非致死性兵器

非致死性兵器(ひちしせいへいき)とは、相手を死傷させることなく無力化する兵器である。ノン・リーサル・ウエポン(non-lethal weapons)とも。使用上、死傷者が出ている兵器もあるため、それまで非致死性兵器とされてきたものが、低致死性兵器(less-lethal weapons)に置き換わる場合もある。
概要[編集]
これらの兵器(あるいは武器)は、暴動鎮圧などで警察や軍隊が民間人に対して発砲して殺傷することが社会問題化したことに関連し、人を殺すことなく暴動を鎮圧する方法が求められたことから誕生したものがある。
また犯罪者の検挙では、犯人が逃走したり周囲に危害を及ぼすおそれがある場合に、その行動を阻むために致死性の武器を使用すれば、犯人の罪を裁くことは勿論、更生する機会すら失わせることにもつながるため、これを生きたまま捕縛するための補助にも利用される。
なお重大な後遺症を残さないと考えられる非致死・致傷性のものに関しては、誤射したり外れて関係の無い者にあたっても安全性が高いとして、警備会社や民間人の自衛手段として用いられる物もある。
ただし非致死性兵器の使用に際して死傷事故が起こるケースもあり、常に非死傷が保障されているわけではない。
1980年代の南アフリカにおける反アパルトヘイト闘争で起きた暴動では、ゴム弾でも至近距離で発射された場合に死傷者を出したケースもある。日本でも安保闘争や三里塚闘争において、発射された催涙弾の直撃を受けた者が死傷している(東山事件)。
1990年代より広く利用されるようになった、後遺症が残らないとされているスタンガンでも死亡事故は時折発生しており、2007年にも空港で暴れた男性が警備員にテイザー銃(電極発射式のスタンガン)で撃たれた結果、死亡したケースが報じられている[1]。
また無力化ガスと称してはいたが、モスクワ劇場占拠事件で使用され結果的に人質129名が窒息死したKOLOKOL-1のように、「使用してみないと分からない」ものも存在する。使用実績のある催涙ガスであっても、嘔吐物が気道を塞ぐことにより窒息させる危険性が指摘されている[2]。
軍事評論家の江畑謙介は、死に至らしめる可能性が完全に排除された字義通りの非致死性兵器はほぼ存在しないとの見解を1995年に述べている[2]。
アメリカ合衆国の警察組織は、非致死性(non-lethal)ではなく、低致死性(less-lethal)という言葉を使うようになっている[3]。
2018年ジュネーブで、法執行機関による低致死性兵器使用で死傷者が出ないようにするガイドライン『2018 Geneva Guidelines on Less-Lethal Weapons and Related Equipment in Law Enforcement』が定められた[4][5]。
種類[編集]
脚注[編集]
- ^ 一瞬のすれ違いで生じた悲劇、ポーランド人移民がカナダ警察に撃たれ死亡AFPBB、2016年8月8日閲覧。
- ^ a b 江畑謙介『殺さない兵器―新しい時代の新しい兵器』光文社(1995年)
- ^ McNab, Chris (2009). Deadly Force: Firearms and American Law Enforcement, from the Wild West to the Streets of Today. Osprey Publishing. p. 229. ISBN 9781846033766
- ^ katharina.kiener-manu. “Crime Prevention & Criminal Justice Module 4 Key Issues: 5- The Use of “Less-Lethal” Weapons” (英語). www.unodc.org. 2023年2月23日閲覧。
- ^ 2018 Geneva Guidelines on Less-Lethal Weapons and Related Equipment in Law Enforcement 作成日:1 October 2018 サイト:Geneva Academy of International Humanitarian Law and Human Rights
- ^ [1]
- ^ [2]