Blender

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Blender
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Blender 2.83
開発元 Blender Foundation
初版 1998年1月1日(22年前) (1998-01-01[1]
最新版 2.90 - 2020年8月31日(55日前) (2020-08-31[2][±]
リポジトリ git.blender.org/gitweb/gitweb.cgi/blender.git
プログラミング言語 CC++Python
対応OS WindowsmacOSLinuxFreeBSD
プラットフォーム クロスプラットフォーム
種別 統合型3DCGソフトウェア2Dアニメーション制作ソフトウェア、スカルプトモデリングソフトウェア、VFXソフトウェア動画編集ソフトウェア
ライセンス GNU General Public License v3 or later[注 1][3]
公式サイト blender.org
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Blender(ブレンダー)とは、オープンソースの統合型3DCGソフトウェアの一つであり、3Dモデル作成、レイアウト、アニメーション、シミュレーション、レンダリングデジタル合成 (コンポジット)などの機能を備えている。

また、バージョン2.8以降は2D Animationテンプレートを持っており、2Dアニメーション制作ソフトとして使うことも容易となっている。

特徴[編集]

プロフェッショナル向けの3DCGソフトウェアと比較すると軽量でライセンス料が無料なことから、アマチュアを中心に普及が進んでいる[4]。プレビュー表示でGPU機能を多用する関係もあり、例えばnVidiaのグラフィックカードであればGeForce 200やそれ以降の製品が必須となる[5]が、プロ向けのソフトウェアに比べると必須とされるハードウェアの条件は緩い。

3DCG業界やアニメ業界ではMaya3ds Maxが標準となっているが[6]、近年では機能が強化されたことで利用する動きもある[7]。アニメ制作会社・カラーと、その子会社であるプロジェクトスタジオQは、従来使用してきた3ds MaxからBlenderへの移行を進めており、制作中の『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』においてもBlenderの「実地検証」を実施している[8]。また、両社はBlender財団への賛同と開発資金の提供を発表した[9][10]

操作体系面では、バージョン2.7x系までは「オブジェクト(個々の3Dモデル)は右クリックで選択」が基本という、他の大半のソフトウェアと異なる点が特徴の一つ(選択に用いる際のマウスボタンクリックの右と左を入れ替える事は、バージョンを問わずユーザー設定にて可能)であったが、バージョン2.8x以降は「左クリックで選択・右クリックでサブメニュー」という、一般的なソフトウェアの操作に倣っている。FreeCADなどマウスの操作体系をBlenderと同じ仕様に変更できるCADソフトもある。

下書き、ストーリーボード及び手描きアニメーション[編集]

3Dベクターペイント機能のGrease Pencilが搭載されており、3Dモデリングのための下書き、ストーリーボード[11][12]、手描きアニメーションなどに使うことが出来る。またストロークのリギング機能があり、カットアウトアニメーションを作ることも可能となっている[13]。2.91でPotrace英語版ベースの画像ベクトライズ化機能が追加される。

2Dアニメーションに向けて、2D Animationテンプレートが付属している。2.91でボックス変形、キャンバス回転、ブラシパックのインポートなどに対応するGrease Pencil Toolsアドオンが搭載される。

モデリング[編集]

ツール毎に独自の操作ウィジェットを持つポリゴンモデリング機能、非破壊モデリングのためのモディファイア機能、高度なスカルプトモデリング機能などを備えている。スカルプトモデリング用のテンプレートも搭載されている。直感的に布の物理演算を行うことができるSculpt Cloth機能もある[14] (2.91でプラスチックのような可塑性に対応予定)。

またモデリング用として、様々な有償・無償アドオンが存在する。

3Dレイアウト及び入出力[編集]

Blenderでは外部Blendファイルに含まれているオブジェクトやマテリアルなどの任意のデータブロックを個別にリンクすることが可能となっている。ライブラリオーバーライドにも対応しており[15]、リンクしたデータブロックの任意のパラメータの上書きが可能となっている。

