特別引出権

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特別引出権(とくべつひきだしけん、: Special Drawing Rights, SDR)とは、国際通貨基金(IMF)に加盟する国が持つ資金引出し権、及びその単位である[1]ISO 4217における通貨コードはXDRである。

概要[編集]

IMF加盟国はIMFに対し借入れを行うことができるが、1970年以降、IMFを経由して他の加盟国からの資金調達が可能となった。SDRは1960年代初頭に発生した国際通貨危機の教訓をもって、1968年にIMFの総務会決議によって創設され、翌1969年に発効した。危機に直面した加盟国は、仮想の準備通貨であるSDRと引き換えに他の加盟国からドル・ポンド・ユーロ・円という通貨バスケットにある通貨を融通してもらう仕組みである[2]

価値[編集]

創設当初は当時の1ドルと同じ基準を採用し1SDR=0.888671グラムと定められたが1973年変動相場制移行を受け、標準バスケット方式と呼ばれる方式を採用している。これは世界貿易において1パーセント以上のシェアを持つ通貨を元にSDR価格を評価する方式で、個別の通貨と比肩した場合により安定性が増すという利点があった。1974年7月から1980年12月までは16通貨のバスケットであった。1981年に評価方式が見直され輸出量が上位5位以内のIMF加盟国(アメリカドルユーロ日本円イギリスポンド)通貨を加重平均して評価する方式となり、以降5年毎に見直しが行われるようになった。2014年現在のSDRの価値は0.66アメリカドルと0.423ユーロと12.1日本円と0.111イギリスポンドの和である[3]

2009年3月23日、中国人民銀行総裁の周小川がSDRの国際準備通貨化を提案して国際的な議論を巻き起こした[4][5][6][7][8]。2009年9月にはIMFは初のSDR建てIMF債の500億ドル分を中国に対外発行し[9]、これに各国も続いた[10]

2015年の見直しの年に向け、中華人民共和国は通貨バスケットへの人民元の採用を求めていた[2]。構成通貨入りには、その通貨を持つ国や地域の「輸出額の大きさ」と「通貨が自由に取引できるかどうか」との2つの判断基準を満たす必要がある[2]。2010年の見直し時には、中国はすでに輸出額の基準は満たしていたが、取引の自由度が不足とされ、採用を見送られていた[2]。このときから為替レートや金利、資本取引を巡る規制の多さは、中国の大きな課題となった[2]。中国は、預金金利の上限規制を撤廃すると発表するなど改革姿勢をアピールし、国際社会も中国の進めてきた規制撤廃を評価し、2015年11月30日に開かれた理事会で2016年10月1日から人民元のSDR構成通貨入りが決定された[2][11]。2016年8月31日に世界銀行は30年ぶりとなるSDR建て債券を中国で発行し[12]、同年10月14日にはスタンダードチャータード銀行商業銀行では初のSDR債を中国で発行した[13]国家開発銀行、中国人民銀行[14]なども中国でのSDR建て債券発行を検討している。

1SDRの価値[注釈 1]
期間 アメリカ合衆国の旗アメリカドル ドイツの旗ドイツマルク フランスの旗フランスフラン 日本の旗日本円 イギリスの旗イギリスポンド
1981–1985[15] 0.540(42%) 0.460(19%) 0.740(13%) 34.0(13%) 0.0710(13%)
1986–1990[15] 0.452(42%) 0.527(19%) 1.020(12%) 33.4(15%) 0.0893(12%)
1991–1995[15] 0.572(40%) 0.453(21%) 0.800(11%) 31.8(17%) 0.0812(11%)
1996–1998[15] 0.582(39%) 0.446(21%) 0.813(11%) 27.2(18%) 0.1050(11%)
期間 アメリカ合衆国の旗 アメリカドル 欧州連合の旗ユーロ 日本の旗 日本円 イギリスの旗 イギリスポンド
1999–2000[15] 0.5820(39%) 0.2280(21%) 0.1239(11%) 27.2(18%) 0.1050(11%)
=0.3519(32%)[16]
2001–2005[15] 0.5770(44%) 0.4260(31%) 21.0(14%) 0.0984(11%)
2006–2010[15] 0.6320(44%) 0.4100(34%) 18.4(11%) 0.0903(11%)
2011–2015[3][注釈 2] 0.6600(41.9%) 0.4230(37.4%) 12.1000(9.4%) 0.1110(11.3%)
期間 アメリカ合衆国の旗 アメリカドル 欧州連合の旗 ユーロ 中華人民共和国の旗人民元 日本の旗 日本円 イギリスの旗 イギリスポンド
2016–2020 (41.73%) (30.93%) (10.92%) (8.33%) (8.09%)

