バイトテロ

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バイトテロとは、飲食店小売店アルバイトの形態で雇用されている店員が店の商品(特に食品)や什器を使用して悪ふざけを行う様子をスマートフォンなどで撮影し、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)に投稿して炎上する現象を指す日本の造語。

名称[編集]

発生した企業や店舗に対する社会的なイメージダウンを引き起こすのみならず、返金や商品の返品・交換および消毒、最悪の場合は発生した店舗の閉店に伴う巨額の損害が発生することから「アルバイトによるテロ行為」として「バイトテロ」と呼ばれる[1]2013年平成25年)の夏に日本国内各地で頻発して社会問題化した際、Twitterを中心に「バイトテロ」と呼ばれるようになったものを秒刊SUNDAYJ-CASTなどのニュースサイトが援用し始め[2]9月8日にはテレビ朝日スーパーJチャンネル』で「若者に急増中! “バイトテロ”の実態とは?」と題する特集が放送された[3]。『スーパーJチャンネル』の特集以降は読売新聞[1]産経新聞などの全国紙でも「バイトテロ」の呼称が使われるようになっている[4]

「バイトテロ」と言う呼称はドイツ語由来の「アルバイト」(Arbeit)の日本語での省略形「バイト」と英語由来の「テロリズム」(terrorism)ないし「テロリスト」(terrorist)の日本語での省略形「テロ」を組み合わせた和製外来語であるが、非正規雇用の従業員が就業中に悪ふざけを行ってその様子をSNSやYouTubeなどの動画投稿サイトにアップロードする行為は日本に特有の社会問題ではない。一例を挙げると、2008年アメリカ合衆国オハイオ州バーガーキングの店員が厨房の流し台で入浴する様子をMyspaceにアップロードして炎上する騒動が起きている[5]

バイトテロの定義[編集]

個人のブログやTwitter、Facebookを始めとするSNSにおける不適切な発言や写真投稿に対して批判が殺到する「炎上」の一類型であるが、問題の投稿に対して批判する側が集団でエスカレートして行く状況について「祭り」の一種と見る向きもある[6]

バイトテロに当たる行為[編集]

「バイトテロ」と呼ばれる行為の多くはアルバイト店員が商品や什器を使用して悪ふざけを行う様子を写真撮影し、SNSに投稿する行為のことである。大半は悪ふざけの実行者であるアルバイト店員と撮影者の2名以上が関与しているが、中には防犯カメラに記録されていた有名人の映像を無断でSNSに公開する等の単独で行いうる行為も含まれる。

特に大きく報道された事例には以下のようなものがある。いずれも2013年。

  • 7月 - 高知県内のローソンで店員がアイスケースに入り込んで寝そべった状態の写真をFacebookに投稿する[7]。騒動を重くみたローソンは問題が発生した店舗のフランチャイズ契約を解除し、当面休業とする措置に踏み切った[8]
  • 7月19日 - 神奈川県内のファミリーマートで店員が防犯カメラに記録されていたプロサッカー選手の来店時の映像をTwitterで公開する[9]。この店員はTwitterのプロフィール欄で本名と在籍中の大学名を公表していた。ファミリーマート本部に抗議や問い合わせが殺到し、7月20日付でお詫びの声明が発表される[10]
  • 8月5日 - 東京都足立区のステーキハウス・ブロンコビリー足立梅島店で店員が冷蔵庫に入ってふざけた様子を別の店員が撮影し、Twitterに投稿する[11]8月12日にブロンコビリーは足立梅島店の閉店を臨時取締役会で決定し、解雇した元アルバイト店員に対する損害賠償請求を検討していると報じられた[12]
  • 8月9日 - 東京都多摩市そば屋・泰尚で店員が業務用の食器洗浄機や冷蔵庫に寝そべった状態で入りながらはしゃぐ様子を撮影した写真をTwitterに投稿する[13]。泰尚は前年9月に創業者が亡くなり、経営規模を縮小して会社再建の中途にあったがこの事件が原因で「不衛生だ」との非難が殺到して営業停止に追い込まれ、再開することなく10月9日東京地裁から破産手続き開始を宣告される[13]。12月には『日経ビジネス』に元社長が綴った会社再建の道をバイトテロによって絶たれた無念の思いを綴る手記が掲載された[14]
  • 8月18日 - 東京都内のピザハットで店員が顔面にピザ生地を張り付けた写真に「ピザって息できないんだな。お休み地球」とコメントを添えてTwitterに投稿する[15][16]。運営会社の日本ケンタッキー・フライド・チキンでは社内調査の結果、悪ふざけに使われたピザは閉店後の廃棄食材であったとしながらも「食品を扱う立場として断じてあってはならない行為」として、お詫びの声明と問題を起こした店員に対する「厳正な処分」を行う方針を発表した[15]

