アカマツ

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アカマツ
アカマツの樹形
アカマツの樹形
保全状況評価[1]
LOWER RISK - Least Concern
(IUCN Red List Ver.2.3 (1994))
Status iucn2.3 LC.svg
分類
: 植物界 Plantae
: 球果植物門 Pinophyta
: マツ綱 Pinopsida
: マツ目 Pinales
: マツ科 Pinaceae
: マツ属 Pinus
: アカマツ P. densiflora
学名
Pinus densiflora
Sieb. & Zucc.
シノニム

Pinus densiflora f. subtrifoliata[2]

和名
アカマツ、メマツ
英名
Japanese Red Pine

アカマツ(赤松、学名Pinus densiflora)は、マツ科マツ属の常緑針葉樹である。複維管束亜属(いわゆる二葉松)に分類される。別名はメマツ(雌松)[3]。材は建築材になり、松脂からテレピン油を採り、は薬用にもなる。いわゆるマツクイムシ(松くい虫)の害に遭うと枯れやすい。

名称[編集]

和名アカマツは、文字通り樹皮が赤いのでこの名が付いている。クロマツと非常によく似ているが、がやや細く柔らかく[4]、手で触れてもクロマツほど痛くない。そのためクロマツがオマツ(雄松、男松)と呼ばれることに対比して、メマツ(雌松、女松)と呼ばれることもある[5][6]。「アカ」は樹皮の色による区分で[4]、成長すると樹皮が鱗状に剥がれるのはクロマツと同じだが、アカマツではこれがより薄く、赤っぽくなる。

特徴[編集]

よく知られる常緑針葉樹の高木[7]、目に触れる機会の多いマツである。樹高は30 - 35メートルになる[6]。日当たりの良い場所を好み、種から初めの2 - 3年は生長が鈍いが、以後急に伸びる[7]

樹皮は赤褐色で、年が経つと拮抗状の亀裂が生じる[6]。樹皮を傷をつけると粘りのある樹液が出て、後に淡黄色の塊になる。葉は、針状で2本ずつ束生しており、長さ7 - 12センチメートルの針状で[6]、基部は灰褐色の鞘状の鱗片がある。ヤニ臭がある[7]

花期は4月[6]雌雄同株[6]雄花は緑黄褐色を帯びており、若い枝に多数つく[6]雌花は紅紫色で若枝の先端につく[6]

果期は翌年の10月頃[6]果実毬果松ぼっくり)で、長さは4 - 5センチメートル (cm) の卵形になり、開花翌年に熟す[3]。毬果につく種鱗はくさび型で、その内側に長い翼がついた種子が2個つく[3]。毬果は晴れた日に種鱗を開き、種子を散らす[3]

分布[編集]

日本産のマツの中で最も広い範囲に分布し、天然状態では日本の本州四国九州[3]、国外では朝鮮半島中国東北部などに分布するほか、北海道西南部にも植林されている[3][注釈 1]道南七飯町には、明治天皇行幸を記念して植樹された並木が国道5号沿いにあり、「赤松街道」と呼ばれている[8]

温暖地に多いが、クロマツに比べかなり寒冷な気候にも耐えることができ、八ヶ岳山麓の美しの森山海抜約1,500 m)にも大規模な群落が見られる他、北海道南部でも天然林化しているものがある。

クロマツが耐潮性が強く海岸線付近に多く生育するのに対して、アカマツはどちらかといえば内陸に産し、山地山野に生え、植林も多い[6][3]

マツ属一般にそうであるように、明るい場所を好む陽樹であり、不毛な土地にも耐えることができる。安定した極相林の中では子孫を残すことができない、典型的な先駆植物である。このため、いわゆる里山に於いては、日当たりのよく栄養の乏しい尾根筋に植えられることが多かったが、現在の荒廃した里山ではその数を大幅に減らしている。

またアカマツ林は、マツタケの生産林でもある。アカマツとマツタケは相利共生の関係であり、マツタケが生えるような環境の方が生えない環境のものより寿命が長い。

系統[編集]

