五千円紙幣

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動

五千円紙幣(ごせんえんしへい)は、日本銀行券の1つ。五千円券五千円札とも呼ばれる。額面は5,000で、一万円紙幣に次いで2番目に高額である。現在発行されている五千円紙幣は、2004年(平成16年)から発行されている樋口一葉の肖像のE号券である。

ほかに、かつて発行されたC号券とD号券があり、これまでに発行された五千円紙幣は全部で3種類存在する。

C号券[編集]

Series C 5K Yen Bank of Japan note - front.jpg
Series C 5K Yen Bank of Japan note - back.jpg

C一万円券と同じく肖像は聖徳太子であるが、C一万円券よりもこちらの方が先に発行されているため、初の五千円券としてこれの発行が開始された時点では最高額面の紙幣であった。

B千円券やC一万円券との識別性向上のため、聖徳太子の肖像は表面中央に描かれている。裏面中央には日本銀行本店本館が描かれている。裏面右側には積み上げられた6箱の千両箱の上に立つ2頭の獅子が日本銀行行章を掲げ持つ図柄が描かれているが、これは日本銀行本店の扉などに彫刻されている紋章と同じものである。

C一万円券とは異なり透かしも肖像と同じ聖徳太子であるほか、左側の地模様の印刷と重なる部分にも「5000」の数字の透かしが入れられている。乙五圓券以来の透かしの図柄が人物画で、透かし部分が空白となっている紙幣である。また記番号は4ヶ所に印刷されている。

当時の大卒初任給が1万3000円ほどということもあり、このような高額紙幣は発行する必要があるのかという議論がなされたが、発行されると高度経済成長とともに順調に流通量が増えていった。

使用色数は、表面9色(内訳は凹版印刷による主模様2色、地模様5色、印章1色、記番号1色)、裏面5色(内訳は凹版印刷による主模様1色、地模様3色、印章1色)となっている。

D号券[編集]

Series D 5K Yen bank of japan note - front.jpg
Series D 5K Yen bank of japan note - back.jpg
  • 日本銀行券
  • 額面 五千円(5,000円)
  • 表面 新渡戸稲造[3]
  • 裏面 富士山本栖湖に映る逆さ富士
  • 印章 〈表面〉総裁之印 〈裏面〉発券局長
  • 銘板 大蔵省印刷局製造/財務省印刷局製造/国立印刷局製造(製造時期により3種類あり)
  • 記番号色 黒色/褐色(製造時期により2種類あり)
  • 寸法 縦76mm、横155mm[3]
  • 印刷局から日本銀行への引渡期間 1983年(昭和58年)12月[2] - 2003年平成15年)
  • 発行開始日 1984年(昭和59年)11月1日[3]
  • 支払停止日 2007年(平成19年)4月2日
  • 有効券

C号券の発行開始から20年以上が経過し、印刷技術や偽造防止技術が陳腐化してきたことや偽造券が散見されるようになったことからD五千円券が発行された。D一万円券D千円券と併せて3券種同時の改刷となり、各額面のD号券からは肖像に文化人が採用された。このD五千円券のサイズについては、前代のC五千円券と比べて小型化している。

五千円券の肖像には教育者の新渡戸稲造が選ばれ、表面右側に肖像が描かれている。なお、また新渡戸稲造が慶祝用の白のネクタイを着用しているのは、養女の結婚式に出席した際の写真を原画としたためである。また額面の下には太平洋を中心とした地球が描かれているが、これは新渡戸の「我、太平洋の架け橋とならん」という言葉に因んだものである。D五千円券を除くD号券およびE号券の紙幣の表面は全てが左側に漢数字で額面金額等の表記、中央に透かし、右側に肖像などの図柄となっているが、D五千円券は額面金額と透かしの位置が入れ替わっている。

裏面中央には本栖湖の湖面に富士山が映る逆さ富士が描かれている。これは岡田紅陽の「湖畔の春」という写真を基にして描かれており、同じ原画はE千円券にも使われている。湖面に富士山が映る光景は年に1、2度しかないといわれ、貴重なものである。また、左側には赤松の木があしらわれている。

日本銀行券では、日本銀行行章は裏面にのみ入っているものが多い中、このD五千円券とD千円券では表面の額面金額の文字に重なっている所にも日本銀行行章が入っている。

透かしは肖像と同じく新渡戸稲造であるが、肖像と透かしでは新渡戸稲造の肖像の図柄が左右反転になっている。視覚障害者が触覚で容易に券種を識別できるよう、透かしにより表面から見て左下隅に識別マーク(○が縦に二つ、点字の「い」)が施されている。

初期の記番号の色は黒色だった[3]が、1993年(平成5年)12月1日発行分から記番号の色を褐色に変更する[4]とともに、マイクロ文字、特殊発光インキ(表面印章「総裁之印」(オレンジ色発光)・裏面印章「発券局長」(赤色発光))等の偽造防止技術が施されている(黒色記番号は全部使い切ってはいなかった)。褐色記番号の紙幣については、製造者が当初は「大蔵省印刷局」[3]、2001年(平成13年)5月14日発行分から「財務省印刷局」[5]、2003年(平成15年)7月1日発行分から「国立印刷局」[6]の三種ある。

