ザトウクジラ

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ザトウクジラ
ザトウクジラ
ザトウクジラ
保全状況評価[1][2][3]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
Status iucn3.1 LC.svgワシントン条約附属書I
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 偶蹄目/鯨偶蹄目
Artiodactyla/Cetartiodactyla
: ナガスクジラ科 Balaenopteridae
: ザトウクジラ属
Megaptera Gray, 1846[4]
: ザトウクジラ M. novaeangliae
学名
Megaptera novaeangliae
(Borowski, 1781)[3][4]
シノニム

Balena novaeangliae
Borowski, 1781[4]
Megaptera longipinna Gray, 1846[4]

和名
ザトウクジラ[5][6]
英名
Humpback Whale[4][5]

分布域

ザトウクジラ (Megaptera novaeangliae) は、哺乳綱偶蹄目(鯨偶蹄目とする説もあり)ナガスクジラ科ザトウクジラ属に分類される鯨類。本種のみでザトウクジラ属を構成する[4]

分布[編集]

種小名novaeangliaeは「ニューイングランドの」の意だが、模式標本の産地(基準産地・タイプ産地・模式産地)は不明[4]

北半球の繁殖地はコスタリカ沿岸・日本沿岸(小笠原諸島南西諸島)・メキシコ沿岸・ハワイ諸島などがある[5]オレゴン州沿岸部やハワイ諸島で繁殖する個体群は、アラスカ湾や北アメリカ大陸沿岸部で採食を行う[5]カリブ海で繁殖する個体群は、北アメリカ大陸・ノルウェー・グリーンランド沿岸部で採食を行う[5]。 日本で繁殖する個体群は、主にアリューシャン列島オホーツク海カムチャッカ半島沿岸部で採食を行っていると考えられている[5]。南半球ではオーストラリアタヒチトンガアフリカ大陸南アメリカ大陸の沿岸部で繁殖し、南極海の氷縁周辺で採食を行う[5]

南極周辺の個体に関しては、IWCによる調査に加え、日本による調査捕鯨が行われている南氷洋の東経35度-西経145度の区域で調査捕鯨に付随して目視調査が行われている。この区域には東経70-130度の区域(IV区)を中心とするD系群と東経130度-西経170度の区域(V区)を中心とするE系群の2つの系群が確認されている。尚、前述の回遊する習性から、南極周辺の個体は繁殖時期には赤道近くのオーストラリアなどへ移動している[要出典]

南極周辺のザトウクジラはかつては10万頭生息していたが、保護された時期には3000頭に減少したとされる[7]

形態[編集]

全長オス13.4メートル、メス13.7メートル[5]。最大全長18メートル[5]。胸鰭は非常に大型[4]。属名Megapteraは古代ギリシャ語で「巨大な翼」の意で、胸鰭に由来する[4]。尾鰭後縁には鋸歯状の切れ込みが入る[4][6]。全身が黒い個体や、腹面は白い個体もいるなど個体変異が大きい[5]。上顎の背面と下顎の側面に白い瘤状の隆起があり、隆起の頂部には感覚毛が生える[5]。尾鰭下面の斑紋は、個体識別に用いられる[5][6]


標準的な個体では体長11 - 16m、体重30tほどだが、大きなものは20m、60tにもなる大型のクジラである。全長の3分の1に達する長く大きな胸ビレと上下の顎にあるフジツボに覆われた瘤状の隆起が特徴の一つで、他のナガスクジラ科のクジラとは外見がずいぶん異なる。端から噴気孔にかけては僅かな隆起線が存在する。背びれは低い三角形、また尾びれにかけて低い隆起が存在する。喉の畝は12 - 36本で、幅広い[8]。背面は黒 - 青黒で、腹部に白い斑。胸びれの先端も白くなる。鯨髭は黒であるが、時折白い個体も存在する[9][10][11]。25km/hで泳ぐ。身長が小さい時期は5分、身長が大きくなれば45分息を止めて泳ぐ事ができる。

