フジ (植物)

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フジ
Wisteria floribunda
Wisteria floribunda
Wisteria floribunda
(Longwood Gardens、2005年5月1日)
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 Core eudicots
階級なし : バラ類 Rosids
階級なし : 真正バラ類I Eurosids I
: マメ目 Fabales
: マメ科 Fabaceae
亜科 : マメ亜科 Faboideae
: フジ連 Millettieae
: フジ属 Wisteria
: フジ W. floribunda
学名
Wisteria floribunda
(Willd.) DC.[1]
シノニム
  • Kraunhia floribunda (Willd.) Taub.
  • Rehsonia floribunda (Willd.) Stritch
英名
Japanese wisteria
品種
  • シロバナフジ W. f. f. alba
  • アケボノフジ W. f. f. alborosea

フジ学名: Wisteria floribunda、別名: ノダフジ)は、マメ科フジ属つる性落葉木本日本固有種[2]が咲く時期には「藤棚」が鑑賞・観光の対象となる[3]

日本では同属のものにヤマフジ W. brachybotrys があり、時に混同される。またシナフジ W. sinensis などの国外の種も栽培されることがあるが、日本では本種が用いられることが大半である。

形態・生態[編集]

落葉性のつる性の木本[4]。蔓は左巻きになり、当初は褐色の短毛を密生するが、後に無毛になる。

葉は長さ20〜30 cmになり、奇数羽状複葉で小葉は11〜19枚に達する。個々の小葉は長さ4〜10 cm、狭卵形で先端は突き出し、そのまた先は丸い。基部はほぼ円形をしている。葉質は草質で薄く、縁は滑らかとなっている。

花期は5月で、花序は枝の先端に出て下に垂れるように伸び、時に100 cmにも達し、多数の花を付ける。その花数は時に100個を超え、開花はその花序の基部側から先端に向かって数日かかるので、その初期には花序は綺麗な倒円錐形をなす[5]。花序の軸や小花柄には白く短い毛が密生している。苞は狭卵形で長さ1.5 mmほど、小花柄は長さ15〜25mm。花は紫から淡紅色、いわゆる藤色である。萼は椀型で裂片は5,そのうち上の2つがやや合着し、最下のものが一番大きいのはこの属の特徴であるが、本種では最下の裂片は狭三角形で先端が長く伸びている。旗弁(上側の立っている花弁)はほぼ円形をしており、径10〜13 mm、先端がわずかに突き出しており、基部は心形となっていて短い爪状突起があり、舷部の基部の中央には襞がある。ちなみにこの旗弁の基部の突起は、翼弁を押さえることで旗弁がしっかり立ち上がるようになる、という意味がある[5]。翼弁(側面にある花弁)は竜骨弁(下面のボート状で中に雄蕊や雌蘂を納める花弁)とほぼ長さが同じで長さ15〜20 mm、やや長い爪状突起がある。雄蕊は10本あり、左右2群に分かれるが、旗弁の側の1本は離生し、長さ13〜17 mm。

豆果は長さ10〜19 cm、幅2〜2.5 cmもあり、狭倒卵形で扁平になっており、表面にはビロード状の短い毛を密生している。その果皮は厚く、熟すると木質化して硬くなり、冬になって乾燥すると左右の2片に裂け、それぞれがねじれて種子を飛び散らせる形で散布する。種子は円形で扁平、径11〜12 mm、褐色で光沢がある。

つるに巻きついて登り、樹冠に広がる。直射日光の差す場所を好む、好日性植物である。花序は長くしだれて、20 cmから80 cmに達する。は薄い紫色で、藤色の色名はこれに由来する。他のマメ科植物同様、夜間は葉をすぼめる。

名前について[編集]

フジの、和名の由来には定説がないが、一説には本来、歴史的仮名遣いでは「フヂ」と書かれ、風が吹く度に花が散るので「吹き散る」の意であるという[5]。漢字表記の「藤」は、本来は中国産の種であるシナフジを中国で紫藤と表記したことにより、日本でこれを省略して当てたものである[6]。藤という字そのものは藤本(とうほん)、すなわちつる性で木本性の植物を指す言葉である[7]

別名にノダフジがあり、これは摂津国野田村(現在は大阪市)の地名に由来する。かつての野田村は「吉野の桜、高尾(高雄)のもみじ、野田の藤」と言われるほどフジの名所であった[5]

分布・生育地[編集]

日本産のフジは固有種[2]

日本では本州四国九州温帯から暖帯に、低山地や平地のに分布する。低山地や平地の林縁、崖、林の中などに普通に見られる[8]

生態など[編集]

本種は高木に巻き付いて登り、その樹幹に葉を広げる[7]。その枝はは高木の葉を被って日光を遮り、また幹は樹木の幹を締め付けて肥大成長を阻害するので、樹木は生長を阻害され、時に枯死する。

種子散布に関しては、上述の通りに乾燥すると鞘が二つに裂開し、それぞれがよじれることで種子を飛ばすが、この際の種子の飛ぶ力は大変なもので、当たって怪我をした人が実在するという[9]。また寺田寅彦は種子が10 mも飛んだのを目撃し、それについて随筆を書いているとのこと[5]