D五千円券の変遷の詳細を整理すると下表の通りとなる。下記の4タイプに分かれる。

発行開始 記番号色 銘板(製造者名) 変更理由
1984年(昭和59年)11月1日 黒色 大蔵省印刷局製造
1993年(平成5年)12月1日 褐色 大蔵省印刷局製造 偽造防止力向上のための様式変更(ミニ改刷)
2001年(平成13年)5月14日 褐色 財務省印刷局製造 製造者の組織変更
2003年(平成15年)7月1日 褐色 国立印刷局製造 製造者の組織変更

使用色数は、表面9色(内訳は凹版印刷による主模様2色、地模様5色、印章1色、記番号1色)、裏面4色(内訳は凹版印刷による主模様1色、地模様2色、印章1色)となっている。

余談[編集]

当初、大蔵省女性を採用することで、清新さをアピールするつもりで、紫式部清少納言与謝野晶子樋口一葉らを候補に挙げていた。しかし紫式部と清少納言は写真が存在せず、与謝野晶子は反戦歌を作ったこと、孫が当時の国会議員である与謝野馨であること、樋口一葉は短命であったことがマイナス材料となり、結局見送られた。最終的に人選が決まったのは、1980年昭和55年)6月のことで、東京女子大学の初代学長で、女子教育に力を入れた新渡戸稲造が採用されることとなった。なお当時の鈴木善幸首相の出身地は、新渡戸と同じ岩手県である[7]。 また前述のようにこの新渡戸稲造の写真は養女の結婚式に出席した際の写真を基としているが、原本となった写真では新渡戸稲造が首を傾げているため、首の傾きを修正した上で使用している。

E号券[編集]

5000 Yenes (2004) (Anverso).jpg
5000 Yenes (2004) (Reverso).jpg
  • 日本銀行券
  • 額面 五千円(5,000円)
  • 表面 樋口一葉[8]
  • 裏面 尾形光琳筆「燕子花図[8]
  • 印章 〈表面〉総裁之印 〈裏面〉発券局長
  • 銘板 国立印刷局製造
  • 記番号色 黒色/褐色(製造時期により2種類あり)
  • 寸法 縦76mm、横156mm[8]
  • 発行開始日 2004年(平成16年)11月1日[8]
  • 発行中
  • 有効券

D号券の発行開始から20年が経過し、精巧な偽造券が発見されるようになってきたことから、前回同様E一万円券E千円券と併せて3券種同時の改刷となった。基調となる色はD号券と同系統の色調を受け継いでおり、E五千円券はD五千円券と同じく紫色系であるが、より鮮やかな色合いとなっている。

肖像はD号券で見送られた小説家の樋口一葉が選定されたが、日本銀行券の表面の肖像に女性が描かれるのは初めてである[注 1]。表面右側には樋口一葉の肖像が、裏面左側には燕子花を描いた屏風絵である国宝の「燕子花図」(尾形光琳筆)の図柄が採用されている。透かしは肖像と同じく樋口一葉である。

偽造防止技術には光学的変化インクを除きD二千円券に使われたものが多く採用されたが、新たに表から見て右側に紙を薄くした「すき」を入れた「すき入れバーパターン」と、見る角度によって像(金属箔に刻まれた絵柄)が変わる「ホログラム」が採用された。五千円券には肖像の右側付近に縦棒のすき入れが2本入っており、ホログラムの像は光の入射角により桜花、日本銀行行章、額面金額の「5000」の数字などが確認できる。特殊発光インキについては、紫外線照射により表面の印章「総裁之印」(D号券と異なり裏面印章「発券局長」は発光しない)がオレンジ色に発光する他、表面の地模様の一部がオレンジ色に、裏面の地模様の一部が黄緑色に発光する。

また公式に発表されていないが、表面と裏面に、片仮名「ニ」「ホ」「ン」(日本)の文字がシークレットマークとして入っているほか、ユーリオンも採用されている。さらにホログラムの上下にも、漢字「日」「本」の文字が刻まれている。

視覚障碍者が判別できるように紙幣の下端の左右に、指触りで金種を識別するために凸凹の印刷がされている[9]。一万円札はL字(逆L字)、五千円札は八角形、二千円札は3つの丸印(点字の「に」)、千円札は_(下線)となっている[10]。また、国立印刷局から、スマートフォンで判別・読み上げる事が出来るアプリ「言う吉くん」が提供されている[11]

ホログラムの透明層は、光沢がありその他の印刷面と触感が異なる。発行当初は五千円券と一万円券の透明層は同一面積・形状(楕円形)であったが、2014年平成26年)5月12日に、五千円券について、ホログラムの透明層の面積・形状が変更(角丸四角形)され[12]、これにより、視覚障害者にとっての五千円券・一万円券の識別性の向上が図られた。また同時に記番号の色も黒色から褐色に変更された。

