コンテンツにスキップ

ノグチゲラ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ノグチゲラ
ノグチゲラ
ノグチゲラ Sapheopipo noguchii
保全状況評価[1]
CRITICALLY ENDANGERED
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 鳥綱 Aves
: キツツキ目 Piciformes
: キツツキ科 Picidae
亜科 : キツツキ亜科 Picinae
: ノグチゲラ属 Sapheopipo
Hargitt, 1890
: ノグチゲラ S. noguchii
学名
Sapheopipo noguchii
(Seebohm, 1887)
和名
ノグチゲラ
英名
Okinawa woodpecker
Pryer's woodpecker
野生のノグチゲラ

ノグチゲラ(野口啄木鳥[2]Sapheopipo noguchii)は、鳥綱キツツキ科ノグチゲラ属に分類される鳥類。本種のみでノグチゲラ属を構成する。

分布

[編集]

日本沖縄島北部)[2][3][4][5][6][7]固有種[8]名護市の山林で2015年5月11日に営巣、巣立ちが確認された[9]

形態

[編集]

全長31センチメートル[2][4][6][7]。翼長15-17センチメートル[8]。全身の羽衣は暗赤色や濃赤褐色[4][8]。背や腹部の羽衣、尾羽基部の下面を被う羽毛(下尾筒)は赤みを帯びる[4][7][8]。顔や喉の羽衣は淡褐色[3][7]。翼は暗褐色[6]。初列風切には白い斑点が入る[3][6][7]

虹彩は褐色や赤褐色[4]。嘴は淡黄色や黄白色で、基部は青灰色みを帯びる[3][7]。後肢は灰黒色[7]

幼鳥は頭頂の羽衣が暗褐色。また嘴は黒褐色[8]。オスの成鳥は頭頂から後頭にかけての羽衣が赤く[3][6][8]、暗褐色の斑紋が入る[7]。メスの成鳥は頭頂の羽衣が黒褐色[3][4][6][7]

分類

[編集]

ミトコンドリアDNA内のシトクロムb分子系統学的解析では、アカゲラ属に近縁と推定されている[6]

生態

[編集]

山地にあるスダジイタブノキからなる照葉樹林に生息する[2][4][7]

食性は動物食傾向の強い雑食で、昆虫クモ多足類果実アカメガシワ、スダジイ、ヒメイタビマテバシイヤマモモ)などを食べる[6][8]。周年で無脊椎動物を食べるが、夏季から冬季にかけては果実を食べる[6][8][10]。倒木を穿孔したり地表で採食を行うが[4]、地中にいる獲物を掘り起こして食べることもある[6]。地中の虫などを掘り起こす行為は雄のみで確認されており、雌は主に木の上にある実などを捕食する。

繁殖形態は卵生。繁殖期になるとペアで4-7ヘクタールからなる縄張りを形成する[4]。直径20センチメートル以上の枯れ木に穴を空けた巣に、4-5月に1回に2-4個の卵を産む[8]。同じ木に別の巣をつくることはあるものの、同じ巣は使わない[8]。雌雄交代で抱卵し[4]、抱卵期間は約11日[8]。育雛も雌雄共に行う[4]。雛は孵化してから約27日で巣立つ[6]

人間との関係

[編集]

英名 Pryer's は本種の記載にあたり標本を提供したヘンリー・ジェームズ・ストヴィン・プライヤーに由来する。

種小名 noguchii はプライヤーの意向でノグチなる人物に献名されたものである[11]。1886年(明治19年)琉球諸島での採集の帰途、横浜行の広島丸で同室しているノグチがそれと思われるが、函館博物場の事務でプライヤーと交渉を持った函館県職員野口源之助が、1885年(明治18年)函館県が北海道に統合された際に退職し、通訳として同行したものとも考えられる[12]

開発による生息地の破壊により生息数は減少している[4][6][8]。人為的に移入されたネコ、フイリマングースなどによる捕食などにより生息数は減少も懸念されている[6][8]。さらに生息数が増加傾向にあるハシブトガラスによる雛の捕食によって生息数が減少している[6][8]1972年に国の天然記念物1977年に特別天然記念物、1993年種の保存法施行に伴い国内希少野生動植物種に指定されている[6][13]。2010年6月には沖縄県東村で「ノグチゲラ保護条例」が制定された。生息地域を保護地区に指定し、無断立ち入りや周辺で騒音を出すなどの行為に対する罰則を盛り込んだ条例であり、繁殖拡大につながると評価されている[14]

絶滅危惧IA類 (CR)環境省レッドリスト[8]

脚注

[編集]
  1. ^ Dendrocopos noguchii (Noguchi's Woodpecker, Okinawa Woodpecker, Pryer's Woodpecker)”. International Union for Conservation of Nature and Natural Resources.. 2018年7月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年3月29日閲覧。
  2. ^ a b c d 安部直哉 『山溪名前図鑑 野鳥の名前』、山と溪谷社2008年、113頁。
  3. ^ a b c d e f 五百沢日丸 『日本の鳥550 山野の鳥 増補改訂版』、文一総合出版、2004年、115頁。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l 小原秀雄浦本昌紀・太田英利・松井正文編著 『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ4 インド、インドシナ』、講談社、2000年、184頁。
  5. ^ 黒田長久監修 C.M.ペリンズ、A.L.A.ミドルトン編 『動物大百科8 鳥類II』、平凡社、1986年、162頁。
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 小高信彦(著)、沖縄県文化環境部自然保護課(編)「改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物(レッドデータおきなわ)第3版-動物編- 3.4 鳥類」(PDF)、沖縄県、2018年、2021年8月1日閲覧 
  7. ^ a b c d e f g h i j 真木広造、大西敏一 『日本の野鳥590』、平凡社、2000年、390頁。
  8. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 石田健. “絶滅危惧種情報(動物)- ノグチゲラ -”. 絶滅危惧種情報検索. 環境省 自然環境局 生物多様性センター. 2013年5月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年3月29日閲覧。
  9. ^ 名護市でノグチゲラ繁殖 環境省「分布拡大の可能性”. 沖縄タイムス (2015年5月14日). 2015年5月15日閲覧。
  10. ^ 代島.伊澤.石田(2015).
  11. ^ Seebohm, Henry (1887). “Notes on the Birds of the Loo-choo Islands.”. The Ibis (British Ornithologists' Union) 5. https://archive.org/stream/ibis55brit#page/178/mode/1up. 
  12. ^ 加藤克「明治初期の「自然史」通詞 野口源之助 : ノグチゲラの名前の由来 (試論)」『北大植物園研究紀要』第6巻、北海道大学北方生物圏フィールド科学センター植物園、2006年8月、1-24頁、ISSN 13471333NAID 120000951869 
  13. ^ 国内希少野生動植物種” (PDF). 環境省 (2012年4月). 2012年6月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年3月29日閲覧。
  14. ^ 沖縄、ノグチゲラ保護条例が成立 東村議会で入域罰則も”. 共同通信 (2010年6月17日). 2013年9月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年9月18日閲覧。

参考文献

[編集]

関連項目

[編集]