MAPPA

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株式会社MAPPA
MAPPA Co.,LTD.
MAPPA Logo.svg
種類 株式会社
本社所在地 日本の旗 日本
167-0032
東京都杉並区天沼2丁目3番9号
朝日生命杉並ビル9階
北緯35度42分18.0秒 東経139度37分26.9秒 / 北緯35.705000度 東経139.624139度 / 35.705000; 139.624139座標: 北緯35度42分18.0秒 東経139度37分26.9秒 / 北緯35.705000度 東経139.624139度 / 35.705000; 139.624139
設立 2011年6月14日
業種 情報・通信業
法人番号 8011301017765 ウィキデータを編集
事業内容 テレビアニメ、映画、CM、Webムービー等、アニメーション映像に関わる全てのジャンルにおける企画・制作
代表者 代表取締役 大塚学
資本金 100万円
従業員数 310名(2022年4月時点、契約含む)
関係する人物 丸山正雄(創業者)
外部リンク mappa.co.jp ウィキデータを編集
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株式会社MAPPA(マッパ、: MAPPA Co.,LTD.)は、日本アニメ制作会社電通グループの横断組織『電通ジャパニメーションスタジオ』提携スタジオ[1]

社名のMAPPAは「Maruyama Animation Produce Project Association」の頭文字に由来する[2]

概要[編集]

MAPPAは、作品構成・テーマ・映像表現などの制作物をプロデュースするアニメスタジオである[3]。もともとは、2011年に70歳でマッドハウスを退社したアニメプロデューサーの丸山正雄が、片渕須直監督の『この世界の片隅に』をどうにかして世に出そうと設立したものだった[2][4]。当初集まった人材も片渕や丸山たちと仕事がしたいと思った者たちが多かった[5]。『この世界の片隅に』は資金集めに苦労し、公開できるかも未定の作品だったが、最終的には日本国内では最長となる1133日連続ロングラン上映となり累計動員数210万、興行収入27億円を突破するヒット作となった[2][6]

2016年、創設者の丸山が会長に就任し、スタジオM2を設立したことでMAPPAから活動拠点を移す。それに伴い経営からも撤退し、丸山の後を2代目社長の大塚学が引き継いだ[7][4]。以降、大塚の経営方針により、様々なクリエイターに外注を行う多作傾向の体制に方向性がシフトする[8][9]。大塚体制後に制作された『劇場版 呪術廻戦 0』は観客動員977万人以上、興行収入137億円を突破し、国内興行成績で歴代14位に相当する大ヒットを記録[10]。同年5月までに世界70ヶ国以上で劇場公開され、日本を含むグローバルでの興行収入は約237億円に達した[10][11]

特徴[編集]

丸山正雄の在籍していた虫プロDNAを引き継ぎ、作品制作に対して「面白ければ何でもいい。でも気に入らなければやらない」「面倒くさいことを言う人の、面倒くさい希望をあえて叶える」というスタンスを取っている。これは丸山が経営から退いた後もスタジオの理念として引き継がれた[2][12]

スタジオとして制作する作品を選ぶ基準は、プロデューサーや監督が「面白い」「やってみたい」と心の底から思える作品であるかどうかを重視している[6]。また、スタジオとして取り組むテーマを作品・制作ラインごとに掲げており、設立初期の作品は若手社員を中心としてスタッフの経験やスタジオとしての実績を積むことを目的としたものが多かった[6]。作画をメインとするスタジオだが、2020年放送の『ドロヘドロ』ではスタジオとして初めて3DCGを中心とした作品作りに挑戦した[6]

制作体制としては外部のクリエイターや専門スタジオに積極的に発注を行うことで、バラエティ豊かな作品を作っている[13]。そのため、作品ごとにスタジオのカラーが変わり様々なタイプの作品に柔軟に対応できる体制となっている[8]

アニメーション制作では、作画とCGを融合させた新しい画づくりを目指しており、社内にCGI部門やCGI専門スタジオを設立することでCGクオリティの向上にも注力している[9]

制作方針・雇用[編集]

