ポーコス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。Saaki (会話 | 投稿記録) による 2020年10月31日 (土) 23:48個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (link修正, replaced: 円盤投げ円盤投げ using AWB)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

ポーコス古希: Φῶκος, Phōkos)は、ギリシア神話の人物である。長母音を省略してポコスとも表記される。主に、

の2名が知られている。以下に説明する。

オルニュティオーンの子

このポーコスコリントスシーシュポスの子オルニュティオーンの子で、トアースと兄弟。一説にポーコスはポセイドーンの子[1]ポーキス地方の名祖

彼はポーキス地方のティトレアに移住し[1][2]、これにちなんでその地をポーキスと呼ぶようになった。この移住はアイアコスの子のポーコスよりも一世代前のことだったとされる[2]

テーバイアムピーオーンゼートスディオニューソス信女であったディルケーを殺したために、彼らの母アンティオペーはディオニューソスの怒りに触れて気が狂い、ギリシア各地を放浪した。ポーコスはアンティオペーに出会ったとき彼女の狂気を癒し、アンティオペーと結婚した。そこでティトレアにはポーコスとアンティオペーの合葬墓があったが、バキスがテーバイにあるアムピーオーンとゼートスの合葬墓の土をポーコスの墓に運んでくるとティトレアは豊穣に恵まれると予言したため、ティトレアの人々はアムピーオーンとゼートスの墓から土を盗もうとしたという[3][4]

アイアコスの子

このポーコスアイギーナ島の王アイアコスとプサマテーの子で[5][6][7]ペーレウステラモーンとは異母兄弟。パノペウスクリーソスの父[8]。オルニュティオーンの子のポーコスの一世代後にポーキス地方に移住したが[2]、ペーレウスとテラモーンに殺された。

ペーレウスとテラモーンは、ポーコスが競技に優れていたためか[9]、あるいは好青年であったポーコスを父アイアコスが溺愛したため、嫉妬してポーコスを殺そうとした[7]。母エンデーイスを喜ばせようとしたともいわれる[10]

ポーコスは都市を建設しようと考えてポーキスに渡り、その地でイアセウスと親交を結び、指輪を贈られた[11]。しかしポーコスはアイギーナ島に帰ると、ペーレウスとテラモーンに競技に誘われ、円盤投げ競技の最中にテラモーンに円盤を頭に投げつけられて殺された[9]。あるいはペーレウスが石投げ競技の最中にポーコスの頭に石を投げつけて殺したともいわれる[10][11]。ペーレウスとテラモーンはポーコスの死体を隠したが、事件が明らかとなったとき、アイギーナ島から追放された[9]。またポーコスの子供たちもアイギーナ島を去ったため、アイギーナ島にはアイアコスのほかに王は現れなかった。[12]

なお、シケリアのディオドロスはペーレウスとテラモーンのうちポーコスを殺したのはペーレウスで、円盤投げの最中に起きた不慮の事故であったとしている[13]

脚注

  1. ^ a b パウサニアス、2巻4・3。
  2. ^ a b c パウサニアス、2巻29・3。
  3. ^ パウサニアス、9巻17・4-17・6。
  4. ^ パウサニアス、10巻32・10-32・11。
  5. ^ ヘーシオドス『神統記』1004行-1005行。
  6. ^ アポロドーロス、3巻12・6。
  7. ^ a b アントーニーヌス・リーベラーリス、38話。
  8. ^ パウサニアス、2巻29・4。
  9. ^ a b c アポロドーロス、3巻12・7。
  10. ^ a b パウサニアス、2巻29・9。
  11. ^ a b パウサニアス、10巻30・4。
  12. ^ パウサニアス、2巻29・2。
  13. ^ シケリアのディオドロス、4巻72・6。

参考文献