弱冷房車
この記事はその主題が日本に置かれた記述になっており、世界的観点から説明されていない可能性があります。(2009年8月) |
弱冷房車(じゃくれいぼうしゃ)、・弱冷車(じゃくれいしゃ)とは、公共交通機関(特に鉄道)において冷房の設定温度を他の車両より上げた車両のことである。
概要
日本での弱冷房車は1984年夏に京阪電気鉄道で6両編成以上[1]の車両の2両目に導入したのが始まりである。なお京阪では2004年までは特急用車両および6000系以降の車両は対象外であったが、2005年に全車種の7両編成以上の編成に拡大した。
その後他社にも拡大し、1編成中に1 - 2両ほど設けられている。編成中の他の車両に比べ、冷房の設定温度を他の車両より概ね1 - 2℃高くしているが、事業者により設定温度は異なる。
夏場に男性客よりも薄着が多く冷え性の人が多い女性客を中心に「冷房が効きすぎで寒い」という要望が多かったことから各社で導入が進んだ。
首都圏では「弱冷房車」、近畿地方では「弱冷車」と表記することが多い。ただし京阪では首都圏同様に「弱冷房車」という。
英語表現について
適切とされる英語表現としては、Mildly air-conditioned carやLightly air-conditioned carなどがある。
日本で見られる、あるいは過去に見られた英語として適切でない表現としては、 1990年代まで阪急電鉄で見られた"WEAK COOL"や、画像にある小田急電鉄の"Soft air-conditioned car"が挙げられる。前者は漢字をそのまま英単語に置き換えたもので英語として意味が通じず、後者は意味は通じるものの英語圏では用いられない表現(和製英語)である。
弱冷房車を設定している事業者
日本では、以下の鉄道事業者で弱冷房車の設定がされている。
関東地方
東日本旅客鉄道(JR東日本)
設定温度は概ね27℃(弱冷房車以外は25℃。ただし、京浜東北線・京葉線は24℃、東海道線は26℃)[2]。
10・11両編成の通勤形電車では4号車(概ね西寄りから4両目)に設定されていることが多い(山手線・京浜東北線・中央線快速・中央・総武線各駅停車など)。
- 常磐線快速 - 8号車・14号車。
- 近郊形電車の常磐線中距離電車と同一の設定である(グリーン車導入以前は4号車に設定されていた。また当初は14号車には設定なかった)。
- 京葉線 - 14両編成のE331系では6号車に設定されている。
- 相模線 - 橋本寄りから2両目の3号車。
- 横浜線 - 八王子寄りから4両目の5号車。
10・11両編成の近郊形電車では4号車にグリーン車が連結されている関係上、8号車(概ね西寄りから8両目)に設定されていることが多い(東海道線・伊東線・横須賀線・総武線快速・湘南新宿ラインなど)。
- 宇都宮線(東北線)・高崎線 - 8号車・13号車(13号車は211系のみ)。
- 常磐線 - 8号車・14号車。(5両編成の場合は4号車)(415系1500番台は3号車)
東武鉄道(東武)
設定温度は28℃(弱冷房車以外は26℃)[3]。
- 伊勢崎線・日光線・野田線
- 東上線 - 池袋寄りから2両目の7号車(東京メトロ車両・東急車両・横浜高速車両の8両編成)・9号車(10両編成)。
- 6・8・10両編成の車両に設定。2・4両編成の車両のみで組成された列車の場合、弱冷房車はない。
西武鉄道(西武)
設定温度は28℃(弱冷房車以外は26℃)[2]。
- 池袋線
- 新宿線 - 西武新宿・国分寺寄りから2両目の2号車。
- 6・8・10両編成の車両に設定。このため6・8両編成に2・4両編成を増結した場合は4・6号車となる場合がある。また、2・4両編成の車両のみで組成された列車の場合、弱冷房車は設定されない。
- 多摩湖線(ワンマン運転車)・多摩川線 - 西武遊園地・是政寄りから2両目の3号車。
京成電鉄(京成)・北総鉄道・京浜急行電鉄(京急)
