電磁波過敏症

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電磁波過敏症(でんじはかびんしょう、: electromagnetic hypersensitivity [EHS] )または電磁場に起因する特発性環境不耐症(でんじばにきいんするとくはつせいかんきょうふたいしょう、: idiopathic environmental intolerance attributed to electromagnetic fields [IEI-EMF] )とは、「ある程度の電磁波(=電磁場)に曝露されると、身体にさまざまな不調が現れる」「電磁場に曝されることによって健康を害する」とされる概念で、マイクロ波生態効果による身体機能不全と疾患も定義とする。

概要[編集]

電磁場を発生させる高圧線

アメリカ合衆国医学者であるウィリアム・レイ (William J Rea) [1]によって「Electrical Hypersensitivity(電気過敏症)」と命名された。電磁波および電磁場の健康への悪影響については、未だ解明されてない[2][3][4][5]。現在でも様々な疫学的研究が行われている[6][7]

世界保健機関(WHO)は「電磁波過敏症」と称されるものについて、とりまとめた研究報告(ファクトシートNo.296日本語訳 )において、様々な症状の存在は真実とした上で、医学的診断基準は未だなく、電磁波との関連についての科学的根拠はないとしている。また、この研究報告では、二重盲検により実施された研究から、それぞれの症状が電磁界曝露と必ずしも相関せずとも、国際ガイドライン(ICNIRP)データでは、報告されたそれぞれの症状は以前から存在する。

一方、紫外線や日光による刺激によって生じる過敏症は光線過敏として分けられる。

症状[編集]

電磁波過敏症と称される症状は個人によって異なる。世界保健機関の研究報告書(前述ファクトシートNo.296)は「電磁波過敏症は、人によって異なる様々な非特定症状を持つのが特徴である」[8]とした上で、いくつかの症状を挙げている。

電磁界の決定因子が何であれ、電磁波に由来する過敏症と主張されている症状は現実に生じており、患者にとって日常生活に支障をきたすほどの障害となり、以下の症状が報告されている。

皮膚の症状[編集]

  • チクチクした感覚
  • 灼熱感
  • 皮疹
  • 発赤
  • ヒリヒリとした痛み

マイクロ波生態効果による外因性疾患[編集]

その他[編集]

症状緩和の為の療法[編集]

電磁波防護の現実性[編集]

  • 電磁波防護の専門用品が市販されているが、それぞれの説明にはエビデンスの他に利用者の体験談話なども含まれ、評価は使用環境や使用者の体質により個人差が見受けられる。
  • 電磁波の放射源を点とした場合、その強度は距離の二乗に反比例し減衰するため、携帯電話基地局周辺において人体が受ける電磁波は、人体から至近距離で使用する端末機から比べ相対的には弱い。然し(外因性に限らずとも)アレルギー体質(過敏症)は僅かな抗原(電磁波)にも陽性反応を示す実例がある。
  • マイクロ波程の波長の短い電磁波を遮断するには、導電性の金網などの遮蔽物ですっかり覆われた内部空間に人間が入る必要があり、電磁シールドとして販売されているエプロンなどは、電場は遮断しても低周波磁場を完全に防護することは難しい。
  • 電源周波数領域の電磁場の場合、電線までの距離や電圧の他に、その配置が電磁場の強度に関係している。例えば家電製品の電源コードは、2本の導線が非常に狭い間隔で平行に通るため、その間隔よりも遠い距離では、互いの電磁場を打ち消し合う効果が強くなる。

経緯と現状[編集]

  • マイクロ波には、電子レンジの能力に見られるようにマイクロ波加熱作用があるが、電磁波過敏症と称される症状で議論になるのは、加熱によって生じる副次的な効果ではなく、「電磁波そのもの」が健康に影響を与えるかどうか、という点である。
  • 放送局を始めとする各種無線局の周辺住人や、送信所で保守業務に従事する無線従事者が、被害を受けている報告や労働災害を公で認定された事例は、日本国内では未だ無い。
  • 2012年10月17日に宮崎県延岡市大貫町の住民が、健康被害を理由にKDDIを相手に起こした裁判で、宮崎地方裁判所 太田敬司裁判長の一審判決[11]では、原告30名(及び200人以上の住民)が主張する「携帯基地局からの電磁波被曝よる健康被害と症状」については認めるも ノセボ効果の可能性を指摘し、原告住民の請求を棄却した[12]。判決を不服とした原告住民とその弁護団は福岡高等裁判所宮崎支部控訴を申し立てるも9月5日に結審となった。[13]
  • 宮崎県延岡市のKDDI携帯基地局の差止めを求めた訴訟の原告住民側の証言と、九州地方の携帯基地局周辺の電磁波と健康被害の関係について測定調査を行った研究者とNGO団体[14]は、マイクロ波聴覚効果による三半規管の異常が起こりうると説明している。
  • 電磁波過敏症について総務省に陳述された意見と、その意見に対する総務省の考え方の文書が公開されている。
  • アメリカ合衆国では、電磁波過敏特有の症状を発症した数多くの住民らが、Wi-Fi基地局からの電磁波被曝を避けるためとして、その地域の住処から引っ越した集団的な事例がある。ウェストバージニア州グリーンバンクは、Wi-Fi電磁波が規制されているクワイエット・ゾーンに位置する地域であり、2013年現在、推定で36人が電磁波過敏症の影響を回避するために移住している。移住民はそれぞれ、移住前に発症していたWiFi回線付近での吐き気・片頭痛不整脈などの症状が解消されたと述べている[15]


