ホンダ・トランザルプ

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トランザルプ (TRANSALP) は、本田技研工業がかつて製造販売したオートバイである。

概要[編集]

XL600V TRANSALP
XL600V TRANSALP
トランザルプ ロゴマーク
トランザルプ ロゴマーク

本田技研工業が1970年代半ばより製造販売していたXLシリーズに属するデュアルパーパスタイプであるが、市街地・高速道路・峠道・未舗装路までのオールラウンドでのツーリングを快適に楽しめる大型スポーツバイクとして設計開発されたツーリングモデル[1]である。数種類の排気量別モデルが製造販売された。

アルプス越え=TRANS-ALPSを意味する商標は[1]、日本国内向け仕様ではTRANSALP+排気量+Vで車名として、海外向け輸出仕様ではXL+排気量+V TRANSALPでペットネームとして使用された。

開発の経緯[編集]

XLシリーズの大排気量モデルは、本モデル以前にXLV750R (RD01型)・XL600Rファラオ (PD04型) などが製造販売されていた。両モデルはオフロードでの走破性を重視したコンセプトとされたものの実際の市場では未舗装路走破性と高速巡航を両立させたツーリングマシンとして受け入れられたことから、ツーリング性能特化を追求したパワーユニットとウィンドプロテクションを向上させたモデルとして開発された。

開発にあたってはパリ - ダカール・ラリー(現・ダカール・ラリー)参戦用ワークスマシーンのNXR750[2]で得た技術をフィードバックした[1]

車両解説[編集]

※本項では各モデル共通となるポイントについて解説を行う。また詳細スペックは後述する#諸元を参照のこと。

車体は、フレームをダブルクレードル型としており、本シリーズ最大の特徴ともいえるフルカウルを装着する。当初はサイドパネルと大きめのメーターバイザーを合わせた形状であったが、1994年モデル以降は、NXR750を参考にした燃料タンク一体型とされた[3]

サスペンションは、前輪がテレスコピック、後輪がプロリンク式スイングアームとし、タイヤはスポークホイールに90/90-21 54S(前)/130/80-17 65S(後)を装着するが、650・700モデルでは若干の変更を実施。またブレーキは前輪がローター径276mmでダブルピストンキャリパーとしたシングルディスク、後輪が機械式リーディングトレーリングとされたが、制動力不足から1991年モデルより後輪がローター径240mmのシングルディスクへ、1997年モデルより前輪がローター径256mmのダブルディスクへ変更された。

搭載されるエンジンは、全モデルとも水冷4ストロークSOHC52°バンクV型2気筒で、400・600モデル[注 1]ブロスシリーズと、650・700モデルはNT650V/NT700V Deauvilleと基本設計を共用もしくは共通としており、スペックは輸出先諸国の事情・規制に合わせたため数種類が存在する[注 2]

  • なおバルブについては、400・600・650モデルは吸気2・排気1の3バルブ[注 3]、700は吸気2・排気2の4バルブである。

燃料供給は、400・600・650モデルがケーヒンキャブレター、700がPGM-FI電子式燃料噴射装置とされたほか、搭載されるマニュアルトランスミッションは5段である。

製造は浜松製作所で行われていたが、1996年イタリア現地法人のホンダ・イタリア・インダストリアーレHONDA ITALIA INDUSTRIALE S.P.A.)へ、2002年以降はスペイン現地法人のモンテッサ・ホンダMontesa Honda S.A.)へ、さらに2010年には再びホンダ・イタリア・インダストリアーレへ移管された。

モデルコードは、XL+排気量+V+モデルイヤー識別符号となる。

モデルイヤー 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99
識別符号 H J K L M N P R S T V W X
モデルイヤー 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
識別符号 Y 1 2 3 4 5 6 7 8 9 a b c
備考
  • モデルイヤー上段:上2桁は19
  • モデルイヤー下段:上2桁は20

モデル一覧[編集]

※本項では排気量別に解説を行う。

398㏄モデル[編集]

トランザルプ400V1992年モデル(左)1994年モデル(右) トランザルプ400V1992年モデル(左)1994年モデル(右)
トランザルプ400V
1992年モデル(左)1994年モデル(右)