設定温度は京成車・北総車が27℃(弱冷房車以外は25℃)、京急車が28℃(弱冷房車以外は26℃)[2]。
京王電鉄(京王)
設定温度は28℃(弱冷房車以外は26℃)[9]。
小田急電鉄(小田急)
設定温度は28℃(弱冷房車以外は26℃)[2]。
- 小田急車両 - 小田原・藤沢・唐木田寄りから2両目の2号車[10]。
- 4両編成以外の車両に設定。4両編成を2本組み合わせた8両編成の列車では弱冷房車の設定はない。
- 東京メトロ車両 - 唐木田寄りから4両目の4号車。
東京急行電鉄(東急)・横浜高速鉄道
設定温度は28℃(弱冷房車以外は25℃から26℃)[11]。
- 東横線・みなとみらい線 - 元町・中華街寄りから2両目の7号車(8両編成)・9号車(10両編成)。
- 2013年3月16日の東京メトロ副都心線への乗り入れ開始に伴うダイヤ改正に合わせ、元町・中華街寄りから3両目の6号車(当時は8両編成のみ在籍)から、副都心線乗り入れ各社と同じ位置に変更された[12]。
- 目黒線 - 日吉寄りから3両目の4号車。
- 田園都市線 - 渋谷寄りから2両目の2号車、中央林間寄りから3両目の8号車(東武車両のみ)
- 大井町線 - 大井町寄りから2両目の2号車。
- 池上線・東急多摩川線 - 編成中央の2号車。
- こどもの国線・世田谷線 - 設定なし。
東京地下鉄(東京メトロ)・東葉高速鉄道・埼玉高速鉄道
乗り入れ先の各線と同じ位置にあるものが多い。設定温度は28℃(弱冷房車以外は26℃)[13]。
- 銀座線・丸ノ内線 - 設定なし。
- 日比谷線 - 中目黒寄りから3両目の6号車。
- 東西線・東葉高速線 - 西船橋・東葉勝田台寄りから4両目の4号車。
- 千代田線
- 有楽町線・副都心線 - 新木場・元町・中華街寄りから2両目の7号車(8両編成)・9号車(10両編成)。
- 半蔵門線 - 押上・久喜寄りから2両目の2号車、渋谷・中央林間寄りから3両目の8号車(東武車両のみ)。
- 南北線・埼玉高速線 - 目黒・日吉寄りから3両目の4号車。
東京都交通局(都営地下鉄)
大江戸線以外の設定温度は28℃(弱冷房車以外は25℃)、大江戸線は26℃(弱冷房車以外は23℃)。[2]。
- 浅草線 - 西馬込寄りから3両目、7両目(京急車両のみ)。
- 三田線 - 目黒寄りから3両目の4号車。
- 新宿線 - 新宿寄りから3両目の3号車。
- 大江戸線 - 光が丘寄りから4両目の5号車。
- 日暮里・舎人ライナー - 中央の車両となる3号車。
首都圏新都市鉄道(つくばエクスプレス)
設定温度は28℃(弱冷房車以外は26℃)[14]。
- つくば寄りから3両目の3号車。
東京モノレール
- 東京モノレール羽田空港線 - モノレール浜松町寄りから2両目の2号車、羽田空港第2ビル寄りから2・3両目の4号車・5号車。
- 2011年夏の電力不足による電力制限令に対応し、同年以降編成中1両から3両に増設された[15]。全列車6両編成のうち半数の3両が弱冷房車となり、編成における弱冷房車の比率が日本で一番高い構成になっている。
新京成電鉄
- 松戸寄りから3両目の車両(6両編成)・4両目の車両(8両編成)。
相模鉄道(相鉄)
横浜市交通局(横浜市営地下鉄)
設定温度は28℃(弱冷房車以外は27℃)[16]。
横浜新都市交通(シーサイドライン)
2007年9月1日設定[17]。
- 金沢シーサイドライン - 金沢八景寄りから2両目の2号車。
東海地方
名古屋鉄道(名鉄)
遠州鉄道
- 新浜松寄りの先頭車。
近畿地方
西日本旅客鉄道(JR西日本)
設定温度は弱冷車かどうかに関係なく概ね27℃[2]。
線区によらず、概ね車両の編成両数によって設定されている。複数の編成によって組成された列車の場合、各編成毎に弱冷房車が存在する。
- 4両編成の車両 - 1号車(概ね西寄りの先頭車)。
- 6・7・8両編成の車両 - 1・2号車(概ね西寄りの2両)。
