水泳

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水泳すいえい: swimming)とは、の中を泳ぐこと[1]

動物同様に、人類も昔から河川などで泳いでいた。中世の日本では、水の中を泳ぐ技術は「水術」と呼ばれ、武術の1つともされた[2]現代では水泳は、落水時などに身を守るために教えられており、またレクリエーションスポーツとして行われている。

目的[編集]

水面で着衣のまま生き延びるためのトレーニングを受ける米軍兵士。
平泳ぎをしている女性。

人は古来、楽しんだり、暑気を凌ぐために泳いでいる。主に夏に、海や川で人々は泳ぎを楽しんでいる。また、人が橋のない川を渡る際、舟を作成する時間・費用をかけられない場合は、泳いで渡ることになる。古代でも中世でも世界各地で兵士たちは戦時にはしばしば武具を身につけたまま川を泳いで渡らなければならなかった。また落水事故や転覆事故に遭った際、水面に浮き続け、生き延びるための泳ぎができるかは自分の生死に直結する。たとえば漁師は泳ぎを身につける。集団での漁では皆自分の仕事に精一杯で仲間のことにまで気が回らなくなりがちであり漁師の落水はしばしば見落とされるので、漁師は溺死しないために泳ぎを身につける。現代では世界各地で、自分の身を守るための水泳、落水した人を救助するための水泳の教育が行われている。

水泳は、全身の筋肉と総合的な身体能力を養える運動であり、水圧によるマッサージ効果によって全身の血行が促進されることから、健康維持に有効である。水泳は浮力が働く関係で下肢などの関節に負担がかかりにくく、これらの部分に問題のある患者のための有酸素運動として優れており、リハビリテーションでも積極的に活用されている[3]熱中症の危険が低いので「暑い日に好適な運動」としても選ばれるが、水泳においてもあらかじめ水分補給はしっかりしておくことが望ましい[4]

競技としての水泳を競泳という。初期[いつ?]には、川・池・湖・海などの水面をロープなどで区切って簡易なコースをつくり行われることが一般的であったが、次第に人工的なプールでの競技が普及した。初めはプールには屋根がなかったが、屋外の塵や枯葉などによる水質悪化を防ぐため、屋内プールが普及した。さらに、水温も調節されるようになった。現在、水泳の競技大会はプールで行われている。一方、プールでない水面つまり海や湖など自然の水面(オープンウォーター)で長距離を泳ぐ競技が「オープンウォータースイミング」やトライアスロンの「スイム」である。

歴史[編集]

全ての動物は泳ぐ動物から進化したので、多くの動物が生まれつき泳げる。(いわゆる恐竜の子孫だとされ)飛翔するようになった鳥類ですら泳げる。地表の70%が海であり、陸にも川・湖・池が多くあるため動物は地表を移動すればしばしば泳ぐことにもなる。なお樹上の進化の歴史が長くなった霊長類は他の動物よりは泳ぎが苦手な傾向がある。

人類は地表を移動するために川や湖を泳いだだけでなく、さまざまな目的で泳いできた。泳いでいる人を描いた約9000年前の壁画がある。古代ギリシア時代には水泳が盛んであったことも当時の絵画や彫刻からわかる。古代ギリシア・古代ローマ時代の身体訓練では水泳が重要で、「文化人の条件」としても、文字が読めることと並んで水泳ができることが必要とされていた。アッシリア王国の旧地から発掘されたレリーフには、泳いで川を渡っている兵士が描かれている。記録としては、古代エジプトのパピルス文書(紀元前2000年)、アッシリアのニムルド出土の兵士の図(紀元前9世紀)、古代中国荘子列子淮南子などがある[5]中世までの泳ぎは動物の模倣で、犬掻き平泳ぎに似ていた。19世紀に入り、スポーツの近代化とブルジョワジーが「賭けレース」をするようになったことを背景として泳ぎにスピードが求められるようになった。「速く泳ぐための泳ぎ」がつくられてゆき、もっとも原始的な泳ぎの形であるとともに平泳ぎの原型となる「両手で同時に水を掻き、両足で同時に水を後方に押しやる泳ぎ」から「両手で同時に水を掻き、両足を左右に開いたのち勢いよく水を挟んで前進力を得るウェッジキック」が考案され、現在の平泳ぎが完成した[5]。19世紀には西欧において水泳の一般化と競技化が進み[6]、1837年にはイギリスにおいて初の水泳競技大会が開催されている[7]。1875年にはマシュー・ウェッブが世界初のドーバー海峡横断泳を成功させ、水泳人気はさらに高まった[8]。20世紀に入ると女性の水泳参加も徐々に進んでいき、1912年のストックホルムオリンピックからは水泳女子種目が開始された[9]

