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カモシカ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
カモシカ
ニホンカモシカ
ニホンカモシカ Capricornis crispus
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 偶蹄目 Artiodactyla
: ウシ科 Bovidae
亜科 : ヤギ亜科 Caprinae
: カモシカ属 Capricornis
学名
Capricornis Ogilby, 1837[1][2]
模式種
Antilope thar Hodgson, 1831[1]
和名
カモシカ属[3]
英名
Serow[2][4]

カモシカ氈鹿)は、哺乳綱偶蹄目ウシ科に分類されるカモシカ属Capricornis)に属す種の総称[5]。この属は別名シーロー属ともいう[6]アジアの山岳部に分布する[6]

シカの名が入っているが、シカの属するシカ科ではなく、ウシヤギと同じウシ科に属する[7]。したがって、シカとは違い、ウシ科のほかの種同様、角は枝分かれせず、生えかわりもない。

また、日本ではしばしば、カモシカと言えば、国内に棲息する唯一のカモシカ類であるニホンカモシカを指す[8]山形県栃木県山梨県長野県富山県三重県県の獣にも指定されている。

ニホンカモシカを羚羊と表記することもあるが、本来は誤りである[8]。羚羊をカモシカではなくレイヨウと読めば、アンテロープ、つまり、ウシ科の大部分を含む(しかしカモシカは含まない)不明確なグループのことになる。細く伸びた足を指す「カモシカのような足」という表現に現れるカモシカとは、本来はレイヨウのことで[4]、羚羊をカモシカと呼ぶように変化したことで混同されたが、実際のカモシカの足は太い[9]

分類

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ヤギ亜科内では原始的とされるシャモア族Repicapriniに含める説や[6]ゴーラル属に近縁としてNaemorhedini族に分類する説がある[1]。古くはゴーラル属に含める説もあったが、形態的に別属とされている[10]。分子系統解析ではゴーラル属やジャコウウシ属とともに単系統群を形成するという結果が得られている[11][12]。属内では大型でたてがみの発達したスマトラカモシカなどをシーロー亜属Capricornis、小型でたてがみのないニホンカモシカとタイワンカモシカをカモシカ亜属Capricornulusに分ける説もあった[6]。ミトコンドリアDNAに基づく分子系統解析では、属内ではニホンカモシカが初期に分岐し、次にタイワンカモシカ・アカカモシカからなる系統とスマトラカモシカ(チュウゴクカモシカ・ヒマラヤカモシカを含む)の系統に分かれたという結果が得られている[13]

以下の分類は、Mori et al.(2019)に従う[13]。和名は川田ら(2018)に[3]、英名はGrubb(2005)に従う[1]

語源

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本来はニホンカモシカを指した。その語源はカモ + シカ(鹿)であるが、カモの語源には諸説ある。

  • ニホンカモシカが険しい山岳(かま)に住むことから。
  • 毛氈(もうせん、けむしろ、かも)にニホンカモシカの毛を織ったことから[8]

画像

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関連項目

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脚注

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  1. ^ a b c d Peter Grubb, “Order Artiodactyla,” In Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (eds.), Mammal Species of the World (3rd ed.), Volume 1, Johns Hopkins University Press, 2005, Pages 637-722.
  2. ^ a b Colin Groves and Peter Grubb, “Capricornis Ogilby, 1837,” Ungulate Taxonomy, Johns Hopkins University Press, 2011, Pages 255-261.
  3. ^ a b 川田伸一郎・岩佐真宏・福井大・新宅勇太・天野雅男・下稲葉さやか・樽創・姉崎智子・横畑泰志「世界哺乳類標準和名目録」『哺乳類科学』第58巻 別冊、日本哺乳類学会、2018年、1-53頁。
  4. ^ a b 関 1980, p. 24.
  5. ^ 北原正宣「カモシカ」『日本大百科全書(ニッポニカ)』小学館https://kotobank.jp/word/%E3%82%AB%E3%83%A2%E3%82%B7%E3%82%ABコトバンクより2025年4月29日閲覧 
  6. ^ a b c d 今泉吉典「ヤギ亜科の分類」、今泉吉典 監修『世界の動物 分類と飼育7 (偶蹄目III)』東京動物園協会、1988年、86-122頁。
  7. ^ 関 1980, pp. 22–23.
  8. ^ a b c 関 1980, p. 22.
  9. ^ フジテレビトリビア普及委員会『トリビアの泉〜へぇの本〜 5』講談社、2004年。 
  10. ^ Christopher N. Jass & Jim I. Mead, “Capricornis crispus,” Mammalian Species, No. 750, American Society of Mammalogists, 2004, Pages 1-10.
  11. ^ Alexandre Hassanin, Frederic Delsuc, Anne Ropiquet, Catrin Hammer, Bettine Jansen van Vuuren, Conrad Matthee, Manuel Ruiz-Garcia, Franc ois Catzeflis, Veronika Areskoug, Trung Thanh Nguyen & Arnaud Couloux, “Pattern and timing of diversification of Cetartiodactyla (Mammalia, Laurasiatheria), as revealed by a comprehensive analysis of mitochondrial genomes,” Comptes Rendus Biologies, Volume 335, Issue 1, Académie des sciences, 2012, Pages 32-50.
  12. ^ Chengzhong Yang, Changkui Xiang, Wenhua Qi, Shan Xia, Feiyun Tu, Xiuyue Zhang, Timothy Moermond & Bisong Yue, “Phylogenetic analyses and improved resolution of the family Bovidae based on complete mitochondrial genomes,” Biochemical Systematics and Ecology, Volume 48, Elsevier, 2013, Pages 136-143.
  13. ^ a b Emiliano Mori, Luca Nerva, Sandro Lovari, “Reclassification of the serows and gorals: the end of a neverending story?,” Mammal Review, Volume 49, Issue 3, Mammal Society, 2019, Pages 256-262.

参考文献

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  • 千葉彬司 『カモシカ物語 中公新書』中央公論社(現:中央公論新社)、1981年4月
  • 落合啓二 『カモシカの生活誌』 どうぶつ社、1992年12月
  • 小野勇一『ニホンカモシカのたどった道 中公新書』中央公論新社、2000年6月
  • 関, 勝「カモシカ」(PDF)『森林立地』第22巻第1号、森林立地学会、1980年、22-27頁、doi:10.18922/jjfe.22.1_22ISSN 0388-8673 

外部リンク

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  • ウィキスピーシーズには、カモシカに関する情報があります。
  • ウィキメディア・コモンズには、カモシカに関するカテゴリがあります。