表面張力

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表面張力
surface tension
量記号 γ
次元 M T -2
SI単位 キログラム毎秒二乗 (kg/s^2)
CGS単位 ダイン毎センチメートル(dyn/cm)
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アメンボに見られる表面張力

表面張力(ひょうめんちょうりょく、英語: surface tension)は、表面をできるだけ小さくしようとする性質のことで、界面張力の一種である[1]界面とは、ある液体や固体の相が他の相と接している境界のことである。このうち、一方が液体や固体で、もう一方が気体の場合にその界面を表面という。

定量的には単位面積当たりの表面自由エネルギーを表し、単位はmJ/m2または、 dyn/cm 、mN/mを用いる。記号にはγ, σが用いられることが多い。

原因と性質[編集]

表面分子と内部分子

分子と分子の間には、分子間力と呼ばれる引力が作用している。液体中の分子は、あらゆる方向から他の分子からの分子間力の作用を受けて自由エネルギーが低い状態にある。一方、表面上にある分子は内部の分子からは作用を受けるが、気体の分子からはほとんど作用を受けない。すなわち、表面上にある分子は内部の分子と比べて大きな自由エネルギーを持つことになり、その結果、表面をできるだけ小さくしようとする傾向が現れる。

表面張力は、温度が上がれば低くなる。これは温度が上がることで、分子の運動が活発となり、分子間の斥力となるからである。また、不純物によっても影響を受ける。界面活性剤などの表面を活性化させる物質によって、極端に表面張力を減らすことも可能である。また定性的には融点が高い物質ほど表面張力も高い[2]。純物質の各融点における表面張力は、第5族6族7族元素が高く、希ガス元素は低い[3]

温度依存性については次の片山・グッゲンハイムによる式が提案されている[4]

ここでTcは臨界温度であり、Tcにおいて表面張力は 0 となる。

定義[編集]

表面張力は、多数の分子が複雑に動いた平均として現れるものなので、熱力学において定義される。

ここでFは自由エネルギー、Aは表面積、添え字は温度T、体積V一定の熱平衡状態を表す。

具体例[編集]

水銀は特に表面張力が高く、も多くの液体よりも高い部類に入る。

各種液体の20°Cの表面張力
液体 表面張力(単位 mN/m)
アセトン 23.30
ベンゼン 28.90
エタノール 22.55
n-ヘキサン 18.40
メタノール 22.60
n-ペンタン 16.00
水銀 476.00
72.75

また金属など、高温で溶融する物質は測定値にばらつきが大きいが、大体下表のような値である[5]。一般に金属結合のように結合が強いほど表面張力が大きい。

高温における各物質の表面張力
結合様式 物質 表面張力(単位 mN/m) 温度(K)
金属結合 W 2500 3770
金属結合 Fe 1900 1823
金属結合 Ag 900 1233
共有結合 Al2O3 660 2323
共有結合 FeO 580 1673
イオン結合 Li2SO4 220 1133
イオン結合 KCl 81 1273
分子結合 S 56 393

表面張力が関係する現象[編集]

濡れ[編集]

ヤング式

濡れとは、固体と接する気体が液体で置き換えられる現象である。 表面の濡れやすさの程度は接触角θで表される。接触角とは、固体表面が液体及び気体と接触しているとき、この3相の接触する境界線において液体面が固体面と成す角度のことである[6]。接触角は各界面の表面張力と関係があり、表面張力の小さい固体は濡れやすく、液体が付着したときの接触角が鋭角になる。反対に、表面張力の大きい固体は濡れにくく、接触角が鈍角になる。この関係を表すトマス・ヤングによる次の式をヤングの式という。

  • :接触角
  • :固体にはたらく表面張力
  • :液体にはたらく表面張力
  • :固体・液体界面にはたらく界面張力

毛管現象[編集]

毛管現象・毛細管現象

ヤングが表面張力の存在を明らかにする前から観察されていた現象が毛管現象毛細管現象である。毛管現象とは、液体中に入れた細い管の内部で、液面が外側の自由表面より上昇(下降)する現象である。

液体に垂直に差し込んだ半径rの円管の場合を考える。管内の液面が外側に対してhだけ高くなったとする。液体の密度をρ、重力加速度をgとすると、鉛直方向の力のつり合いより、高さhは、

となる。すなわち、この作用は液体が固体表面をよく濡らすほど強く、また隙間が狭いほど強い(上昇の場合)。

測定方法[編集]

表面張力の測定には以下のような方法がある[7]

次の4つはいずれも液滴や気泡の形状をヤング・ラプラスの式で近似することにより表面張力を求める方法であり、前提条件として液滴や気泡は静止しており粘性、慣性は無視できる(表面張力と重力だけで形状が決まっている)ことが必要である。

  • 液滴法 - 小さな液滴を平板上に載せ、その輪郭を横から観察して求める方法。
  • ペンダントドロップ法 - 針の先端に液滴をぶら下げ、その形状を測る。
  • ペンダントバブル法 - 液中の針の先端の気泡の形状を測る。
  • セシルバブル法 - 泡を平板上に接触させ、その形状を測る。

また、最大泡圧法では毛管から液中に気泡を押し出すのに必要な圧力から表面張力を求める。

液滴重量法では、気中の毛管の底部に液体を流して液滴を成長させ、表面張力で支えきれなくなって落下する液滴の重量から表面張力を求める。

デュ・ニュイ英語版円形張力計は濡れ性の良い円形のリングを液体表面から持ち上げるのに必要な力を計測する。

ウィルヘルミー英語版プレート法は、濡れ性の良い薄い板を垂直に水中に半分だけ沈め、板にかかる力から板の重量を除いた分を計測する。

振動滴法(レビテーション法)[8]は、レイリーによって1879年に見いだされた、液滴(半径r)の第1振動モードの角振動数ωが粘性を無視すると

となることを用いて動的に測定する方法である。この方法は溶融金属などによく用いられる。

無次元量[編集]

表面張力に関係する無次元量には、以下のものがある。いずれも、他の何らかの力との大きさの比を表す。

脚注[編集]

  1. ^ 物理学辞典編集委員会 『物理学辞典』 (三訂版) 培風館、2005年9月30日、1927頁。ISBN 978-4563020941 
  2. ^ 荻野、p.132
  3. ^ 荻野、p.133
  4. ^ 荻野、p.192
  5. ^ 荻野、p.7
  6. ^ 『物理学辞典』(三訂版)、1190頁。
  7. ^ Hans-Jürgen Butt, Karlheinz Graf, Michael Kappl; 鈴木祥仁, 深尾浩次 共訳 『界面の物理と科学』 丸善出版、2016年、16-20頁。ISBN 978-4-621-30079-4 
  8. ^ 荻野、p.49

参考文献[編集]

  • ドゥジェンヌ; ブロシャール‐ヴィアール; ケレ 『表面張力の物理学―しずく、あわ、みずたま、さざなみの世界―』 吉岡書店、2003年。ISBN 978-4842703114 
  • 井本稔 『表面張力の理解のために』 (株)高分子刊行会、1992年。ISBN 978-4770200563 
  • 『ぬれと超撥水、超親水技術、そのコントロール』 技術情報協会、2007年7月31日。ISBN 978-4861041747 
  • 中江秀雄 『濡れ、その基礎とものづくりへの応用』 産業図書株式会社、2011年7月25日。ISBN 978-4782841006 
  • 荻野和己 『高温界面化学(上)』 アグネ技術センター、2008年。ISBN 978-4-901496-43-8 

関連項目[編集]