近縁種・類似種など[編集]

フジの所属するフジ属には日本、中国と北アメリカに合わせて6種が知られ[10]、そのうちで日本に自生するのは本種の他に以下の種がある[11]

  • W. brachybotrys ヤマフジ

フジとヤマフジは蔓の巻き方が異なるほか、違いは以下の通り。

  • ヤマフジは葉の側小葉が4〜6対と、フジ(5〜9対)よりかなり少ない。
  • ヤマフジの葉裏には毛がある。フジでは成熟時に無毛となる。
  • ヤマフジの花序は長さが10〜20 cmにしかならず、フジ(20-90 cm)より遙かに短い。そこに花の柄が同じかやや長いので、花序の形は細長い紐状でなく、まとまった房のようになる。
  • ヤマフジの苞は卵形、フジでは狭卵形。
  • ヤマフジは種子が黒褐色(フジは褐色)。
  • ヤマフジは蔓が右巻きで、左巻きのフジと逆。

なおヤマフジは京都奈良県滋賀県には見られないので、古代にフジとされるものにはヤマフジはほぼ含まれない[12]

中国産のシナフジ W. sinensis も栽培されることがあるが、これはヤマフジに似たものである[8]。アメリカ産のアメリカフジ W. frutescens も希に栽培され、やはり花序は長くならない。

他に別属であるがナツフジ Millettia japonica がある[13]。全体に似た植物ではあるがずっと小柄で、7〜8月に黄白色の花を咲かせる。系統的にもフジ属と特に近縁なものと考えられている[14]

フジの名を持つもの[編集]

フジは古代より親しまれてきたもので、色としても藤色が通用する。そのためにフジの特徴に類似する特徴を持つためにこの名を持つ植物は数多い。以下に代表的なものを挙げる。

  • 花の姿形から
  • その他
    • フジキ Cladrasis platycarpa - 葉が似ているため[22]

なおフジアザミ Cirsium purpuratum [23]やフジイバラ Rosa fujisanensis [24]などの場合、フジは富士山のことなので本種とは無関係である。ちなみにフジシダ Monachosorum maximoviczii は富士でも尾張富士である[25]

人間との関わり[編集]

実生活に関わって[編集]

他のつる性植物同様に民具の素材とされてきた[26]。蔓は丈夫なもので、これを編んで椅子や籠を作ることが行われ、また繊維を取って利用されても来た[8]

紀伊半島では、筏流しの編筏にも使用された。こちらは大きな負荷がかかることから、立ち上がって林木にからんでいる部分は強度が弱いとされ、地面に這っている部分が使用されている[27]

繊維からを織ったことも知られている[12]。この藤布を衣服としたことも知られ、主に庶民が用いるもので、江戸時代までは仕事着に用いられた[28]。ただし平安時代の貴族では喪服の時のみ藤衣を着用したという。

観賞用に[編集]

観賞用に用いられることも多い。平安から鎌倉にかけては松の緑を背景として、そこに絡まって咲く藤の花の美しさが鑑賞の基準とされ、様々な所にそのような記述が見られる[28]。例えば枕草子の84段には「めでたきもの」として「色あひ深く花房(はなぶさ)長く咲きたる藤の花、松にかかりたる」とある。

これを栽培する歴史も長く、庭の藤を愛でる言葉は万葉集にも見られる[28]

強い日当たりを好むため、公園庭園などの日光を遮るものがない場所に木材鉄棒などで藤棚と呼ばれるパーゴラを設置し、木陰を作る場合が多い。天蓋に藤のつるをはわせ、開花時には隙間から花が垂れ下がるように咲く。変異性に富んでおり、園芸品種が多い。一才藤(いっさいふじ)として鉢植え盆栽用に流通するのは、樹高50 cmくらいの一才物のフジである。

日本で有名なものに亀戸天神社東京都)、牛島藤花園長泉寺および久伊豆神社埼玉県)、あしかがフラワーパーク栃木県)などの藤がある。

大阪府の旧野田村 (大阪府西成郡)(現・大阪市福島区玉川野田吉野大開など)はノダフジ(野田藤)と呼ばれる藤の名所[注 1]で、牧野富太郎による命名のきっかけとなった。玉川に鎮座する春日神社には、野田の藤跡碑がある。

栽培品種[編集]

フジ(ノダフジ)は同属の種の中で、その花序がきわめて長いことなどの点で鑑賞価値が高いため、多くの栽培品種が生み出されて藤棚を作るために良く用いられている。またヤマフジとそれから生み出された栽培品種は切り花や鉢栽培でよく使用される[29]。シナフジは乾燥に強いためにアメリカヨーロッパではより多く栽培されており、日本でも栽培されることがあり、例えば宮崎県宮崎市の「オオシラフジ」はシナフジの天然記念物である[30]。アメリカフジは栽培されることが少なく、現地の北アメリカでさえフジ(ノダフジ)の栽培の方が多いという[30]

