あおり運転

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あおり運転(あおりうんてん)は、道路を走行する自動車自動二輪自転車に対し、周囲の運転者が何らかの原因や目的で運転中に煽ることによって、道路における交通の危険を生じさせる行為のことである。2016年の「あおり運転」など車間距離違反摘発件数は7625件。警察庁は「不安を覚えさせる行為は危険であり、厳しく対応する」としている。[1]

あおり運転にあたる行為[編集]

前方を走行する車に対して、進路を譲るよう強要する行為のほか、車間距離を狭め、異常接近したり、追い回し・無理な割り込み後の急ブレーキ・ハイビームパッシングクラクション幅寄せ・罵声を浴びせる、などによって相手を威嚇する、嫌がらせや仕返しをする行為などが挙げられる。

日本における法的問題[編集]

あおり運転は危険運転の一つに分類され、相手を事故・死傷などに追いやった場合は危険運転致死傷罪が適用され最長で20年以下の懲役(加重により最長30年以下)に処され、運転免許は基礎点数45 - 62点により免許取消・欠格期間5~8年の行政処分を受ける可能性がある。また、故意に幅寄せした場合は暴行罪として立件される可能性がある[2]

安全な車間距離を取らずに前車に接近する行為[3]は、道路交通法26条が禁止する車間距離不保持に該当する。高速道路での車間距離不保持については、3か月以下の懲役または5万円以下の罰金が科され(同法119条1項1号の4)、一般道での車間距離不保持については、5万円以下の罰金が科される(同法120条1項2号)。また、前者については、1万円、1万5千円または2万円の反則金が、後者については、6千円、8千円または1万円の反則金が課され(同法別表第2)、前者については、2点の基礎点数が、後者については、1点の基礎点数が加算される(同法施行令別表第2)。

一方、あおり運転を起因とする事故については、あおられた前車の方も異常な高速度で走行・車間の不保持・方向指示器を点滅させずの無理な割り込み等で、事故を惹起している状況がままある。2013年札幌高等裁判所においては「後続車にあおり運転をされたからと言って、異常な高速度で進行を継続した前車の速度超過の罪が緊急避難に該当する訳ではない」旨判示している(後述の事例)。

日本における対策[編集]

取締りの強化[編集]

後述する東名高速における夫婦死亡事故により警察では、あおり運転は重大事故につながるとして、「あらゆる法令を駆使」し、「厳正な捜査を徹底」し、「積極的な交通指導取締り」を行なっている[4]。また、あおり運転を行った場合、点数制度の基準による処分に至らない場合であっても、危険性帯有により運転免許を停止するといった行政処分も実施している[4]

運転者による対策[編集]

自動車にドライブレコーダーを搭載するのが有効な対策の一つである。煽られた際の記録が残り、警察や裁判所に提出して、捜査や被害者による告訴の際、有力な証拠となる。後方からの煽りに備え、前方用と後方用の両方のドライブレコーダーを搭載すると良い。

あおり運転にあった際、同乗者がいる場合、スマートフォンやデジタルカメラ等で直ちに録画してもらう事も重要である。これは、ドライブレコーダーの死角を撮影したり、追い抜かれる際、相手の車や運転者、同乗者をよりはっきりと撮影する事ができ、相手が下車して迫ってきた場合の記録にもなるからである。

国土交通省は、新車へのドライブレコーダーの搭載の義務化を検討している。

運転者自身の心がけ[編集]

警察庁は、あおり運転による交通事故を防ぐため、運転者に対して以下の点について心がけるよう呼びかけている[4]

  • 運転中は周囲の車の動きに注意する
  • 運転時に安全な速度を心がける
  • 車間距離を十分に保つ
  • 無理な進路変更や追越しをしない

あおり運転に遭った場合[編集]

警察庁は、走行中に危険な運転者に追われた場合、一旦サービスエリアパーキングエリアといった安全な場所に避難し、ためらわずに110番通報するよう呼びかけている[4]

あおり運転による事故、懲役等判決等[編集]

  • 2013年5月29日 - 北海道後志管内喜茂別町の国道で、後続車にあおり運転をされたため94km/h(最高速度60km/h)で運転した前車の運転者に対し、札幌高裁は刑法の緊急避難が成立するとした札幌地裁判決を破棄し改めて罰金刑(減刑なし)を言い渡した。この判決で裁判官(通例、3名による合議制)は「路側帯などに入ってやり過ごすことができた」の旨判示し、大幅な速度超過に対し緊急避難は成立しないとした。[5]
  • 2017年6月5日 - 神奈川県足柄上郡大井町東名高速道路下り線において、追い越し車線に停車していたワゴン車に大型トラックが突っ込み、ワゴン車に乗っていた夫婦が死亡し、2人の娘を含む合わせて4名が負傷する事故が発生。直前に中井パーキングエリアでトラブルになった男にあおり運転による進路妨害を受けて停止していたことが事故につながったとして、同年10月10日、この男は自動車運転処罰法違反(過失運転致死傷)などの疑いで逮捕された[6]
  • 2018年1月 - 神奈川県横浜市保土ヶ谷区横浜横須賀道路国道16号有料自動車専用道路)下り線で、韓国籍の52歳の男が1.7kmにわたってごみ収集車をあおり、ごみ収集車は横転し、ごみ収集車を運転していた35歳の男性が首などを負傷した。男は危険運転致傷容疑で逮捕されたが、容疑を否認している[7]
  • 2018年7月2日 - 大阪府堺市南区において、車がバイクを当て逃げし、バイクの男性を死亡させる事故が発生。車を運転していた男は自動車運転処罰法違反容疑で現行犯逮捕されたが、同月4日に殺人容疑及び道路交通法(ひき逃げ)違反被疑で再逮捕された。あおり運転で殺人容疑が適用されるのは異例[8]

脚注[編集]

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  1. ^ 「あおり運転」など車間距離違反、16年の摘発7625件”. 2018年3月21日閲覧。
  2. ^ あおり運転:「暴行容疑で立件検討」警察庁が全国に指示 毎日新聞 2017年12月26日 東京朝刊
  3. ^ 法的には前車が急停止しても安全に停止できる程度の距離を常に維持する必要があり、これに違反すると車間距離保持義務違反が成立する。そのため、一般に同一進路上の前方の車両に対して追突事故を起こした場合は車間距離保持義務違反が推定により成立する。
  4. ^ a b c d “危険!あおり運転等はやめましょう”. 警察庁. https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/aori.html 2018年3月7日閲覧。 
  5. ^ 新判例解説(第403回)後続車からのあおり行為による事故を避けるため緊急避難として速度超過を行った旨の被告人の主張を排斥し,「やむを得ずにした行為」に該当しないとして緊急避難の成立を否定した事例[札幌高裁平成26.12.2判決]”. 2018年3月21日閲覧。
  6. ^ 衝撃事件の核心:激高、あおり…ハンドル握ると攻撃的になる“人格変貌”男の犯行か 東名高速夫婦死亡事故 産経ニュース、2017年10月23日、2018年2月22日閲覧
  7. ^ “あおり運転で「横転」...男逮捕”. 『FNNニュース』 (Fuji News Network). (2018年2月28日). https://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00386019.html 2018年3月6日閲覧。 
  8. ^ バイクあおり追突、異例の殺人容疑適用…男逮捕 読売新聞、2018年7月4日、2018年7月4日閲覧

関連項目[編集]