東名高速夫婦死亡事故

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東名高速夫婦死亡事故
場所

日本の旗 日本神奈川県足柄上郡大井町赤田[1]

座標
標的 乗用車の運転手
日付 2017年平成29年)6月5日21時35分ごろ[1] (UTC+9日本標準時))
概要 東名高速道路の追越し車線で被告人の車が被害者の車を強引に停車させて被害者に暴行を加えた[2]。その直後、後ろから来たトラックが被害者の車両に追突する事故を起こし、被害者一家4人のうち2人が死亡、ほか2人も負傷した[2]。被告人は同事件に前後して同様のあおり運転による強要未遂事件を2件起こした[2]
攻撃手段 高速道路上で相手の車を停止させる
攻撃側人数 1人(同乗の女性1人を除く)
死亡者 2人[2]
負傷者 3人(加害者を除く)
犯人 男(当時25歳・無職)
動機 パーキングエリアで駐車方法を注意された事を原因とする衝動的な暴力行為
対処 逮捕起訴
謝罪 被告人は第一審・第3回公判で行われた被告人質問で被害者・遺族に謝罪した一方[3]、検察官からの質問には曖昧な返答を繰り返した[4]
賠償 不明
刑事訴訟 自動車運転死傷行為処罰法違反(危険運転致死傷)
求刑:懲役23年(横浜地検)
判決:横浜地裁で審理中(東京高等裁判所より差戻)
管轄 神奈川県警察横浜地方検察庁
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東名高速夫婦死亡事故(とうめいこうそく ふうふしぼうじこ)とは、2017年平成29年)6月5日神奈川県足柄上郡大井町東名高速道路下り線で発生した交通事故である[5]。、追い越し車線に乗用車が2台続いて停車していた所に後部からトラックが追突して男女2人が死亡し、後述の加害者含め4人が重軽傷を負った[5]

加害者のあおり運転により死傷事故が誘発されたことから、刑事裁判では危険運転致死傷罪の適用可否が争われている[6]。「東名高速道路あおり運転事故[7]東名あおり運転事故[8]東名あおり事故」とも呼ばれる[9]。この事故が、あおり運転が社会問題となるきっかけとなった。

概要[編集]

犯人は1991年(平成3年)生まれで[10]、事故時点および[5]逮捕当時は25歳・福岡県中間市在住だった[11]。事故当時は、交際中の女性と同乗していた[12]

事故前、犯人は事故現場から約1.4キロメートル(km)手前に位置する東名高速道路の[2]中井パーキングエリア(PA)で[13][9]自身の自家用車を所定の駐車場所以外に駐停車していたところ、被害者男性(事故当時45歳)から注意されて逆上した[2]

21時33分ごろ、犯人は東名高速下り線(54.1 - 54.8キロポスト)上で[2]被害者男性の妻(事故当時39歳)が運転していたワンボックスカー[13]、通行を妨害する目的で被害者のワゴン車の前に割り込んで急減速したり、自車との衝突を回避すべく車線変更したワゴン車の進路を妨害するためその直前に車線変更するなど[2]、約700メートルにわたって妨害行為を計4回繰り返した[13]

21時34分ごろ、加害者の車が前方を塞ぐ形で、被害者のワゴン車を本線車道追越車線(下り線54.8キロポスト上・片側3車線道路の第3車両通行帯)に停車させた[2]。加害者が降車してワゴン車に詰め寄ると、被害者男性につかみかかり「高速道路に投げ入れるぞ」「殺されたいか」と怒鳴りつけ、男性の胸ぐらをつかむなど暴行を加えた[13]。加害者は自身の車に同乗していた交際中の女性から「子供がいるからやめて」と諫められたことで暴行をやめ、ワゴン車を離れて自車に戻ろうとした。しかしその途中[13](21時36分ごろ)に後続の大型トレーラーが被害者のワゴン車に追突し、続いてワゴン車が加害者の車に玉突きで衝突する大事故となった[2]。この事故により被害者夫婦が死亡したほか、被害者夫婦の娘2人(当時15歳の長女・11歳の次女)[2]を負傷させ、自身も重傷を負い入院した[13]

