日本の記念貨幣

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東京オリンピック記念1000円銀貨幣、表(左)と裏
東京オリンピック記念100円銀貨幣、表(左)と裏

日本の記念貨幣(にほんのきねんかへい)とは、日本で発行された記念貨幣である。

日本では、その発行は閣議によって決定される。ただし、以前は特別法を制定して発行したこともある。

歴史[編集]

日本で記念貨幣が発行されたのは、1964年東京オリンピック記念1000円と100銀貨幣が初めてである。2008年6月までに52種が発行されている。なお、下表では鋳造元(造幣局)のウェブサイト等での表記に倣い名称を記載するが、刻印上の表記とは文字が異なる場合がある(例:年号・年数について刻印では漢数字を用いる、「周年」でなく単に「年」とする、など)。なお1000円銀貨の発行に際しては後述のように特別法を国会で成立させた。

日本の記念貨幣の最高額面は10万円だが、これが額面と原価の差が大きかったために、大量に偽造されて大問題になった。その後、天皇陛下御即位記念10万円金貨や皇太子殿下御成婚5万円金貨が発行されたが、額面あたりの金の重量を増やしたほかシリアルナンバーが振られたケースに収納して販売された。長野オリンピック記念金貨以降は額面1万円が最高額となったが、全ての金貨および銀貨が額面以上の価格で販売される収集型貨幣となった。

日本ブラジル交流年及び日本人ブラジル移住100周年記念の500円硬貨は本来2008年3月に発行される予定だったが、ブラジルにおける日本人ブラジル移住100周年に関連する記念事業の開催日程等の事情を考慮したため6月に変更となり、また既に鋳造が完了していたにも関わらず、表面の図柄に予定していたサンパウロ州サントスの「日本移民ブラジル上陸記念碑」について著作権問題が発生し、急遽図柄を「笠戸丸とブラジル」に変更して鋳造し直し、2008年6月18日に発行された。硬貨が鋳造後に図柄を変更して発行される例は日本では初めてで、他国においては、イタリアの1000リレ硬貨の国境線問題で回収して再発行した例があるが、極めて稀な事例である。なお、この硬貨は日本の貨幣として英語以外の言語(ポルトガル語)で記念銘が表示された初めてのものである。

鋳造上の特徴[編集]

1970年日本万国博覧会記念から1975年昭和天皇御即位50周年までの4種の100円白銅貨は直径及び重量が異なっており、最小(通常100円と同じ)の4.8gから12.0gまでのばらつきがあった。

500円記念貨幣も1992年発行の沖縄復帰20周年記念までは通常の500円硬貨よりも一回りサイズが大きかった。しかしそれ以降の500円記念硬貨は、中部国際空港開港記念(銀貨)と地方自治法施行60周年記念貨幣(バイメタル貨)を除き、通常の500円貨幣と材質と重量が同じである。そのためこれらは自動販売機でも使用できることがある。ただし最新のイメージセンシングを行う自動販売機においては、コインの図柄が登録されているので、これに合致しない記念硬貨は認識されない。

2003年に発行された第5回アジア冬季競技大会記念1000円銀貨以降の1000円の記念銀貨は全てカラーコインで発行されるようになった。

肖像貨幣[編集]

欧米、韓国、台湾と異なり日本では肖像硬貨(国家元首級・著名人問わず)が発行された事はなかった。2010年にようやく、シリーズとして発行されている地方自治60周年記念の硬貨で、高知県の500円硬貨の図柄に坂本龍馬の肖像が日本の硬貨における著名人をあしらった初めての登場し、その後も大隈重信などが登場している。

理由としては、東アジアでは銭貨を卑しいものとみなす伝統的意識が存在するためであると思われる。「皇族のお顔が手垢にまみれるのは好ましくない・畏れ多い」という説明(現在の日本では記念貨幣が流通することは考えにくいが)がなされることもある。そのため天皇陛下御在位50年記念貨では皇居正面(二重橋)、皇太子殿下御成婚記念貨ではつがいのツルが描かれた。それどころか、モチーフ的にあしらった人物は別として、大きな肖像がコインの表面に描かれたのは、花と緑の博覧会記念の5000円硬貨が唯一の例であった。これとて花の女神フローラになぞらえた少女像であって、特定の人物の肖像ではない。このように日本では人物の肖像を描いた硬貨がなじまない土壌があったといえる。

根拠法[編集]

日本では、貨幣の発行根拠として支那事変日中戦争)勃発後に制定された臨時通貨法(昭和13年法律第86号)による臨時補助貨幣として発行されてきた。また、それ以前は新貨条例(明治4年太政官布告第267号)及び貨幣法(明治30年法律第16号)で規定された本位貨幣及び補助貨幣として発行されてきた。

