郵便

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郵便(ゆうびん)とは、郵便物を送達する(送り届ける)制度のことである。また、郵便物のこと。

初期の郵便では、しばしば郵便物は定められた少ない経路上だけを運ばれた。これは19世紀のフィンランドにおける馬車を用いた郵便物輸送の様子。
郵便物を運ぶ現代の貨物列車(スイス)。スイスでは離れた都市間では貨物列車で運ばれ、それがトラックに移し替えられ、各地区の郵便局から小型トラックや自転車等々に積まれて配達されることになる。 現代フランスでは高速鉄道TGV(日本の新幹線相当の列車)の中に、まるまる一編成が郵便専用に割り当てられているものがある。
郵便物を運ぶ現代の貨物列車(スイス)。スイスでは離れた都市間では貨物列車で運ばれ、それがトラックに移し替えられ、各地区の郵便局から小型トラックや自転車等々に積まれて配達されることになる。
現代フランスでは高速鉄道TGV(日本の新幹線相当の列車)の中に、まるまる一編成が郵便専用に割り当てられているものがある。
1803年ロンドンの中央郵便局内の様子 現代のカナダの某郵便局内の設備群と郵便物(2006年)
1803年ロンドンの中央郵便局内の様子
現代のカナダの某郵便局内の設備群と郵便物(2006年)
写真は初の郵便切手、1840年から発行されたペニーブラック。郵便切手というのは、表示されている料金をすでに受け取ったということを証明する証紙の一種である。
1870年のフランスでの初の航空郵便の実施を記念したプレート。(フランス、メス市) ドイツで初の航空便を行う様子(1912年)
1870年のフランスでの初の航空郵便の実施を記念したプレート。(フランスメス市
ドイツで初の航空便を行う様子(1912年)

概説[編集]

広辞苑では「信書(書状、はがき)その他 所定の物品を国内・国外へ送達する通信制度」と説明している[1]。つまり、郵便とは郵便物を送達する仕組み・制度のことであり、(俯瞰してみれば)通信制度(通信システム)のひとつである、というわけである。

また「郵便」は郵便物の略称として用いられることもある[1](あくまで略称的用法である。郵便物に関しては「郵便物」の記事を参照すればよいので、当記事では本来の郵便制度に重きを置いて説明する)。

各国の郵便で基本となっているのは、定められた寸法や重量を守った郵便物に宛先を明記し、郵便局等において、寸法や重量のカテゴリごとに一定の料金を支払うと、郵便事業者が宛先へと配達してくれる、というものである。また同様に、通常の速さ(日数)で送るはがき封書などは、わざわざ郵便局に足を運ばなくても、郵便物に料金相当分の切手を貼付し郵便ポストに投函すれば、郵便事業者がポストを定期的に巡回しておりそれを集めて郵便局へ運び、その後は郵便局であずかった郵便物と同様に、宛先まで送達する、という仕組みもかなり一般的である[注 1]

郵便物の宛先(送達先)は、企業などの所在地、個人の住所などが指定されることが一般的で、その場合、企業や個人の郵便受けに届けられる。また宛先には、郵便局の私書箱が指定される場合があり、この場合は、郵便物は特定の郵便局の特定の箱に届けられることになり、受け取り人のほうが適宜(受取人の都合のタイミングで)その箱へと出向いて郵便物を受け取ることになる。

近代郵便制度[編集]

しばしば1840年1月、ローランド・ヒルが考案した均一料金郵便制度が英国で施行されたことをもってして、近代郵便の基礎の確立と見なされている。

郵便システムのひとつの特長として(かつてしばしば)指摘されたことは、距離にかかわらず、遠方であっても料金が一定だということである。「10kmだと安いが、500kmだとその50倍の値段をとる」といったシステムは採用していない、ということも特長だとしばしば指摘されていた。素人や子供が考えると、例えば「10kmの配達に対して500kmは50倍の料金をとるようにしたほうが理にかなっているのでは?」と考えてしまうが、そうはしなかったところに郵便の良い点があるという。

