以遠権

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以遠権(いえんけん)は、国際航空運輸において、自国から相手国を経由して、相手国からさらに先にある別の国への区間についても営業運航を行なう権利である。

概要[編集]

国際線の運航が開始された当初の航空機は航続距離が短く、直行便の運航できる区間が限られていたため、直行できない路線では給油のために途中の空港に着陸する必要があった。しかし、途中経由地においても空港利用料が発生するなど、運航経費が増加してしまう。そこで、途中経由地から最終目的地までの営業(=その区間のみの航空券を販売すること)が可能になれば、その区間のみの利用者からの運賃収入も得られ、収益に寄与することになる。そのような営業を行なう権利のことを以遠権という。

1949年フランスアメリカの間で締結された航空協定において、二国間の輸送量・運航会社・路線・運賃などを定めた際に、以遠権についても認められることになったものが最初である。

しかし、実際の航空交渉においては、自国の航空権益を守ったり、航空会社を育成する立場から、政治的な駆け引きが行なわれる。この政治的な駆け引きには、二国間の力関係も大きく作用することから、本来は権益の平等な許与が原則であるにもかかわらず、不平等な内容になることもある。

例えば、日本とアメリカの間で1952年に定められた協定においては、締結当初からアメリカ側に有利となる内容になっていた。この中でもっとも顕著な権益格差として指摘されていたのが以遠権で、1977年の時点では米国側2社(ノースウエスト航空[1]パンアメリカン航空[2])が日本以遠に対して無制限の以遠権を有している[3]のに対して、日本側はニューヨークを経由して欧州・南米へ向かう権利しか認められていなかった。その後、1998年に日米航空協議において、以遠権についても日米3社ずつと平等化が図られている[4]

以遠権行使が認められない場合、途中経由地から最終目的地までの営業はできない。例えば、現在は運航されていないものの、過去にベトナム航空にはホーチミン - 成田 - ダラスの経由便があったが、成田-ダラス間のみをベトナム航空便として搭乗することはできなかった[5]。しかし、この成田-ダラス区間はアメリカン航空および日本航空とのコードシェア便であったため、これらの航空会社でアメリカン航空便または日本航空便として購入すれば成田-ダラス間のみの搭乗も可能であった。

以遠権の行使例[編集]

以遠権の行使方法は、大きく2つに分けられる。

航空機の航続距離に起因するもの[編集]

2006年1月13日まで日本に乗り入れていたヴァリグ・ブラジル航空では、日本とブラジルを直行できる航続距離を持つ旅客機が存在しなかったため、アメリカのロサンゼルス経由としていた。この時には、以遠権を行使し、日本とアメリカ相互間のみの利用も認められていた。

本国以外のハブ空港として利用[編集]

前述の通り、ノースウエスト航空が日本以遠のアジア路線に対して無制限の以遠権を有しており、デルタ航空もこれを継承している。これを利用して、成田国際空港ハブ空港として運用し、アメリカ本土路線と接続するための日本からアジア各国への路線を運航している。デルタ航空ではこのような路線の運航のために、ボーイング757を成田を事実上の所属港として運用させ、格納庫も整備している。

ユナイテッド航空もパンアメリカン航空から太平洋線を買収した際に、同様の以遠権を継承している。近年のアジア方面路線では、以遠権を行使せず直行便主体となりつつあるが、コンチネンタル航空との合併を機にアメリカ本土路線と日本からアジア各国への利便性を強化する為、再度成田国際空港を活用した路線の拡充を図っている。

日本の航空会社による以遠権区間一覧[編集]

現存する路線[編集]

日本の旗 バニラ・エア

過去に存在した路線[編集]

日本の旗 日本航空

日本発着の以遠権区間一覧[編集]

現存する路線[編集]

インドの旗 エア・インディア

台湾の旗 チャイナエアライン

香港の旗 キャセイパシフィック航空

  • CX450/451便、(2017年10月29日よりCX522/523便も) 香港発着 台北桃園 - 東京成田間
  • CX510/511便 香港発着 台北桃園 - 福岡間(2017年10月29日より運休予定)
  • CX530/531便 香港発着 台北桃園 - 名古屋中部
  • CX564/565便 香港発着 台北桃園 - 大阪関西間

アメリカ合衆国の旗 デルタ航空

マレーシアの旗 エアアジア X

エチオピアの旗 エチオピア航空

アラブ首長国連邦の旗 エティハド航空

大韓民国の旗 大韓航空

  • KE1/2便 ソウル仁川発着 東京成田 - ホノルル間(この便名は以前はロサンゼルス行きであった)
  • KE733/734便 済州発着 大阪関西 - グアム