バイトテロに当たらない行為[編集]

2013年8月19日群馬県内のカスミで来客がアイスケースに入り商品の上に寝そべる写真をTwitterに投稿した事件など[17]、実行者が店員でなく一般客の場合はバイトテロには該当しない。バイトテロやこうした一般客の悪ふざけ、未成年者の飲酒・喫煙、児童虐待飲酒運転無銭飲食脱法ハーブ盗撮キセル乗車万引きなどの問題行為をTwitterで自慢する行為を総称した「バカッター」という造語もあり、この「バカッター」は自由国民社が主催するユーキャン新語・流行語大賞および未来検索ブラジル他が開催するネット流行語大賞にノミネートされた[18][19]。このうち、後者の一般投票では4位にランクインしているが[19]、結果の発表後にJ-CASTでは2013年にアクセス数の多かった記事についての回顧特集で

今夏、ツイッターでヘマをやらかし「炎上」した人は計30人以上、最盛期には毎日のように話題になった。中には被害届が出て警察沙汰にまで発展したケースもある(略)あまりにも連日かつ数が多すぎて、フォローが追いつかないほどだった。

と、バイトテロを含む「バカッター」に関する話題が年間アクセス数で上位を占めた結果について論評している[20]

法的な問題点[編集]

刑事においては信用毀損罪・業務妨害罪刑法第233-234条、234条の2)に問われる可能性がある[21]。また、商品や什器を破壊した場合は器物損壊罪(刑法第261条)、不衛生な状態に置かれた食品を販売・提供した場合は食品衛生法違反となる可能性もある。

民事では什器のクリーニングや顧客に対する返金、商品の返品・交換、また営業休止や閉店に追い込まれた場合は取引先への違約金や解雇される従業員全員の給与補償、テナント立退き料などが発生する可能性がある。実際にバイトテロを直接の動機として閉店に追い込まれたブロンコビリーや泰尚の事件では元店員に対する巨額の損害賠償請求が見込まれていたが[21]、泰尚の事件では2015年(平成27年)3月に元アルバイト店員らが連帯して200万円を店側に支払うことで和解が成立した[22]

また、バイトテロの現場を撮影してSNSにアップロードした撮影者も実行者と同様の法的な責任を問われる可能性があるし、或いは、客として不法行為を成したケースも、当然ながらその客自身が法的な責任を問われる可能性がある[21]

啓発と対策[編集]

仕事場に私物の携帯電話やスマートフォン、タブレット端末の使用・持ち込みを禁止にする事や、長期・短期問わず、採用に際して就業時間中に問題を起こした場合には損害賠償を請求するとの事項を記載した誓約書と印鑑証明書の提出や連帯保証人を求めるのも対策の一つである[23]

2013年11月、神奈川県はバイトテロを含む悪ふざけの様子を撮影してSNSで共有する行為の法的リスクに対する啓発用のポスターを作成し、県内の高校や大学、に掲示した[24]

また、NTTアイティはSNSで問題投稿が行われた際に運営者へ自動通知するサービス「評Ban」の監視対象にバイトテロを含めるバージョンアップ(Ver.3.1)を実施している[25]

出典[編集]