臨時通貨法は支那事変終了後一年まで(その後大東亜戦争太平洋戦争)終了後一年までに変更)という期限付きの時限立法として施行され、第二次世界大戦後も抜本的な改訂は行われず、期限の廃止及び臨時補助貨幣の額面が追加されて存続したが、記念貨幣の発行に関する規定は存在しなかった。そのため1964年昭和39年)の東京オリンピック開催を記念して初めて記念貨幣を発行するにあたり、1000円銀貨を発行するために「オリンピック東京大会記念のための千円の臨時補助貨幣の発行に関する法律」(昭和39年法律第62号)という特別措置法を制定したが、1000円という当時の高額貨幣の10倍の額面にもかかわらず「臨時補助貨幣」としたのは、このような事情があったためである。

その後、発行された記念貨幣は100円ないし500円とされたのは、閣議で発行を決定出来たためであったが、銀貨と金貨は発行されなかった。しかし1986年(昭和61年)に昭和天皇在位60年を記念して記念金貨と記念銀貨を発行する際には、またも「天皇陛下御在位六十年記念のための十万円及び一万円の臨時補助貨幣の発行に関する法律」(昭和61年法律第38号)という特別措置法が制定されたが、10万円と紙幣でも発行された実績もない高額にもかかわらず「臨時補助貨幣」とされた。これらの矛盾を解消するために、1988年(昭和63年)4月1日に通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律(昭和62年法律第42号)が施行され、貨幣法及び臨時通貨法のほか、上記の特別措置法を含めた関連法が併せて廃止されている。なお、この法律では旧法及び関連法のもとで発行された記念貨幣は、全て法定通貨として有効と規定されている。

現在では、通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律第5条で、以下のように記念貨幣のための額面のものについては閣議決定で発行できるとされており、発行枚数は政令で定められる。

第五条 貨幣の種類は、五百円、百円、五十円、十円、五円及び一円の六種類とする。

  1. 国家的な記念事業として閣議の決定を経て発行する貨幣の種類は、前項に規定する貨幣の種類のほか、一万円、五千円及び千円の三種類とする。
  2. 前項に規定する国家的な記念事業として発行する貨幣(以下この項及び第十条第一項において「記念貨幣」という。)の発行枚数は、記念貨幣ごとに政令で定める。

同条を受けて、通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律施行令第3条は、次のように定める。記念貨幣の発行枚数は、この政令の改正(「別表第三」の改正)として定められる。

(記念貨幣の発行枚数)

第三条 法第五条第三項に規定する記念貨幣の発行枚数は、別表第三に定めるところによる。

また記念貨幣、プルーフ貨幣で額面価格を超える金額で販売するにあたり、通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律第10条は次のように定めている。

(造幣局による貨幣の販売)

第十条 造幣局は、次に掲げる貨幣であつて財務大臣が指定するものを販売するものとする。

一 その素材に貴金属を含む記念貨幣のうち、その製造に要する費用がその額面価格を超えるもの

二 特殊な技術を用いて製造し表面に光沢を持たせた貨幣

2 前項各号に掲げる貨幣の販売価格は、当該貨幣の製造に要する費用及び当該貨幣の額面価格を下回らない範囲で、当該貨幣の発行枚数及び需要動向を勘案し、政令で定める。

なお、1990年平成2年)の天皇陛下御即位記念10万円金貨、1993年(平成5年)の皇太子徳仁親王殿下御成婚記念5万円金貨を発行する際には、通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律に定められた額面以上のため、「天皇陛下御即位記念のための十万円の貨幣の発行に関する法律」(平成2年法律第29号)、「皇太子徳仁親王の婚姻を記念するための五万円の貨幣の発行に関する法律」(平成5年法律第33号)という特別措置法が制定されている。

一覧[編集]