和名の由来はその姿(背ビレと背中の等)が琵琶を担いだ座頭に似ているためと言われる。英語では背中の瘤からhumpback whale(せむしの鯨)と呼ばれる。学名のMegapteraは『大きな(=Mega)翼(=Ptera)』という意味で、これは巨大な胸ビレから命名されている。

生態[編集]

水面に向かって跳躍する行動(ブリーチング)を行うことがあり、寄生虫を落とすため・コミュニケーションのためという説もあるが何のために行うかは不明とされる[6]

南半球では主にオキアミ類を食べる[4]。獲物を捕食する際に気泡を用いることもあり(バブルフィーディング)、尾鰭を水面を叩きつけたり(インサイド・ループ)噴気孔から息を排出して気泡を発生させる[6]。噴気孔から息を排出する方法では直径1 - 2メートル程度の小規模な気泡(気泡柱)で獲物の群れを取り囲んだり(気泡網)、確認事例が少ないものの一気に息を排出することで大規模な気泡(気泡雲)を発生させて獲物を下から水面に押し上げたり密集させてから捕食することがある[6]。複数の個体が協力して、バブルフィーディングを行うこともある[6]


ザトウクジラは地域毎に集団を形成している。集団でまとまって移動し、集団間では交流がほとんどない。 北半球にも南半球にも存在する。夏は極の近くで主に捕食をし、冬は赤道までは行かないが(北半球ならハワイや沖縄・小笠原あたりの)温かい海域まで移動し出産・繁殖・子育てをし、また春になるに連れ極の方に移動するという回遊生活を送っている。

繁殖の時期は、オスによるメスの獲得権争い・テリトリー争いの為行動が激しくなる。メイティングと呼ばれている。上述のブリーチングもオスが自分をアピールする為多く見られる。オス同士を煽ってメスが行う事もある。(子供も生きていく上で必要な技術なので母親が見せ子供も練習する。その他、ペックスラップ(胸鰭で水面を打つ)、テールスラップ(尾鰭で水面を打つ)、ヘッドスラップ(頭で水面を打つ)、ペダングルスラップ(尾鰭の横飛び上げ)、スパイホップ(水中から頭を出し水上の状況を観る)など様々な行動をする。

攻撃的な個体は、長い胸びれで獲物を叩き殺す事もあるという[11]

なお、オキアミが対象であるときは刺激を与えると密集する習性を利用し、尾びれでオキアミの水面上に水をかけ、集まったところを捕食する。

ザトウクジラはを歌うクジラとしても知られている。他のクジラも求愛などの際に声を出すことはあるがザトウクジラの歌は他のクジラと全く異なる。歌は1曲数分から30分以上続くが、何曲も繰り返して歌う。最長で20時間程の繰り返しが観測されている。歌の構造はよく研究されており、「歌」はいくつかの「旋律」の組み合わせから成り、ひとつの旋律は「句」の繰り返しであり、ひとつの句はいくつかの単位を並べたものからなる。このため、ザトウクジラの歌は、人類以外の動物による階層構造の利用の例として議論になっている。歌は地域毎にみると、同時期のものはクジラ毎の差異はわずかでしかないが、時とともにどんどんと変化してゆく。また、繁殖する地域によって歌い方にも特徴があり、他の地域のザトウクジラには歌が通じない。なお、この歌はボイジャー1号、2号に積み込まれた地球外知的生命体宛てのレコードにも録音されている。

人間との関係[編集]

以前は捕鯨により、生息数が減少した[3]。2018年の時点では生息数は増加傾向にあり、絶滅のおそれは低いと考えられている[3]。一方で漁業による混獲や、船舶との衝突による影響も懸念されている[3]。1975年のワシントン条約発効時から、ワシントン条約附属書Iに掲載されている[2]


同会議の別の報告によれば、調査捕鯨の際に行われた目視調査の結果やIWCによる調査結果、商業捕鯨時代のデータなどを総合したところ、D系群は早ければ10年後に、E系群は早ければ15-20年後に初期資源量まで回復すると予測された[12]