遠距離でも近距離と同様の一定の料金、とするシステムにした理由は、この郵便の歴史の初期の段階で これを考案した賢い人が、実際に事務量・総労働量がどのようなものになるのか、あらかじめ検討・比較してみて、適切なほうを選んだ、と指摘されている。郵便料金を、距離や地域ごとに計算するとなると、郵便局の窓口では、お客が郵便物を持ちこむたびに、広大な地図および膨大なマトリックス表をひろげては(そしてかつてであればコンピュータも無いのでそれをほとんどすべて手計算で)複雑な計算をし、料金を告げ、お客はその料金を聞いておもむろにお金を用意して支払う、などというとても面倒な作業を繰り返すことになる。もしも はがき一枚一枚に対して、そのような対応方式を採用すると、窓口の計算業務がとてつもなく膨大になり、全従業員のほとんどが朝から夕方までその計算ばかりやらなければ対応しきれない状態になり、肝心の郵便物の運送・配達にまわせる人員が全然足らなくなることが予想できたという。経営者的によくよく検討・比較してみると、遠方でも一定の料金で請け負ったほうが、かえって全従業員の総労働量が圧倒的に減る(経営者から見ると、人件費なども含めた総経費が膨張しすぎず、経営を成立させやすい)、というものであったのである。また郵便物の送達距離分類を統計的に考えても、比較的近距離の送達が統計的には多かったので、その面からも正解だったようである(実際にやりとりの全体数の中での距離の統計的分布に着目すると、同一市内や近隣市の人・商店・会社同士のやりとりの数が圧倒的に多く、それに比べると数百km〜千km離れた関係はかなり少ない。なので統計を踏まえた上で経営的(費用的)に検討してみると、全体としてさほど負荷にはならず、遠距離送達はユーザに対する一種の「おまけ」的にサービスを提供しても大丈夫だった)。また郵便を使う側の人々にとっても、計算があまりに複雑では、支払う「郵便代」の内訳の大半が実は「窓口でその郵便代を計算する人の事務代金(人件費)」という事態になり、しかも料金も高くなり、とても理不尽となる。利用者から見て、一定料金にしてもらったほうが、結果として安上がりでしかも分かりやすい、ので、利用者にとってもやはりこれで正解だった、というわけである。

国際郵便[編集]

トルコ、コンスタンチノープルにあった、ドイツの郵便局(1870年の絵ハガキの写真)。国際郵便制度がなかった当時は、ドイツ人がトルコからドイツ本国へと郵便物を送るためには、トルコ国内にわざわざドイツ郵便局を作らざるを得なかったのである。

各国の事情に応じて郵便事業が行われるようになりそれぞれ別のものであったが、国境を越えて配達できないようでは不便(国境を超えられればとても便利)であるので、郵便事業体間で郵便物を相互にやりとりする試みがあったが、郵便料金をどのように設定するのかとか、事業体間でどのようにお金の決済をするのか、という、いささか難しい問題を解決する必要もあった。1874年には万国郵便連合が発足し、現在、これに加盟している郵便事業体間であれば郵便物を送り届けられるようになっている。

歴史[編集]

世界初の郵便は、ドイツ・イタリアの名門一族の人物フランチェスコ・デ・タシス1世が、Thurn und Taxisを設立・運営する中で1516年から行ったものであり、ヨーロッパ全域を対象に開始したものである。

1657年にイギリス政府は郵便を国営事業にした。だが経営危機に陥り、ローランド・ヒルが改革を行うことになった[2]

1840年1月、ローランド・ヒルの考案による均一料金郵便制度が英国で施行されたことにより、近代郵便の基礎が確立された。世界最初の郵便切手ペニー・ブラック」の発行を伴ったことから、この郵便制度は通称「ペニー郵便制度」ともよばれた。

2006年万国郵便条約が発効。

各国の郵便事業体[編集]

アメリカ合衆国では、公営の郵便サービスと民間企業の様々なサービスが競い合っており、互いに切磋琢磨している。しばしばポストも、行政の郵便と、FedEx(フェデックス)、UPS等々のものとが並んでいる。

各国の主たる郵便事業体(事業主)は次に示すようになっている。ただし、国ごとに国営/民営の割合は異なっている。もっぱら国営という国もあれば、郵便のほとんどが民営の企業によって運営されているという国もある。

アメリカ合衆国[編集]

