カボタージュ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動

カボタージュとは、同一国内の二つの港の間の運輸(内航海運)を意味する[1]。同一国内の二つの空港の間の運輸は、エア・カボタージュという[1]

カボタージュ制度[編集]

カボタージュ制度ないしカボタージュ規制とは、自国の沿岸輸送(内航海運)は自国籍船に限るという規制である[2][3]。国家の安全保障などの目的がある[2]

一例を挙げると、パナマリベリア等の船籍を持つクルーズ客船が、日本国内だけで完結するクルーズ業務をできないということで[4]、このため日本資本のクルーズ会社は船籍を日本に置いている。便宜置籍船が不可能なので、日本の客船会社のクルーズ料金が高騰している原因の一つにされている。

アメリカ合衆国では、1817年から現在に至るまでカボタージュ政策がとられている。日本でも船舶法第3条がカボタージュ制度を規定し[2]、国際的な競争を排除してきた。

カボタージュ規制がかかっていないと日本の国内航路でも客船と貨物船の両方で便宜置籍船が参入できるため、利用者側からすればクルーズ料金や海運コストが安くなるメリットがある反面、船籍を置くことによる国の税収入が減る、自国の内航海運産業が仕事を奪われる可能性がある、安全規則のゆるい便宜置籍船によって安全性に対する問題が生じる可能性がある、などのデメリットがある。

国際的な市場開放と競争優先の大きな流れの中で、規制するか開放するか、慎重な議論が進められているところである。この議論の中で、国内輸送を担う業界団体である日本内航海運組合総連合会は、カボタージュ制度の規制緩和は、単なる経済的問題ではなく、有事の際の国民保護、緊急輸送に差し支える恐れがあり、便宜置籍船による国内輸送は許されないと主張している。その根拠として、日本に資源等を輸送する約40隻の外国籍船舶が、東日本大震災の折、福島第一原子力発電所事故に伴う放射性物質の存在を理由として職務を事実上放棄し、京浜工業地帯への寄港を取りやめた一方で、日本国籍の船舶は職務を継続した事例が挙げられている。

2020年から2021年には、新型コロナウイルス感染症の世界的流行に起因する国際航路の運休が続く中でJR九州高速船に納入されたパナマ船籍の高速船クイーンビートルの国内遊覧運航をめぐり、内航総連[5]および全日本海員組合[6]による反対意見が表明された。2021年3月10日、国土交通省は、「同一港発着に限る」等の条件を付した上で、同船に対する国内特例運航の許可を発出した[7]。同船は同年3月20日以降、博多港発着の周遊運航に用いられている。

出典[編集]

  1. ^ a b カボタージュ”. コトバンク. 2021年1月3日閲覧。
  2. ^ a b c カボタージュ制度の堅持”. 日本内航海運組合総連合会. 2021年1月3日閲覧。
  3. ^ 石田, 信博 (2013). “カボタージュ規制と内航海運業”. 経済学雑誌 (大阪市立大学経済学会) 114 (3): 148-159. https://dlisv03.media.osaka-cu.ac.jp/il/meta_pub/G0000438repository_KJ00009131539. 
  4. ^ そのため、近隣の韓国釜山港や、台湾基隆港に寄港することで、カボタージュ規制を回避している。
  5. ^ 内航総連・栗林会長、カボタージュ規制堅持を。外国籍客船、国内運航 特措要望に”. 日本海事新聞 電子版 (2020年12月11日). 2021年8月5日閲覧。
  6. ^ 海員組合、外国籍旅客船の国内運航 特例措置「断固反対」”. 日本海事新聞 電子版 (2021年3月15日). 2021年8月5日閲覧。
  7. ^ JR九州系の新型高速船、国内で周遊運航 国交省が許可”. 日本経済新聞 (2021年3月11日). 2021年8月5日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]