逮捕後、加害者が日常的に路上での危険運転や暴力行為を行っていたことが明らかとなった。加害者の危険運転については、交際中の女性からも証言が行われている[14]

加害者の余罪[編集]

加害者はこの事件に前後して山口県内で以下のような事件を起こしている[2]

  1. 2017年5月8日20時15分 - 20分ごろに山口県下関市内の道路上で自車を追い越した乗用車に立腹して「車を停めさせ運転手を降車させて文句を言おう」と考え、執拗にパッシング・クラクション・進路妨害停車を繰り返した上、自車が停車した直後に相手車両が停車すると降車してその運転席側に近づき、20時25分ごろまでの間に運転席窓ガラス・フロントガラスを手で叩きながら運転手に「喧嘩を売っているのか。出てこい」などと怒鳴りつけて降車を要求したが、運転手が山口県警察110番通報したため、未遂に終わった(強要未遂罪)[2]
  2. 2017年5月9日1時ごろ[2]、山口県下関市内の国道上で他人所有の自動車の運転席ドアを3回足蹴りし、へこませるなどして損壊した(損害見積額合計236,300円・器物損壊罪)[2]
  3. (死亡事故後の)2017年8月21日12時30分ごろ[2]、山口市内の国道2号レンタカーで運転中[16]、自車を追い抜いた乗用車に立腹して「車を停めさせ運転手を降車させて文句を言おう」と考え、同日12時40分ごろまで道路上で車線変更・減速・幅寄せなどで進路妨害を繰り返し、相手車の助手席側ドアを手で叩くなどした[2]。同日12時40分ごろに同車が停車すると、その前方に自車を停車させ、降車して相手車両の助手席側付近に近づき、12時47分ごろまでの間に助手席側ドアノブを引っ張ったり、助手席側および運転席側窓ガラスを手で叩くなどして「降りてこい」「出てこい」と怒鳴りつけるなどして降車を要求したが、相手運転手が警察に通報したため未遂に終わった(強要未遂罪)[2]
    • この事件は死亡事故を受けて神奈川県警に任意提出していた自分の車を受け取る手続きを神奈川県内で済ませ、レンタカーで自宅に帰る途中に起こしていたほか[16]、加害者は通報を受けて駆けつけた警察官が対応していた際も「殺すぞ」と何度も声を上げ「俺は人を殴るために生きている」などと叫んだ[18]。また同事件被害者の車は死亡事故の被害者一家と同じ車種だった[19]

捜査[編集]

この事故を受けて神奈川県警察は死亡した夫婦の娘2人から事情聴取しつつ、事故当時に現場近くを走行していた車両約260台を割り出して「断片的な目撃情報・回収したドライブレコーダーの映像」などを基に自動車運転処罰法違反容疑で捜査を行い[20]、その結果「加害者の男が死亡した夫婦の車を強引に高速道路の追い越し車線上に停車させて事故を誘発した」と断定した[21]。加害者の男は逮捕前に行われた任意の事情聴取で「被害者男性から『邪魔だ』と言われカッとなって追い掛けた」と発言していた一方で[20]「夫婦にあおられたり、パッシングされたりしたため停車した」と虚偽の説明をしていたが、被害者遺族の娘2人の「(死亡した父親が加害者に)注意をしたら追いかけられ、何回も進路をふさがれて停車させられた」という証言と矛盾したことから前述の目撃情報・ドライブレコーダーの記録などを精査し[11]、被害者側の車にあおり運転・パッシングなどをした事実は認められなかったため[15]「加害者が虚偽の説明をしている」と断定した[11]

