him to kill. CNN Retrieved: 26 September 2013.
  20. ^ BBC News (2013年9月25日). “Profile: Navy Yard shooter Aaron Alexis”. BBC News. http://www.bbc.com/news/world-us-canada-24120854 2013年9月25日閲覧。 
  21. ^ Tom Vanden Brook (2014年3月18日). “Report: Concerns about Navy Yard shooter never reported”. 2014年10月19日閲覧。
  22. ^ McDonald, Ian (2013年9月26日). “FBI: Navy Yard Shooter ‘Delusional,’ said ‘Low Frequency Attacks’ Drove Him to Kill”. FOX40. 2018年2月12日閲覧。
  23. ^ Holley, Peter; Larimer, Sarah (2014年11月20日). “FSU gunman was in 'state of crisis' during shooting, investigators say”. Washington Post. https://www.washingtonpost.com/news/post-nation/wp/2014/11/20/fsu-gunman-remembered-as-hard-worker-kindest-sweetest-person-by-baffled-friends-acquaintances/ 
  24. ^ Southall, Ashley; Williams, Timothy (2014年11月20日). “Gunman at Florida State Spoke of Being Watched”. New York Times. https://www.nytimes.com/2014/11/21/us/florida-state-university-shooting.html?_r=0 
  25. ^ Queally, James (2014年11月21日). “FSU gunman mailed 10 packages before shooting, contents not dangerous”. Los Angeles Times. http://www.latimes.com/nation/nationnow/la-na-nn-fsu-gunman-voices-shooting-20141121-story.html 
  26. ^ Berlinger, Joshua (2016年7月18日). “Gavin Long: Who is Baton Rouge cop killer?”. http://www.cnn.com/2016/07/18/us/who-is-gavin-long/ 2016年7月18日閲覧。 
  27. ^ 「音が殺人兵器と化す日」『ニューズウィーク日本語版』 2017年12月26日号 p. 29.
  28. ^ ベギーチ 2011, p. 60-61.
  29. ^ Moments in U.S. Diplomatic History Microwaving Embassy Moscow”. Association for Diplomatic Studies and Training. ADST. 2016年5月12日閲覧。
  30. ^ 'Mind control' experiences on the internet: implications for the psychiatric diagnosis of delusions.”. Psychopathology. School of Psychology, Cardiff University. 2016年3月10日閲覧。
  31. ^ Kendrick Frazier (1991). The Hundredth Monkey: And Other Paradigms of the Paranormal. Prometheus Books, Publishers. pp. 153–. ISBN 978-1-61592-401-1. https://books.google.com/books?id=iJ1v3bggyr8C&pg=PA153 2013年5月4日閲覧。. 
  32. ^ Leigh Armistead autofilled (2004). Information Operations. Potomac Books, Inc.. pp. 197–. ISBN 978-1-59797-355-7. https://books.google.com/books?id=kxFibw3NxBcC&pg=PA197 2013年4月30日閲覧。. 
  33. ^ The Mind Has No Firewall, Parameters, Spring 1998, pp. 84-92
  34. ^ Boyle, Alan (2012年4月). “Reality check on Russia's 'zombie ray gun' program”. NBC News. http://cosmiclog.nbcnews.com/_news/2012/04/06/11061093-reality-check-on-russias-zombie-ray-gun-program?lite 2013年4月30日閲覧。 
  35. ^ Matador’ With a Radio Stops Wired Bull New York Times(1965年5月17日)

参考文献[編集]

  • ニック・ベギーチ博士、内田智穂子訳 『電子洗脳 あなたの脳も攻撃されている』 成甲書房、2011年7月25日。ISBN 978-4-88086-278-1 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]