アメリカ合衆国などではコーチと母親が一緒になって乳幼児をプールに浮かべて泳がせる教室もあり、吸収の速い乳幼児に水に触れさせることで簡単に泳ぎを習得させている。その時期を過ぎると、逆に人は訓練無しには泳げなくなってしまう(言語を乳幼児の段階で教え始めると「母語」として簡単に習得できるのに、その時期を逃すと、意識的に習得しなければならなくなるのと同様)。一方で、一度習得すると長い間泳いでいなくても忘れることはなく、最も忘れ難い運動とも言われている。特に泳ぎが下手な人間のことを俗に「カナヅチ」という。

教育[編集]

Pont d'Iénaでの水泳教室(Garsonnet画、1852年

ハーバード大学医学部によると、通常、子どもは4歳まで水泳能力を獲得するための認知能力を持たないので、注意が必要であるとしている[10]

欧州での水泳教育[編集]

ドイツオーストリアでは、子どもの約90%に「初歩泳者」(Frühschwimmer)資格を取らせることを目的とした小学校のカリキュラムがある。教育大臣によって設定された目標は95%であり、実際のパーセンテージは一部の学校で75%と低い。この資格を定めたのは、オーストリアでは民間組織と政府機関の共同委員会であるオーストリア水救助作業委員会(Arbeitsgemeinschaft Österreichisches Wasserrettungswesen)である。次のレベル1の 「自由泳者」(Freischwimmer)は、15分間の自由形、1mの高さからの飛び込み、および水泳のルール10項の習得を必要とする。レベル3「日常泳者」(Allroundswimmer)は、クロールと背泳ぎ各100メートルのメドレー、100メートル自由形2分30秒未満、水平潜水10メートル、2.5キログラムの重りをつけての垂直潜水2メートル(厚い物体を拾う)、背泳ぎ50メートル、同程度の体重の人との20メートルの救助泳英語版、水泳のルール10項の習得を必要とする。ドイツでは「水泳記章」(Schwimmabzeichen)は初歩、銅、銀、金の4つのレベルに分かれる。「初歩泳者」の水泳テストでは、飛込、25メートル自由形、水面下のものの拾得を行う。銀バッジでは、400メートル自由形12分以内、2メートル以上の垂直潜水(物体を拾う)、飛込、10メートルの水平潜水が必要である。ライフガード証明書は、組織ごとに別々に制定されている。初歩レベルは、世界最大の水難救命機関のドイツ救命協会ドイツ語版DLRGでは下級救助者(Junior-Retter)、ドイツ赤十字の水難救助分社である水守衛社では下級水救助者(Juniorwasserretter)に相当する。

スイスでは 「水泳試験」(Schwimmtests)は技能横断的な構成になっていない。各能力は単独でテストされ、複数のテスト証明書がグループを成す。基本レベル・グループなら「カニ」(Krebs)、「カワウソ」(Seepferd)、「カエル」(Frosch)、「ペンギン」(Pinguin)、「鳥類」(Tintenfisch)、「ワニ」(Krokodil)、「北極熊」(Eisbär)の7種の試験がある。

スウェーデンデンマークノルウェーフィンランドでは、5年生(11歳)で、すべての子供が泳ぐ方法と水の近くで緊急事態に対処する方法を学ぶべきだと定めている。オランダベルギーでは、水泳の授業を政府が支援している。フランスでは、小学校2-3年生・4-6歳の体育で水泳が行われる。英国には、11歳までに泳げない児童を対象に、集中的な毎日のレッスンを受けるよう求める「トップアップ制度」がある。スコットランドでは、8-9歳の生徒が水泳の授業を受ける。一般に、STA(水泳教師協会)またはASA(アマチュアスイミングアソシエーション)の2方式の制度に従い、優秀カリキュラムには泳げる距離についての定めがない。

日本での水泳教育[編集]