神奈川県警は逮捕前の捜査当初は同法(危険運転致死傷容疑)を視野に入れていたが「事故時に同容疑者の車が停車していた」ことから「運転する行為」が対象の同罪は「適用が困難」とされたために適用を断念し[22]、同法(自動車運転過失致死傷容疑)で調べを進めた[21]。その後、県警は2017年10月10日に被害者一家の車を停車させた加害者を自動車運転過失致死容疑で逮捕[23]・2017年10月12日付で横浜地方検察庁送検した[24]。なお加害者は日ごろからロード・レージ(運転中の暴力行為)を繰り返しており、事件から2か月後にもロード・レージを起こしていたことが報道された[25][26][1]

なお追突したトラック運転手の男性は2017年10月12日付で神奈川県警から横浜地検に自動車運転過失致死傷容疑で書類送検されたが[24]、横浜地検は2017年12月28日付で同トラック運転手を不起訴処分とした[27]。トラック運転手は横浜地検の調書に対し「車間距離を十分にとっていなかった。100メートルあればぶつかることはなかったと思う」、「(現場では大型トラックは一番左の車線を走行することが義務付けられていたが)走り慣れた道だったために慢心していた。事故のことは忘れられないし2人を死なせたことを強く後悔している。両親を失った遺族の娘2人には大変申し訳ない」と述べた[28]

横浜地検は逮捕・送検後の捜査で神奈川県警と連携して加害者の運転内容を精査した結果、加害者が被害者の車に対し執拗な割り込みを繰り返したり、被害者の車を停車させる前に極端な幅寄せ行為などしている点などを考慮し[29]、神奈川県警が適用を断念した危険運転致死傷罪を適用することを決めた[30]。その上で2017年10月31日、被告人の男を危険運転致死傷罪などで横浜地方裁判所起訴した[31][29][17]。危険運転致死傷罪の適用により本事件は裁判員制度の対象事件となった[32]

また神奈川県警は2017年11月29日付で、被告人が本件死亡事故前後に山口県内で起こした前述の強要未遂事件2件に関して被告人を横浜地検へ追送検したほか[16]、横浜地検は2017年12月7日付で下関市内における器物損壊事件(5月9日)について被告人を横浜地裁へ追起訴した[33]。強要未遂事件2件について被告人は神奈川県警の取り調べに対し「相手が勝手に止まった」などと供述して容疑を否認したが[16]、横浜地検は2件とも2018年1月31日付で横浜地裁へ追起訴した[34]

なお被告人は本事故から3か月後の2017年9月にも福岡県福津市内の市道で車を運転中に別の車とトラブルになり、相手の車に乗っていた男性に暴行を加える事件を起こしたとして暴行容疑で福岡県警察から福岡地方検察庁へ書類送検されていた[35]。この事件は福岡地検から横浜地検へ移送されたが、横浜地検は同事件について2018年1月31日付で不起訴処分とした[34]

反響など[編集]

起訴後に横浜拘置支所へ勾留された加害者は2018年10月、接見を試みた『産経新聞』(産業経済新聞社)記者宛てに以下のような金銭を要求する内容の返信をしている[36]

俺と面会したいなら30万からやないと受つけとらんけん
それが無理なら諦めたがいいよ
人の事ネタにするのにタダで面会してもらうとか考え甘いばい
(原文ママ)

また加害者はその4か月前(2018年6月)に『神奈川新聞』(神奈川新聞社)の取材依頼に対しても「記者のことは信用していないからタダで事件のことは教えない」と返信したほか、接見取材に訪れたテレビ局の記者を「ぶっ殺すぞ」と恫喝したことも報道されている[37]

風評被害事件[編集]

2017年10月の加害者の逮捕直後、加害者が福岡県の建設作業員であったことから、加害者と同姓で、福岡県内で建設会社を経営する男性が「父親」、同社が加害者の「勤務先」であるなどといった、事実無根のデマSNSで広まった。このデマにより、同社には抗議や嫌がらせ電話が殺到し、2日間の休業を余儀なくされるなどの風評被害を受けた。