近年、作品数増加による劣悪な労働環境や低賃金などの問題への対策として各スタジオが制作本数を減らしていく傾向にあるなかで、経営が大塚に代わって以降のMAPPAでは、「業界の抱える問題から目を背けない」「作品数が多いということはアニメーションに需要があるということ。その需要に対して高品質な作品をいかに供給できるかが問題」という考えのもと、作品や工程ごとに様々な専門性の高いスタジオやフリーランス個人に作業の多くを発注し、制作本数を増やして生産性を高めることで上記の問題に対処しようとしている[8][9]。制作本数としては、劇場作品を交えながら、毎年4〜8本ほどのテレビ・Webアニメシリーズを制作している[8][6][8]

アニメーターなどスタッフの待遇面については、労働環境の改善と映像表現の追求の両立を目指している。現在は外注や契約アニメーターとの制作をメインとしており、契約スタッフを含めスタッフ総数は2022年時点で300名を超えている。現在は契約スタッフがメインだが、大塚は将来的な目標として京都アニメーションufotableを挙げており、両スタジオに共通する「社員による全セクションの内製体制や正社員雇用」を目標に内製を強化していき、将来的には両スタジオと同様の完全内製体制を目指している[9][6][14][15]。この方針を実現するために仙台スタジオでは「安定した生活基盤の上で仕事に打ち込む」ことを目標に新卒から正社員として雇用。教育を充実させながら人を増やしていくことを大きな課題として取り組んでいる。現状、全スタッフを正社員として雇用すると経営を圧迫するためこの取り組みは仙台スタジオのみではあるが、将来的には拡充していく方針である[9][14][16][16][17][18]。但し、後述のように劣悪な労働環境が問題視されたことがある

スタジオとしては出資比率に応じて利益配分される製作委員会に加わることが多いが、2022年放送のテレビアニメ『チェンソーマン』においては通常の複数企業から出資を募る製作委員会方式ではなく100%自社の出資で制作を行い、ビジネス面で新たなチャレンジをしている[19]

沿革[編集]

2011年6月、マッドハウスの創設者のひとりである丸山正雄プロデューサーが設立、代表取締役に就任する[3][8]

2016年4月、大塚学が2代目社長に就任[2]。丸山は会長となり経営から退く。同時にクリエイターとしての活動の場を自らが新たに立ち上げたプリプロダクション専門のアニメ制作会社のスタジオM2に移した[4]。同年9月には同社設立のきっかけとなった長編アニメーション映画『この世界の片隅に』のプロデューサーを務めた松尾亮一郎が独立。アニメスタジオCLAPを設立して代表取締役に就任し、同作の制作メンバーがMAPPAより移籍した[20][21]

2018年4月2日、仙台市にスタジオを開設[22]。同年10月22日、サンライズぴえろなど国内の大手アニメスタジオ8社とともにグループ横断組織「電通ジャパニメーションスタジオ(Dentsu Japanimation Studio)」を設置。アニメーションの活用による企業等のブランディングなどのマーケティング課題に対応する体制の構築を目指し、広告大手の電通と提携を結んだ[1]

2019年9月2日、大塚が片渕須直監督の次回作制作のためにアニメ制作会社コントレールを設立。大塚が代表取締役を兼任する[23]

2020年10月23日、アニマ&カンパニーサイエンスSARUスタジオミールの日韓のアニメ制作会社3社とともに、動画配信大手のNetflixと新規作品制作における包括的な業務提携を結ぶ[24][注 1]

2021年3月、『呪術廻戦』『劇場版 呪術廻戦 0』の監督を務めた朴性厚が独立しアニメーションスタジオ・E&H productionを設立。代表取締役社長に就任した。同社設立に際して多くの主要クリエイターが移籍しており、『呪術廻戦』『劇場版 呪術廻戦0』の副監督や『GRANBLUE FANTASY The Animation Season 2』の監督を務めた梅本唯、『体操ザムライ』監督で『ダンス・ダンス・ダンスール』助監督の清水久敏、『THE GOD OF HIGH SCHOOL』 キーアニメーターや『呪術廻戦』絵コンテ・演出、『劇場版 呪術廻戦 0』作画監督を務めた西澤千恵、『進撃の巨人 The Final Season』巨人設定・サブキャラクターデザイン・作画監督や『呪術廻戦』呪霊デザイン、『劇場版 呪術廻戦 0』呪霊作画監督の佐野誉幸、『呪術廻戦』デザインワークス・ロゴデザインや『劇場版 呪術廻戦 0』2Dデザインワークスの雪駄、『賭ケグルイ』CGディレクターの申在勲、『ドロヘドロ』3DCGモデリングの朴昌楫など多くのクリエイターと共に独立している[25]