日本赤十字が、安全に水と親しみ、事故を防止しつつ泳ぎの基本や身を守る方法を習得するため、また水の事故に遭った場合の救助法・手当法なども習得するための講習を行っている[11]。救助員Iと救助員IIの講習がある[11]

日本では、小学校および中学校で水泳教育が適切な水泳場を確保できない場合を除き必修化され、「体育」の授業で水泳が行われている[12](なお小学校低学年では「水遊び」と呼ばれる)。1960年代から文部省が、プールや体育館などの体育設備の設置に補助金を支出したことにより、プールの設置が進んだ[13]。夏休みにプール指導が行われている学校も多い。なお2012年度以降、学習指導要領は小中学校の授業での飛び込みの指導を禁止している。学校や地域によっては、水難事故に備えた着衣水泳なども行われている。日本泳法古式泳法の伝承、海での遠泳寒中水泳などを教育訓練の一環として行っている学校もある。また水泳授業以外でも学校主催の旅行や自然学校、林間学校で海や川などでの体験学習として楽しむ水泳なども学校管理下や自治体の主催で幅広く行われている。この他自衛隊員や消防隊員などの特定職では一定上の水泳の能力を得られる教育を行っている[14]

水難から身を守り、総合的な身体能力を養うために、幼少時から水泳を習うことは非常に効果的であり、またスポーツ少年団より手軽で保護者負担がないことから、水泳は習い事としても人気である。2015年の調査では37.9%の子供が学校以外にスイミングスクールなどで習い事として水泳を学んでいる[15]。また成人しても、数多く開設されているスイミングスクールフィットネスクラブ、公営のプールなどで日常的に水泳を行う者も青年・中高年層を問わず多い[16]。スイミングスクールやスポーツクラブでは水泳の習得や身体トレーニングのためだけではなく、水泳(特に競泳)の有力選手を輩出する大きな役割を担っているが、各施設での指導カリキュラム・レベル認定は統一されていない。

学校に設置された25m屋外プールの建設費用は、概算で1億円[17][18][19]。25mプール(422立方メートル)を一回満水にする必要な水道料金は約27万円。学校に於ける屋外プール設置総数は2万8千箇所(2007年時)となっている[20]。プールが無い場合や気象条件により十分な授業時間が確保できない場合は通年で利用可能な専用施設を借りて授業を行うことがある[21]。近年では学校生徒だけでなく一般市民も利用可能な学校内プールもある。

安全性

シンガポールでの水泳教育[編集]

シンガポールでは、ほとんどの水泳学校が、新加坡体育理事会の支援を得て、2010年7月に新加坡國家水安全理事會によって導入された「游泳安全計劃」を教え、子供たちに泳ぐ方法と水中での安全の保ち方を学ばせる。子供はまた、水の安全性一般、プールの入り方、水中を前後に移動する方法についても学ぶことができる。「游泳安全階段3:個人水生存和中風發展技能」では子供たちは水中で生き残る方法と、さまざまな救助技術の扱い方を学び、100メートル泳ぐ。課程の最後は「游泳安全黃金:高級個人水生存和游泳技能熟練」である。

米国での水泳教育[編集]

米国の疾病予防管理センターでは、溺死を防ぐための予防措置を講じたうえで、1-4歳の子供たちに水泳を習うことを勧めている[22]ライフガード証明書はアメリカ赤十字が直接主催するコースで取得する。

米国では、ほとんどのスイミングスクールで、アメリカ赤十字社が定義したスイミングレベル「泳ぐことを学ぶ」を使用している。

  • レベル1:水技の紹介
    • 水慣れ。バタ足、ボビング、水中探検、伏し浮き・背浮き、水中での開眼を行う。ビート板、腕用の浮き輪を補助具として使用する場合が多い。
  • レベル2:基礎的水泳技能
    • クロール・背泳ぎで15フィート(4.6m)泳ぎ、潜水して物を取る。
  • レベル3:泳ぎの基礎
    • クロール・背泳ぎで15ヤード(14m)泳ぎ、深い水に飛び込む。
  • レベル4:泳ぎの開発
    • 25ヤード(23m)のクロール・背泳ぎ、15ヤード(14m)のバタフライと平泳ぎを行う。ターンも認められる。
  • レベル5:泳ぎの洗練
    • すべての泳ぎで25ヤード(23m)泳ぐ。フリップターンは潜行距離が15ヤード(14m)以下ならば認められる。
  • レベル6:泳ぎの熟達
    • クロール・背泳ぎ100ヤード(91.4m)、バタフライ、背泳ぎ、平泳ぎ、横泳ぎ50ヤード(46m)の、計500ヤード(457米)を連続で泳ぐ