ファイルインポートではオートデスクFBX形式、クロノス・グループCOLLADA (DAE) 形式およびglTF形式などの代表的な3Dシーン及びモデル形式、ジオメトリキャッシュのAlembic形式の読み込みが可能となっている。またCADファイルのインポートではAutoCAD DXFアドオンも搭載されている。外部アドオンにはBIMで使われるIFC形式などをインポートするためのBlenderBIMアドオンもある。

シーンのエクスポートではFBX、DAE、glTF形式の他、Universal Scene Description (USD) 形式でのエクスポートにも対応している。

アニメーション[編集]

単純なアニメーション、Python式を使った連動アニメーション (ドライバー[注 2])、スケルタルアニメーション (ボーンアニメーション)などに対応している。

スケルタルアニメーションではフォワード・キネマティクス英語版 (FK・順運動学)、インバース・キネマティクス英語版 (IK・逆運動学)の両方に対応している。IKソルバーにはBlender独自のものとiTaSCベースのもの[16]が搭載されている。ジョイント・コンストレイント英語版を含む様々な拘束が可能。

シミュレーション[編集]

シミュレーションにはBulletベースの剛体シミュレーション[17]、独自の布・軟体・ヘアシミュレーション、Mantaflowベースの流体シミュレーション (液体・気体)[18]などが搭載されている。

プレビュー及びレンダリング[編集]

現行の内蔵レンダラーにはWorkbench、Eevee、Cyclesが存在する。Workbenchはビューポート向けの作業用レンダラーであり、Eeveeは高度なリアルタイムレンダラーとなっている。CyclesはGPU/RTX英語版対応のパストレーシングレンダラーであり、オフラインレンダリング向けとなっている。レンダリング手法が異なることもあり、CyclesとEeveeの間にはマテリアルなどの非互換性が多少存在する[19]。これらレンダラーはビューポート上のプレビュー表示でも使うことが出来る。

また、2.83以降にはVR表示に対応するVR Scene Inspectionアドオンが搭載されている。この機能にはOpenXR対応のヘッドマウントディスプレイ (HMD) デバイス (OpenXR#対応ハードウェア参照) が必要となる[20]

なお、過去のレンダラーにはスキャンライン/レイトレーシングハイブリッドレンダラーのBlender Internalが存在した。Blender Internalはバージョン2.8で削除された。

ポストエフェクト及びコンポジティング[編集]

ノードベースのコンポジット機能を搭載しており、様々な画像処理が可能となっている。OpenCLによるGPU処理に対応している。ディープコンポジティングには対応していないが、Cryptomatteには対応している。

また、2D/3Dモーショントラッキング、ロトスコープなどのVFXに必要となる機能及びVFXテンプレートも搭載されている。

動画編集[編集]

動画編集用の Video Sequence Editor (VSE) 機能およびVideo Editingテンプレートが搭載されている。動画のサムネイルは表示されない。プロキシ編集に対応している。

動画編集を強化するアドオンのBlender Power Sequencerも付属している。

ゲームエンジン[編集]

2.7xまではゲームエンジン機能を内蔵しており、ロジックノードやPythonスクリプトを利用することでインタラクティブなコンテンツを制作することが可能であった。2.8ではゲームエンジン機能が一旦削除されたものの、今後インタラクティブモードが再度追加される予定となっている。

なお、2.8xで旧来のゲームエンジンが使用できる派生版のUPBGEも存在する。

3D印刷[編集]

3D印刷に向けて編集モードのMesh Analysisオーバーレイ[21]や3D-Print Toolboxアドオン[22]などのメッシュ解析・クリーンアップ機能が搭載されている。ただし直接3D印刷を行うことは出来ない。

バージョン履歴[編集]