電磁波過敏症を障害と認定している国[編集]

  • スウェーデンでは、電磁波過敏症が疾病である証拠はなく、電磁波過敏症自体が医学的な診断ではないとし、障害(スウェーデン保健福祉委員会による定義「肉体的、心理的、知的能力の欠損」「環境とのかかわりにおける制限」)と認定している[16]
  • スペインでは、マドリッド地裁の労働法廷で障害認定されたケースがある[17]
  • 2015年8月 フランスの裁判所は、電磁波が原因で重度のアレルギーに悩まされていると訴えていた女性に障害者手当の受給を認めたが、EHS疾病の認定には至らなかった[18]

脚注[編集]

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  1. ^ ダラスにある「環境保健センター」の設立者で院長。本人は心臓外科医であるが、化学物質過敏症を発症したのを契機に環境医学へと転じた(参考文献『電磁波過敏症』)。
  2. ^ Repacholi MH, Greenebaum B. Interaction of static and extremely low frequency electric and magnetic fields with living systems: health effects and research needs. Bioelectromagnetics. 1999;20:133-60.
  3. ^ Preece AW, Hand JW, Clarke RN, Stewart A. Power frequency electromagnetic fields and health. Where's the evidence? Phys Med Biol. 2000;45:R139-54.
  4. ^ Challis LJ. Mechanisms for interaction between RF fields and biological tissue. Bioelectromagnetics. 2005;Suppl 7:S98-S106.
  5. ^ Valberg PA, van Deventer TE, Repacholi MH. Workgroup report: base stations and wireless networks-radiofrequency (RF) exposures and health consequences. Environ Health Perspect. 2007;115:416-24.
  6. ^ Rubin GJ, Das Munshi J, Wessely S. Electromagnetic hypersensitivity: a systematic review of provocation studies. Psychosom Med. 2005;67:224-32
  7. ^ Seitz H, Stinner D, Eikmann T, Herr C, Röösli M. Electromagnetic hypersensitivity (EHS) and subjective health complaints associated with electromagnetic fields of mobile phone communication--a literature review published between 2000 and 2004. Sci Total Environ. 2005;349:45-55.
  8. ^ "EHS is characterized by a variety of non-specific symptoms that differ from individual to individual,which afflicted individuals attribute to exposure to EMF."
  9. ^ 統合失調症と電磁波の関係(Relation between schizophrenia and electromagnetic radiation)[16:類似性]” (日本語). DenjihaJapan (2010年2月11日). 2020年1月3日閲覧。
  10. ^ 統合失調症と電磁波の関係(Relation between schizophrenia and electromagnetic radiation)[6:ニューロトランスミッター1]” (日本語). DenjihaJapan (2010年1月23日). 2020年1月3日閲覧。
  11. ^ http://www.kokusyo.jp/kddi/1501/
  12. ^ KDDI電磁波裁判、退けられた住民の訴え | 企業戦略” (日本語). 東洋経済オンライン (2012年10月18日). 2020年1月5日閲覧。
  13. ^ 松井克明. “携帯電話基地局の電磁波で健康被害?住民がKDDIを提訴 携帯業界に大打撃の可能性も”. ビジネスジャーナル/Business Journal | ビジネスの本音に迫る. 2020年1月2日閲覧。
  14. ^ 当会主催講演会 携帯基地局周辺の電磁波と健康被害” (日本語). 電磁波問題市民研究会. 2020年1月2日閲覧。
  15. ^ 電波望遠鏡の村が電磁波過敏症の人のメッカに、米国 2014年11月15日 APF
  16. ^ Elöverkänslighet”. 2015年3月13日閲覧。
  17. ^ 控訴されており、判決は確定していない / “La hipersensibilidad electromagnética, causa de incapacidad laboral”. (2011年7月12日). http://elpais.com/elpais/2011/07/12/actualidad/1310458634_850215.html / 
  18. ^ https://www.afpbb.com/articles/-/3058559

参考文献[編集]

  • 大久保貞利『電磁波過敏症』緑風出版、2005年。ISBN 4-8461-0521-0

大久保は「電磁波から健康を守る百万人署名連絡会議」共同代表、「電磁波問題市民研究会」事務局長

  • 加藤やすこ『電磁波過敏症を治すには』緑風出版、2012年。ISBN 9784846111151

加藤は「VOC・電磁波対策研究会」代表

関連項目[編集]

外部リンク[編集]