カナダでの水泳教育[編集]

カナダでは、毎年100万人以上がカナダ赤十字水泳プログラムに参加している。生徒がプログラムを進め、経験を積むにつれて、深い水で泳ぐために学んだテクニックを身に付け、水泳中も安全であるという自信を高めるようになっている。より速いペースで同じ仕組みの追加プログラムが、安全に水泳する方法を学び自信を深めたい10代の人や大人に向け用意されている[23]

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以上のような国別の教育のほか、ウォータースポーツ類の多くが水泳を基本的技術として含んでおり、そうしたスポーツのレッスン・講習では泳ぎ方も教えられる。たとえばライフセービングサーフィンスキューバダイビングフィンスイミングは基本技術として水泳を含んでおり、それぞれの泳ぎ方のレッスンが行われる。

泳法[編集]

水泳を効率よく行うために、さまざまな泳法が存在する。競泳において用いられるものは、クロール・平泳ぎ・背泳ぎ・バタフライの4つの泳法であるが、日本泳法のようにこれらに属さない泳法も存在する[24]。日本泳法をはじめ、世界各地に独自の伝統泳法が存在し、南アメリカの伝統泳法から抜き手が、オーストラリアの伝統泳法からバタ足が導入されたように、伝統泳法から近代泳法への技術導入がなされることもある[25]。また、初心者はしばしば犬掻きを行う[26]

4泳法のなかで最も古いものは、紀元前3000年頃の古代エジプトですでに近いものが成立していたクロールであるとされるが[27]、近代西欧世界においては平泳ぎが主流の泳法となっており、やがてその派生として横泳ぎも成立した[28]。19世紀に始まった競泳においても、初期は平泳ぎか横泳ぎで行われていた[7]。やがて、1873年にイギリスのアーサー・トラジオンがトラジオン・ストロークを考案し、抜き手の技法が競技泳法に導入された[29][25]。トラジオン・ストロークでは足はまだ挟み足となっていたが、1902年にオーストラリアのディック・カヴィルがこの泳法にバタ足を導入し、クロールと呼ばれる泳法がここで成立した[30]。背泳ぎの成立はヨーロッパで15世紀頃にさかのぼるが、このころは足は平泳ぎと同じ動きだった。やがて手の動きはクロールのようになり、足もバタ足となって、1912年に現在の泳法が成立する[31]。最後に、平泳ぎが進化する形で1933年にバタフライが成立し[32]、1952年に独立した1つの泳法として認められたことで、競技4泳法が出そろった[33]

競技[編集]

水泳はあくまで「水の中で泳ぐこと」全般であり、このうち競技類を、(またなかでも主にタイムを競うものを)競泳と言う。水泳競技には競泳飛込競技水球アーティスティックスイミングオープンウォータースイミングなどの競技を含むので、夏季オリンピック世界水泳選手権日本選手権水泳競技大会で水泳という場合にはこれらすべてを含む場合がある。通常、日本語では競泳を指して水泳と言うことが多いが、飛込や水球だけを指して水泳と言うことはない。英語のswimmingは日本語の(広義の)水泳をさす場合と競泳をさす場合がある。これらの競技は、競技大会の日程及び会場等がそれぞれ異なることや競技性の違いから一般的には別の競技とされる[1] 。