その他[編集]

花は可食で、シロップ漬け[3]天ぷらなどにすることができる。ただし他のマメ科植物同様にレクチンを中心とした配糖体の毒性が含まれており、多量に摂取すると吐き気、嘔吐眩暈下痢、胃痛などを起こすおそれもあるため、あまり食用には適していない。加熱されていない種子食中毒の可能性がより高くなる。その他に、樹皮やにはウイスタリン(wistarin)、種子には有毒性アルカロイドの一種であるシチシン(cytisine)が存在するという報告も上がっている。

また、山形県鶴岡市(旧藤島町)に藤の花地区が存在する。

文化的側面[編集]

下り藤さがりふじ

「藤波」という語はフジの花が波打つ様を指す言葉として古くから用いられたもので、例えば万葉集にはフジを詠んだ歌が27首ある中で18首までがこれに触れたものである[31]

藤原の姓は中臣鎌足天智天皇から669年に賜ったものとされるが、その由来は彼の出自である大和国高市郡の藤原に由来するとも言われ、春日山のフジは春日神社がこの一族の氏神であったことから手厚い保護を受けたとも言われる[31]

藤の花や葉を図案化した家紋藤紋」があり、十大家紋に数えられている程多くの家に使用されている。

脚注[編集]

[脚注の使い方]

注釈[編集]

  1. ^ 名所であったのは江戸時代のことで、明治に入って開発により数を減らし、第二次世界大戦時の空襲によりほぼ全滅した。現在同地にあるフジは1970年代以降の復興運動に依るもの。

出典[編集]

  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Wisteria floribunda (Willd.) DC.” (日本語). BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2013年8月28日閲覧。
  2. ^ a b 樹に咲く花 離弁花2』、94頁。
  3. ^ a b 刈られた「黒木大藤」の花 シロップ漬けで復活 福岡県八女市日本農業新聞』2020年6月2日(14面)2020年6月9日閲覧
  4. ^ 佐竹, 大井 & 北村 1982, pp. 247–248.
  5. ^ a b c d e 大宮 1997a, p. 2.
  6. ^ 大宮 1997a, pp. 3–5.
  7. ^ a b 園芸植物大辞典 1994, p. 2036.
  8. ^ a b c 佐竹, 大井 & 北村 1982, p. 248.
  9. ^ 大宮 1997, p. 2(写真解説)
  10. ^ 大橋他編(2016),p.305
  11. ^ 佐竹, 大井 & 北村 1982, p. 247.
  12. ^ a b 北村 & 村田 1994, p. 345.
  13. ^ 佐竹, 大井 & 北村 1982, p. 246.
  14. ^ 大宮 1997b, p. 5.
  15. ^ 牧野 2017, p. 569.
  16. ^ 牧野 2017, p. 577.
  17. ^ 牧野 2017, p. 547.
  18. ^ 牧野 2017.
  19. ^ 牧野 2017, p. 549.
  20. ^ 牧野 2017, p. 561.
  21. ^ 牧野 2017, p. 564.
  22. ^ 牧野 2017, p. 544.
  23. ^ 牧野 2017, p. 1122.
  24. ^ 牧野 2017, p. 636.
  25. ^ 牧野 2017, p. 1279.
  26. ^ 『豊田市郷土資料館だより』第99号(2020年1月9日閲覧)
  27. ^ 島田錦蔵『流筏林業盛衰史 : 吉野北山林業の技術と経済』p28 1974年10月15日 林業経済研究所 全国書誌番号:70000450
  28. ^ a b c 園芸植物大辞典 1994, p. 2037.
  29. ^ 園芸植物大辞典 1994, p. 2033.
  30. ^ a b 園芸植物大辞典 1994, p. 2035.
  31. ^ a b 足田 1997, p. 4.

参考文献[編集]

  • 茂木透写真『樹に咲く花 離弁花2』高橋秀男勝山輝男監修、山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑〉、2000年、94-95頁。ISBN 4-635-07004-2
  • 林将之『葉で見わける樹木 増補改訂版』小学館〈小学館のフィールド・ガイドシリーズ〉、2010年、251頁。ISBN 978-4-09-208023-2
  • 佐竹義輔大井次三郎北村四郎他『日本の野生植物 草本II 離弁花類』平凡社、1982年。
  • 北村四郎、村田源『原色日本植物図鑑・木本編I』保育社、1994年、改訂25版。
  • 牧野富太郎原著『新分類 牧野日本植物図鑑』北隆館、2017年。
  • 『園芸植物大事典 2』小学館、1994年。
  • 大宮徹 「フジ」 『朝日百科 植物の世界 5』 朝日新聞社、1997年、2–5頁。 
  • 大宮徹 「ナツフジ」 『朝日百科 植物の世界 5』 朝日新聞社、1997年、5–6頁。 
  • 足田輝一 「藤波から藤娘まで」 『朝日百科 植物の世界 5』 朝日新聞社、1997年、4頁。 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]