日本鯨類研究所は第二期南極海鯨類捕獲調査(JARPA-II)計画において第三期(2007-2008年)以降、年間50頭のザトウクジラを捕獲する計画を立てていた[13]。しかしこの計画は国際的な非難を招き、特にオーストラリア政府は国益保護の為に国を挙げて反捕鯨のPR活動を行い、捕鯨船監視の為に、軍隊の出動を検討した為。日本政府は2007年12月21日にザトウクジラの捕獲を取りやめると発表した。

政府レベルでの反捕鯨活動を行ったオーストラリアは南極海から回遊してくる本種のホエール・ウォッチングで年間で約150万人の観光客を集め、2億2500万ドル(約265億円)の経済効果を上げており[14]、また、絶滅の恐れのあるクジラとして、他4種とともに、個体数回復計画が実行されている[15]

分類[編集]

遺伝子解析の結果、ナガスクジラナガスクジラ属の他の種よりもザトウクジラと近縁である事が判明した。しかし、他のナガスクジラ属やコククジラとの分岐の順に関しては判明していない[16]

出典[編集]

[脚注の使い方]
  1. ^ Appendices I, II and III (valid from 28 August 2020)<https://cites.org/eng> (downroad 10/08/2020)
  2. ^ a b UNEP (2020). Megaptera novaeangliae. The Species+ Website. Nairobi, Kenya. Compiled by UNEP-WCMC, Cambridge, UK. Available at: www.speciesplus.net. (downroad 10/08/2020)
  3. ^ a b c d e Cooke, J.G. 2018. Megaptera novaeangliae. The IUCN Red List of Threatened Species 2018: e.T13006A50362794. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2018-2.RLTS.T13006A50362794.en. Downloaded on 08 October 2020.
  4. ^ a b c d e f g h i j k Phillip J. Clapham & James G. Mead, "Megaptera novaeangliae," Mammalian Species, No. 604, American Society of Mammalogists, 1999, Pages 1 - 9.
  5. ^ a b c d e f g h i j k l 粕谷俊雄 「ザトウクジラ」『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ8 太平洋、インド洋』小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著、講談社、2001年、168頁。
  6. ^ a b c d e f g 加藤秀弘 「豪快バブルフィーディング ザトウクジラ」『動物たちの地球 哺乳類II 4 クジラ・ジュゴンほか』第9巻 52号、朝日新聞社、1992年、100 - 103頁。
  7. ^ 村山司、笠松不二男『ここまでわかったクジラとイルカ』(講談社、1996)ISBN 4062571080 158頁
  8. ^ 『クジラとイルカの図鑑』 76頁
  9. ^ 『クジラとイルカの図鑑』 79頁
  10. ^ 『鯨類学』 図鑑/世界の鯨類12
  11. ^ a b 『世界哺乳類図鑑』 214頁
  12. ^ S. K. Johnston and D. Butterworth, Assessment of the west and east Australian breeding populations of southern hemisphere humpback whales using a model that allows for mixing on the feeding grounds and taking account of the most recent abundance estimates from JARPA, JA/J05/JR19[1].
  13. ^ 日本鯨類研究所、第二期南極海鯨類捕獲調査(JARPAII)の第一次調査の出港について, および 日本鯨類研究所、第二期南極海鯨類捕獲調査(JARPAII)の第三次調査の出港について を参照。
  14. ^ オーストラリア政府、YouTubeで日本の子どもに反捕鯨キャンペーン
  15. ^ [2]
  16. ^ 雑記 - 進化・分類学 ヒゲクジラの系統も SINE 法で〆(2006.08.01)

参考文献[編集]

  • 村山司『鯨類学』東海大学出版会〈東海大学自然科学叢書〉、2008年、図鑑/世界の鯨類。ISBN 978-4-486-01733-2
  • ジュリエット・クラットン・ブロック『世界哺乳類図鑑』ダン・E・ウィルソン、新樹社〈ネイチャー・ハンドブック〉、2005年、214 - 215頁。ISBN 4-7875-8533-9
  • マーク・カーワディーン『完璧版 クジラとイルカの図鑑』マーティン・カム、日本ヴォーグ社〈自然環境ハンドブック〉、1996年、76 - 79頁。ISBN 4-529-02692-2

関連項目[編集]