競泳
プールを使用して、定められた距離を泳ぎきるのにかかる時間を競う。男女別に行われ、それぞれ個人種目とリレー種目がある。個人種目には、自由形(通常はクロール、Free Style、略称Fr)、平泳ぎ(Breast Stroke、略称Br)、背泳ぎ(Back Stroke、略称BaまたはBc)、バタフライ(Butterfly Stroke、略称BuまたはFly)の4つの泳法と、4泳法を1人で決められた順番にすべて泳ぐ個人メドレー(Individual Medley、略称IM)がある。リレー種目は、4人とも自由形で泳ぐフリーリレー(略称FR)と、4人が背泳ぎ・平泳ぎ・バタフライ・自由形の順に泳ぐメドレーリレー(略称MR)がある。なお、リレー種目には男子2名・女子2名の混合競技がある。距離は、25m(短水路のみ)から200mまであり、自由形のみ400m、800m、1500mもある。使用されるプールには片道50mの長水路と、片道25mの短水路があり、ターンの回数が多い25mプールの方が良い記録が出るため、短水路記録として別に扱われる。泳法やスタート、ターン、リレーの引継ぎなどには細かい規定がある。1896年アテネオリンピックから実施され、世界的に競技人口が多いメジャーな競技とされている。また、競泳を含むスポーツとして、近代五種競技がある。
飛込競技
専用の飛込プールとそこに設置された飛び込み台を使用して水面に向かって飛び込み、その過程の技術を競う競技である。飛び板飛込と高飛込に大別される。男女別に行われ、個人種目の1m飛び板飛込、3m飛び板飛込、10m高飛込と、2名で同時に同じ演技を行いその同調性を競うシンクロナイズド種目の3m飛び板飛込、10m高飛込がある。シンクロナイズド種目は男子1名・女子1名の混合3m飛び板飛込、10m高飛込がある。チームダイビング(団体)は男子1名・女子1名がそれぞれ3m飛び板と10m台を使って競技する。
水球
プールをフィールドとして、7名ずつの2チームで行う球技で、男女別に行われ、相手のゴールボールを入れることで得点を挙げる[34]、ハンドボールに似た競技である。プールの底に足をつけてボールを扱うことは反則である(公式競技では水深2m以上とされている)ため、基本的には立ち泳ぎをしながらゲームを行う。
アーティスティックスイミング
1名(ソロ)、2名(デュエット)、あるいは団体(チーム、通常8名)で、音楽に合わせて技術と芸術性を競う競技である。2018年まではシンクロナイズドスイミング(略称:シンクロ)と呼ばれていた[35]。音楽なしで基礎技術のみを行うフィギュア(通常はテレビ放送されることはない)、音楽に合わせて規定の技術を盛り込んで短時間で演技するテクニカルルーティン、それより長時間で音楽に合わせて技術と芸術性を競うフリールーティンがある。競技会はこの3種目の組合せで行われるが、オリンピックや日本選手権はテクニカルルーティンとフリールーティンで行われる。8〜10名の競技者がルーティンを組み合わせて構成するフリーコンビネーションやハイライトルーティンが行われる競技会もある。女子のスポーツとされていたが、国内では2001年公開の映画『ウォーターボーイズ』のヒットにより「男のシンクロ」も知られるようになった。国際的には男子1名・女子1名のミックスデュエット種目のテクニカルルーティン、フリールーティンが行われている。
オープンウォータースイミング
海・川・湖など自然環境で行われる競泳である。日本泳法の訓練あるいは行事として行われる「遠泳」と似ているように思われるが、遠泳が団体での協調性や泳ぎ切るための精神的側面を重視するのに対し、OWSはいかに早くゴールするかという競技であり、まったく異なる。
泳法に制限がないのでクロール泳法が主体だが、泳ぐ方向や風向・潮流の方向などを判断しながらの競技であるため、その局面に合わせた技術が必要である。天候や潮汐など外部からのさまざまな影響を受けやすいため、危機管理も含めて自然の中で泳ぐための知識や経験も必要とされるのは遠泳とも共通する。世界オープンウォータースイミング選手権では、男女ともに5km、10km、25kmで競技が行われている。1.25km×4名のリレー競技が行われることもある。また、10kmの競技を特にマラソンスイミングと称しオリンピック種目になっている[36]
また、オープンウォータースイミングを含むスポーツとして、トライアスロンがある。
ハイダイビング英語版
人工環境(プール)で行われる競泳に対して、自然環境で行われるオープンウォータースイミングがあるように、飛込プールで行われる飛込に対して、自然環境からの飛び込みを競技化したものがハイダイビングである。競技会では港湾など十分な水深が確保できる場所に、男子27m、女子20mの飛び込み台を設置して行われ、個人種目が行われる。足からの入水に限定されており、安全のため着水点の周囲にダイバーが配置されている。
日本泳法
日本泳法は、主に江戸時代に日本各地で武術として発祥・伝承された技術である。自己鍛錬、自己訓練として行われ遠泳、寒中水泳等の行事を伝統とする団体も多い。他方、競技としても行われる。競技会では、泳法技術の完成度を競う採点競技である泳法競技、おもりを持って立ち泳ぎをして耐久時間を競う支重競技、横泳ぎによる競泳が行われる。毎年開かれる日本泳法大会は、日本水泳連盟公認13流派が集う全国大会である[2]
水泳選手