記念別 額面 販売価格 材質等 デザイン・
発行時期
発行年 発行枚数
(単位:枚)
東京オリンピック記念 1000円 銀貨幣 記事参照 1964年(昭和39年) [※ 1] 1500万1516
100円 [※ 1] 8000万8056
日本万国博覧会記念 100円 白銅貨幣   1970年(昭和45年) [※ 1] 4000万2052
札幌オリンピック記念 100円 白銅貨幣   1972年(昭和47年) 3000万0000
沖縄国際海洋博覧会記念 100円 白銅貨幣   1975年(昭和50年) 12000万0000
天皇陛下御在位50年記念 100円 白銅貨幣   1976年(昭和51年) 7000万0000
国際科学技術博覧会記念 500円 白銅貨幣   1985年(昭和60年) 7000万0000
内閣制度創始100周年記念 500円 白銅貨幣   7000万0000
天皇陛下御在位60年記念 10万0000円 金貨幣 記事参照 1986年(昭和61年) 1000万0000
1987年(昭和62年) 100万0000
1万0000円 銀貨幣 1986年(昭和61年) 1000万0000
500円 白銅貨幣 5000万0000
青函トンネル開通記念 500円 白銅貨幣   1988年(昭和63年) 2000万0000
瀬戸大橋開通記念 500円 白銅貨幣   2000万0000
国際花と緑の博覧会記念 5000円 銀貨幣   1990年(平成2年) 1000万0000
天皇陛下御即位記念 10万0000円 金貨幣   1991年(平成3年) 200万0000
500円 白銅貨幣   1990年(平成2年) 3000万0000
裁判所制度100周年記念 5000円 銀貨幣   500万0000
議会開設100周年記念 5000円 銀貨幣   500万0000
沖縄復帰20周年記念 500円 白銅貨幣   1992年(平成4年) 2000万0000
皇太子殿下御成婚記念 5万0000円 金貨幣   1993年(平成5年) 200万0000
5000円 銀貨幣   500万0000
500円 白銅貨幣   3000万0000
関西国際空港開港記念 500円 白銅貨幣   1994年(平成6年) 2000万0000
第12回アジア競技大会記念 500円 白銅貨幣 走る 1000万0000
500円 白銅貨幣 泳ぐ 1000万0000
500円 白銅貨幣 跳ぶ 1000万0000
長野オリンピック記念 1万0000円 3万8000円 金貨幣 ジャンプ
(第1次)
1997年(平成9年) 5万5000
5000円 銀貨幣 アイスホッケー
(第1次)
500万0000
500円 白銅貨幣 スノーボード
(第1次)
2000万0000
1万0000円 3万8000円 金貨幣 フィギュアスケート
(第2次)
5万5000
5000円 銀貨幣 バイアスロン
(第2次)
500万0000
500円 白銅貨幣 ボブスレー
(第2次)
2000万0000
1万0000円 3万8000円 金貨幣 アイススケート
(第3次)
1998年(平成10年) 5万5000
5000円 銀貨幣 パラリンピック
(第3次)
500万0000
500円 白銅貨幣 モーグル
(第3次)
2000万0000
天皇陛下御在位10年記念 1万0000円 金貨幣   1999年(平成11年) 20万0000
500円 白銅貨幣 1500万0000
2002 FIFAワールドカップ記念 1万0000円 4万0000円 金貨幣 2002年(平成14年) 10万0000
1000円 6000円 銀貨幣 10万0000
500円 ニッケル黄銅貨幣 ヨーロッパ
アフリカ
1000万0000
500円 ニッケル黄銅貨幣 アジア
オセアニア
1000万0000
500円 ニッケル黄銅貨幣 南北アメリカ 1000万0000
第5回アジア冬季競技大会記念 1000円 6000円 銀貨幣   2003年(平成15年) 5万0000
奄美群島復帰50周年記念   5万0000
2005年日本国際博覧会記念 1万0000円 4万0000円 金貨幣   2004年(平成16年) 7万0000
1000円 6000円 銀貨幣   7万0000
500円 ニッケル黄銅貨幣   824万1000
中部国際空港開港記念 500円 4000円 銀貨幣   2005年(平成17年) 5万0000
国際連合加盟50周年記念 1000円 6000円 銀貨幣   2006年(平成18年) 7万0000
南極地域観測50周年記念 500円 ニッケル
黄銅貨幣
記事参照 2007年(平成19年) 660万0000
2007年ユニバーサル技能五輪国際大会記念 1000円 6000円 銀貨幣   8万0000
日本ブラジル交流年及び
日本人ブラジル移住100周年記念
500円 ニッケル黄銅貨幣   2008年(平成20年) 480万0000
地方自治法施行60周年記念貨幣 1000円 6000円 銀貨幣
(カラーコイン)
記事参照 2008年(平成20年)
2016年(平成28年)
500円 バイカラー・
クラッド貨幣
天皇陛下御在位20年記念 1万0000円 8万0000円 金貨幣   2009年(平成21年) 10万0000
500円 ニッケル黄銅貨幣   1000万0000
第67回国際通貨基金世界銀行グループ年次総会・東京開催記念 1000円 8000円 銀貨幣   2012年(平成24年) 5万0000
東日本大震災復興事業記念[※ 2] 1万0000円 未定 金貨幣   2015年(平成27年) 未定
1000円 未定 銀貨幣   未定
新幹線鉄道開業50周年記念貨幣[1] 1000円 8300円[2] 銀貨幣 記事参照 2016年(平成28年) 5万0000
100円 100円 クラッド貨幣   2353万6000[※ 3][3]
  1. ^ a b c 貨幣大試験に使用された供試貨幣を発行。
  2. ^ 復興応援国債(第801回債、2012年4月発行)を一定額以上購入した者に贈呈されるとともに、一部を造幣局から抽選販売する予定。報道発表:東日本大震災復興事業記念貨幣の発行決定及びデザインの公募を開始します、財務省・独立行政法人造幣局、2012年2月21日。
  3. ^ 東海道新幹線、山陽新幹線、東北新幹線、上越新幹線、北陸新幹線、山形新幹線、秋田新幹線、九州新幹線、北海道新幹線の発行枚数の合計

上記は貨幣単品での販売価格である。他にもプルーフ貨幣仕様のものやミントセットや金銀貨セットなど、様々な形態で販売されたものも存在しており、価格はそれぞれ異なる。

出典[編集]

参考文献[編集]

外部リンク[編集]