福岡県警察は、この偽情報をインターネットに流布した容疑で、9道県の11人を摘発(名誉毀損容疑、18年8月に全員不起訴となるが、小倉検察審査会の「起訴相当」決議を受け、内6名を福岡地方検察庁が2020年4月に起訴し[38]、内略式起訴の5名に対し、折尾簡易裁判所は2020年5月に罰金30万円の略式命令[39]。2度目の不起訴となった者のうち1人に小倉検察審査会が再び「起訴相当」議決を行い、2020年10月に強制起訴[40])。同社と社長は、示談が成立した3人を除く8人を相手取り、業務上の損害と精神的苦痛に対して、損害賠償を求める民事訴訟を福岡地方裁判所直方支部に起こした[41]

刑事裁判[編集]

争点[編集]

裁判の争点は主に、0km/h(車を走行させていない状態)が原因で死亡事故を引き起こした事に対して、危険運転致死傷罪が適用できるかが争われた。自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第2条第4号には、条文の最後に「交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為」と記されている。すなわち文理上、加害者(以下被告人)の車は、0km/hで停止しておりかつ、被告人以外の車の追突によって被害者が死亡したため、被告人に危険運転致死傷罪を問うことが困難と考えられていた[42][43]。結論としては、停車中の事故に対して危険運転致死傷罪は認められない結果となった一方、停車中を除き、進路妨害から停車までの走行中の行為に対して危険運転致死傷罪が適用された。
横浜地裁 主張/求刑

/量刑

危険運転致死傷罪 監禁致死傷罪
弁護側 無罪 事故は停車後に起きており、罪の構成要件に当たらない 現場に留まっていた時間が短く、監禁の意図があったか疑問
検察側 懲役23年 進路を妨害し、無理やり停車させる一連の危険な運転が事故につながった 高速道路上で移動困難な状態に陥らせ、監禁状態に置いたことが事故につながった
裁判所の判断 懲役18年 高速道路上において4回にわたって進路妨害を繰り返し被害者車両を停車させた一連の行為により、追突事故を誘発した事は危険運転致死傷罪に当たる 判断せず(刑に影響なし)

裁判経過[編集]

第一審・横浜地裁(裁判員裁判)[編集]