2004年、2.33から物理ライブラリのライセンス問題によりオープンソース化してから長く取り外されていたゲームエンジンが再統合された。

バージョン2.5系列では、UIの一新、Maya FluidやFume FXのような本格的な流体システムに加え、ほぼ全機能の近代化改修、ブラッシュアップが行われ、2011年4月に初の安定版がリリースされた。

バージョン2.6系列では、2.61においてレンダラであるCyclesやダイナミックペイント、海洋シミュレーション、カメラトラッキング等、他のハイエンドツールにも匹敵する機能を追加し、また、2.63では新しいメッシュ編集構造であるBMeshの統合もされた。

国際化と地域化[編集]

日本語環境は2.49aまでは貧弱だったが、2.49bにて2ちゃんねるのBlenderスレッドの有志が制作・配布した詳細な日本語翻訳テーブルが公式採用された事で強化された。 その後、バージョン2.5系列で国際化がなくなり日本語環境での使用はできなくなっていたが、GSoC2011にて国際化され、平行して日本の有志により再び日本語対応が行われ、バージョン2.60にて公式に日本語環境が復活した。

歴史[編集]

Blenderの前身であるTracesは、オランダのCGスタジオ、NEOGEO社の共同創設者の一人であるトン・ローセンダール (Ton Roosendaal) によって、AmigaOS向けのレイトレーシングレンダラーとして開発され、後にSGI IRIXへと移植された。その後、Tracesのソースコードは書き直されて、Blenderとなった。

1998年、トン・ローセンダールはインハウス・ツールとして使用されてきたBlenderの開発・外販を行う為にNot a Number Technologies (NaN)社を設立した。Windows版も用意され、ラジオシティ機能などを実装した有料版と無料版の二種を展開した。

2001年、NaN社は、Web3Dに向けて、Blender Webプラグインのベータ版をリリースした[23]が、セキュリティの問題から頓挫した。2002年インターネット・バブルの崩壊と共にNaN社は倒産し、Blenderのソースコードは債権者の手に渡ってしまう。しかし開発途上にあったBlenderを手放すことができなかったトン・ローセンダールはBlender Foundationを設立するため、"ソースコード解放"を合言葉に大々的な募金キャンペーンを行い半年で10万ユーロを世界中から集結させ、ソースコードを再びその手に取り戻した。

そして現在までBlenderは、GPLの下にオープンソースウェアとして開発・無償配布されている。ソースコードのコメントがオランダ語で書かれている上に、プログラム自体が定石から外れた組み方をしているため、開発を引き次いだ有志は他OSへの移植などで苦戦したという。

2008年、UI一新などを目的とするBlender 2.5の開発が開始された。バージョン2.4系は2009年のBlender2.49をもって開発終了し、2011年に2.5系の初の安定板となるバージョン2.57がリリースされた。バージョン2.5系は2018年の2.79bをもって開発終了し、2019年7月にリアルタイムレンダラ「Eevee」やフィジカルベースドレンダリング(PBR)などに対応した2.8系の初の安定版となるバージョン2.80がリリースされた。高機能化に伴って企業ユーザーが増加し、特定の版における機能の凍結と長期サポート(Long-term support)を求める企業ユーザーからの要望により、2.8系は2020年5月リリースの2.83において「LTS版」として機能が凍結され、今後の開発はバグの修正のみとなった。新機能の実装はバージョン2.9系としてなされることになり、2020年9月にバージョン2.90がリリースされた。

2020年4月現在、アセットマネージメントなど次世代3DCGソフトに求められる機能の全てを搭載するのはさらに先になる予定が示されているが、LTS版の導入によって最新版での実験的機能の投入がやりやすくなるとのことで、2021年には21年ぶりのメジャーバージョンアップとなるバージョン3.0系のリリースが予定されている。2018年2月に「Blender 2.8 Code Quest」が開始され、開発資金を集めるためのグッズの販売や、スポンサーの募集などを行っている。

動作環境[編集]

