ナウ・アンド・ゼン (ビートルズの曲)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。大杉 芳文 (会話 | 投稿記録) による 2022年8月11日 (木) 13:12個人設定で未設定ならUTC)時点の版であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

ナウ・アンド・ゼン
ジョン・レノン楽曲
英語名Now and Then
録音
時間4分56秒
作詞者ジョン・レノン
作曲者ジョン・レノン
ナウ・アンド・ゼン
ビートルズ楽曲
英語名Now and Then
録音
  • 1995年3月20日 - 21日[1]
    • ザ・ミル
    • フライアー・パーク[1]
作詞者ジョン・レノン
作曲者ジョン・レノン
プロデュースジェフ・リン

ナウ・アンド・ゼン[注釈 1]」(Now and Then)は、元ビートルズジョン・レノンによって書かれた楽曲。1978年にレノンによってニューヨークの自宅(ダコタ・ハウス)で本作のデモテープが制作され[2]、1995年にレノンが生前に残したデモテープを基にポール・マッカートニージョージ・ハリスンリンゴ・スターの残った3人のメンバーによって編曲されたが、後述の理由でいずれの音源も未発表となっている。

未発表という事情により、本記事名で使用している「ナウ・アンド・ゼン」という邦題は仮称である。

ビートルズ・バージョン

1994年に「ザ・ビートルズ・アンソロジー」プロジェクトの一環として、マッカートニー、ハリスン、スターの3人は新曲をレコーディングをすることを計画した[3]。それにあたり、マッカートニーはオノ・ヨーコよりレノンが生前に残した本作と「フリー・アズ・ア・バード」「リアル・ラヴ」「グロー・オールド・ウィズ・ミー」の4曲[4][1]のデモテープを受け取った[3]

1994年2月、3人はプロデューサーにジェフ・リンを迎え、レノンが生前に残したデモ・テープを基に新曲の制作を開始。作業はサセックスにあるマッカートニーの自宅スタジオ「ザ・ミル」で行われた[5]。このセッションで完成した「フリー・アズ・ア・バード」が『ザ・ビートルズ・アンソロジー1』、「リアル・ラヴ」が『ザ・ビートルズ・アンソロジー2』に新曲として収録され、「ナウ・アンド・ゼン」も『ザ・ビートルズ・アンソロジー3』に新曲として収録することが予定されていた[6]。1995年3月20日と21日に本作のための作業が行なわれた[1][7]が、最終的に破棄されることとなった[8]

楽曲のプロデュースを手がけたジェフ・リンは、本作について「『ナウ・アンド・ゼン』は、ある日の午後にトライした曲だ。この曲のコーラスはできていたけど、そこに繋がるヴァースがほとんどできていなくて、僕らはどうにかしようとしたけど完成することはなかった」と語っている[9]。レノンが生前に残したデモ・テープには雑音が入っており、完全に雑音を消去することができなかったことも理由とされている[8]。その代替として『ザ・ビートルズ・アンソロジー3』には、ジョージ・マーティン作のインストゥルメンタル「ア・ビギニング[注釈 2]」が収録された[11]

1997年に発行された『Q』誌でマッカートニーは、本作の作業について「ジョージが気に入っていなかった。ビートルズは民主主義だから、僕らはやらなかった」[12]と語っていて、2006年にも「元のタイトルは良いとは言えなかった。少し手を加える必要があったけど、美しいヴァースとそれを歌うジョンの声が入っていたよ。でもジョージはこの曲をやることを望んでいなかった。最も良い方法はジョンともう一度取りかかるほかなかったからね。ヘッドフォンでジョンが歌っている声を聴くと、隣の部屋にジョンがいるようだった。実現しない夢のようなものだよ」と語っている[8]

1995年のセッションに参加していたスタッフの1人(詳細は不明)は、「ジョージがやりたくなかった理由は、この曲にボーカルを多重録音したり、ベースやドラムを少し重ねて完成というものではなく、ジョンが作ったわずかなパートを基にほとんど1曲を作り上げることだったからだ」と語っている[9]

その後

2007年4月29日にマッカートニーがハリスンの演奏をアーカイブから使用し、スターと共に完成させ、配信限定のフォーマットで発売することを発表したが[9]、この発表以降も本作は発売に至っていない。一方、レノンによるデモ音源については、海賊盤で流通している[8]

2013年にアメリカのケーブルテレビ・チャンネルVH1が発表した「ぜひ聴きたい最高のビートルズの未発表曲 TOP20」(20 Awesome Unreleased Beatles Recordings We Want To Hear)では第1位にランクインした[13]

リアム・ギャラガーは、2015年に本作について「必聴モノ。『フリー・アズ・ア・バード』と同じように、他の3人がミキシングしたんじゃなかったかな。とにかくすごくきれいなメロディだ。ソングライターの立場から言えば、未だにレノンの域に達したやつはいないし、今後もいないかもしれない」と語っている[2]

マッカートニーは、2012年にBBC Fourで放送されたリンのドキュメンタリー番組の中で本作について触れ、リンとともに完成させるつもりであることを語っており[14]、2021年10月にも本作を完成させたいと考えていることを明かしている[15]

脚注

注釈

  1. ^ タイトルは「I Don't Want to Lose You」や「Miss You」ともされる[1]
  2. ^ リンゴ・スター作の「ドント・パス・ミー・バイ」のイントロとして作曲されたが、最終的に没となった楽曲[10]

出典

  1. ^ a b c d e Badman 2001, p. 517.
  2. ^ a b リアム、アレックス・ターナー、ポール・ウェラーら、ジョン・レノンの神髄を語る”. NME Japan. BandLab UK (2015年10月15日). 2020年4月17日閲覧。
  3. ^ a b The Beatles Anthology DVD 2003 (Special Features: Recording Free as a Bird and Real Love - 0:00:50–0:01:04) Starr talking about the idea of recording incidental music for the Anthology project.
  4. ^ Everett 1999, p. 8.
  5. ^ The Beatles Anthology DVD 2003 (Special Features: Recording Free as a Bird and Real Love – 0:06:47) McCartney talking about recording and finishing the song.
  6. ^ Doggett, Peter (2009) [2005]. The Art and Music of John Lennon. London: Omnibus Press. p. 381. ISBN 085712126X 
  7. ^ Harry, Bill (2004). The Ringo Starr Encyclopedia. London: Virgin Books. p. 148. ISBN 0-7535-0843-5 
  8. ^ a b c d “Paul McCartney regrets not finishing third Beatles reunion song”. The Rock Radio (The Rock Radio LTD). (2006年12月18日). オリジナルの2007年1月4日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20070104062208/http://www.therockradio.com/2006/12/paul-mccartney-regrets-not-finishing.html 2020年4月18日閲覧。 
  9. ^ a b c Goodman 2007.
  10. ^ MacDonald 2005, p. 286.
  11. ^ Lewisohn 1996, p. 4.
  12. ^ “Paul McCartney”. Q Magazine (129): 108. (June 1997). 
  13. ^ Runtagh, Jordan (2013年9月16日). “20 Awesome Unreleased Beatles Recordings We Want To Hear”. VH1. 2013年9月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年12月6日閲覧。
  14. ^ "Mr Blue Sky: The Story of Jeff Lynne and ELO". Music Stories. 5 October 2012. BBC. BBC Four. Transcript Preview
  15. ^ Remnick, David (2021年10月18日). “Paul McCartney Doesn’t Really Want to Stop the Show ”. The New Yorker. Condé Nast. 2022年2月8日閲覧。

参考文献

関連項目

外部リンク