和漢朗詠集

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伊予切 和漢朗詠集

和漢朗詠集』(わかんろうえいしゅう)は、平安時代中期の歌人公卿藤原公任藤原北家小野宮流)が漢詩漢文和歌を集めた、朗詠のための詩文集(ソングブック)である。寛仁2年(1018年)頃に成立した。『倭漢朗詠集』あるいは巻末の内題から『倭漢抄』とも呼ばれる。

もともとは藤原道長の娘威子入内の際の引き出物の屏風絵に添える歌として撰集され、のちに公任の娘が藤原教通(道長五男)と婚姻を結ぶ際の引き出物として、朗詠に適した和漢の詩文を達筆で知られる藤原行成が清書し、それを冊子(粘葉本)として装幀して硯箱に納めて贈られたといわれている。

背景[編集]

当時の貴族生活と国風文化の流れのなかで編纂された詩文集である。当時、朗詠は詩会のほかにも公私のそれぞれの集まりで、その場にふさわしい秀句や名歌を選んで朗誦し、場を盛り上げるものとして尊重されていた。『和漢朗詠集』は、こうした要請に応ずる形で撰した詩文を朗詠題ごとに分類、配列したものである。

構成と内容[編集]

上下二巻で構成。その名の通り朗詠に適した漢詩および漢文588句(多くは断章、日本人の作ったものも含む)と和歌216首を選んだものである[1]。主として三代集(古今和歌集後撰和歌集拾遺和歌集)と大江維時編『千載佳句』より取材しており、詩句では唐の白居易(白楽天)の137句、ついで日本の菅原文時の40余句、和歌では紀貫之の26句を最多としている[1][注釈 1]

構成は、勅撰和歌集『古今和歌集』等にならい、上巻に春夏秋冬の四季の歌、下巻に雑歌を入れている[1]

  • 上巻
    • 立春 早春 春興 春夜 子日付若菜 三月三日付桃花 暮春 三月尽 閏三月 鶯 霞 雨 梅付紅梅 柳 花 落花 躑躅 款冬 藤
    • 更衣 首夏 夏夜 納涼 晩夏 橘花 蓮 郭公 蛍 蝉 扇
    • 立秋 早秋 七夕 秋興 秋晩 秋夜 八月十五夜付月 九日付菊 九月尽 女郎花 萩 槿 前栽 紅葉附落葉 雁付帰雁 虫 鹿 露 霧 擣衣
    • 初冬 冬夜 歳暮 炉火 霜 雪 氷付春氷 霰 仏名
  • 下巻
    • 風 雲 晴 暁 松 竹 草 鶴 猿 管絃附舞妓 文詞附遺文 酒 山附山水 水附漁父 禁中 古京 故宮附故宅 仙家附道士隠倫 山家 田家 隣家 山寺 仏事 僧 閑居 眺望 餞別 行旅 庚申 帝王附法王 親王附王孫 丞相附執政 将軍 刺史 詠史 王昭君 妓女 遊女 老人 交友 懐旧 述懐 慶賀 祝 恋 無常 白

影響[編集]

伊予切 和漢朗詠集 春

成立以後、朗詠のテキストとして、また詩作歌作の手本として広く愛賞され、書道の名家によって書写されたので習字の手本としても珍重された[1]。文学においては、平安時代以降の日本中世文学に詞章の題材をあたえた影響にはきわめて大きいものがある[1]。また、漢字仮名文字の両方で当時の流行歌が書いてあることから、寺子屋などで長年読み書きの教科書としても用いられた。に渡った日本の修行僧が当地の寺に入山するときにも納めたという記録がある。

なお、イエズス会によって1600年に出版されたキリシタン版『和漢朗詠集』の上巻が、スペインエル・エスコリアル修道院マドリード郊外)に残っている(聖ロレンソ文庫)[2][注釈 2]

古注釈書[編集]

和漢朗詠集は、平安時代末期頃から注釈の対象となっていた。具体的な古注釈書は以下のものがある。

文献資料[編集]

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ 『千載佳句』は大江維時の撰による漢詩秀句集で963年以前に成立した。上下2巻。上巻は四時・時節・天象・地理・人事、下巻は宮省・居処・草木・禽獣・宴喜・遊放・別離・隠逸・釈氏・仙道の計15部に分け、さらに各部を細別し、唐を中心に新羅高麗の詩人からも取材している。和漢朗詠集の成立に大きな影響をあたえたといわれている。
  2. ^ キリシタン版和漢朗詠集は標題表に『ROYEI,ZAFIT 和漢朗詠集巻之上』とあるように、朗詠集としては上巻のみが現存し、美濃版17葉。それに9相歌並序・無常・雑筆抄・実語教など11葉から成り、長崎版と推定されている。エスコリアルの聖ロレンソ文庫において1928年パウル・ペリオによって発見されたもので、現在知られる唯一のキリシタン版和漢朗詠集である。キリシタン初等学校(セミナリヨ)の教科書として用いられたものと考えられる。海老沢(1979)p.694

出典[編集]

参考文献[編集]

  • 南波浩 「和漢朗詠集」『日本歴史大辞典第9巻 み-わ』 日本歴史大辞典編集委員会、河出書房新社、1979年11月。
  • 海老沢有道 「和漢朗詠集」『日本歴史大辞典第9巻 み-わ』 日本歴史大辞典編集委員会、河出書房新社、1979年11月。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]