Vulkan (API)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動
Vulkan
開発元 クロノス・グループ
初版 2016年2月16日(2年前) (2016-02-16
最新版 1.1.77 - 2018年6月11日(6か月前) (2018-06-11[1][±]
対応OS WindowsLinuxAndroid、その他
プラットフォーム クロスプラットフォーム
対応言語 C/C++
種別 3DグラフィックスAPI
公式サイト www.khronos.org/vulkan/
テンプレートを表示

Vulkan(ヴァルカン)は、クロノス・グループ: Khronos Group)が策定している、オープンスタンダードロイヤリティフリークロスプラットフォームなリアルタイム3次元コンピュータグラフィックス・コンピュートAPIである。グラフィックスハードウェア層に近いローレベル (low level) な制御を目的としており、これによりオーバーヘッドを低減し、ハードウェア限界性能を引き出すことが可能となる。VulkanはアップルMetalマイクロソフトDirect3D 12といった先発のローレベルAPIと競合するが、プラットフォーム独自の固有仕様ではなく、様々なデバイスやオペレーティングシステムをターゲットにできることが特徴である。

経緯[編集]

Vulkanが出現する以前、クロスプラットフォームなグラフィックスAPIとしてOpenGLおよびOpenGL ESがすでに存在していた。しかし、OpenGL黎明期のハードウェア設計に由来する互換性重視のAPI設計は徐々に陳腐化し、OpenGL 4に至る頃にはすでに最新のGPUハードウェア設計との乖離が発生してしまっていた。また、OpenGL/OpenGL ESはハードウェアを高度に抽象化しており、そのためプラットフォーム間の移植性やアプリケーション開発者にとっての利便性は高いものの、AAAタイトルのゲームなどに代表されるような性能要求の厳しいソフトウェアの開発に利用する場合はオーバーヘッドが大きくなってしまい、ハードウェアの限界性能を引き出すことができなくなってしまうという問題を抱えていた。オーバーヘッドの増加による描画効率の低下はまた電力効率の低下にも直結するため、モバイル機器など電力供給の限られるデバイスにおいても効率面での影響は無視できない。

このため、SIGGRAPH 2014で、レガシーな設計が蓄積しているOpenGLをリセットし、ゼロから構築し直して刷新する、次世代の標準3D API規格 (OpenGL Next Generation, glNext) の策定が始められることがアナウンスされた。このとき、マルチスレッド対応やシェーディング中間言語などの近代的な技術が導入されることが発表された[2]

GDC 2015では、新規格の名称が"Vulkan"(ドイツ語で "火山" すなわちvolcano)となることが発表され[3]Direct3D 12同様のコマンドキューベースのマルチスレッドレンダリング機能や、OpenCLとのプログラミング基盤共通化をもたらすSPIR-V中間表現[4]を導入することが明らかにされた。また、VulkanにはAMD独自のローレベルグラフィックスAPIであるMantleが要素技術として取り込まれることが発表された[5]

2015年8月には、GoogleAndroidにおいてVulkanをサポートする旨を発表[6]。2016年8月リリースのAndroid 7.0 (Nougat) からOSレベルの対応が開始された。実際にVulkanが利用できるかどうかは、システムがVulkan対応GPUを搭載しているかどうかにも依存する。

2016年2月16日、Vulkan 1.0の正式仕様がリリースされた[7]。Vulkan仕様のリリースとともに、AMD、NVIDIAインテルクアルコムイマジネーションテクノロジーズ英語版といった代表的なベンダーはVulkan対応ドライバーのベータ版の提供や認証を開始した[8]

なお、Vulkanはハードウェアの詳細な制御を可能とするローレベルAPIである一方、従来のOpenGLはCPU-GPU間の同期などの煩雑な処理を自動で行なってくれる上位層のAPIとして、今後もメンテナンスおよびアップデートが継続されることになっている[9]

シェーディング言語[編集]

Vulkanがサポートする最初の高レベルシェーディング言語は、OpenGLと同じくGLSLとなる。ただし、VulkanではSPIR-Vを標準的に利用することが可能であるため、GLSLで記述したシェーダープログラムをオフラインコンパイルし、SPIR-Vとしてバイナリに変換してからアプリケーションに同梱することが可能となる。そのほか、Vulkan SDKに付属するオフラインシェーダーコンパイラーglslangValidatorには、入力としてHLSLで書かれたソースコードを使うことができるようになるコンパイルオプションも存在する。

開発環境[編集]

Vulkanの公式ソフトウェア開発キット (SDK) として、Valve社の協力のもとLunarG英語版社がLunarG Vulkan SDKをリリースしている。同SDKはWindowsおよびLinuxに対応している。

また、Vulkanに対応するデバイスドライバーや独自のSDK開発を所望するベンダー向けに、ICD (Installable Client Driver) ローダーやアーキテクチャに関するドキュメントがGitHubにて公開されている。

補助ライブラリ[編集]

  • GLFW - OpenGL向けのマルチプラットフォームライブラリであるが、バージョン3.2以降でVulkanにも対応した。
  • vulkan-cpp - Googleの提供するVulkan用のC++向け抽象化ライブラリ[10]。ライセンスはApache License 2.0。
  • V-EZ - AMDの提供するVulkan用の簡略化ミドルウェア[11][12]
  • Anvil - AMDの提供するVulkan用フレームワーク[13]。ライセンスはMIT License
  • Falcor - NVIDIAの提供するVulkanおよびDirectX 12用のレンダリングフレームワーク。
  • Vulkan Memory Allocator - AMDの提供するVulkan用メモリ管理ライブラリ[14]。ライセンスはMIT License。