型式名ND06。モデルコードXL400V。トランザルプ400Vの車名で1991年10月7日発表、同月15日発売[4]。免許制度の関係から中型限定自動二輪車運転免許(現・普通自動二輪車運転免許)で運転できるように排気量を398㏄に縮小した日本国内専売モデルである。

搭載されるPC25E型エンジンはVDF1型キャブレターも含めブロスP-2と共用するが、点火装置がフルトランジスタ式からバッテリー式CDIへ変更された。

1994年2月24日発表、同年3月1日発売[5]で、外装を変更するマイナーチェンジを実施。

583㏄モデル[編集]

トランザルプ600V
ホンダコレクションホール所蔵車

型式名は初期モデルがPD06、外装を大幅に変更した1994年モデル以降がPD10。モデルコードXL600V。日本国内向け仕様はトランザルプ600Vの車名で1987年3月30日に同年4月10日より300台限定で発売することが発表された[1]

海外向け輸出仕様はXL600V TRANSALPの車名で主にヨーロッパ地区向けとされたが、1989年 - 1991年には北米地区向けにも輸出が行われた[6]

搭載されるPD06E型エンジンは、ブロスP-1用RC31E型の内径x行程:79.0x66.0(mm)から内径を75.0mmへ縮小ならびに圧縮比を9.4→9.2へ低下させ排気量を583㏄とした。

1994年に外装変更を行ったほか、後輪ディスクブレーキ化・前輪ダブルディスクブレーキ化などのマイナーチェンジを実施しながら1999年まで製造されたが、輸出仕向け地によるスペック、年式によって車高・最低地上高・車重などの若干の相違が存在する[7]

647㏄モデル[編集]

XL650V TRANSALP
2000年モデル(RD10型)

2000年から製造開始されたXL650V TRANSALPで型式名は初期モデルがRD10、スペイン生産となった2003年モデル以降がRD11。モデルコードXL650V。

XL600V TRANSALPからの変更点は、ヨーロッパ地区での自動車排出ガス規制への対応で触媒ならびに補器類による損失補填という観点からシリンダー内径を4.0mm拡大し79.0mmとし排気量を647㏄としたほか[注 4]、フレーム・後輪サイズの120/90-17化によるリヤサスペンションユニット・ヘッドライト・カウルなどで、新たにシート下収納スペースと燃料計を新設した。

また、純正オプションで標準より30mm低くなるローダウンシートやパニアケースセットが設定されたほか、XLV600V同様に輸出仕向け地によるスペック、年式によって車高・最低地上高・車重などの若干の相違が存在する[8]

680㏄モデル[編集]

XL700V TRANSALP2008年モデルRD15型(左)2012年モデルRD16型(右) XL700V TRANSALP2008年モデルRD15型(左)2012年モデルRD16型(右)
XL700V TRANSALP
2008年モデルRD15型(左)2012年モデルRD16型(右)

2008年から製造開始されたXL700V TRANSALPで型式名はスペイン生産モデルがRD15、イタリア生産となった2010年モデル以降がRD16。モデルコードXL700V。

ヨーロッパ内の排出ガス規制EURO 3対応によるフルモデルチェンジで、シリンダー内径を81.0mmまで拡大し排気量を680㏄まで拡大し、さらに4バルブ化ならびに燃料供給をインジェクション化して対応させたNT700V Deauvilleに搭載されるRC52E型エンジンを共用するモデルである。また他には以下の変更を実施した[9]

  • 前輪サイズを90/90-21から100/90-19へ変更しラジアルタイヤ
  • 後輪サイズを130/80-17へ変更しラジアルタイヤ化
  • ABS装着モデルを新設
  • オプションでシート高を20mm低下させるローダウンシートを設定

本モデルは2012年に生産終了となった。

諸元[編集]