Windows(バージョン7、8、10)、macOS(10.12以上)、Linuxなど、多OS環境で動作する クロスプラットフォームが特徴である。ZIP版とインストーラー版が用意されている。ファイルの拡張子は『.blend』となる。

最小限動作環境 推薦動作環境 快適動作環境
64ビットデュアルコア 2Ghz CPU(SSE2) 64ビット クアッドコアCPU 64-bit 8コアCPU
4 GB RAM 16 GB RAM 32 GB RAM
1280×768ドット表示 Full HD(1920×1080) 複数のFull HD表示
マウス・トラックパッド・ペン/タブレット 3ボタンマウス又はペン/タブレット 3ボタンタブレットとペン/タブレット
メモリ1GB以上のグラフィックカード(OpenGL 3.3以上) メモリ4GB以上のグラフィックカード メモリ12GB以上のグラフィックカード

参考画像[編集]

脚注[編集]

[脚注の使い方]

注釈[編集]

  1. ^ GPLv2+とApache License 2.0の組み合わせ
  2. ^ 2.4x以前はIpo Driver

出典[編集]

  1. ^ Blender’s 25th birthday!”. blender.org (2019年1月2日). 2019年8月1日閲覧。
  2. ^ Release Notes”. blender.org (2020年8月31日). 2020年8月31日閲覧。
  3. ^ License - blender.org”. 2019年11月23日閲覧。
  4. ^ 初めての3DCGから本格ゲーム開発まで予算10万円台"Blender"向けPCを MUGENUPが検証! - CGWORLD.jp
  5. ^ Supported GPUs in Blender 2.80
  6. ^ [SIGGRAPH2010]Vol.06 今年で20周年を迎える3ds Max関係者に独占インタビュー”. PRONEWS (2010年8月4日). 2017年4月20日閲覧。
  7. ^ User Stories — blender.org
  8. ^ 西田, 宗千佳 (2019年8月14日). “「やっと3Dツールが紙とペンのような存在になる」エヴァ制作のカラーがBlenderへの移行を進める理由とは?(西田宗千佳)”. Engadget 日本版. 2019年8月15日閲覧。
  9. ^ Blender開発基金への賛同について”. 株式会社カラー (2019年7月30日). 2019年8月15日閲覧。
  10. ^ Blender [@blender_org] (24 July 2019). "The Japanese Anime studios Khara and its child company Project Studio Q sign up as Corporate Silver and Bronze members of Development Fund. They're working on the Evangelion feature animation movie. www.khara.co.jp studio-q.co.jp #b3d" (ツイート). Twitterより2019年8月15日閲覧
  11. ^ Blender 2.73 – A New Storyboard Workflow The Gooseberry Open Movie Project 2015年1月15日
  12. ^ Storyboarding with Grease Pencil BlenderNation 2016年8月17日
  13. ^ Grease Pencil » Grease Pencil Weight Paint Mode » Introduction Blender Foundation
  14. ^ Blender Foundation releases Blender 2.83 LTS CG Channel 2020年6月4日
  15. ^ Blender Foundation releases Blender 2.81 CG Channel 2019年11月21日
  16. ^ 『Simulation, Modeling, and Programming for Autonomous Robots - Second International Conference, SIMPAR 2010』 P.16 Noriako Ando, et al. 2010年11月 ISSN 0302-9743
  17. ^ Blender 2.66 adds Bullet physics, Dynamic Topology CG Channel 2013年2月22日
  18. ^ Blender Foundation releases Blender 2.82 CG Channel 2020年2月14日
  19. ^ Rendering » Eevee » Limitations Blender Foundation
  20. ^ Blender Foundation releases Blender 2.83 LTS CG Channel 2020年6月4日
  21. ^ Mesh Analysis Blender Foundation
  22. ^ 3D Print Toolbox Blender Foundation
  23. ^ Blender - news - Web Plug-in NaN 2001年8月16日

外部リンク[編集]