幾原邦彦
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| いくはら くにひこ 幾原 邦彦 |
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|---|---|
| 本名 | 幾原邦彦 |
| 別名義 | イクニ 渦薪かい |
| 生年月日 | 1964年12月21日(51歳) |
| 出生地 | |
| 民族 | 日本人 |
| 職業 | アニメ監督、演出家 音楽プロデューサー 小説家 漫画原作者 |
| ジャンル | アニメ 魔法少女 学園 |
| 活動期間 | 1986年 - |
| 公式サイト | JRT<ikuniweb~幾原邦彦監督公式サイト> |
| 主な作品 | |
| 『美少女戦士セーラームーンR』 『美少女戦士セーラームーンS』 『美少女戦士セーラームーンSuperS』 『少女革命ウテナ』 『輪るピングドラム』 『ユリ熊嵐』 |
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幾原 邦彦(いくはら くにひこ、男性、1964年12月21日 - )は、アニメ監督、音楽プロデューサー、小説家、漫画原作者、日本映画監督協会会員。血液型はA型。
目次
作風[編集]
独特の止め絵、バンクのトリッキーな使い方・ギャグ演出・演劇の手法を模した映像表現に定評がある[2]。
職業監督としては「セル画の枚数・作画の力に頼らずに面白い物を作る」ことをポリシーとしている[3]。佐藤順一は「シナリオが直せないなら直せないなりの、作画が期待できないなら期待できないなりの、制作現場に対応した絵コンテを描ける人」と評価している[4]。
構成作家としてはハッタリ・ケレン・メタファー・メタフィクションを多用し、現実世界における物理法則や外的必然性ではなく、作品世界における内的必然性に従って描こうとする傾向がある。それ故、意図の読み難い演出・現実と時系列順にはありえない不自然な展開が多い。これは、「リアリズムよりも抽象化された画面の方がテーマが伝わる」[5]、「シリアスな出来事を、ありのままに描くのはつまらない」[6]という方向性に基づくものである。
難解な作風は意識的ではなく、「自分が見ていて良いと思うものにカメラを向け、ピュアでいようとしたら自然にそうなった」「描写の対象には、普段みんながわかっているのに語らない部分、見て見ぬふりをするものを選んでいる」と語る[7]。
作品の登場人物の名前に、ある程度の縛りを設ける事が多い[8]。
略歴[編集]
- 1985年 京都芸術短期大学(現・京都造形芸術大学)卒業。
- 1986年 東映動画(現・東映アニメーション)へ第二期研修生として入社。『メイプルタウン物語』を担当。師匠格である佐藤順一の下で数々のアニメ制作に携わる。
- 1990年 『もーれつア太郎(1990年版)』第18話「王子と玉子どちらがえらいのココロ!?」で演出デビュー。以降、『美少女戦士セーラームーンシリーズ』のシリーズディレクター等を務める。
- 1993年 『劇場版美少女戦士セーラームーンR』で初めて劇場用作品を手掛けた。
- 1996年
- 1997年 テレビアニメ『少女革命ウテナ』を監督。
- アニメーション神戸97'に於いて神戸賞を受賞。
- 同作の制作終了以降アニメ業界とは一定の距離を置き、小説・漫画原作の執筆、アニメーション関連のシンポジウムのパネリスト・学校の講師としての活動に主軸を置く。
- 2001年 平成13年度文化庁派遣芸術家在外研修員(メディア芸術)として1年間、アメリカ(ロサンゼルス)に派遣された。
- 2006年
- 『ノケモノと花嫁』の企画・制作を行うクリエイター集団「クリエーターズ・モイ」を結成。
- ファッション誌「KERA」に『ノケモノと花嫁』を連載。キャラクターのファッションを映画 『下妻物語』のBABY, THE STARS SHINE BRIGHTとコラボレートしている。
- 2007年 フジテレビのノイタミナ枠にて放映された『のだめカンタービレ』のOP映像の演出を手がけた。
- 2007 - 2009年 文化庁メディア芸術祭において審査委員を務める。
- 2011年 『少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録』以来12年ぶりとなる監督作品『輪るピングドラム』を制作。
- 2015年 『輪るピングドラム』に次ぐ監督作品『ユリ熊嵐』を制作。
人物像[編集]
- 母子家庭で育った。学校では同級生を軽蔑しており、「早く大人になって、早くそこから抜け出たかった」と述べている[11]。自身の作品は母も鑑賞しており『ウテナ』は「わけわからん」と言われているが、『ピングドラム』は評価されている[5]。
- プラモを作るのが好きだった。絵を描くのが得意だった。女の子にもてていた。女の子と「チュー」するよりプラモや絵を貯めることを好んだ[11]。学生時代は剣道部であったが、とにかく暗かったと語っている[12]。
- グラフィックデザイナーに憧れていたが、バイトで仕事をすると個性のぶつかり合いで、その怖さにびびってしまい断念する[12]。
