一円硬貨

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一円アルミニウム
1円硬貨
素材 アルミニウム
品位 アルミニウム 100%
量目 1.0g
直径 20mm
図柄 若木(表面)
厚さ 約1.5mm
発行年 1955年(昭和30年)

一円硬貨(いちえんこうか)は、日本国政府が発行する、額面1円の硬貨である。通称一円玉(いちえんだま)。

概要[編集]

表面には「日本国」と「一円」そして「若木」が、裏面には「1」と製造年がデザインされている。この表裏は造幣局での便宜的な呼称で、明治時代の硬貨と異なり法律上の表裏の規定はない。

現在発行中の一円硬貨はアルミニウム製であり、日本の現在発行中の6種類の通常硬貨の中で素材にが含まれない唯一の硬貨である。

一円硬貨はより比重が大きいが、乾いた一円硬貨を水面に対して平らになるように置くと、一円硬貨にかかる浮力表面張力が一円硬貨の重量と釣り合うために浮く[1]。水に界面活性剤を加えて表面張力を下げたり、水の代わりに水より表面張力の低い液体の上に置いたりした場合は沈む。

一円硬貨1枚を製造するのにかかるコストは額面以上であり、政府による貨幣発行益2003年(平成15年)当時で1枚当り13円の赤字とされる[2]。原料となるアルミニウム地金は2019年6月現在で1キログラム当たり240円前後(1枚あたり約0.24円)で推移している[3]2009年(平成21年)初めに造幣局が民間から調達した1円硬貨用アルミ円形4200万枚の調達価格は3352万円(1枚あたり約80銭)とされる[4]。2015年現在、一円硬貨の製造に約3円かかるとされる[5]

一円硬貨の質量は、1.0 グラム(g) である[6]

日本の一般的な自動販売機では五円硬貨や一円硬貨は使用できず、使用可能な最小額面の硬貨は十円硬貨となっているが、ATMセルフレジなどでは五円硬貨や一円硬貨も使用可能である。

世界では、日本の一円硬貨に相当する程度の小額硬貨は廃止されたり(例えば、カナダドルの1セント硬貨は2013年に発行停止)、その程度の釣り銭が飴玉や封筒、爪楊枝などの現物で代用されたりすることも多い中、日本の一円硬貨は、近年新規に製造される枚数こそ少ない(貨幣セット用のみの製造となる年も多い)ものの、市場ではまともに流通している。

歴史[編集]

それまで使用されてきた一円黄銅貨が1953年昭和28年)を以て廃止されたため、一円の貨幣は一円紙幣のみとなった。しかし、1955年(昭和30年)に一円硬貨と五十円硬貨が発行されることとなり、前年の1954年(昭和29年)に、この一円アルミニウム貨と五十円ニッケル貨のデザインが第二次世界大戦後初めて一般公募された。40日間の公募期間で、一円硬貨だけで2,581点の応募があり、表の「若木」のデザインは当時京都府在住の中村雅美のものが、裏の「1」のデザインは当時大阪府在住の高島登二雄のものがそれぞれ選ばれて、1955年(昭和30年)1月13日に大蔵省より図案が発表された。ちなみに若木のデザインのモデル樹種は特になく、特定のモデルがないからこそ却ってどのにも通じる、という考え方である。なお、一円硬貨のデザイン一般公募に際して大蔵省は受賞者に対し賞金75000円を贈る事にしていたが、上記の通り受賞者が二人となったため、それぞれ半額の37500円を賞金として贈呈した。

1960年代は、高度経済成長に伴うインフレーション自動販売機の普及によって、補助貨幣が慢性的に不足しており、生産ラインも限られていたことから、当時の大蔵大臣田中角栄の指示で、1963年(昭和38年)から1964年(昭和39年)にかけて、府中刑務所懲役受刑者の刑務作業として、一円硬貨の製造作業を行なったことがある[7]。なお、生産過剰による製造休止のため、1968年(昭和43年)製の一円硬貨は存在しない。