近畿日本鉄道(近鉄)
設定温度は28℃(弱冷房車以外は26℃)[2]。
- 奈良・橿原神宮前・鳥羽・吉野寄りから2両目の車両。
- 4・6両編成の車両に設定。2・3両編成の車両のみで組成された列車の場合、弱冷房車は設定されない。4・6両編成の車両によって組成された8・10両編成の列車の場合、各編成毎に弱冷房車が存在する。
南海電気鉄道(南海)・泉北高速鉄道
設定温度は28℃(弱冷房車以外は26℃)[2]。
- なんば寄りから3両目の車両。
- 4・6両編成の車両に設定。2両編成の車両のみで組成された列車の場合、弱冷房車は設定されない。4・6両編成の車両によって組成された8・10両編成の列車の場合、各編成毎に弱冷房車が存在する。
京阪電気鉄道(京阪)
設定温度は28℃(弱冷房車以外は26℃)[18]。
阪急電鉄(阪急)
設定温度は27℃(弱冷房車以外は26.5℃)[2]。
阪神電気鉄道(阪神)
設定温度は28℃(弱冷房車以外は27℃)[2]。
山陽電気鉄道(山陽)
四国地方
伊予鉄道
四国地方で初の弱冷房車の設定となる。設定温度は28℃(弱冷房車以外は26℃)[19]。
九州地方
西日本鉄道(西鉄)
設定温度は27℃(弱冷房車以外は25℃)[20]。
- 天神大牟田線・太宰府線 - 各編成の大牟田寄りの先頭車(3000形・7000形・7050形は設定なし)。
- 複数の編成によって組成された列車の場合、複数の弱冷房車が存在する。
- 甘木線・貝塚線 - 設定なし。
福岡市交通局
脚注
- ^ a b 京阪では後に6両編成は車両・運用とも消失している
- ^ a b c d e f g h i j 河尻定 (2013年6月28日). “大江戸線、冷房強いのになぜ暑い 鉄道各社の温度 (東京ふしぎ探検隊)”. 日本経済新聞 (東京都) 2013年7月13日閲覧。
- ^ 鉄道事業 - サービス向上に向けて - 東武鉄道公式サイト
- ^ “2013年3月16日(土) ダイヤ改正を実施します” (PDF). 西武鉄道 (2013年1月22日). 2013年1月31日閲覧。
- ^ “よく頂くご質問(FAQ) 車両について”. 京成電鉄. 2012年6月12日閲覧。
- ^ “京急,弱冷房車を増設”. railf.jp. 2012年6月12日閲覧。
- ^ “夏季の鉄道事業の節電対策について”. 京急電鉄. 2012年6月12日閲覧。
- ^ “電力使用制限の終了に伴う節電対策の見直しについて”. 京急電鉄. 2012年6月12日閲覧。
- ^ “よくいただくご意見(FAQ) - クーラー設定温度について(夏季)”. 京王電鉄. 2012年6月12日閲覧。
- ^ “ODAKYU VOICE 2009年6月1日発行号” (pdf). 小田急電鉄. 2012年6月12日閲覧。
- ^ ご利用案内 - 弱冷房車 - 東京急行電鉄公式サイト
- ^ “東京メトロ副都心線との相互直通運転開始に伴い3月16日(土)に東横線のダイヤを改正します” (PDF). 東京急行電鉄 (2013年1月22日). 2013年1月31日閲覧。
- ^ よくいただくお問い合わせ - 東京地下鉄公式サイト
- ^ “車内の冷・暖房は何度ですか?”. 首都圏新都市鉄道. 2013年12月16日閲覧。
- ^ 『東京モノレールにおける節電の取組みについて』(PDF)(プレスリリース)東京モノレール、2011年6月22日 。2013年5月10日閲覧。
- ^ 横浜市市民活力推進局広聴相談課 Q&Aよくある質問集 市営地下鉄車内の温度管理はどうなっていますか - 横浜市公式サイト
- ^ お客様の声を反映した取り組み - 横浜新都市交通公式サイト
- ^ よくいただくご質問と回答 - 京阪電気鉄道公式サイト
- ^ a b 新型鉄道車両(3000系)安全祈願祭 - 伊予鉄道公式サイト
- ^ よくあるお問い合せ - 西日本鉄道公式サイト