2022年3月、大阪市内に3DCGIを専門とする新たなスタジオを設立する方針を発表した[26]

制作体制[編集]

東京・杉並区に本社とスタジオを持つほか、2018年に動画工程専門の仙台スタジオを設立[26]大阪にもCGI専門のスタジオ開設を予定している。2022年現在、東京、仙台、大阪で契約スタッフも含め310名が活動している[27]

作品は各アニメーションプロデューサーが統括・管理しており、各ラインごとにチームが別れている。年間作品数の多さから、一般的な日本のアニメスタジオと同様に各作品ごとに工程の多くを外注している。編集はキュー・テックエディッツに依頼することが多い。

東京スタジオ[編集]

東京スタジオは制作部、CGI部、演出部、作画部、ライツ事業部、企画開発部などから構成される[14][26]

制作部には100名以上のスタッフが所属。企画・制作進行業務を主としているが、その他にも宣伝や各種版権窓口、国内イベント事業、グッズ制作・版権事業など、一般的にメーカー側が担当する業務も請け負っている。海外イベントの運営や翻訳・通訳などの海外事業案件も取り扱う。

CGI部には60名以上のスタッフが所属。3DCG、背景、仕上、撮影、編集、デザインの6部門で構成され、デジタルワークス全般を担当している[28]。外注の専門スタジオではなく同社CGI部が参加する元請作品の場合は、作品の監督と意見交換して完成イメージを共有しながら内製できることを強みとしている[28]

作画部では正式に所属する正社員・契約社員の約30名のスタッフが原画を担当。その他、演出や作画に関するスタッフの多くは各プロジェクトごとにフリーランスの演出家や契約アニメーターが多数参加・在籍している。

仙台スタジオ[編集]

2018年4月2日に開設。地元採用数名を含む13名で活動をスタートした[17]。 2020年時点で31人にまで拡充[16]。東京スタジオとの違いとして、スタッフ全員を正社員で雇用している[16][17]

仙台に進出した理由は「地元でアニメ制作の仕事をしたい」という東北の若者たちの受け皿になることや「地方都市でアニメを学んでも就職は東京」というアニメ制作の東京一極集中の是正のため[16][17]。開設場所の検討に当たっては、同じ宮城県塩竈市が丸山会長の出身地であり、社内にも宮城出身者がいたことからスムーズにイメージができたという[29]

仙台スタジオでは主に動画と仕上げ(彩色)の工程を担当[14][26]。特徴として、動画マンが仕上げの工程も担当する「デジタル動仕」を主としている[16]。そのため、紙に鉛筆で描く従来の方式ではなく、液晶タブレットにペンで描きこむデジタル動画を推進[16][17]。アニメーターによる仕上工程までの一貫作業、および早期の実作業入りを実現している[14]。デジタルツールの導入は、前工程の原画や後工程以降を担う東京の制作現場とデータのやりとがスムーズに行え、地方拠点でも不利なく作業が行える利点がある[16]

仙台スタジオでは自社作品の動画・仕上げ部門を社内で完結させることを将来的な目標としている。また、3DCG・撮影・背景といったCGI 部門を仙台に新設することも想定しており、将来的にはCGや撮影、演出などの人材も仙台で育ててアニメーション制作の全工程を仙台で行うことを理想に掲げている[14][29]

大阪スタジオ[編集]

2022年3月1日、新スタジオを大阪市内に設立すると発表[28][30]。新拠点を設立する理由については、近年の在宅ワークの浸透で業務に地理的な制約がなくなり、事業拡大と拠点の分散を考えた時、隣接府県からのアクセスが良く、関西在住のクリエイターや学生が地元を離れずに仕事ができる大阪市が適していると考えたからとしている[28][30]