1989年平成元年)の消費税導入前はスーパーなどで細々と流通している程度だったが、消費税導入以降は五円硬貨とともに流通量が激増したため、大量に製造されていた。しかし消費税が3%から5%に引き上げられた1997年(平成9年)以降は需要が減少、それに伴って製造量も減らされており、特に2001年(平成13年)は802万4千枚しか製造されなかったため、同年製造分の未使用硬貨は、古銭商で額面を超える価格で取引されている。

さらに2011年(平成23年)には電子マネーの普及の影響も受けてミントセット用の45万6千枚のみの製造にとどまり、一般流通用については1968年(昭和43年)以来43年ぶりに製造されなかった[8]。なお同年は、五円硬貨・五十円硬貨も一円硬貨同様、ミントセット用の45万6千枚のみである。その後、2012年(平成24年)も一円硬貨・五円硬貨・五十円硬貨はミントセット用の65万9千枚のみの製造にとどまり[8][8]、2013年(平成25年)も「流通量は安定している」との判断から、ミントセット用の55万4千枚のみが製造された[5][9]

2014年(平成26年)には、同年4月1日から消費税が5%から8%へ引き上げられるため、一円硬貨の需要も高まるとみられることから、2013年度(平成25年度)中に2500万枚、2014年度(平成26年度)にはさらに1億6千万枚と、合わせて2億枚近くを造幣局が流通用として製造することとなった[10]。しかし電子マネーの影響もあり需要は予想に反して伸び悩み、2016年(平成28年)以降は再びミントセット用のみの製造となっている。

変遷[編集]

  • 1870年:旧一円銀貨発行。
  • 1871年:旧一円金貨(本位金貨)発行。
  • 1874年:新一円銀貨発行。
  • 1948年:一円黄銅貨発行。この硬貨は第二次世界大戦後に発行されているが、素材金属価格の高騰により鋳つぶしされる恐れがあったため、「小額通貨の整理及び支払金の端数計算に関する法律(小額通貨整理法)」により、1953年(昭和28年)12月31日をもって廃貨措置がとられて失効した。2018年8月現在、第二次世界大戦後発行された円単位の硬貨で、通貨として使用できないのは、この一円黄銅貨のみである。
  • 1955年:現行一円アルミニウム貨発行。
  • 1968年:生産過剰となったため、1年間製造を休止。
  • 2011年 - 2013年:電子マネーの普及等により需要が減少したため、ミントセット向けを除き製造を休止。
  • 2014年:消費税8パーセント引き上げに伴い、一般流通向けの製造を再開。
  • 2016年 - :ミントセット向けを除き、再び製造を休止。

脚注[編集]

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  1. ^ 【第2回】(よくある話ですが)1円玉はなぜ水に浮くのか? - 協和界面化学
  2. ^ 景気対策を目的とした政府貨幣増発の帰結 (PDF)”. UFJ総合研究所 (2003年5月12日). 2016年3月4日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2013年6月7日閲覧。
  3. ^ アルミ指標相場・スクラップ価格推移 (PDF)”. 日刊市况通信社. 2019年9月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年9月23日閲覧。
  4. ^ 1円玉原価割れも 金属値上がりでおカネづくり一苦労日本経済新聞、2011年5月26日
  5. ^ a b 1円玉 3年連続製造「ゼロ」見通し 電子マネー普及に押され産経新聞、2013年6月4日
  6. ^ 知ってる? 貨幣のデザイン”. ぞうへいきょく探検隊. 造幣局. 2017年4月22日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2017年4月21日閲覧。
  7. ^ 「足りない硬貨」朝日新聞、1963年8月30日朝刊
  8. ^ a b c 一円玉の製造、2年連続ゼロ=電子マネーに押される時事通信、2013年2月18日
  9. ^ 造幣局 (2014年2月25日). “年銘別貨幣製造枚数(平成25年)”. 造幣局. http://www.mint.go.jp/coin/data/nenmeibetsu25.html 2014年3月2日閲覧。 
  10. ^ FNN (2014年2月3日). “消費税増税にともない、4年ぶりとなる一円玉の製造が本格再開”. FNNニュース. 2014年3月3日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2014年3月2日閲覧。

関連項目[編集]

一円硬貨を題材にした作品[編集]

外部リンク[編集]