衣類・道具類[編集]

水泳を行う際、通常は水着を着用する[37]インナーウェア下着)として水着インナーを着用する場合もある。プールを使う水泳の場合、学校であれ公営プールであれ、水質悪化を防いだり感染症を防ぐためにスイムキャップゴーグルの着用が義務付けられていることも多い。水着は19世紀頃の通常の衣服とそれほどの違いのないものから、体に密着して動きやすく、肌の露出が多い方向へと変化してきた。通常の水着のほか、水中での体温低下を抑えるウェットスーツや、イスラム教の戒律の関係で肌の露出を極力抑えた水着であるブルキニなどさまざまな特殊用途の水着が開発され、水泳で使用されている[38]。これに対し水難事故防止の目的で訓練される着衣泳においては、落水時を想定してあえて普段の服を着て泳ぐ[39]

初心者が水泳技術を習得したり、トレーニングのために使用する用具として、抵抗を増し推進力をつけるためのパドルフィン、浮力を得るためのビート板プルブイなどが使われることもある。

競泳では通常、水着を着用しスイムキャップゴーグルも使用する。タイムを競う競技では水着の抵抗が影響し、素材・裁断・縫製などでタイムが変わるので、スポーツ用品メーカー各社が激しい開発競争を行ってきた。2008年の北京オリンピックの競泳ではSPEEDO社の開発したレーザー・レーサーという競泳用水着が大会を席巻し、世界新記録が相次いで樹立されたものの、特殊な水着を入手できる一部の競技者だけが有利になってしまったことから2009年に規定が大幅に改訂され、素材・形状などに関して細かいルールが設定された[40]。アーティスティックスイミングのルーティン競技ではある演目のためだけに特注デザインの水着を用意することもある。水球では、相手選手に引っ張られたりしにくい特殊な生地の水着を着用する。競技によってはインナーウェアの着用が禁止されている場合がある。

文化[編集]

水泳は人気のあるスポーツであり、プロ選手だけでなく一般市民もレクリエーションとして、また健康を目的として水泳を楽しんでいる。自ら行う運動としての水泳は特に設備の整った先進諸国において人気が高く、ウォーキングエアロビクスに次ぐ競技人口を持っている[33]。競技人口の多さは日本においても同様であり、2012年の調査では1年以内に水泳を行った人数は1200万人を数え、ウォーキングとボウリングに次いで実施人口が多かった[41]

脚注[編集]

[脚注の使い方]

[編集]

出典[編集]