3つめの拠点となる大阪スタジオは、CGIに特化し、3DCG部門からスタートして背景や仕上、撮影、編集、デザインなどのデジタルワークスを担当することを想定している[26][31]。3DCGではCGソフトで業界内シェアの高い3ds Maxだけでなく、普及が進んでいるBlenderも実制作へ投入する予定である[26][31]

アニメーションプロデューサー[編集]

作品[編集]

テレビアニメ[編集]

開始年 放送期間 タイトル 監督 備考
2012年 4月 - 6月 坂道のアポロン 渡辺信一郎 共同制作:手塚プロダクション
10月 - 12月 てーきゅう 板垣伸 第1期
2013年 7月 - 9月 第2期
10月 - 12月 第3期
10月 - 2014年3月 はじめの一歩 Rising 宍戸淳
西村聡
共同制作:マッドハウス
2014年 7月 - 9月 残響のテロル 渡辺信一郎
10月 - 12月 神撃のバハムート GENESIS さとうけいいち
10月 - 2015年3月 牙狼〈GARO〉-炎の刻印- 林祐一郎
2015年 4月 - 6月 パンチライン 上村泰
7月 - 12月 うしおととら 西村聡 共同制作:studio VOLN
10月 - 2016年4月 牙狼 -紅蓮ノ月- 若林厚史
2016年 4月 - 6月 うしおととら(第2シーズン) 西村聡 共同制作:studio VOLN
7月 - 12月 DAYS 宇田鋼之介
10月 - 12月 ユーリ!!! on ICE 山本沙代
2017年 1月 - 3月 アイドル事変 吉田大輔 共同制作:studio VOLN
4月 - 9月 神撃のバハムート VIRGIN SOUL さとうけいいち
7月 - 9月 賭ケグルイ 林祐一郎
7月 - 12月 将国のアルタイル 古橋一浩
10月 - 12月 いぬやしき さとうけいいち(総)
籔田修平
10月 - 2018年3月 牙狼〈GARO〉-VANISHING LINE- 朴性厚
2018年 7月 - 12月 BANANA FISH 内海紘子
10月 - 12月 ゾンビランドサガ 境宗久
2019年 1月 - 3月 賭ケグルイ×× 林祐一郎
松田清
1月 - 6月 どろろ 古橋一浩 共同制作:手塚プロダクション
4月 - 6月 さらざんまい 幾原邦彦 共同制作:ラパントラック
7月 - 9月 かつて神だった獣たちへ 宍戸淳
10月 - 12月 GRANBLUE FANTASY The Animation Season 2 梅本唯
2020年 1月 - 3月 うちタマ?! 〜うちのタマ知りませんか?〜 松田清 共同制作:ラパントラック
ドロヘドロ 林祐一郎
4月 - 6月 LISTENERS リスナーズ 安藤裕章
7月 - 9月 THE GOD OF HIGH SCHOOL ゴッド・オブ・ハイスクール 朴性厚
7月 - 10月 恋とプロデューサー〜EVOL×LOVE〜 境宗久
10月 - 12月 体操ザムライ 清水久敏
10月 - 2021年3月 呪術廻戦 朴性厚
12月 - 2021年3月 進撃の巨人 The Final Season 林祐一郎
2021年 4月 - 6月 ゾンビランドサガ リベンジ 境宗久
7月 - 10月 平穏世代の韋駄天達 城所聖明
RE-MAIN 西田征史(総)
松田清
10月 - 12月 takt op.Destiny 伊藤祐毅 共同制作:マッドハウス
2022年 1月 - 4月 進撃の巨人 The Final Season(Part.2) 林祐一郎
4月 - 6月 ダンス・ダンス・ダンスール 境宗久
10月 - 12月 チェンソーマン 中山竜
2023年 1月 - ヴィンランド・サガ(SEASON 2) 籔田修平
とんでもスキルで異世界放浪メシ 松田清
3月 進撃の巨人 The Final Season(前編) 林祐一郎
4月 - 地獄楽 牧田佳織
7月 - 呪術廻戦(第2期) 未発表
未発表 進撃の巨人 The Final Season(後編) 林祐一郎

劇場アニメ[編集]