言語バインディング[編集]

  • Vulkan-Hpp - Vulkan APIのC++バインディング[15]。Khronos Groupが提供している。ライセンスはApache License 2.0。元々NVIDIAで開発された[16]
  • VulkanSharp - Vulkan APIの.NETバインディング[17]Mono Projectが提供している。ライセンスはMIT License。

互換レイヤー[編集]

  • MoltenVK - Vulkan APIをAppleのMetal API上で使うためのオープンソース互換レイヤー[18]。Khronos Groupが提供している。ライセンスはApache License 2.0。シェーダーコンバータのMoltenVKShaderConverterも用意されている。
  • VulkanOnD3D12 - Vulkan APIをMicrosoftのDirect3D 12 API上で使うためのオープンソース互換レイヤー[19]。ライセンスはApache License 2.0。
  • Rostkatze - Vulkan APIをMicrosoftのDirect3D 12 API上で使うためのオープンソース互換レイヤー[20]。ライセンスはApache License 2.0。

MoltenVK[編集]

アップルのmacOS/iOS上では、Vulkanは2016年2月時点でサポートされていないが、Metal APIを利用してVulkanを実現するMoltenVK(旧称MetalVK)の開発がBrenwill Workshopによって進められている[21][22]

2018年2月26日に、クロノスはValve、LunarG、Brenwill Workshopとの協業によるMoltenVKのオープンソース化を発表した[23][24][25]。これによりmacOS/iOSでもVulkanおよび開発ツールを無償で利用可能になった。

脚注[編集]

  1. ^ Vulkan® 1.1.77 - A Specification”. クロノス・グループ (2018年6月11日). 2018年6月17日閲覧。
  2. ^ OpenGL 3Dの次世代規格の策定作業がKhronos Groupの指揮下に始まる…ハードウェア重視、マルチスレッド、共通シェーディング言語など - TechCrunch
  3. ^ [GDC 2015]Khronos,新世代グラフィックスAPI「Vulkan」を正式発表。OpenGL時代のしがらみを捨てた,スリムでハイエンドなAPIに - 4Gamer.net
  4. ^ SPIR - The first open standard intermediate language for parallel compute and graphics
  5. ^ [GDC 2015]Khronos,新世代グラフィックスAPI「Vulkan」でAMDの「Mantle」を採用 - 4Gamer.net
  6. ^ 「Android」、低オーバーヘッドのグラフィックスAPI「Vulkan」をサポートへ - CNET Japan
  7. ^ 新世代の低オーバーヘッドなグラフィックスAPI「Vulkan」,ついに正式始動 - 4Gamer.net
  8. ^ Qualcomm Announces Vulkan API Support on the Adreno 530 GPU | Qualcomm
  9. ^ Vulkan on NVIDIA GPUs; Piers Daniell, Driver Software Engineer, OpenGL and Vulkan
  10. ^ google-admin/vulkan-cpp-library
  11. ^ GPUOpen-LibrariesAndSDKs/V-EZ
  12. ^ V-EZ: AMD Releases New Easy-To-Use Vulkan Middleware, Simplified API Phoronix 2018年3月26日
  13. ^ GPUOpen-LibrariesAndSDKs/Anvil: Anvil is a cross-platform framework for Vulkan
  14. ^ AMD's GPUOpen Posts New Vulkan Memory Allocator Phoronix 2017年6月19日
  15. ^ KhronosGroup/Vulkan-Hpp: Open-Source Vulkan C++ API
  16. ^ Vulkan bekommt offizielle API für C++ Golem.deドイツ語版 2016年7月25日
  17. ^ mono/VulkanSharp: Open source .NET binding for the Vulkan API
  18. ^ KhronosGroup/MoltenVK: MoltenVK is an implementation of the high-performance, industry-standard Vulkan graphics and compute API, that runs on Apple's Metal graphics framework, bringing Vulkan to iOS and macOS.
  19. ^ Open-Source Project Trying To Map Vulkan Onto Direct3D 12 & Metal Phoronix 2018年1月28日
  20. ^ Rostkatze: Vulkan Over Direct3D 12 With C++ Phoronix 2018年3月1日
  21. ^ MetalVK – Molten
  22. ^ MoltenVK – Molten
  23. ^ クロノス、VulkanアプリケーションのAppleプラットフォームへのポーティングを実現する、 オープンソースを発表 - Press Release - Khronos Group” (日本語). jp.khronos.org. 2018年7月31日閲覧。
  24. ^ “Vulkan Applications Enabled on Apple Platforms” (英語). The Khronos Group. (2018年2月26日). https://www.khronos.org/news/press/vulkan-applications-enabled-on-apple-platforms 2018年7月31日閲覧。 
  25. ^ 株式会社インプレス (2018年2月27日). “グラフィックスAPI「Vulkan」がmacOS/iOSで利用可能に” (日本語). PC Watch. https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1108626.html 2018年7月31日閲覧。 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]