アメリカにおける郵便事業は公共企業体であるThe United States Postal ServiceU.S.P.Sアメリカ合衆国郵便公社)が行っており、あくまで郵便を行っており、貯金事務や簡易保険事務などは行ってない。

基本サービスとしては次の3種類を行っている。

  • Express Mail
3種類の中で最も速い速達。集配翌日の正午〜15時までに受取人に配達することを依頼人に保証しており、時間内に届かなかった場合は依頼人に料金が返却されることとなっている。また、無料で$100までの保険を付加することも可能。これはその速達性から、依頼主との信用関係を確保するためである。Express Mail Flat-Rate Envelopeという専用封筒で送ると、重量に関係なく一律$13.65の料金で送ることができる。封筒は無料で、各郵便局に置かれている。その他、インターネットで依頼封書・小包が現在どこにあるかを確認することができる。
  • First-Class Mail
アメリカ国内であれば1日から3日以内で配送される。機密性の高い文書(請求書の書類や法定文書など)に利用される。U.S.P.Sの定型はがきの大きさであれば、料金は23セント。それより大型のものであれば、封書の料金(37セント)となる。ただし長方形以外の変形封書は追加料金がかかる。
  • Priority Mail
アメリカ国内であれば3日以内で配送される。ただし荷物には大きさの制限があり、縦・横・高さの合計が180インチ(約45cm)以下で、重さは70ポンド(約32kg)までのものとしている。これもPriority Mail Flat-Rate Envelopeという専用封筒を利用すると、送り先や重量に関係なく一律$3.85で送ることができる。U.S.P.Sのウェブサイト1でプリントアウトした宛名レーベルを使用すると、無料で配達確認サービス(Delivery Confirmation)が付加される。
アメリカ合衆国の大学ではしばしば、学生ひとりひとりのための郵便受けが大学構内に用意されている。

U.S.P.S.は他にも次のサービスも提供している。

  • Parcel Post
小包の配送サービスで、JP(日本郵政)のゆうパックに相当。アメリカ国内であれば2日から9日で配達される。縦・横・高さの合計が130インチ(約330cm)、重量70ポンド(約32kg)の大きさまでの制限がある。
  • Media Mail
本やCD、DVD、ビデオテープなどの配送向郵便。アメリカ国内であれば8日ほどで配達される。料金はParcel Postよりも安価。

イギリス[編集]

イギリスにおける郵便事業は、1700年代以降350年以上に渡り国営のロイヤルメールRoyal Mail)が公社方式が独占的に行ってきたが、2001年に公社方式から英国政府100%出資株式会社へと変更された。ロイヤルメールグループとして数十社を展開、主にポストオフィス(Post Office。つまり郵便局で、窓口業務や郵便貯金事務などを行う)とパーセルフォースParcel Force。国際小包配送を行う)が実務の中核を担っている。2005年に郵政事業参入の自由化が行われ、ドイツ・ポストUKメールなどの新規参入が相次いでおり競争状態で業務を行うようになった。

ドイツ[編集]

1995年までは、国営の連邦郵便公社が郵便、電話、貯金の事業を行っていた。同公社は1995年に、ドイツテレコムドイツ・ポストバンクドイツポスト(DeutschePostAG)[3]の3社に分割され、ドイツポストは民営化され株式会社となった。

現在のドイツでは、このドイツポストが主に扱っている。

オランダ[編集]

オランダにおいては、民間会社であるTPGPOSTが郵便事業を行っている。TPGPOSTは完全民間資本であり、他のヨーロッパ諸国の郵便組織のように部分的にでも政府資本を入れるようなことを一切していないところに特徴がある。

中華人民共和国[編集]

現在、郵便業務の実質的経営は中国郵政集団公司が行っている。

中国では2006年に郵政事業と通信事業が分割された。2007年には、貯金業務も中国郵政儲蓄銀行として独立した。また2007年に、郵便事業を行う主体が、監督官庁の国家郵政局と、実質的経営を行う中国郵政集団公司に組織分割された、という経緯がある。

台湾(中華民国)[編集]

台湾における郵便事業は、中華民国政府が出資する中華郵政(中華郵政股份有限公司)が行っている。( なお、2007年から2008年にかけて一時期「台湾郵政」と呼称していた。)