公開年 タイトル 監督
2016年 牙狼〈GARO〉-DIVINE FLAME- 林祐一郎
この世界の片隅に 片渕須直
2019年 この世界の(さらにいくつもの)片隅に
2021年 劇場版 呪術廻戦 0 朴性厚
未発表 ユーリ!!! on ICE 劇場版:ICE ADOLESCENCE 山本沙代
アリスとテレスのまぼろし工場 岡田麿里

Webアニメ[編集]

配信年 タイトル 監督 備考
2020年 リリィ・トライアングル[32] N/A まにまにTVにて配信の漫画動画
ふしぎねこのきゅーちゃん[32] N/A
2021年 Yasuke -ヤスケ-[33] ルショーン・トーマス Netflix
2022年 賭ケグルイ双 林祐一郎(総)
牧田佳織

ゲーム[編集]

発売年 タイトル 監督 備考
2018年 アイドリッシュセブン 境宗久 「ナナツイロ REALiZE」MV制作
2019年 ペルソナ5 ザ・ロイヤル 林祐一郎 オープニングアニメーション制作

その他のアニメ[編集]

タイトル 備考
2012年 新潟市アニメプロジェクト 古町と団子郎「ラグーンストーンを探せ!」 2012年11月10日「がたふぇす」にて公開
トヨタ自動車 ITS Ha:mo(ハーモ) コンセプト映像 「約束への道」
2013年 新潟市アニメプロジェクト 古町と団子郎 第二段「謎の巨大魚をつかまえろ!」[34]
NHK花は咲く」アニメーション版
2014年 新潟市アニメプロジェクト 古町と団子郎 第三段「光る鯛車を取り戻せ!」[34]
2018年 オタフクソースのアニメ・わたしの名はオオタフクコ〜小さな幸せを、地球の幸せに。〜 -2019年
2019年 POCARI SWEAT – Bintang SMA 共同制作:CLAP、PT. Amerta Indah Otsuka(インドネシア)のアニメーションCM
This is # BintangSMA 2019 Winner!
2020年 NHK 「NHKスペシャル【#あちこちのすずさん・戦争×アニメ×青春!】」
2021年 「俺たちマジ校デストロイ」 MV

労働問題・事件・不祥事[編集]

元・所属アニメーター及び参加アニメーターによる内部告発[編集]

MAPPAに所属し、2021年放送の『進撃の巨人 The Final Season』にも参加したアニメーターが同社を退職後、自身のTwitterアカウントにて同社の労働環境の劣悪さを告発した[35][36]

同アニメーターによると、同社はフリーアニメーターや海外スタジオに原画の工程の多くを発注していた。しかし、原画の発注を受けるのに一定期間のノルマが必要な所属アニメーターと違い、フリーアニメーターは経験年数に関係なく原画を受注できる。外注先から送られてくる原画は多くの修正を必要とし、同社所属アニメーターは残業をして朝まで外注先から届く原画の修正作業に追われた。また、同社は「作品数が多いということはアニメーションに需要があり、その需要に対して高品質な作品をいかに供給できるかが問題」という理念から、年間に最大で8作品のTVアニメーションを受注・制作していたが、同アニメーターによると、当時の制作現場は4つの作品を同時進行で制作するほど多忙であった。この社内環境から所属アニメーターたちは原画を描くのではなくリテイクばかりを請け負う状況となっていた[35][36]

これらの投稿が注目されてネット上の各所に情報が拡散。2021年5月19日、この情報が北米最大規模のアニメ紹介サイト「Anime News Network」にも取り上げられたことで海外のアニメファンから批判を受けることになった[35][36][37]

さらに、「チェンソーマン」の初公開PVで話題を集めたMAPPA設立10周年記念イベント『MAPPA STAGE 2021 -10th Anniversary-』より翌日以降、同社作品に参加した複数のアニメーターより労働・給与体制について指摘するコメントが投稿された。同社制作の劇場作品にて動画の工程を請け負ったアニメーターは、丁寧な仕上がりを求められる劇場作品で動画一枚の単価が250円であったことを批判し、高度な完成度が求められる映像作品であったため、とても厳しい仕事であったと投稿している[38]