- アニメ業界に入った理由は「楽そうだったから」[11]。実写映画監督も兼任しようと思った時期もあったが、「助監督になれるまで20年かかる」と聞き、断念した[12]。
- 東映動画の研修生試験を遊び半分で受けたら受かった。論文のための原稿用紙に絵を描いたりした[11]。アニメを仕事にしたいとは、それほど思っていなかったという[12]。
- メディアに出る際は前髪を金髪のメッシュに染め、原色を生かした服装で出演する場合が多い。これは、「作品に興味を持ってもらう為に制作する側に注目されるようにするのは不必要な方法ではない」という考えから来ている[13]。その派手なルックスから、メディアでは“アニメ界のヴィジュアル系”という冠で紹介されることがある(さいとうちほ曰く「アニメ界の小室哲哉」[14]、佐藤順一曰く「どうすれば目立つかということを色々考えていた人」[4])。
- 学生時代に寺山修司の演劇実験室◎天井桟敷に傾倒していたことから、演劇への造詣は深い。幾原は、天井桟敷で音楽を担当していたJ・A・シーザーと親交があり、そのことがシーザーの『少女革命ウテナ』への起用に繋がった。
- 影響を受けたアニメーション監督として、出崎統[15]・押井守[16]の名を挙げている。
- 学生時代に、テレビ放送されていた『哀しみのベラドンナ』を偶然観て、アニメーションを意識するようになった[17]。従って、アニメーションは元から好きだった[12]。
- 『新世紀エヴァンゲリオン』の登場人物、渚カヲルのモデルだという説がある[18]。
- 庵野秀明が『エヴァンゲリオン』以降、突然演劇に目覚めたのは幾原の助言によるものである[19]。
- 細田守[3]、大河内一楼[20]、長濱博史[21]など多くのアニメ業界人が幾原からの影響を発言している。
- 幾原によって見いだされた業界人は多い。榎戸洋司は幾原の紹介によりアマチュアから脚本家への道を開いた[22]。また、大河内一楼はアニメへの関わりを持った最初が幾原との仕事である[20]。アニメーターの中村豊は、キャリアの初期に幾原の演出で印象深い仕事[23]をしている。
- 榎戸洋司とは、高校時代からの友人。
- ファンからは「イクニ」と呼ばれ、自身のホームページやブログ、ツイッターでも用いられる。
- 自身を「褒められて伸びるタイプ」と語る。
- 辻村深月の小説『ハケンアニメ!』の中心人物となるアニメーション監督・王子千晴のモデルとされ、単行本には幾原による謝辞も掲載されている。
参加作品[編集]
テレビアニメ[編集]
- 1986 - 1987年 『メイプルタウン物語』(制作進行、演出助手)
- 1987年 『新メイプルタウン物語 パームタウン編』(演出助手)
- 1988年 『闘将!!拉麺男』(制作進行、演出助手)
- 1989 - 1990年 『悪魔くん』(演出助手、スポットCM演出、メイン・サブタイトル題字)
- 1990年 『もーれつア太郎(1990年版)』(演出助手、18.26話演出)
- 1991 - 1992年 『きんぎょ注意報!』(4.13.21.25.30.38.43.49.54話演出)
- 1992 - 1993年 『美少女戦士セーラームーン』(6.11.15.21.26.31.36.46話演出)
- 1993 - 1994年 『美少女戦士セーラームーンR』(シリーズディレクター(60話から)、51.60.68話演出)
- 1994 - 1995年 『美少女戦士セーラームーンS』(シリーズディレクター、103.110.117話演出)
- 1995 - 1996年 『美少女戦士セーラームーンSuperS』(シリーズディレクター、128.137.150.159.166話演出)
- 1997年 『少女革命ウテナ』(原案、監督、OP.1話絵コンテ、35話作画修正(HDリマスター盤)[24])
- 2007年 『のだめカンタービレ』(OP絵コンテ・演出)
- 2008年 『俗・さよなら絶望先生』(4話エンドカード)
- 2008 - 2009年 『ソウルイーター』(29話絵コンテ)
- 2009年 『青い花』(OP.5.6.11話絵コンテ(11話はカサヰケンイチと共同)、OP演出(本編絵コンテは渦薪かい名義))
- 2011年 『輪るピングドラム』(原案、監督、シリーズ構成・脚本、音響監督、OP1絵コンテ・演出、OP2.1.5.11.12.13.14.15.16.17.21.22.23.24話絵コンテ、24話演出)
- 2012年 『ココロコネクト』(ED3絵コンテ・演出)
- 2013年 『BROTHERS CONFLICT』(ED絵コンテ・演出)
- 2015年 『ユリ熊嵐』(原案、監督、シリーズ構成・脚本、音響監督)
- 2016年 『ノルン+ノネット』(OP絵コンテ)
劇場版アニメ[編集]
- 1991年 『まじかる☆タルるートくん』(監督助手)
- 1993年 『劇場版美少女戦士セーラームーンR』(監督)
- 1998年 『機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness-』(友情協力)