かつて中華郵政は中華民国交通部郵政総局であったが、組織改革によって2003年1月1日に公共企業に改組し、交通部が100%出資する国営公司となった。事業内容は郵便事業および郵便貯金事業。

大韓民国[編集]

大韓民国では知識経済部が郵便、預金(貯金という用語は使用していない)、郵便局保険(簡易保険に相当)を取り扱っている。

日本[編集]

日本では「民間事業者による信書の送達に関する法律」(通称・信書便法)の条件を満たせば民間が参入することもでき、高付加価値型の郵便サービスである特定信書便については404事業者(2013年7月5日現在)[4]が参入している。英語で言うpostal serviceつまり一般概念としての"郵便"を民間企業も行うようになっている。

なお、"全国全面参入型"の一般信書便には参入する事業者がなく、もっぱら日本郵政グループが行っている。

なお、過去のいきさつもあり、実質的にpostal service(つまり郵便)を行っているにもかかわらず、日本で「郵便」と(商標的に)表記できるのは今のところ日本郵政グループのみ、となっている。

競合サービスとして民間企業(運輸会社各社等)のメール便(宅配便)がある。

日本の郵便の歴史[編集]

日本において通信制度が現れたのは、伝馬などを利用して公用通信に供した「大化の駅制」とされる。この駅制は盛衰を続け、鎌倉時代に至って飛脚の出現となり、戦国時代には大名の書状送付に飛脚が利用されるなどを経て、徳川時代幕府の整備により武家町人が利用できる飛脚屋・飛脚問屋などの制度が発達した。

明治時代に入り飛脚から郵便に移行し、明治3年(1870年)5月に駅逓権正となった前島密が駅逓寮に入ると太政官に郵便制度創設を建議した。しかし、前島は同年6月から上野大蔵大丞に差添し渡英したことから、前島の郵便制度創設案を6月22日から駅逓権正として引き継いだ杉浦譲と各地に派遣された官史の尽力により、明治4年(1871年)1月24日に「書状ヲ出ス人ノ心得」及び「郵便賃銭切手高並代銭表」、「郵便規則表」等の太政官布告が公布され、4月20日3月1日)に現行の郵便制度の礎となる郵便制度が確立された。布告に用いられた「郵便」の名称は、前島の案に準じたものであった。

近代日本の郵便制度は、前島密により東京〜京都〜大阪間の政府の手紙等の配達に毎年1500両支出していたのを政府の手紙配達に民間の手紙配達を併せて配達し利益を出す提案から、東京〜大阪間62箇所の郵便取扱所で官吏が引き受け・管理・配送時間厳守で始まり、従来の飛脚が東京〜大阪間144時間だったのを78時間に短縮した。

1872年8月に前島が英国より帰京すると、さらに全国展開が図られ、江戸時代に地域のまとめ役だった名主をほとんど無報酬で要請・任命し自宅を郵便取扱所とさせ、1873年(明治6年)には全国約1100箇所の名主が新たな国の役割を担える郵便取扱所として快諾した。

日本の郵便物[編集]

日本郵便が取り扱うその他の郵便サービス[編集]

JAPANPOST-DSC00250.JPG日本の郵便配達の様子

日本の郵便関連[編集]

郵便を題材とした作品[編集]

Category:郵便を題材とした作品を参照。

出典[編集]

[編集]

  1. ^ 郵便に十分な人員が当てられていない国などでは、郵便ポストはほとんど設置されていない場合もある。

出典[編集]

  1. ^ a b 広辞苑第六版「郵便」
  2. ^ 北岡敬『そこが知りたい【事始め】の物語』雄鶏社
  3. ^ dpwn.de
  4. ^ 総務省|信書便事業者一覧” (日本語). 総務省 (2013年). 2013年8月15日閲覧。
  5. ^ 郵便為替規則(大政官府告書明治7年第90号)、明治八年(1875年)一月二日ヨリ駅逓寮二於テ郵便為替規則ノ通リ三拾圓以下少額ノ為替方法施行候

参考文献[編集]

  • 『通信事業五十年史』逓信省、1921年

関連項目[編集]

外部リンク[編集]