同社がNetflixで制作するアニメーションの原画を請け負ったアニメーターは、1カットの単価が3,800円であったことを告白し、通常は平均的なテレビシリーズの単価である3.000円から7,000円の中でも低い安価な値段を提示されたことを問題視した。アニメーターによると、本作は高品質な作画を求められる配信アニメであり、通常であれば1カット15,000円以上で交渉するのが妥当な値段であることを述べ、もし3,800円で請け負えば他のアニメーターの単価も下がってしまうことを問題視した。なお、同アニメーターは本作を発注しているNetflixについても問題視している。これらのコメントには業界内のフリーランスのアニメーターも多く反応を寄せ、安価な単価による発注を問題視した[38]。そして、2021年7月2日、この情報が再び「Anime News Network」にも取り上げられたことで海外のアニメファンから再度、批判を受けることになった[38]

これらの騒動に対し、同社は7月7日に同社公式ホームページにて声明を公表。該当作品や過去の元請作品において受託した制作費に対し、発注した単価価格は適切であり、各アニメータにその受注を強制した事実は一切ないこと。さらに、今回のような情報漏洩に強く抗議するとともに断固とした措置をとることを主張した。なお、実際に適正価格がいかほどだったかについては明かされておらず不透明なままである[39]

関連人物[編集]

所属スタッフ[編集]

制作[編集]

  • 丸山正雄(2016年まで同社で活動。現・代表取締役会長、スタジオM2代表取締役)
  • 大塚学(代表取締役社長、コントレール代表取締役を兼任)
  • 瀬下恵介(プロデューサー)
  • 川越恒(プロデューサー)
  • 野田楓子(プロデューサー)
  • 松永理人(プロデューサー)
  • 小川崇博(プロデューサー)

アニメーター・演出家[編集]

関連人物[編集]

アニメーター・演出家[編集]

  • 渡辺信一郎
  • 片渕須直(元所属スタッフ、現・株式会社コントレール取締役)
  • 阿部恒(元所属スタッフ)
  • 境宗久(元所属スタッフ、現・スタジオKAI所属)
  • 朴性厚(元所属スタッフ、現・株式会社E&H production代表取締役社長)
  • 梅本唯(元所属スタッフ、現・株式会社E&H production所属)
  • 清水久敏(元所属スタッフ、現・株式会社E&H production所属)
  • 西澤千恵(元所属スタッフ、現・株式会社E&H production所属)
  • 佐野誉幸(元所属スタッフ、現・株式会社E&H production所属)

3Dクリエイター[編集]

  • 申在勲(元所属スタッフ、現・株式会社E&H production所属)
  • 朴昌楫(元所属スタッフ、現・株式会社E&H production所属)

その他[編集]

関連項目[編集]

  • マッドハウス - 創業者である丸山正雄が所属していたスタジオ。
  • STUDIO 4℃ - 大塚学が所属していたスタジオ。
  • CLAP - 松尾亮一郎が独立して設立したスタジオ。『この世界の片隅に』の主要スタッフとともに独立。
  • スタジオM2 - 創業者である丸山正雄が設立したスタジオ。丸山は設立に伴い経営・活動の拠点をM2に移した。
  • コントレール - 大塚学が片渕須直とともに設立したスタジオ。
  • スタジオヴォルン - 一部作品を共同制作。
  • E&H production - 朴性厚が独立して設立したスタジオ。『呪術廻戦』『劇場版 呪術廻戦0』などで活躍した演出家・クリエイターが多く移籍している。
  • アニメ制作会社一覧

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ Netflixは2018年から2019年にかけても日本の制作会社5社と提携しており、提携先は合計で9社となった。

出典[編集]

