極圏航路

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極圏航路の推移。左が1960年代から1990年代にかけての北極航路、中央が2000年代の北極航路、右が2000年代から2010年代の南極航路

極圏航路は航空路のうち、北極圏や南極圏を通過するものを指す。

北極圏[編集]

連邦航空局では北緯78度以北を北極圏と定めている。[1] これはアラスカよりも更に北の地域に相当し、シベリアも大部分は北極圏外となる。以前は連邦航空局の定義よりも広い意味で使われていて、1950年代にはヨーロッパと北米西海岸を結ぶ大圏航路一般を指した。[2]冷戦期に入ると、北極圏は米ソ間の緩衝地帯となった。当時、民間機がヨーロッパから極東地域へ向かう場合、ソ連、中国上空は避けて飛行しなければならなかった。中東へ迂回するか、一度アラスカへ向かってから北極圏を飛び越す他なく、アラスカ北海岸からグリーンランド上空を経てヨーロッパへと至る航路をとった。大韓航空902便銃撃事件は1978年に所定の極圏航路を大幅に逸れ、ソ連上空を侵犯してしまったために起きた。

冷戦の終結と共に、北極圏を突っ切る定期航路を設定できるようになった。これは米ソ両国とも北極圏を跨いだ攻撃に備える必要がなくなったためである。また、ボーイング747-400エアバスA340のような航続距離の長い機種(7,000海里 (13,000 km)程度)の導入も航路開拓の一助となった。[3]これ以前の冷戦中には北米からアジアへと向かう場合、共産圏を避け、アラスカ-日本間の所定の航路を飛行していた。

ロシア国内の航空管制が不十分であったことに加え、管制業務が英語でなかったために、冷戦終結後も北極航路開拓には時間がかかった。1993年に米ソ航空管制協議会を設置しロシア国内での航空管制の改善が図られた。1998年夏にはロシア政府が北極航路4航路を承認し、それぞれ「Polar1, 2, 3, 4」と命名された。[4]シベリア上空を初めて飛んだのはキャセイパシフィック航空で、1998年7月のことだった。

今日では、バンコク、北京、デュバイ、香港、ニューデリー、ソウル、シンガポール、東京等アジア各地から、北米のニューヨーク、シカゴ、デトロイト、ヒューストン、ロサンゼルス、サンフランシスコ、トロント、バンクーバー、ワシントンへ向かう際には一般に北極航路を利用する。

南極圏[編集]

南半球においては、そもそも大圏航路が南極圏を跨ぐような都市自体があまりない。南アフリカ共和国ニュージーランドを結ぶ航路があれば南極圏をかすめるが、両国を直行する便は未だかつて設定されたことがない。

南極圏付近を航行する定期航空便としては、アルゼンチン航空シドニー - ブエノスアイレス便、ランチリ航空の ニュージーランド - サンティアゴ便、カンタス航空シドニー - サンティアゴ便がある。巡航高度での風向や風速によっては、南緯55度まで南下することがあるが、それでも南極の氷雪よりは北を飛行する。

運航上の注意[編集]

連邦航空局では「極圏飛行の手引き」(2001年3月5日発行)において、極圏飛行を行う際の留意点を挙げている。手引きによると、防寒具2着、特別な通信機器の搭載、極圏飛行中の不時着用空港の指定、遭難した際の救助計画、燃料凍結防止用のモニター設置などが義務付けられている。[5]

ジェット燃料は氷点下40度から50度を下回ると凍り始める。一般の巡航高度でもこの程度まで気温は下がるが、燃料が離陸前の温度を保つので、航行に特段支障はない。一方、極圏飛行の場合、巡航高度での気温は更に低く、また航行自体も長丁場となるため、燃料が凝固点に達することがある。現在の長距離用の航空機には燃料が凝固点に達した際に警報がなる様になっている。この場合、高度を下げ、外気温の高い位置に降下するのが一般的だが、北極圏や南極圏では成層圏が低いため、高度が高い方が気温が高い場合もある。

脚注[編集]

  1. ^ Polar Route Operations, Aero, 16, Boeing
  2. ^ For instance, Aviation Week 22 July 1957 p47 reports on "polar routes" from California to Europe granted to Pan Am and TWA.
  3. ^ Study Finds Air Route Over North Pole Feasible for Flights to Asia, Matthew L. Wald, New York Times, 10-22-2000. Article retrieved 03-12-09. [1]
  4. ^ Over the Top: Flying the Polar Routes. Avionics Magazine, April 1, 2002. Retrieved 3-07-12. [2]
  5. ^ Polar Route Operations, Aero, 16, Boeing

外部リンク[編集]