破産者マップ事件

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破産者マップ事件(はさんしゃマップじけん)は、2019年3月インターネット上で起きた事件。

概要[編集]

『破産者マップ』と称するウェブサイトの運営者が、破産決定から免責に至った者を個別的・断続的に掲載している官報の破産者情報を包括的・網羅的に収集し、データベース化させ、Google マップ関連付け設定を施し、Googleマップ上に破産手続きした者の住所の上にピン(目印)を挿入するなど容易に可視化させるサイトを実験的に開設した。しかし、破産者を一元化させるこのサイトの設立に対し、プライバシー権への侵害や社会的評価を低下させることによる名誉を毀損させる行為であるなど、次第に物議を醸し、2019年3月にはこれを問題視するメディアも出てくるなど報道が過熱し、これを受けて被害対策弁護団が結成される事態にまで発展した[1][2]。最終的には後述の理由からサイトは閉鎖した。

事件の経緯[編集]

2019年3月15日頃、破産者マップの情報が公開されたことでネットを中心に炎上騒ぎとなる。これ以降、サーバーがたびたび不安定になるほどアクセス数を伸ばし、翌16日には1時間当たり230万アクセスに達する程であった[3]。19日になり、運営者が自身のTwitterアカウントで謝罪を行うとともに、サイトを閉鎖した。

自己破産について[編集]

自己破産」を参照。

官報について[編集]

官報」を参照。

サイト運営者の動機・主張[編集]

「破産マップの係長」と称する破産者マップの運営者は、公式Twitter[4]上にて、1. 官報の情報は、図書館や大学・インターネット上で誰もが自由に知ることの出来る情報であり、2. 特にこのうち破産者情報については、広く国民が知ることで困っている破産者が社会で援助を受けることが可能になるとりわけ有益な情報であるにもかかわらず、3. 官報の記載は個別的・断続的に公開されることから、それらの情報を国民が知るには利便性に欠けるため、4. 表現方法を変える(破産者マップ上にてグーグルマップと関連付けさせて公開することで可視性を高める)ことで、破産者情報が固有として持つ本質的な価値(地域の一般市民が近隣の破産者を援助できる、という運営者が個人的に見出している価値のこと)を引き出せるのではないか、という動機から破産者マップを公開したことを説明している。[5] 「破産者の社会的評価を低下させ名誉を毀損させている」との意見に対しては、破産者情報が本来的に官報により公開される情報であることを理由に、専らサイト上での公開によって名誉が毀損されるものではないと反論しており、「プライバシー権への侵害となっている」との意見については沈黙を貫いている。他方で、当初の予定以上に反響が大きく、また、後述の第三者による詐欺事件に対して結果的に加担したことなどを踏まえ、「期待する使われ方と違う使われ方をされていると聞いて、とても悲しい気持ちでいっぱいです。もしあなたの隣人が困っていたら、ぜひ助けてあげてほしいと思います」と主張しており、社会的混乱に対する当惑はみせたものの、本来の動機については改悛の情を伺わせることはなかった。

その後、最終的には「関係者に辛い思いをさせた」としてサイト閉鎖を決断した。サイト閉鎖にあたり、模倣犯による類似サイトの設立防止を理由に、当面の間はドメインの保持を維持することを表明した[6]

二次被害[編集]

破産者マップでは公式に、氏名や住所、身分証明書の写しや破産に至った事情(200文字以上)を破産者に提示させることと引き換えに、破産者マップから情報を削除する審査を受けることができる旨の制度を設け、運営者による独自の審査に通った場合にのみマップ情報の非開示に応じるとしていた。しかしこれらの制度を悪用し、悪意のある第三者が「削除申請は有料である」として、条件に加え更に金銭を要求することで利益を得ようとする詐欺事件が発生した[7]。当該詐欺事件については、サイト運営者が自らのTwitterアカウントで一切の支払いをしないよう呼びかける旨のツイートを公表しており、サイト運営者としてもサイトが当初の期待していたものとは異なる使い方をされたことについては遺憾の意を表明した[8]

違法性の有無[編集]

破産者マップに対しては、複数の弁護士から違法性が指摘された。「破産者マップに公益性はなく、掲載された人のプライバシーと名誉を侵害している」[9]「特定の者の知られたくない情報をみだりに検索容易な状態に置いたことは、プライバシー権侵害として損害賠償の対象となる可能性は十分にある」[10]「地方に住んでおり引越し等が容易ではない破産者にとっては、社会生活上又は私生活上の受忍限度を超える重大な支障が直ちに生じる事案として違法といえるのではないか」「政治家や有名な経営者であれば別だが、一般人が破産したという情報に公共性があるとは思えない」[11]「セーフティネットである破産制度を用いることを躊躇することに繋がり、あえて開示・公表する意味は乏しい」[12]「破産法の目的に反し、他人の名誉を棄損したりプライバシー侵害が正当化されるものではない」[13]など、破産者マップの公知性や公益性を否定する意見が多く見られた。

個人情報保護委員会による行政指導[編集]

2019年3月20日の読売新聞オンラインによる記事で、政府の個人情報保護委員会が「破産者マップ」運営者に対し「本人の同意を得ないで個人データを第三者に提供してはならない」などの規定に違反するおそれがあるとして、同月19日のサイト閉鎖前に行政指導に踏み切っていたことが伝えられた。なお、同月15日以降に運営者に対しメールなどで連絡が試みていたが、連絡が付かなかったという[14]

出典[編集]

  1. ^ 「破産者マップ」閉鎖を宣言 被害対策弁護団も発足、クラウドファンディング開始 <BuzzFeed Japan> 2019年3月19日、閲覧。
  2. ^ 「破産者マップをなくそう」法的対策の動き広がる…クラウドファンディングなど開始 <弁護士ドットコム> 2019年3月19日、閲覧。
  3. ^ 「破産者マップ」閉鎖、「関係者につらい思いさせた」 <ITmedia NEWS> 2019年3月19日、閲覧。
  4. ^ 破産者マップ(@WMGjqEkelvEtglX)さん | Twitter” (日本語). twitter.com. 2019年3月19日閲覧。
  5. ^ 破産者マップ(@WMGjqEkelvEtglX)さん | Twitter” (日本語). twitter.com. 2019年3月19日閲覧。
  6. ^ 破産者マップ閉鎖、運営者謝罪「申し訳ございませんでした」 <弁護士ドットコム> 2019年3月19日、閲覧。
  7. ^ Google Map上の『破産者マップ』が波紋 サイトの存在を非難する声が殺到 <@niftyニュース> 2019年3月20日、閲覧。
  8. ^ 破産者マップ詐欺増加!?マップ悪用始まり「架空請求」の被害が発生!管理人が注意呼びかける <秒刊SUNDAY> 2019年3月20日、閲覧。
  9. ^ 破産者マップに行政指導 プライバシー侵害の批判相次ぐ2019年3月20日 朝日新聞
  10. ^ 「破産者マップ」に集団訴訟の動き 弁護士「損害賠償の可能性は十分ある」2019年3月18日 J-CASTニュース
  11. ^ 「破産者マップ」は違法…高圧的な削除申請手順に「消してほしかったらカネ払え」の匂い2019年3月20日 Business Journal
  12. ^ 批判相次ぎ破産者マップが閉鎖|違法性について弁護士が解説2019年3月19日 exciteニュース
  13. ^ “破産者マップ”に賛否両論に賛否両論2019年03月17日 尾崎一浩法律事務所
  14. ^ 「破産者マップ」運営者に行政指導…サイト閉鎖 - 読売新聞オンライン 2019年3月20日

関連項目[編集]