車名 トランザルプ400V トランザルプ600V
(XL600V)
XL650V XL700V
ペットネーム   TRANSALP
型式 ND06 PD06 RD10 RD15
モデルイヤー 1992[4] 1987[1] 2000[8] 2008[10][11]
全長(m) 2.265 2.250
全幅(m) 0.875 0.865 0.905
全高(m) 1.310 1.275 1.280 1.305
最低地上高(m) 0.195 0.220 0.225 0.177
ホイールベース(m) 1.510 1.550 1.500 1.515
シート高(m) 0.880 0.850 0.841
車両重量(kg) 201 197 194 214
最低回転半径(m) 2.6 2.4 2.6
60㎞/h定地走行燃費 33.1km/L 36.0km/L  
原動機型式名 NC25E PD06E RC47E RC52E
冷却・行程 水冷4ストローク
バルブ数・動弁機構 3バルブSOHC 4バルブSOHC
シリンダー配置 52°バンク横置V型2気筒
総排気量 398㏄ 583㏄ 647cc 680㏄
内径x行程(mm) 64.0x62.0 75.0x66.0 79.0x66.0 81.0x66.0
圧縮比 10.0 9.2 9.0 10.0
燃料供給 キャブレター 電子式燃料噴射
供給装置 VDF1x2基 CVx2基 PGM-FI
最高出力 37ps/8,500rpm 52ps/8,000rpm 52ps/7,500rpm 60ps(44.1KW)
/7,750rpm
最大トルク 3.5kg-m
/6,500rpm
5.4kg-m
/6,000rpm
5.6kg-m
/5,500rpm
6.1kg-m(60Nm)
/5,500rpm
始動方式 セルフ
点火装置 CDI フルトランジスタバッテリー
潤滑方式 ウエットサンプ圧送飛沫併用
潤滑油容量 2.8L 2.9L
燃料タンク容量 18L 19.6L 17.6L
クラッチ 湿式多板
変速方式 左足動式リターン
変速機 常時噛合5段
1速 3.000 2.571 2.500
2速 2.055 1.777 1.722
3速 1.590 1.380 1.333
4速 1.318 1.125 1.111
5速 1.130 0.961
1次減速比 2.058 1.888 1.736 1.762
2次減速比 2.866 3.133 3.200 3.133
フレーム形式 セミダブルグレードル
フロントサスペンション 正立テレスコピック
リヤサスペンション プロリンク式スイングアーム
キャスター 28°00′ 28°04′ 28°23′
トレール(mm) 108.0 120.0 111.0
タイヤ(前) 90/90-21 54S 100/90R19 57H
タイヤ(後) 130/80-17 68S 120/90-17 64S 130/80R17 65H
前輪ディスクブレーキ 油圧式シングル 油圧式ダブル
後輪ディスクブレーキ 油圧式シングル 機械式ドラム 油圧式シングル
備考 日本専売モデル 日本は300台限定 海外専売モデル

評価[編集]

XL650V TRANSALP 警察用モデルギリシャ(左)北アイルランド(右) XL650V TRANSALP 警察用モデルギリシャ(左)北アイルランド(右)
XL650V TRANSALP 警察用モデル
ギリシャ(左)北アイルランド(右)

日本国内では、600が300台、400が4,000台ほどの登録台数と非常に少なく販売期間も600が一度だけの限定、400も4年間ほどと短い。一方でヨーロッパ地区では約25年間に渡りモデルチェンジをくりかえして販売が続けられたロングセラーモデルで、本モデルを警察用車両(白バイ)として導入しいる国家もあるほか、劇用車として使用された例も存在する[注 5]

この背景には当時の日本ではデュアルパーパスモデルをベースにした未舗装路走破性と高速巡航を両立させたツーリングマシンというコンセプトが理解されなかったことにも一因がある。

しかし本田技研工業では、2010年代になりロードスポーツモデルをベースにオフでの走破性も考慮したクロスオーバーコンセプト[注 6] を掲げるアドベンチャータイプを発表している。

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ 当初はVT500シリーズ用排気量491ccのユニットで開発が進められたが、テストの結果パワー不足とされたことから変更された。
  2. ^ 一例としてスイス仕様XL600Vは最高出力27psとなる。
  3. ^ 元々は1977年に発売されたCB400T HAWK-IIで実用化された方式である。
  4. ^ 結果的には600㏄モデルのベースとなったブロスP-1用RC31E型と同数値に戻ったことになるが、公的にはNT650V Deauvilleに搭載されるRC47E型をベースとしている。
  5. ^ その一例に1998年のフランス映画TAXi』がある。
  6. ^ 400XNC700/750XVFR800X CrossrunnerVFR1200X CrosstourerX-ADVが該当する。

出典[編集]

外部リンク[編集]

関連項目[編集]

以上3車種はV型2気筒エンジンを搭載するデュアルパーパスモデル