  • 2018年
    • 9月7日 - 横浜地方検察庁が危険運転致死傷罪が認められなかった場合に備え、予備的訴因として監禁致死傷罪を追加[44]。これは横浜地方裁判所が、事前の公判前整理手続(裁判員は関与しない)にて横浜地検・弁護人の双方に「危険運転致死傷罪は認められない」とする見解を表明していたためで、弁護人は危険運転致死傷罪のみならず監禁致死傷罪に関する主張・反論も行う必要が生じ、危険運転致死傷罪否定の主張に割ける時間・労力を削がれる結果になった[45]
    • 12月3日 - 横浜地裁(深沢茂之裁判長)で裁判員裁判初公判が開かれた[46]
      • 被告人は罪状認否にて起訴事実を大筋で認めた一方[47]、細部に関して起訴内容の誤りを主張した[48]。また弁護人は「停車後に事故が発生した本件には危険運転致死傷罪は適用できない。(検察側が予備訴因として追加した監禁致死傷罪も)停車時間が短く監禁に当たらない上、監禁の故意もない」として死亡事故に関して無罪を主張した[49]
        • 弁護人の無罪主張に対し、死亡した被害者男性の母親は「信じられない」と憤慨した[4]
    • 12月4日 - 第2回公判にて被害者夫婦の遺族(長女)の証人尋問が行われた[50]。同日の公判を傍聴していた亀岡市登校中児童ら交通事故死事件の被害者遺族は『産経新聞』の取材に「被告人は申し訳ないと思うのなら遺族に反省・謝罪の態度を示すべきだ」と答えた[50]
    • 12月5日 - 第3回公判にて被告人質問が行われ、被告人は高速道路上で被害者の車を強制的に停車させた事実を認めた上で謝罪の言葉を述べた[3]
    • 12月6日 - 第4回公判にて「被告人が本事件前後に山口県内であおり運転関連で起こした起訴事件3件」を審理した[51]
      • 被告人側はこのうち「2017年に下関市内で起こした器物損壊事件」の起訴事実は認めた一方で「死亡事故後の2017年8月に山口市内で起こした強要未遂事件」に関しては「相手の運転手に文句は言ったが降車させる意思はなかった。東名で死亡事故を起こしたため我慢をしていたがクラクションを鳴らされたりしたため我慢の限界に達した」などと主張して争う姿勢を示した[51]
      • また同日の公判で証人出廷した「2017年8月に山口市内で起こした強要未遂事件」の被害者は死亡した夫婦と同型のワゴン車に乗っていたため、公判にて「被告人は同型車にあおり運転をした末に死亡事故を起こしたのに再びあおり運転をした。人を死なせておいて罪悪感を感じなかったのか」という旨の発言をした[19][18]
    • 12月7日 - 第5回公判(証人尋問)にて被告人の元交際相手だった女性が証人出廷し「被告人は逮捕されるまでに交通トラブルを10回以上起こしていた」などと証言した[52]。その上で女性は同じく出廷した被告人の父親とともに被告人に対し「罪を反省して償ってほしい」と述べた[4]
    • 12月10日 - 横浜地裁(深沢茂之裁判長)で論告求刑公判が開かれて結審し、検察側(横浜地検)は「危険運転致死傷罪が成立する」と主張して被告人に懲役23年を求刑した[53][54]
      • 被告人の弁護人は最終弁論で「不運な事情が重なった。刑事責任は器物損壊罪などに留まる」と危険運転致死傷罪について無罪を主張した上で執行猶予付きの判決を求めた[55]。最終意見陳述で被告人は「二度と運転せず一生かけて償っていく」と改めて謝罪した[55]
      • 同日の公判では被害者参加制度を利用して死亡した被害者男性の母親が「(被告人には)自分の何倍もの苦しみを味わってほしい」と意見陳述したほか[4]、男性の義父(妻の父親)・および長女の調書を代読した検察官も口々に厳罰を求めた[8]
    • 12月14日 - 横浜地裁(深沢茂之裁判長)は「被害者の車両を停車させた行為に関しては危険運転致死傷罪が成立する」と認定し被告人に懲役18年(求刑・懲役23年)の判決を言い渡した[42][56]
      • 判決内容 - 懲役18年・未決勾留日数中260日をその刑に算入[2]
      • 横浜地裁は判決理由において「『4回にわたって進路妨害を繰り返し被害者車両を停車させた一連の行為』が『被害者の死亡と因果関係がある』ため危険運転致死傷罪が成立する」と判断した旨を説明した一方、「被告人が被害車両を停止させた後の状態(被告人の車両が0km/hで停車している状態)自体については、危険運転致死罪で規定されている『交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為』に該当しないため、危険運転致死傷には当たらない」という趣旨の判断をした[42]
      • その上で量刑理由では「身勝手かつ自己中心的な動機で、常軌を逸した犯行だ」と指弾した[57]
    • 12月21日 - 被告人側の弁護人が第一審・懲役18年判決を不服として東京高等裁判所に控訴した[58][59]
    • 12月28日 - 控訴期限となるこの日までに横浜地検が東京高裁に控訴しなかったため、控訴審で被告人に第一審・懲役18年より重い量刑の判決が言い渡される可能性が消滅した[60]

控訴審・東京高裁[編集]

