平均賃金

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平均賃金(へいきんちんぎん)とは、日本において、労働法上の概念として、休業手当解雇予告手当などの算定の基礎となる賃金のことである。労働基準法(昭和22年法律第49号)第12条に規定されている。

  • 労働基準法について以下では条数のみ記す。

定義[編集]

平均賃金とは、「平均賃金を算定すべき事由」の発生した日(賃金締切日がある場合においては、直前の賃金締切日)以前3ヶ月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう(第12条1項)。なお、1円未満の端数は切り捨てる。

「賃金の総額」には、算定期間中に支払われる、第11条に規定するすべての賃金が含まれる。平均賃金は、労働した日あたりの賃金(労働単価)として算出するのではなく、受けた賃金によって生活する1日あたりの額というとらえ方をする。なお、条文上は「以前」となっているが、実際には算定事由発生日は含めずに算定する。

算定の期間[編集]

平均賃金の算定の期間は、賃金締切日がある場合においては、直前の賃金締切日から起算する(第12条1項)。雇入後3ヶ月に満たない者については、雇入後の期間で計算するが(第12条6項)、この場合であっても、賃金締切日があるときは原則として直前の賃金締切日から起算する(昭和23年4月22日基収1065号)。賃金締切日に算定事由が発生した場合は、その日ではなく、なお直前の賃金締切日から起算する。

算定期間の控除期間[編集]

算定の期間中に、次の各号の一つに該当する期間がある場合においては、その日数及びその期間中の賃金は、算定の期間及び賃金の総額から控除する(第12条3項)。

算定すべき事由[編集]

労働基準法等で定めた算定すべき事由と、算定事由発生日は次のとおり。

  • 解雇予告手当(第20条) - 解雇通告日。通告後に労働者の同意を得て解雇日を変更した場合であっても同様である(昭和39年6月12日基収2316号)。なお即時解雇の場合、30日分以上を支払わなければならない。
  • 休業手当(第26条) - 休業日。休業が2日以上の期間にわたる場合は、その最初の日。なお、平均賃金の60%以上を支払わなければならない。
  • 年次有給休暇中の賃金(第39条) - 年次有給休暇を与えた日。休暇日が2日以上の期間にわたる場合は、その最初の日。
  • 業務上災害における休業補償(第76条)、障害補償(第77条)、遺族補償(第79条)、葬祭料(第80条)、打切補償(第81条)、分割補償(第82条) - 事故発生日又は診断により疾病の発生が確定した日
  • 減給の制裁制限(第91条) - 減給の制裁の意思表示が相手方に到達した日(昭和30年7月19日基収5875号)。その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならず、また、総額が1賃金支払い期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない。
  • 転換手当(じん肺法第22条) - 粉じん作業以外の作業に常時従事することになった日。
  • 労災保険の給付基礎日額(労働者災害補償保険法第8条、第8条の5) - 負傷若しくは死亡の原因である事故が発生した日又は診断によって疾病の発生が確定した日。なお給付基礎日額は「平均賃金に相当する額」とされ、1円未満の端数を1円に切り上げる。

算定の基礎となる賃金に含まれない賃金[編集]

賃金の総額には、臨時に支払われた賃金及び3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金並びに通貨以外のもので支払われた賃金で一定の範囲に属しないものは算入しない(第12条4項)。

  • 「臨時に支払われた賃金」とは、臨時的・突発的事由に基づいて支払われたもの、及び支給条件はあらかじめ確定しているが支給事由の発生が不確定であり、かつ非常にまれに発生するもの(結婚手当など)をいう。
  • 「3ヶ月を超える期間ことに支払われる賃金」に該当するかは、賃金の支払期間ではなく、計算期間で決まる。例えば、通勤手当は支給が年3回以内であっても該当しないので、6ヶ月通勤定期乗車券を年2回支給したような場合は、各月分の賃金の前払いとされるので賃金総額に含めなければならない(昭和26年11月1日基収169号)。
  • 「通貨以外のもので支払われた賃金で一定の範囲に属しないもの」について、平均賃金の総額に算入すべきものの範囲及び評価に関し必要な事項は、厚生労働省令で定める。具体的には、労働協約に定めのない現物給与があたる。もっともこれらは、賃金の通貨払いの原則(第24条)とその例外事由を遵守する限り、発生しない。
  • 年3回以内の賞与は、平均賃金の算定の基礎から除外されるが、ここでいう「賞与」とはあらかじめ支給額が確定していないものをいい、支給額が確定しているものは「賞与」に該当しない。年俸制で毎月払い部分と賞与部分を合計してあらかじめ年俸額が確定している場合の賞与部分は、すでに支給額が確定しているので、平均賃金の算定の基礎に含めなければならない。
  • 未払分でも債権として確立していれば算定基礎に算入できる。

最低保障[編集]

平均賃金は、次の各号の1つによって計算した金額を下ってはならない(第12項1項但書)。労働日数が少ない者について1項本文をそのまま適用すると、平均賃金が不当に低くなるおそれがあるからである。

  1. 賃金が、労働した日若しくは時間によって算定され、又は出来高払制その他の請負制によって定められた場合においては、賃金の総額をその期間中に労働した日数で除した金額の60%
  2. 賃金の一部が、月、週その他一定の期間によって定められた場合においては、その部分の総額をその期間の総日数で除した金額と前号の金額の合算額(日給制の部分のみ最低保障がかかる)

日々雇用の平均賃金[編集]

日日雇い入れられる者については、その従事する事業又は職業について、厚生労働大臣の定める金額を平均賃金とする(第12条7項、昭和38年労働省告示第52号)。

  1. 平均賃金を算定すべき日以前1ヶ月にその事業所で労働している場合
    • 「1ヶ月間に支払われた賃金総額」÷「1ヶ月間その労働者がその事業者で労働した日数」×73%
  2. 上記で算定できない場合
    • 「1ヶ月間にその事業所で同一業務に従事した日々労働者に支払われた賃金総額」÷「1ヶ月間に日々労働者がその事業所で労働した総日数」×73%

関連項目[編集]