シベリアからヨーロッパにかけての広い範囲に分布するシベリアアカマツ(ヨーロッパアカマツ)に近縁と考えられている。ただし、シベリアアカマツはアカマツよりはるかに寒冷地に分布の中心があり、シベリアやスカンジナビアタイガの主要構成樹種となっている。また、日本国内の近縁種にクロマツがある。クロマツは海岸沿いに分布し、内陸に分布するアカマツと混交することは多くないが、まれに両者の雑種アイグロマツ)が生じることがある。

園芸品種[編集]

アカマツには下記の園芸品種がある。

Pinus densiflora 'Pendula' シダレマツ[9]
Pinus densiflora 'umbraculifera' タギョウショウ[10](多行松、シノニムPinus densiflora f. umbraculifera[11]
元から幹が分かれて立ち上がり、高木にはならない。種で繁殖させると同じ性質を持ったものができにくく、接ぎ木で殖やす。
Pinus densiflora 'Oculus-draconis' ジャノメアカマツ[12]

利用[編集]

樹形をコントロールしやすいので、庭木として栽培される他、盆栽としても利用される。

材には松脂を多く含み、火付きがよく火力も強い。そのための原料として重視されていた。化石燃料が普及した現在でも、陶芸登り窯にくべる薪やお盆松明などに使われている。京都の五山送り火でも、大量のアカマツの薪が組まれて焚かれ、それぞれ文字の形になる。

アカマツは主に建材として使用され、建物の敷居の摩擦部、和室の床柱などに使用される。 また、土の中でも腐りにくいという特徴を持つ事から土中としても利用されている。 ヤニがでやすく、やや狂いが生じやすいので利用しやすい木材とは言い難い側面もある。[13]

かつてのアカマツ林には常時人の手が入り、燃料として落ち松葉や枯れ枝が持ち出されていた。この行為によって林床が貧栄養で乾燥した他の植物の侵入しにくい条件となり、遷移を止める役割を担っていたと考えられている。アカマツだけでなくマツタケもこのような環境を好むために、マツタケ山では、そのような手入れを現在も行っている例がある。

ゴヨウマツなど、マツ科の一部の種子は松の実として食用にされている。しかしアカマツの種子は風で分散するため比較的小さく、食用にはあまり向かない。

秋田県由利本荘市の旧鳥海町矢島町には「松皮」という郷土食がある。アカマツの薄皮を剥いで重曹を入れた湯で長時間煮込んで灰汁を抜き、包丁の背で叩いて繊維を細かくほぐし、餅に練り込む。江戸時代救荒食兵糧攻めに備えたことに由来するという説がある[14]

ヤニを集め乾燥した塊を松脂(しょうし)、葉は松葉(しょうよう)と言い、生薬として用いられる[15]民間療法では、松脂を和紙に塗って貼ると筋肉痛や打撲に、また生葉を浸した松葉酒を服用すると低血圧、冷え性に効用があるとされる[15]。また、生松脂を蒸留した液がテレピン油で、残留物がロジンである[15]

害虫[編集]

俗に言うマツクイムシ(松くい虫)による被害にあうと枯れやすい[6]。マツクイムシとは、松を食害する虫の総称で、材に穿入し食害する甲虫目キクイムシ科のアメリカマツノキクイムシ、ゾウムシ科のマツシラホシゾウムシ、カミキリムシ科のマツノマダラカミキリクロカミキリや、葉を食害する鱗翅目カレハガ科のマツカレハ、双翅目タマバエ科のマツバノタマバエなどのほか[16]カミキリムシが媒介するマツ材線虫病による枯死もある。マツ材線虫病による枯死が全国的に大きな問題となっている。薬剤散布や、感染木の伐採焼却などの対策が行われている一方、この病気に抵抗性のある品種の開発もすすめられている。

葉を食べてしまうマツカレハ幼虫毛虫)がつく。対策としては、寒露の頃等になる前に地表近くの幹に藁を編んだこもを巻いて縄で止めてやると(菰巻き)、この毛虫は越冬のためにこも(と幹)の間に潜り込んで集まるので、春の啓蟄前にこもを外せば、こもごとまとめて燃やしてしまうことで駆除できる。