  • 2019年
    • 11月6日 - 東京高等裁判所朝山芳史裁判長)[注 1]で控訴審初公判が開かれ即日結審した[62]。弁護人は危険運転致死傷罪の成立を否定した一方[62]、検察側(東京高等検察庁)は控訴棄却を求めた[63]
    • 弁護人・高野隆は以下のように主張し、「危険運転致死傷罪は無罪」と訴えた[64]
      • 「(被害者の車の前に)割り込んで停車させた行為が危険で悪質で重い刑事罰が必要なら、国会で論議して国民に周知しなければいけない」[64]
      • 「第一審判決は法を拡大解釈している。事故と因果関係があったのは停車行為だけで、追突したトラックの運転手の過失も重く考慮すべきだ」[63]
      • 「あおり運転と事故に因果関係はなく、危険運転致死傷罪は成立しない」[65]
    • 一方で検察官は「被告人が危険性を認識した上で妨害運転を行ったため、被害者の車は交通量の多い危険な場所に停止を余儀なくされた」と主張した[62]
  • 12月6日 - 控訴審判決公判が開かれ、東京高裁(朝山芳史裁判長)は第一審・懲役18年判決を破棄して審理を横浜地裁に差し戻す判決を言い渡した[66]
    • 高裁は「被告人の停車行為そのものは危険運転致死傷罪に該当しないが、被害者の車が路上に停車せざるを得なくなったのは被告人のあおり運転が原因だ。被告人が被害者の車を停車させて被害者に暴行を加え、停車が継続されたことで事故発生の危険性が高まり、実際に事故が誘発された。後続トラック運転手の過失も高度ではない」として「被告人のあおり運転は事故と因果関係があり、危険運転致死傷罪に該当する」とした地裁の判断を是認した[66]
    • しかしその一方で、横浜地裁の裁判官が公判前整理手続で検察官・弁護人に対し「危険運転致死傷罪は成立しない」とする暫定的な見解を示していたにも拘らず、公判でその見解を翻して同罪の成立を認めた点に関して「弁護人は横浜地裁側の事前見解を前提に弁護活動に臨んだため、十分な主張・反論の機会を与えられないまま不意討ちで危険運転致死傷罪を認定される結果となった」[45]「同罪の成否は裁判員も含め合議で判断すべきで、裁判所が事前に見解を表明することは裁判員法に違反する越権行為だ」と判断して「改めて裁判員裁判をやり直すべきだ」と結論付けた[66]
  • 12月20日 - 控訴審判決に対する上告期限だった同日までに東京高検・弁護人とも最高裁判所上告しなかったため、翌21日付で横浜地裁へ審理を差し戻す判決が確定した[67]。今後は横浜地裁が新たに裁判員を選任し直し[45]、「危険運転致死傷罪の成立があり得る」ことを前提に検察側・弁護人側双方に主張・立証の機会を設け、改めて審理することとなる[68]

社会的影響[編集]

  • 官房長官菅義偉は2018年12月14日の記者会見で、「(あおり運転は)悪質で危険、大きな問題」「警察による厳正な取締、処分や交通安全教育などの対策に取り組む」と言う趣旨の交通事故に対する異例の談話を発表した[69]国家公安委員長山本順三は記者会見で「あおり運転などに対しては、道路交通法や刑法などでの立件、行政処分を行っており、引き続き推進していく」という趣旨の談話を発表した[42]
  • 『産経新聞』は2018年12月15日にインターネット版コラムで「高速道路上で強制的に停車させる行為は『危険な運転』でないはずがなく、現行の危険運転致死傷罪には不備がある。条文が想定しきれていない悪質運転による事故が頻発している以上、改正を躊躇すべきではない」と主張したほか[70]、『朝日新聞デジタル』(朝日新聞社)2018年12月14日付記事(記者:飯塚直人)も「高速道路上での意図的な停車が危険なのは明らかで、検察側の主張には説得力があった」として法改正の必要性を訴えた[71]
  • この事件をきっかけに、運転手の交通トラブルへの対処の意識が高まり、一部の店舗ではドライブレコーダーの売上が3倍に伸びた。JEITAによる統計でも、2016年度上半期(4~9月期)の統計出荷は約65万台[72]に対し、 2018年度の上半期(4~9月期)では約165万台と[73]、2倍以上の出荷台数を記録した。一般乗用車におけるドライブレコーダーの普及率は、2017年時点でわずか10%しかなかったが、報道を受けて急速な普及を促した[74]

脚注[編集]

[脚注の使い方]

注釈[編集]

  1. ^ 担当部(裁判長裁判官・朝山の所属部)は東京高裁第10刑事部[61]

出典[編集]