  1. ^ 広辞苑【水泳】
  2. ^ a b https://www.gov-online.go.jp/eng/publicity/book/hlj/html/202108/202108_05_jp.html 「日本の伝統的な泳法」Public Relations Office of the Government of Japan 2021年8月 2022年3月22日閲覧
  3. ^ 「健康・スポーツ科学における運動処方としての水泳・水中運動」p69-76 出村愼一編著 杏林書院 2016年9月20日第1版第1刷
  4. ^ 水泳の水分補給「熱中症、熱射病、日射病のHP」
  5. ^ a b 水泳の歴史
  6. ^ 「なぜ人間は泳ぐのか? 水泳を巡る歴史、現在、未来」p45-47 リン・シェール 高月園子訳 太田出版 2013年4月30日第1版第1刷発行
  7. ^ a b 「泳ぐことの科学」p49 吉村豊・小菅達男 NHKブックス 2008年1月30日第1刷発行
  8. ^ 「なぜ人間は泳ぐのか? 水泳を巡る歴史、現在、未来」p47-48 リン・シェール 高月園子訳 太田出版 2013年4月30日第1版第1刷発行
  9. ^ https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h30/zentai/html/honpen/b1_s00_01.html 「スポーツにおける女性の活躍」男女共同参画白書 平成30年版 日本国内閣府男女共同参画局 2022年3月29日閲覧
  10. ^ MD, Claire McCarthy (2018年6月15日). “Swimming lessons save lives: What parents should know” (英語). Harvard Health. 2022年6月10日閲覧。
  11. ^ a b 水上安全法
  12. ^ 「健康・スポーツ科学における運動処方としての水泳・水中運動」p185 出村愼一編著 杏林書院 2016年9月20日第1版第1刷
  13. ^ 三 学校体育施設の充実 学制百二十年史編集委員会、2022年1月23日閲覧
  14. ^ 水泳
  15. ^ 「健康・スポーツ科学における運動処方としての水泳・水中運動」p21-22 出村愼一編著 杏林書院 2016年9月20日第1版第1刷
  16. ^ 「健康・スポーツ科学における運動処方としての水泳・水中運動」p23-28 出村愼一編著 杏林書院 2016年9月20日第1版第1刷
  17. ^ 参考資料① (17645kbyte) - 富山市
  18. ^ 平成 26 年度 七ヶ浜中学校プール改築工事基本設計及び実施設計業務委託 実施設計仕様書
  19. ^ 初の学校プール完成 | 大磯・二宮・中井 | タウンニュース
  20. ^ 体育・スポーツ施設現況調査の概要 文部科学省
  21. ^ 多摩区で水泳の授業に温水プール利用、天候に左右されず水道代削減も/川崎 神奈川新聞
  22. ^ "Drowning Happens Quickly– Learn How to Reduce Your Risk". 疾病予防管理センター。 2014年8月18日閲覧。
  23. ^ Swimming Lessons Information from the Canadian Red Cross – Canadian Red Cross. カナダ赤十字。 2016年6月12日閲覧。
  24. ^ 「泳ぐことの科学」p37-38 吉村豊・小菅達男 NHKブックス 2008年1月30日第1刷発行
  25. ^ a b 「泳ぐことの科学」p41 吉村豊・小菅達男 NHKブックス 2008年1月30日第1刷発行
  26. ^ 「なぜ人間は泳ぐのか? 水泳を巡る歴史、現在、未来」p90 リン・シェール 高月園子訳 太田出版 2013年4月30日第1版第1刷発行
  27. ^ 「泳ぐことの科学」p39-40 吉村豊・小菅達男 NHKブックス 2008年1月30日第1刷発行
  28. ^ 「なぜ人間は泳ぐのか? 水泳を巡る歴史、現在、未来」p84-89 リン・シェール 高月園子訳 太田出版 2013年4月30日第1版第1刷発行
  29. ^ 「なぜ人間は泳ぐのか? 水泳を巡る歴史、現在、未来」p93-94 リン・シェール 高月園子訳 太田出版 2013年4月30日第1版第1刷発行
  30. ^ 「なぜ人間は泳ぐのか? 水泳を巡る歴史、現在、未来」p94-95 リン・シェール 高月園子訳 太田出版 2013年4月30日第1版第1刷発行
  31. ^ 「泳ぐことの科学」p57-58 吉村豊・小菅達男 NHKブックス 2008年1月30日第1刷発行
  32. ^ 「泳ぐことの科学」p69 吉村豊・小菅達男 NHKブックス 2008年1月30日第1刷発行
  33. ^ a b 「スポーツの世界地図」p82 Alan Tomlinson著 阿部生雄・寺島善一・森川貞夫監訳 丸善出版 平成24年5月30日
  34. ^ https://www.joc.or.jp/sports/waterpolo.html 「水泳・水球」公益財団法人日本オリンピック委員会 2022年3月22日閲覧
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  39. ^ 「健康・スポーツ科学における運動処方としての水泳・水中運動」p171-183 出村愼一編著 杏林書院 2016年9月20日第1版第1刷
  40. ^ https://news.yahoo.co.jp/articles/84710a8194d8afda061929168f415aa901e330f1?page=2 「スラップスケートOKで高速水着禁止の過去…ナイキ厚底シューズは“技術ドーピング”なのか、それとも技術革新なのか?」THE PAGE 2020/1/17 2022年3月29日閲覧
  41. ^ 「健康・スポーツ科学における運動処方としての水泳・水中運動」p20 出村愼一編著 杏林書院 2016年9月20日第1版第1刷

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

文部科学省
岐阜県
競技関連