製作委員会方式

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製作委員会方式(せいさくいいんかいほうしき)とは、アニメ映画テレビ番組などの映像作品や、演劇ミュージカルなどの舞台作品を製作する際の、さまざまなリスクを回避するための方式・手法のひとつであり、現在の主流の方法となっている。

概説[編集]

アニメや映画などのエンターテイメント作品の製作にあたっては多額の費用を必要とする[1]。作品がヒットすれば多額の利益がもたらされる一方、興行が不振に終わった場合には大きな負債や関連商品の不良在庫を抱えるリスクが存在する。現実に、製作した映画が振るわなかったために経営危機に立たされる他、作品制作部門の廃止(版権管理会社への移行)を余儀なくされたり、倒産吸収合併へと追い込まれたりする企業は少なくない。

また、経営危機と逆の場合もある。作品がヒットしたまではよいものの、テレビ放映権やビデオソフト化権の値段が高騰する上に、権利をめぐって同業他社との競合が発生することもあり、テレビ局やビデオソフト会社は作品の買い付けの際に難航することになる。

当方式はこれらのようなリスクを分散・回避するために考案された手法である。

この手法は『風の谷のナウシカ』・『AKIRA』で有名になり、当初は劇場映画製作において多用されてきたが、1992年放送の『無責任艦長タイラー』でテレビアニメ初の製作委員会方式を採用し(この際の名称は「タイラープロジェクト」)、後に、『新世紀エヴァンゲリオン』における「Project EVA」及び「EVA製作委員会」の商業的な大成功によってテレビ作品にも普及した。近年では深夜特撮番組『牙狼<GARO>』や、バラエティ番組では『週刊AKB[2]・『内村さまぁ〜ず』・『バナナ炎』、民放キー局であるテレビ東京では金曜深夜の『ドラマ24』・『テレビ東京月曜10時枠の連続ドラマ』では製作委員会方式を採用した。

手法[編集]

まず、主導権を持つ幹事会社が複数の会社に対し出資を募り資金リスクを分散する一方、利益が出た場合はこれを出資比率に準じて分配する。スポンサー企業にとっては1作品への投資を減らすことができるため、1社がより多くの作品に関与することが可能となり、制作プロダクションとしては映画製作費の調達を容易にもできる。

出資スポンサーとしては、キー局をはじめとする放送局・映画会社・制作プロダクション広告代理店商社出版社新聞社レコード会社・ビデオソフト制作会社・芸能事務所・玩具メーカー・インターネット各種関連会社などが挙げられる。

これらの会社が参加する最大の目的は一つの作品における各種権利ビジネスを行うためである。テレビ放映・劇場上映・海外展開・ネット配信・ビデオソフト・関連書籍の出版・キャラクター版権など、一つの作品について場合によっては数百単位の権利が発生する。出資することによって企業は作品の各種権利の独占使用権を得て取得した権利をフル活用してビジネスを行い、同時に作品の売上向上をも図ることとなる。

近年の(特にキー局における)テレビアニメの本数の増加もこの製作委員会方式の導入によるところが大きい。この方式を採用しているテレビアニメ番組は放送局が製作に関与していない例も少なくない。また、最近のNHKで放送されるアニメにも製作委員会方式で制作される作品が登場している[3]。またTBS読売テレビのように自局では放送せず、自局放送対象エリア内の独立局を中心に放送を展開する例も一部ある。

出資に関して[編集]

製作委員会は、法律的には民法上の任意組合であり「組合員」である出資スポンサーは無限責任を負う。そのため、機関投資家や金融関係者などが参加しにくく、出資先を広げにくいという欠点がある。また、作品の著作権が各出資スポンサーに分散され、各種メディアでの事業展開の際に権利処理が煩雑になるという欠点がある。

そこで最近では「特別目的会社」(SPC)や「有限責任事業組合」(LLP)を利用して、作品を製作するための会社を設立することも行われている。出資スポンサーは有限責任が保障されており、資金の流れが透明化されるため、機関投資家や金融関係者などが出資しやすくなり、出資スポンサーの多様化や製作予算の拡大が容易になる。また、作品の著作権の帰属がSPCやLLPに一本化されるため、将来誕生する新しいメディア媒体で事業展開する際にスピーディに対応できるという利点がある。代表例として『かいけつゾロリ』の「ゾロリエンターテイメント」[4]が挙げられる。また、株式会社方式では松竹主導で設立した同名映画作品のアナザヘヴン社もある。[5]

名称[編集]

製作委員会の名称は「○○製作委員会」が基本であるが、「○○プロジェクト」・「○○パートナーズ」・「○○フィルムパートナーズ」・「○○フィルム・コミッティ」などの名称がある。

また、アニメ作品においては『けいおん!』シリーズにおける「桜高軽音」、『たまこまーけっと』における「うさぎ山商店街」(このほか京都アニメーション製作のものには特に多い)や『ハヤテのごとく!』シリーズにおける「三千院家執事部」「白皇学院生徒会」、『イナズマイレブン』での「FCイナズマイレブン」などのように作品の世界観や劇中で登場する組織にちなんだ名称も見られる。

著作権表示における著作権者名は製作委員会への出資額の順に並べられることが多い(原作者(原作の著作権者)/出版社(漫画・小説が原作の場合)/制作局/○○製作委員会など)。

日本国外での製作委員会表記は「○○製作委員会」(production committee)、「○○フィルムパートナーズ」(Film Partners)と表記されることがある。

有力な出資スポンサー企業[編集]

ここでは複数の製作委員会を特定子会社としている主な企業を挙げる。[6]

脚注[編集]

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  1. ^ 伊藤雅之 (2008年7月15日). “テレビアニメのDVDはなぜ高い? コンテンツのビジネスモデルを探る(1)”. 2008年7月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年4月16日閲覧。
  2. ^ 後継番組の『AKB子兎道場』でも製作委員会方式が採用されている。
  3. ^ こばと。、および少年アシベ GO! GO! ゴマちゃんなど
  4. ^ “TVアニメ製作プロジェクトに特別目的会社を活用”. ITmediaニュース (アイティメディア株式会社). (2003年12月3日). http://www.itmedia.co.jp/news/0312/03/njbt_03.html 
  5. ^ 映画公式もしくは会社公式の関連企業に関するページの項を参照。
  6. ^ なお、放送局・日本の映画配給御三家(東宝松竹東映)や大手総合商社(三菱商事伊藤忠三井物産丸紅住友商事双日)、広告代理店(電通博報堂DYメディアパートナーズなど)および各社グループについては、便宜上、除外してある。

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  • 作花文雄 『著作権法 制度と政策』 発明協会、2008年4月、第3版、303-304頁。ISBN 978-4-8271-0890-3