  1. ^ a b 電通、サンライズなど有力スタジオと連携して「ジャパニメーション」のブランディング活用を推進”. ITmedia NEWS. アイティメディア (2018年10月23日). 2022年9月3日閲覧。
  2. ^ a b c d e ドロヘドロ、ゾンビランドサガ…アニメスタジオ・MAPPA、ヒット作の裏にある"手のかかること"をやる精神 (1/3)”. アニメ!アニメ!. イード (2020年7月1日). 2022年9月3日閲覧。
  3. ^ a b アニメプロデューサー丸山正雄氏 MAPPA設立を語る”. インサイド. イード (2012年9月22日). 2022年9月3日閲覧。
  4. ^ a b c アニメ業界ウォッチング第24回:今年75歳、やぶれかぶれのアニメ人生!丸山正雄インタビュー! (1/2)” (2016年8月20日). 2022年9月3日閲覧。
  5. ^ 『呪術廻戦』と『鬼滅』、アニメを比べて見えた制作サイドの「決定的な違い」 「制作スタイル」がまるで異なる (6/7)”. 現代ビジネス. 講談社 (2021年1月21日). 2022年9月3日閲覧。
  6. ^ a b c d e f ドロヘドロ、ゾンビランドサガ…アニメスタジオ・MAPPA、ヒット作の裏にある"手のかかること"をやる精神 (2/3)”. アニメ!アニメ!. イード (2020年7月1日). 2022年9月3日閲覧。
  7. ^ 丸山 正雄(アニメーションプロデューサー)”. クラシオ -塩釜で暮らすあなたに 良い暮らしを (2017年6月24日). 2022年9月2日閲覧。
  8. ^ a b c d e f 『呪術廻戦』と『鬼滅』、アニメを比べて見えた制作サイドの「決定的な違い」 「制作スタイル」がまるで異なる (5/7)”. 現代ビジネス. 講談社 (2021年1月21日). 2022年9月3日閲覧。
  9. ^ a b c d e ドロヘドロ、ゾンビランドサガ…アニメスタジオ・MAPPA、ヒット作の裏にある"手のかかること"をやる精神 (3/3)”. アニメ!アニメ!. イード (2020年7月1日). 2022年9月3日閲覧。
  10. ^ a b 「呪術廻戦 0」が終幕、国内137億円・世界興収230億円以上の大ヒット”. アニメーションビジネス・ジャーナル (2022年5月29日). 2022年9月1日閲覧。
  11. ^ 『劇場版 呪術廻戦 0』北米で初登場No.2 『鬼滅の刃』に続く大ヒットの背景に配給戦略も”. リアルサウンド. 株式会社blueprint (2022年3月22日). 2022年9月1日閲覧。
  12. ^ 高橋良輔 (2022年6月1日). “リバイバル連載:サンライズ創業30周年企画「アトムの遺伝子 ガンダムの夢」その16「"丸どえ~す"というモンスター……」ゲストは丸山正雄さん”. ITmedia NEWS. サンライズ. 2022年9月3日閲覧。
  13. ^ 『呪術廻戦』と『鬼滅』、アニメを比べて見えた制作サイドの「決定的な違い」 「制作スタイル」がまるで異なる (7/7)”. 現代ビジネス. 講談社 (2021年1月21日). 2022年9月3日閲覧。
  14. ^ a b c d e f COMPANY”. MAPPA. 2022年1月3日閲覧。
  15. ^ 【アニメスタジオの今と未来】MAPPAスタッフインタビュー|『進撃の巨人 The Final Season』『呪術廻戦』『ユーリ!!! on ICE』人気作品を作り続けられる理由とは?【連載第2回】” (2022年6月19日). 2022年10月11日閲覧。
  16. ^ a b c d e f g h “コロナ下、地方拠点に存在感 アニメ制作MAPPA仙台、スタジオ設立2年半”. 河北新報. (2020年10月16日). https://kahoku.news/articles/20201016kho000000094000c.html 2022年9月3日閲覧。 
  17. ^ a b c d e 仙台から最先端のアニメ制作を - 株式会社MAPPA 代表取締役 大塚 学 氏”. 仙台市 (2022年4月8日). 2022年9月3日閲覧。
  18. ^ 脱税の「鬼滅の刃」制作会社社長が本人尋問で"驚きの発言" アニメ業界の構造的問題が明らかに (3/4)”. デイリー新潮. 新潮社 (2021年12月17日). 2022年9月3日閲覧。
  19. ^ アニメ『チェンソーマン』制作のMAPPA、藤本タツキ作品は自社ですべてアニメ化したい考え IGNフランスによるインタビューで明かす”. IGN Japan. 産経デジタル (2022年8月17日). 2022年9月3日閲覧。
  20. ^ 「映画大好きポンポさん」2020年公開、制作に新進スタジオのCLAP”. アニメーションビジネス・ジャーナル (2020年2月28日). 2022年9月3日閲覧。
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外部リンク[編集]