参考文献[編集]

  1. ^ a b ファクトシート - 特別引出権 (SDR)”. International Monetary Fund. 2014年10月15日閲覧。
  2. ^ a b c d e f 朝日新聞(2015年10月28日)「人民元『主要通貨』に IMF採用へドル・円などと並ぶ」
  3. ^ a b IMF、SDRの価値を決定する通貨バスケットの新たな通貨構成比を決定”. International Monetary Fund (2010年11月15日). 2015年10月15日閲覧。
  4. ^ 注目される中国発「SDR準備通貨構想」- ドル基軸体制に「ノー」と言う周小川・人民銀行総裁 -”. 経済産業研究所 (2009年4月30日). 2015年12月1日閲覧。
  5. ^ Zhou Xiaochuan. “Reform the International Monetary System”. 国際決済銀行. 2015年12月1日閲覧。
  6. ^ 周小川論文の波紋、中国から「ドル基軸通貨見直し論」?”. サーチナ (2009年4月9日). 2015年12月1日閲覧。
  7. ^ Zhou Xiaochuan. “Reform the International Monetary System”. 国際決済銀行. 2015年12月1日閲覧。
  8. ^ China calls for new reserve currency”. ファイナンシャル・タイムズ. 2009年3月24日閲覧。
  9. ^ 中国、IMF債権500億ドルの購入に同意”. 人民網 (2009年9月4日). 20016-08-13閲覧。
  10. ^ 公益財団法人国際通貨研究所「最近のSDRの活用を巡る議論に係る考察~公的・民間部門での活用の可能性の観点から~ (PDF) 」2009年11月2日
  11. ^ Press Release: IMF's Executive Board Completes Review of SDR Basket, Includes Chinese Renminbihttp://www.imf.org/external/np/sec/pr/2015/pr15540.htm
  12. ^ 世銀が中国でSDR債を起債、世界的にも約30年ぶり-720億円相当”. ブルームバーグ (2016年9月1日). 2016年9月8日閲覧。
  13. ^ 英銀、中国でSDR建て債券発行 商業銀で初”. 日本経済新聞 (2016年10月14日). 2016年10月16日閲覧。
  14. ^ 中国人民銀総裁、SDR建て債券の発行検討に言及”. 産経新聞 (2016年7月24日). 2016年7月26日閲覧。
  15. ^ a b c d e f g Antweiler, Werner (2011年). “Special Drawing Rights: The SDR Fact Sheet”. University of British Columbia, Sauder School of Business. 2011年6月19日閲覧。
  16. ^ “IMF Incorporates the euro into the SDR Valuation and Interest Rate Baskets” (プレスリリース), International Monetary Fund, (1998年12月31日), http://www.imf.org/external/np/sec/pr/1998/pr9867.htm 2009年11月14日閲覧。 

注釈[編集]

  1. ^ パーセントで示された相対的な割合は四捨五入されている。
  2. ^ SDRの価値を決める通貨バスケットはIMFが"世界の貿易及び金融システムおける通貨の相対的な重要度"をもはや示していないと判断した場合、2015年より前に再評価される可能性がある[1]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]