E五千円券の変遷の詳細を整理すると下表の通りとなる。

発行開始 記番号色 変更理由
2004年(平成16年)11月1日 黒色
2014年(平成26年)5月12日 褐色 券種識別性向上のための様式変更

使用色数は、表面14色(内訳は凹版印刷による主模様2色、地模様10色、印章1色、記番号1色)、裏面7色(内訳は凹版印刷による主模様1色、地模様5色、印章1色)となっている。

2024年度発行予定の新紙幣[編集]

5000 yen obverse scheduled to be issued 2024 front.jpg
5000 yen obverse scheduled to be issued 2024 back.jpg
  • 日本銀行券
  • 額面 五千円(5,000円)
  • 表面 津田梅子
  • 裏面 の花
  • 印章 〈表面〉総裁之印 〈裏面〉発券局長
  • 銘板 国立印刷局製造
  • 記番号色 黒色
  • 寸法 縦76mm、横156mm
  • 発行開始日 2024年(令和6年)予定

2024年(令和6年)上期を目処に、偽造抵抗力の強化など目的として千円券・五千円券・一万円券の3券種が同時に改刷される[13]

刷新後の五千円紙幣は、表面の肖像は教育者の津田梅子、裏面は日本固有種の植物である藤の花に変更予定である。記番号も9桁から「AA000001AA」のような形式の10桁に変更される。

新たな偽造防止技術としては、高精細すき入れ模様とストライプタイプのホログラムが導入される予定である。視覚障害者のための識別マークは上下に配置され、アラビア数字で「5000」が大きく描かれている。

その他五千円紙幣に関する事項[編集]

  • 銀行等の金融機関のATMでは、五千円紙幣の入金は可能であるが、カセットボックスの技術的問題や製造コストの関係上、五千円紙幣の出金に対応しているATMは、現在のところ稀である。
    • ゆうちょ銀行には、五千円紙幣の出金に対応するものが設置されていることがあるが、その場合でも五千円紙幣で出金するには工夫が必要である。ただし最新の機種ではその機能も外されている。
    • 金融機関の店舗内にある両替機を使って、五千円紙幣を出金することは可能であるが、新券両替を切らしたり、一部の両替機では五千円紙幣の出金を停止している。
    • C号券時代には、五千円紙幣の出金が可能なATMも多数存在した。
  • 一万円紙幣や千円紙幣と比較すると、五千円紙幣の発行数は圧倒的に少ない。
  • 流通している五千円紙幣の寿命は、つり銭などのやりとりが多く傷みやすいため、平均1~2年程度とされる。

参考文献[編集]

  • 植村峻『紙幣肖像の近現代史』吉川弘文館、2015年6月。ISBN 978-4-64-203845-4
  • 植村峻『日本紙幣の肖像やデザインの謎』日本貨幣商協同組合、2019年1月。ISBN 978-4-93-081024-3

脚注[編集]

[脚注の使い方]

注釈[編集]

  1. ^ 改造紙幣には神功皇后が描かれていたが、これは日本銀行券ではなく政府紙幣であった。また、二千円券の裏面には紫式部が描かれているが、肖像画ではない

出典[編集]

  1. ^ a b c 1957年(昭和32年)9月17日、大蔵省告示第200号「昭和三十二年十月一日から発行する日本銀行券五千円の様式を定める件」
  2. ^ a b c 大蔵省印刷局『日本のお金 近代通貨ハンドブック』大蔵省印刷局、1994年6月、242-255頁。ISBN 9784173121601
  3. ^ a b c d e 1984年(昭和59年)6月25日、大蔵省告示第76号「昭和五十九年十一月一日から発行する日本銀行券壱万円、五千円及び千円の様式を定める件」
  4. ^ 1993年(平成5年)6月24日、大蔵省告示第134号「平成五年十二月一日から発行する日本銀行券壱万円、五千円及び千円の様式を定める件」
  5. ^ 2001年(平成13年)3月30日、財務省告示第85号「平成十三年五月十四日から発行する日本銀行券壱万円、五千円及び千円の様式を定める件」
  6. ^ 2003年(平成15年)6月13日、財務省告示第482号「平成十五年七月一日から発行を開始する日本銀行券壱万円、五千円及び千円の様式を定める件」
  7. ^ "追跡・聖徳太子拾万円札プラン 日の目見なかったデザイン再現"『朝日新聞』1988年12月6日
  8. ^ a b c d 2004年(平成16年)8月13日、財務省告示第374号「平成十六年十一月一日から発行を開始する日本銀行券壱万円、五千円及び千円の様式を定める件」
  9. ^ 視覚障害者の暮らし--お金の見分け方編【FTCJフィリピン盲学校支援事業】
  10. ^ 識別マーク(凹版印刷)
  11. ^ お札識別アプリ「言う吉くん」
  12. ^ “新様式の日本銀行券5千円券の発行開始日を決定しました” (プレスリリース), 財務省, (2013年12月2日), http://www.mof.go.jp/currency/bill/issued/20131202.htm 2014年3月3日閲覧。 
  13. ^ 新しい日本銀行券及び五百円貨幣を発行します” (日本語). 財務省. 2019年4月9日閲覧。

外部リンク[編集]