大韓民国の旗 アシアナ航空

  • OZ1087/1077便 東京成田 - サイパン(季節限定運行。同一機材による便名変更:ソウル仁川 - 東京成田間は、それぞれOZ108/107便)

パキスタンの旗 パキスタン国際航空

シンガポールの旗 シンガポール航空

大韓民国の旗 ティーウェイ航空

  • TW311/312便 大邱発着 大阪関西 - グアム間

シンガポールの旗 スクート

  • TZ202/201便 シンガポール発着 台北桃園 - 東京成田間
  • TZ216/215便 シンガポール発着 台北桃園 - 札幌
  • TZ288/287便 シンガポール発着 高雄 - 大阪関西間
  • TZ292/291便 シンガポール発着 バンコク・ドンムアン - 東京成田間
  • TZ298/297便 シンガポール発着 バンコク・ドンムアン - 大阪関西間

アメリカ合衆国の旗 ユナイテッド航空

  • UA79/78便 ニューアーク発着 東京成田 - ソウル仁川間(東京にて機材変更)

香港の旗 香港エクスプレス航空

  • UO56/57便 香港発着 名古屋中部 - グアム間(2017年10月29日より就航開始予定)

シンガポールの旗 ジェットスター・アジア航空

  • 3K721/722ならびに723/724便 シンガポール発着 台北桃園 - 大阪関西間
  • 3K763/764便 シンガポール発着 マニラ - 大阪関西間

過去に存在した路線[編集]

アメリカ合衆国の旗 デルタ航空

  • DL155/156便 東京成田 - 香港間(2014年10月25日東京発、26日香港発をもって運休)
  • DL172/473便 ニューヨーク - 東京成田 - 大阪関西 - グアム(2016年10月3日をもって運休)
  • DL283/284便 ロサンゼルス発着 東京成田 - バンコク・スワンナプーム間(2016年10月3日をもって運休)
  • DL615/616便 ミネアポリス発着 東京成田 - シンガポール間
  • DL617/618便 東京成田 - 北京間(2014年3月29日東京発、30日北京発をもって運休)
  • DL629/630便 名古屋中部 - マニラ間(2014年10月25日名古屋発、26日マニラ発をもって運休)

イランの旗 イラン航空

  • IR800/801便 テヘラン発着 北京 - 東京成田間
    • 曜日によってはソウル仁川経由であったが、こちらは東京 - ソウル間のみの利用はできなかった。

大韓民国の旗 大韓航空

  • KE1/2便 ソウル仁川発着 東京成田 - ロサンゼルス間(便名は継続し、現在は行き先をホノルルに変更)
  • KE9137/9138便 ソウル仁川発着 東京成田 - グアム間

マレーシアの旗 マレーシア航空

  • MH92/91便 クアラルンプール発着 東京成田 - ロサンゼルス間

ブラジルの旗 ヴァリグ・ブラジル航空

  • RG832/833便 リオデジャネイロ発着 サンパウロリマ経由 ロサンゼルス - 東京成田間
  • RG834/835便ならびに836/837便 リオデジャネイロ発着 サンパウロ経由 ロサンゼルス - 東京成田間
    • 同じ経路であるが、曜日によって経由地での発着時刻に5分の差があり、別便名が付いていた。
  • RG838/839便 リオデジャネイロ発着 サンパウロ経由 ロサンゼルス - 名古屋小牧

アメリカ合衆国の旗 ユナイテッド航空

  • UA79/78便 東京成田 - 香港間
  • UA803/804便 ワシントンD.C.発着 東京成田 - シンガポール間(東京にて機材変更)
    • UA1/2便 サンフランシスコ-シンガポール直航便の就航を理由に、2016年6月2日のシンガポール発をもって運休。
  • UA831/830便 サンフランシスコ発着 名古屋中部 - 台北桃園間(2007年6月7日名古屋発をもって運休)
  • UA837/838便 サンフランシスコ発着 東京成田 - バンコク・スワンナプーム間(2014年3月28日東京発、29日バンコク発をもって運休)

シンガポールの旗 ジェットスター・アジア航空

  • 3K509/510便 シンガポール発着 バンコク・スワンナプーム - 福岡間(2016年10月1日を持って運休)

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 現在のデルタ航空
  2. ^ 現在はユナイテッド航空が承継。
  3. ^ ただし、この2社に対する以遠権については、日本の民間航空立ち上げに貢献した見返りという側面もあるため、一概に不平等とはいえない。
  4. ^ 日米航空協議,平成10年度運輸経済年次報告
  5. ^ 日本とアメリカが以遠権行使を認めていないため。

参考文献[編集]

外部リンク[編集]