- 1999年 『少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録』(原案、監督、絵コンテ)
OVA[編集]
- 1990年 『TOKUMAアニメ絵本 はないちもんめ』(演出助手)
- 1990 - 1992年 『宇宙皇子 天上編』(助監督)
- 2004 - 2006年 『トップをねらえ2!』(2話絵コンテ)
- 2009年 『のだめカンタービレ 巴里編(OAD)』(絵コンテ(渦薪かい名義))
舞台[編集]
- 1997年 『ミュージカル・少女革命ウテナ』(原案、監修、脚色)
- 1999年 『月蝕歌劇団公演・少女革命ウテナ魔界転生黙示録編〜麗人ニルヴァーナ来駕〜』(原案、プロデュース、監修)
- 2000年 『劇団FANTASY ADVENTURE公演・少女革命ウテナ〜コロス幻想生命体〜』(原案、監修)
CD[編集]
- 1997年 少女革命ウテナ『絶対進化革命前夜』(ボーカル)
- 1997年 少女革命ウテナ『バーチャルスター発生学』(ボーカル)
- 1998年 少女革命ウテナ『体内時計都市オルロイ』(ボーカル)
- 1999年 少女革命ウテナ『麗人ニルヴァーナ来駕 ボクのアンドロギュヌス』(ボーカル)
- 1999年 川上とも子ファーストアルバム『ADOLESCENCE DOLL』(プロデュース)
- 2000年 Schell:Bullet『サナフス68』(プロデュース、ボイスナレーション)
- 2008年 少女革命ウテナ『少女革命ウテナ コンプリートCD-BOX』(スーパーバイザー)
- 2012年 輪るピングドラム vol.8 特典ドラマCD(貝国人)
出版物[編集]
- 漫画『少女革命ウテナ』(原作:ビーパパス 漫画:さいとうちほ)
- 漫画『SとMの世界』(原作:ビーパパス 漫画:さいとうちほ)
- 漫画『ノケモノと花嫁 THE MANGA』(連載「KERA」 漫画:中村明日美子)
- 小説『Schell Bullet』(永野護との共著)
- 小説『ノケモノと花嫁』(連載「KERA」 イラスト:中村明日美子)
- 小説『輪るピングドラム』(高橋慶との共著)
- 小説『ユリ熊嵐』(伊神貴世、高橋慶との共著)
関連人物・交友関係[編集]
- 榎戸洋司
- さいとうちほ
- J・A・シーザー
- 庵野秀明
- 錦織博
- 細田守
- 長谷川眞也
- 中村明日美子
- 川上とも子
- 川村万梨阿
- ボンジュール鈴木(ユリ熊嵐のオープニングテーマ「あの森で待ってる」の作詞・作曲・歌)
脚注[編集]
- ^ 徳島県小松島市出身とされることもあるが、本人はTwitterで、「いえ、僕は大阪出身なんです。徳島には実家がありますが僕は住んだことないのです。」とコメントしている。https://twitter.com/ikuni_noise/status/179950938931478528
- ^ アニマックス系列『創ったヒト』 2010年2月13日放送分より。
- ^ a b 『「フリースタイル」(vol.7、フリースタイル社) - 特集・細田守』より。
- ^ a b 洋泉社「オトナアニメ」 Vol.32より。
- ^ a b 飛鳥新社「季刊エス」 2011年10月号より。
- ^ 角川書店「Newtype」 2011年10月号より。
- ^ 『MAG・ネット』(2011年12月3日分)の監督インタビューより
- ^ 『美少女戦士セーラームーンシリーズ』では太陽系の惑星、鉱物、自然、『少女革命ウテナ』では植物、『ノケモノと花嫁』では動物に関連した名前を付けている(ただし、『美少女戦士セーラームーン』に関しては大半が偶然によるものであり、オリジナルの敵に向けた場合が多い)。
- ^ 同作の制作終了後に「第一期ビーパパス解散」という形で分散するも、実際には「Schell Bullet」「SとMの世界」にクレジットされていた。
- ^ 「ヒーローは殺人鬼?」より。
- ^ a b c d 「Newtype」 マークII 1997年
- ^ a b c d e 徳間書店「Voice ANIMAGE」 vol.27より。
- ^ 「Newtype」 2000年8月号より。
- ^ ちゃおコミックス版『少女革命ウテナ』 第3巻より。
- ^ 洋泉社「オトナアニメ」 Vol.21より。
- ^ キネマ旬報社「押井守全仕事―『うる星やつら』から『アヴァロン』まで」より。
- ^ 「月刊「アニメージュ」インタビュー、月刊「Newtype」のクリエーターの好きなアニメランキングよりコメント。
- ^ ALL ABOUT 渚カヲル(角川書店)にて、この件について本人がインタビューを受けている。
- ^ 庵野秀明の対談集『フタリシバイ』(徳間書店)の中での発言。
- ^ a b 「Newtype」 2008年8月号 『コードギアス 反逆のルルーシュ』オフィシャルブログより。
- ^ 「Newtype」 2005年5月号より。
- ^ 「アニメージュ」インタビューより。
- ^ アニメスタイルのインタビュー(http://www.style.fm/as/01_talk/n_yutaka02.shtml)からの記述か。
- ^ 「イクニのメルとも蔵」 2008年3月10日分より。クレジット未表記。