新(梢)マツノタマバエが産卵すると、新芽は茶色に枯れてしまう。2~3年連続して寄生されると緑の葉はなくなり、やがては松林全体が茶色に変色し、枯れてしまう。発芽した苗も寄生されるので、松は完全に駆逐される。幼虫は新梢内に寄生するので、専門家でもマツ材線虫病との区別ができない。茶色に枯れた松の枝先を初夏に採集すれば容易に区別出来る。

巨木[編集]

  • 山形県最上町東法田の大アカマツ - 1993年に日本最大のアカマツとして認定されたが、2018年頃から樹勢が衰え始め枯死した。幹回り8.56メートル、推定樹齢は600年。2021年に伐採され、材はバイオリンなどに加工される予定[17]

ギャラリー[編集]

アカマツをシンボルとする自治体[編集]

日本の旗 日本

市町村

大韓民国の旗大韓民国

アカマツをモチーフとしたゆるキャラ[編集]

脚注[編集]

[脚注の使い方]

注釈[編集]

  1. ^ ただし、亜種のエゾアカマツの割合が多い

出典[編集]

  1. ^ Conifer Specialist Group 1998. Pinus densiflora. In: IUCN 2010. IUCN Red List of Threatened Species. Version 2010.4..
  2. ^ Pinus densiflora Siebold et Zucc. f. subtrifoliata Hurus. 米倉浩司・梶田忠 (2003-) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)2018年6月3日閲覧
  3. ^ a b c d e f g 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2012, p. 246.
  4. ^ a b 辻井達一 1995, p. 15.
  5. ^ 辻井達一 1995, p. 14.
  6. ^ a b c d e f g h i j k 西田尚道監修 学習研究社編 2000, p. 30.
  7. ^ a b c 馬場篤 1996, p. 13.
  8. ^ 赤松街道 七飯町ホームページ(2021年8月31日閲覧)
  9. ^ シダレマツ 米倉浩司・梶田忠 (2003-) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)2018年6月3日閲覧
  10. ^ タギョウショウ 米倉浩司・梶田忠 (2003-) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)2018年6月3日閲覧
  11. ^ Pinus densiflora Siebold et Zucc. f. umbraculifera (Mayr) Beissner 米倉浩司・梶田忠 (2003-) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)2018年6月3日閲覧
  12. ^ ジャノメアカマツ 米倉浩司・梶田忠 (2003-) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)2018年6月3日閲覧
  13. ^ アカマツ”. 木材博物館. 2016年3月7日閲覧。
  14. ^ 【継ぐメシ!つなぎたい郷土食】松皮餅(秋田県由利本荘市)薄茶色で素朴な甘さ『日本農業新聞』2021年8月28日8-9面
  15. ^ a b c 馬場篤 1996.
  16. ^ マツクイムシ(松喰虫)”. コトバンク. VOYAGE MARKETING. 2021年8月7日閲覧。
  17. ^ 「日本一太い」マツ、枯死で伐採 バイオリンに転生?”. 朝日新聞 (2021年6月11日). 2021年6月11日閲覧。

参考文献[編集]

  • 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『草木の種子と果実』誠文堂新光社〈ネイチャーウォッチングガイドブック〉、2012年9月28日、246頁。ISBN 978-4-416-71219-1
  • 辻井達一『日本の樹木』中央公論社〈中公新書〉、1995年4月25日、14 - 17頁。ISBN 4-12-101238-0
  • 西田尚道監修 学習研究社編『日本の樹木』学習研究社〈増補改訂ベストフィールド図鑑 5〉、2000年4月7日、30頁。ISBN 978-4-05-403844-8
  • 馬場篤『薬草500種-栽培から効用まで』大貫茂(写真)、誠文堂新光社、1996年9月27日、13頁。ISBN 4-416-49618-4
  • 平野隆久写真、片桐啓子文『探して楽しむドングリと松ぼっくり』山と溪谷社〈森の休日〉、2001年、48-49頁。ISBN 4-635-06321-6

関連項目[編集]

外部リンク[編集]