ネグレクト

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ネグレクト: neglect)とは、児童虐待障害者虐待高齢者虐待のひとつ。子供に対するネグレクトは育児放棄(いくじほうき)、育児怠慢(いくじたいまん)とも言う。また、ペット飼育放棄(しいくほうき)に対しても指すことがある[1]。neglectの原義である「怠慢・粗略」「無視・軽視」[2]から生まれている。

概要[編集]

心理的虐待および身体的虐待の一種でもあり、自らの実子への無視、特に自立性や自救能力が低く、幼児や低年齢児童の養育を著しく怠ることを指す場合が多い。具体的には食事や衣服の供与、排泄物や廃棄物の始末を適切に行わない、長時間の保護放棄などがあり、しばしば虐待を伴う。その結果、子供は健全な心身の発育を妨げられ、最悪の場合は死に至ることもある。また生存し、その後成人しても殺人などの凶悪犯罪に走るケースも少なくない。

積極的に実子を殺す間引きなどの子殺しとは区別される。チンパンジーニホンザルゾウトラネズミペンギンペリカンフクロウなど他の哺乳類鳥類にも広く認められている。環境悪化などによるハチ・アリ類の育児放棄や甲殻類の抱卵の途中放棄、植物の落果現象なども含めるとするならば、生物界全体に広く認められる現象である。

積極的ネグレクトと消極的ネグレクト[編集]

現代社会においてネグレクト(育児放棄)と言われる現象は積極的ネグレクト消極的ネグレクトの2つに分けられる。「積極的ネグレクト」は、子育てのできない明確な理由(「親に養育の知識がない」「経済力の不足」など)がないのに育児を放棄することを指す。対して、「消極的ネグレクト」は、「親の経済力の不足」「精神的疾患を抱えている」「知的障害がある」「(知的障害はないが)無学である」などの理由で育児ができないことを指す。

事例[編集]

例えば、過去の事例では以下のようなケースが典型的である。

  • 幼稚園保育園保育所に預けない。
  • 子供の希望にもかかわらず、学校に通わせない。
  • 病気になっても病院に受診させない。
  • 暑い日差しの中、駐車場の車内への放置。または、パチンコなどの有害な娯楽に興じ、育児を放棄する。日本でも3~4月の天候下で熱中症による死亡事例も発生している。子供を保育所などに預けさえすれば、パチンコ店に入店してよいことになるため、この場合もネグレクトを引き起こす要因になり得る。親がパチンコに興じ、目を離した隙に子供が誘拐および殺害された事件も発生している。
  • 防寒に充分な着衣を着けさせず、寒冷な外気に晒す。冬季に濡れた下着だけでアパートのベランダに放置された児童が低体温症で死亡した事例がある。
  • 充分な食事を与えない。
  • 下着など不潔なまま放置する。

また日本では義務教育制度があるが、学齢期に達した児童を就学の猶予または免除[注 1]教育委員会に認められていないのに学校にも通わせず、自宅軟禁の形で放置することも、広義では育児放棄とされる。その際に、該当する児童が保護者以外(親族や近隣の住人など)に頼れる相手が社会にいない場合、他に行く当てがなく、その状況から逃げ出すこともできないので、実質的な監禁状態であるともみなされる。

平成20年度厚生労働省調査では児童相談所が対応した児童虐待の件数は全体で42664件で、うちネグレクトは15905件で身体的虐待についで二番目に多い[3]

治安と放置[編集]

欧米や途上国では特に誘拐などの犯罪も起きやすい事情もあって、児童を遅くまで戸外で遊ばせていたり、子供を車に残したままコンビニなどで買物をしても問題視され、場合によっては警察官に注意を受けたり逮捕される可能性がある。実際アメリカ合衆国では、州法で定められた年齢以下の子供を保護者の監督のない状態(留守番や日本の「カギっ子」状態)に置くこと自体が違法とされており、実際に子供が被害に遭った場合は児童虐待として逮捕されるケースもある[4]

従来の日本では治安が行き届いていると見られていたために、かつては児童が一人で公園などで遊んでいてもあまり問題視されなかったが、1980年代後半頃から現在に至るまで、児童を付け狙う変質者の起こす事件の存在がマスメディアユビキタス社会の発展などにより体感的に顕在化した事情もあって、近年では保護者が子供を遅くまで戸外で遊ばせて顧みない行為を問題視する風潮もある。

ただし、両親が共働きであるにもかかわらず保育園や託児所の不足、その自治体の財政的事情による小学校の学童保育施設の不備など、諸々の理由でいわゆる「待機児童」が遅い時間まで一人ですごさざるを得ないという実態、およびそれを問題視するかしないかの意識については、地域格差ならび貧富の差がある。

法的規制[編集]

日本では刑法第217条の遺棄・第218条の保護責任者遺棄等・第219条の遺棄等致死傷の上で扱われ、放置された側がそれで負傷ないし死亡した場合に、その放置を行った側が処罰される対象となる。

参考文献[編集]

関連項目[編集]

人物
  • 永山則夫 - 連続殺人事件の犯人。子供時代はネグレクトの被害者で、事件を起こした時点でほとんど読み書きができなかったが、後に独学で学問を身につけて作家となり、新日本文学賞を受賞。その後死刑となった。
事件

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 学齢児童・生徒が、病弱発育不完全その他やむを得ない事由のために就学困難と認められた場合、保護者の申請により教育委員会の決定で、就学義務を猶予または免除することができる。

出典[編集]

外部リンク[編集]