  1. ^ a b “SNSを使った「バイトテロ」、どう対応?”. YOMIURI ONLINE (読売新聞東京本社). (2013年10月9日). http://www.yomiuri.co.jp/otona/life/law/20131008-OYT8T00515.htm 2014年1月13日閲覧。 [リンク切れ]
  2. ^ “バイトテロ 記事の見出しに、ネット流行語大賞の予測も”. 夕刊アメーバニュース (サイバーエージェント). (2013年10月6日). http://yukan-news.ameba.jp/20131006-48/ 2014年1月13日閲覧。 
  3. ^ “若者に急増中! “バイトテロ”の実態とは?”. テレ朝NEWS (テレビ朝日). (2013年9月8日). http://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000011992.html 2014年1月13日閲覧。 
  4. ^ ““バイトテロ”で初の破産…多摩のそば店、負債3300万円”. MSN産経ニュース (産業経済新聞社). (2013年10月20日). http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/131020/crm13102009230002-n1.htm 2014年1月13日閲覧。 
  5. ^ “Burger King worker fired for bathing in sink”. NBC News (NBC). (2008年8月13日). http://www.nbcnews.com/id/26167371/ns/us_news-life/t/burger-king-worker-fired-bathing-sink/ 2014年1月13日閲覧。 
  6. ^ “バイトテロ延焼中―ネットを炎上させる“けしからん”な人たち”. ダ・ヴィンチ電子ナビ (メディアファクトリー). (2013年8月30日). http://ddnavi.com/news/160240/ 2014年1月13日閲覧。 
  7. ^ “「コンビニのアイスケースに入ってみた」写真炎上でローソンが謝罪 問題の男性は解雇、当該店もFC契約解約へ”. ねとらぼ (ITmedia). (2013年7月15日). http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1307/15/news010.html 2014年1月13日閲覧。 
  8. ^ 加盟店従業員の不適切な行為についてのお詫びとお知らせ
  9. ^ “「有名選手来た」と防犯カメラ映像を店員がTwitterに ファミリーマートが謝罪”. ねとらぼ (ITmedia). (2013年7月20日). http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1307/20/news012.html 2014年1月13日閲覧。 
  10. ^ ファミリーマート加盟店従業員に関するお詫び
  11. ^ “バイトが冷蔵庫入って写真撮影→炎上 今度はステーキのブロンコビリーが謝罪”. ねとらぼ (ITmedia). (2013年7月15日). http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1308/06/news044.html 2014年1月13日閲覧。 
  12. ^ “ブロンコビリーがバイト撮影問題を起こした足立梅島店を閉店 バイト店員に損害賠償請求も”. MSN産経ニュース (産業経済新聞社). (2013年8月12日). http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130812/biz13081215490002-n1.htm 2014年1月13日閲覧。 
  13. ^ a b “店員が食洗機に入った画像をTwitter投稿のそば屋、倒産 不謹慎画像、書類送検も相次ぐ”. ねとらぼ (ITmedia). (2013年10月21日). http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1310/21/news127.html 2014年1月13日閲覧。 
  14. ^ “「バイトテロ、一生許せない」 あのそば店社長からの手紙”. 日経ビジネス (日経BP社). (2013年12月16日). http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20131213/257028/ 2014年1月13日閲覧。 
  15. ^ a b “宅配ピザ店員が“顔面ピザ”写真 「ピザハット」が謝罪”. ねとらぼ (ITmedia). (2013年8月19日). http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1308/19/news050.html 2014年1月13日閲覧。 
  16. ^ “今度は「ピザハット」でばかアルバイト! 顔にピザ生地張り付けてツイッター”. J-CAST. (2013年8月20日). http://www.j-cast.com/tv/2013/08/20181769.html 2014年1月13日閲覧。 
  17. ^ “アイス冷蔵ケースに客が寝転んで写真──スーパー「カスミ」が商品撤去”. J-CAST. (2013年8月20日). http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1308/20/news124.html 2014年1月13日閲覧。 
  18. ^ “流行語大賞候補に「パズドラ」「バカッター」「激おこぷんぷん丸」”. ITmedia. (2013年11月20日). http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1311/20/news112.html 2014年1月14日閲覧。 
  19. ^ a b “「ネット流行語大賞 2013」発表! 「バカッター」「ブラック企業」などランクイン”. RBB TODAY (イード). (2013年12月16日). http://www.rbbtoday.com/article/2013/12/06/114687.html 2014年1月13日閲覧。 
  20. ^ “【J-CASTが見た2013年】第8回 若者はなぜ冷蔵庫に入りたがったのか 「バカッター」「バイトテロ」で大騒ぎ”. J-CAST. (2013年12月30日). http://www.rbbtoday.com/article/2013/12/06/114687.html 2014年1月13日閲覧。 
  21. ^ a b c “【バイトテロ】犯人、店、親、ネット民…犯罪自慢で「法的責任」どこまで!? 弁護士に聞いた”. ウレぴあ総研 (ぴあ). (2013年12月30日). http://ure.pia.co.jp/articles/-/16861 2014年1月13日閲覧。 
  22. ^ “「バイトテロ」で倒産したそば店の“ヤラレ損”過ぎる結末(2)和解金は負債の10分の1にも満たず…”. アサ芸プラス (徳間書店). (2015年5月28日). http://www.asagei.com/excerpt/36818 2015年7月4日閲覧。 
  23. ^ >“バイトテロ、ネット炎上を未然に防ぐ―― 今、求められるネットリテラシー教育とは”. an Report (インテリジェンス). http://weban.jp/contents/an_report/repo_cont/pro/20150511.html 2015年7月4日閲覧。 
  24. ^ 「[地方]悪ふざけ投稿やめよう 神奈川県が緊急アピールでポスター作成(2013.11.4 20:24) - MSN産経ニュース - ウェイバックマシン(2013年11月7日アーカイブ分)
  25. ^ “バイトテロやネットいじめを早期発見、NTT-ITの「評Ban」が機能拡充”. INTERNET WATCH (Impress Watch). (2013年10月25日). http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20131025_620862.html 2014年1月13日閲覧。 

関連項目[編集]