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雪月花

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
酒井抱一『雪月花図』(江戸時代 文政3年)

雪月花(せつげつか、せつげっか)または月雪花(つきゆきはな)[注 1]、日本語で使われる慣用句のひとつであり、白居易「寄殷協律」(きいんきょうりつ)の一句「雪月花時最憶君(雪月花の時 最も君を憶ふ)」に由来する。(ゆき)・(つき)・(はな)という自然の美しい景物やみやびなもののうるわしさを表すことばである。

概要

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殷協律は、白居易が江南にいたときの部下であり、長安からこの詩を贈ったものである。この詩における「雪月花の時」は、それぞれの景物の美しいとき、すなわち四季折々を指す語であった。そうした折々に、遠く江南にいる殷協律を思うというのである。

寄殷協律(きいんきょうりつ)
漢文 書き下し文 現代日本語訳

五歳優遊同過日
一朝消散似浮雲
琴詩酒伴皆抛我
雪月花時最憶君
幾度聽鶏歌白日
亦曾騎馬詠紅裙
呉娘暮雨蕭蕭曲
自別江南更不聞[1]

五歳ござい優游ゆうゆうともごすとも、
一朝いっちょう消散しょうさんして浮雲ふうんたり。
琴詩酒きんししゅともみなわれなげうち、
雪月花せつげっかときもっときみおもふ。
幾度いくたびけい白日はくじつうたひ、
またかつうま紅裙こうくんえいず。
呉娘ごじょう暮雨蕭蕭ぼうしょうしょうきょく
江南こうなんわかれてよりさらかず。[2]

五年の間、君と過ごしたたのしい日々は、
ある朝、浮きただよう雲のように消え散ってしまった。
ともに琴を弾き、詩を詠み、酒を飮んだ友は、みな私のもとを去り、
雪月花の美しい景色に触れると、君のことをもっとも懐かしく思い出す。
いくたび「黄鶏」の歌を聴き、「白日」の曲を歌っただろうか。
馬にまたがり、赤い裾のきぬを着た美人を詠じたこともあった。
呉娘の「暮雨蕭々」の曲は江南で君と別れてから、
一度も聞いていない。

「雪月花」は、日本の芸術・美術の特質の一つとしても捉えられており[3]、日本においては、この語句が詩歌だけでなく、以下に述べる含みを持つ語として使われるようになった。

「雪月花」は日本においては、これら三種を一度に取り合わせたものを指すものとしてしばしば用いられる。日本語における初出は『万葉集』巻18に残る大伴家持の歌「宴席詠雪月梅花歌一首」である[4]

ゆきうへに れるつくに うめはな 
りておくらむ しきもがも

万葉集、大伴家持(巻18・四一三四)

すなわち月の明るい折に、雪と花をあわせたものを提示するという遊戯的な設定を和歌の題材としたものである。この取り合わせは『枕草子』の一節に村上天皇の挿話として見え、日本の宮廷文化においては、しばしば珍しい取り合わせとして、また「最君憶」(最も君を憶う)との連想において好まれた。「雪月花時最憶君」は『和漢朗詠集』交友の部に前句とともに採られており、先に触れた村上天皇の挿話もこの連想を下敷きにしたものである。なお、大伴家持の歌は749年・32歳の作で、白居易の詩は825年・54歳頃の作と考えられている。

現代では伝統的な日本の美の感覚を連想させる語として、さまざまな場所で用いられている。地方自治法施行60周年記念貨幣の1000円銀貨共通裏面のデザインにも採用されている。

1914年宝塚歌劇団の組の花・月・雪という組分けもここから来ている。

なお、この雪月花に「風」を加えた「雪月風花(せつげつふうか)」という語も存在し、4つの文字それぞれが「(雪)」、「(月)」、「(風)」、「(花)」の四季に対応している。

日本文化との関連

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雪月花は、日本の芸術・美術の特質のひとつと考えられており、詩だけでなく他の芸能にも表現されている:

  • 和歌: 大伴家持(おおとものやかもち)など多くの歌人に詠まれ、恋や別れなどさまざまな情景をえがくテーマとなった。
  • 狂言: 「山姥(やまんば)」の小書(こがき)演出「雪月花之舞(せつげつかのまい)」といった能の演目や、豊臣秀吉が愛蔵した小面(こおもて)の銘にも使われる。
  • 茶道: 「雪月花」のを引いて行う「七事式(しちじしき)」というお点前があり、季節感を表現する[5]

三種の景物

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左から右へ:兼六園(雪)、後楽園(月)、偕楽園(花)

時代が下ると、雪月花は主に雪・月・桜の取り合わせとして理解され、この三種の景物、さらにはそうした景物をめでる風流な態度そのものを示す語句として理解されるようになった。

雪 - 天橋立
月 - 松島
花(紅葉を花に見立てる) - 宮島
雪 - 兼六園
月 - 後楽園
花(ウメ) - 偕楽園

絵画

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勝川春章 (1726–1793) の絵 月岡芳年 (1839–1892) の絵 歌川国貞 (1786–1865) の絵
雪月花図 雪月花之内 降雪之図 見立月雪花 『豊国画帖』より

脚注

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注釈

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  1. 音読語としては「雪月花」が用いられることが多いが、和語としては「月雪花」(つきゆきはな)の順で用いることが伝統的。

出典

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  1. ウィキソース出典 白居易 (中国語), 寄殷協律, ウィキソースより閲覧。
  2. 新釈漢文大系『白氏文集』(明治書院)による
  3. 矢代幸雄『日本美術の特質』(岩波書店、1943年)(第2版(1965年))
  4. 高岡市万葉歴史館「064回「雪の上に 照れる月夜に 梅の花」 越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~」『www.manreki.com』2021年7月30日。{{cite news ja}}: CS1メンテナンス: url-status (カテゴリ)
  5. 阿部宗正『茶の湯の修練七事式(裏千家茶道)花寄之式・仙遊之式・雪月花之式』世界文化社、2011年3月。ISBN 978-4-41-811300-2

参考文献

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関連項目

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