  1. ^ a b c 車4台絡む事故、2人死亡 神奈川の東名高速下り線」『朝日新聞デジタル』、2017年6月8日。2018年12月19日閲覧。オリジナルの2018-12-19時点におけるアーカイブ。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u 注目裁判・話題の会見:東名あおり、懲役18年 「強固な犯意に基づく執拗な犯行」 判決要旨」『毎日新聞』毎日新聞社、2018年12月15日。2018年12月23日閲覧。オリジナルの2018-12-23時点におけるアーカイブ。
  3. ^ a b あおり事故、被告謝罪 注意され「カチンときた」」『産経ニュース』産業経済新聞社、2018年12月5日。2019年6月12日閲覧。オリジナルの2019-06-12時点におけるアーカイブ。
  4. ^ a b c d 「危険運転致死」どう判断 元交際相手「罪償って」 東名あおり事故、あす判決 神奈川」『産経ニュース』産業経済新聞社、2018年12月13日。2019年6月12日閲覧。オリジナルの2019-06-12時点におけるアーカイブ。
  5. ^ a b c 多重事故で2人死亡 東名、男女4人重軽傷」『カナロコ』神奈川新聞社、2017年6月7日。2018年12月23日閲覧。オリジナルの2018-12-23時点におけるアーカイブ。
  6. ^ 横浜地裁、監禁致死傷罪も審理か 東名あおり死傷、3日初公判 停止後の危険運転適用が争点」『カナロコ神奈川新聞社、2018年12月2日。2020年3月7日閲覧。オリジナルの2020年3月7日時点におけるアーカイブ。
  7. ^ 危険運転罪成否が焦点 17年東名あおり運転事故、6日二審判決」『静岡新聞静岡新聞社、2019年12月2日。2020年3月7日閲覧。オリジナルの2019年12月22日時点におけるアーカイブ。
  8. ^ a b 遺族の意見陳述に検察官も涙 東名あおり運転事故」『産経ニュース』産業経済新聞社、2018年12月10日。2019年6月12日閲覧。オリジナルの2019-06-12時点におけるアーカイブ。
  9. ^ a b 被告「申し訳ない」 東名あおり事故被告人質問」『東京新聞中日新聞社、2018年12月5日。2018年12月5日閲覧。オリジナルの2020年3月7日時点におけるアーカイブ。
  10. ^ 横浜地裁判決(2018年12月14日)『TKCローライブラリー』(LEX/DBインターネット) 文献番号:25570337
  11. ^ a b c 東名の事故誘発疑いで逮捕の男 「あおられ停車した」と虚偽の説明をしていた」『産経ニュース』産業経済新聞社、2017年10月11日。2018年12月19日閲覧。オリジナルの2018-12-19時点におけるアーカイブ。
  12. ^ 同乗の女性「くだらん」と説得するも… 東名あおり事故:朝日新聞デジタル” (日本語). 朝日新聞デジタル. 2020年10月10日閲覧。
  13. ^ a b c d e f 横山隼也「【平成の事件】東名一家死傷事故 常軌逸した「あおり運転」、どう裁く 司法への問い」『カナロコ(神奈川新聞ニュース)』神奈川新聞社、2019年4月15日。2019年11月5日閲覧。オリジナルの2019-11-05時点におけるアーカイブ。
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参考文献[編集]

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    • 判決内容:懲役18年(未決勾留日数中260日をその刑に算入。横浜地検の求刑:懲役23年)
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    • 『D1-Law.com』(第一法規法情報総合データベース) 文献番号:28271614
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      • 弁護人:本間久雄(主任弁護人)・平賀孝治
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    • 東京地裁・判決文全文 (PDF)” (日本語). 裁判所ウェブサイト. 最高裁判所 (2019年12月6日). 2020年2月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年2月29日閲覧。
    • 裁判官:朝山芳史(裁判長)・阿部浩巳・髙森宣裕
    • 判決内容:第一審判決を破棄・審理を横浜地裁へ差し戻し
    • 『TKCローライブラリー』(LEX/DBインターネット) 文献番号:25570641
    • 『D1-Law.com』(第一法規法情報総合データベース) 文献番号:28280236

関連項目[編集]

外部リンク[編集]