AIの遺電子

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AIの遺電子
ジャンル SF漫画
漫画
作者 山田胡瓜
出版社 秋田書店
掲載誌 週刊少年チャンピオン
レーベル 少年チャンピオン・コミックス
発表号 2015年49号 - 2017年39号
巻数 全8巻
話数 全87話
漫画:AIの遺電子 RED QUEEN
作者 山田胡瓜
出版社 秋田書店
掲載誌 別冊少年チャンピオン
発表号 2017年11月号 -
巻数 既刊1巻(2018年4月6日現在)
テンプレート - ノート
プロジェクト プロジェクト:漫画
ポータル Portal:漫画

AIの遺電子』(アイのいでんし)は、山田胡瓜による日本SF漫画作品[1]

概要[編集]

週刊少年チャンピオン』(秋田書店)で、2015年49号(2015年11月5日発売)[1]から2017年39号(2017年8月24日発売)[2]まで連載された。続編の『AIの遺電子 RED QUEEN』が、『別冊少年チャンピオン』(同社刊)にて、2017年11月号(2017年10月12日発売)から連載中[3]

人間、ヒューマノイド、ロボットが当たり前のように存在する近未来を舞台に、ヒューマノイドを治療する人間の医者を主人公として、人間とヒューマノイド双方の考え方の違いによって起きる問題を戦争、テロ、殺人事件、陰謀、暴力、憎悪ではなく、「愛」、「友情」をベースに描くオムニバスストーリーである[1][4]

大西赤人は、AIを「アイ」と読ませ「」や「I」(英語一人称であり、自我としての“私”)の意味を含ませることで人間的にし、逆に遺伝子ではなく「遺電子」とすることで“機械”としての意味を打ち出しているのではないかと推測している[5]。また、大西は本作について、ヒューマノイドのAIがなぜ感情を持つのか、感情を持たねばならないのか? 人間の感情とは何なのか? 人間の感情も人間の成長過程において「プログラム」されているのではないのか? 人間の感情の基盤となる記憶そのものも不正確な後天的プログラムなのではないか? と、ヒューマノイドという空想的な題材を描きつつ、人間自体のありようを考えさせる作品であると評している[5]

山田自身は、将来、人間と同等の人工知能 (AI) が登場したときには、AIと人間とは対等のものとして扱われるべきではないのか? 人間と同等のAIは、人間同様に間違いも起こすはずであり、AIの間違いをどこまで許容できるのか? といったような問題を考える際の参考になれば良いと語っている[6]

コミックス1巻発売時のには「これぞ近未来版ブラック・ジャック! 人工知能を治療する新医者!」と書かれていた[4]。また、ブラック・ジャックのイニシャルである「BJ」を1文字シフトすると「AI」になることも指摘されている[4]

第21回(2017年)文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞した[7]

あらすじ[編集]

ヒューマノイドを治療する専門医の須堂光は人間である。須堂の病院をさまざまな悩みを抱えたヒューマノイドが治療に訪れる。

あるヒューマノイドの落語家は、蕎麦を美味そうに食べているように見せられないのは、人間とは感覚が違うからだと悩むが、人間の師匠は蕎麦アレルギーで蕎麦を食べられないことを知ると、自身の芸の拙さに問題があったのだと気づく[6]。ある女性ヒューマノイドは恋愛感情を捨てたいと願ったが、それは女性を好きになる自分を認めたくないから、相手女性に告白することで現在の友人関係が維持できなくなることを心配するためだった[6]。絵を描き続ける画家のヒューマノイド、小説を書くヒューマノイド、歌を生業とするヒューマノイドなど、自らの才能の限界に悩んだり、ヒューマノイド故に可能なボディの交換による歌声の微々たる変化といったヒューマノイド独自の悩みに苦しむ[8]

須堂自身もヒューマノイドの母親に育てられ、その母親が違法行為であるコピー人格の販売を行って収監されており、母親のコピーを探すことを目的としていた。

RED QUEEN[編集]

母親のコピー人格を追って、須堂は記者の身分で内戦中のロビジアへ。人間至上主義の北ロビジアがヒューマノイドの電脳を集めていることを知り、北ロビジアへ潜入する。

主な登場人物[編集]

須堂 光(すどう ひかる)
須堂新医院の院長でもあるヒューマノイド専門医の人間。なお「新医院」とはヒューマノイドの診察、治療と人間へのインプラント手術などの両方を行う病院。両方の治療を行う医者を「新医者」と呼ぶ[4]
髪は白く、幼いころは免疫が弱く病気がちであった。ヒューマノイドの母親の養子として育てられ、その母親は自分の人格コピーを販売し、重罪として服役中。母親のコピー人格を探すことが須堂の目的でもある。
モッガディート
闇医者としての須堂の名前。名前の由来はジェイムズ・ティプトリー・Jr.のSF短編小説『愛はさだめ、さだめは死』の主人公である非ヒト型種族の名前[4]
樋口 リサ(ひぐち リサ)
須堂新医院で須堂の助手(看護士)を務めるヒューマノイドの女性。須堂を慕っている[9]
15歳のときに開業する前の須堂の患者だったころからの付き合い。
ジェイ
須堂新医院に設置されている産業用(医療用)AI。須堂の治療のサポートを行う。
医療用AIに留まらない能力を持っているが、表面上は普通の医療用AIとしてふるまっている。
瀬戸(せと)
須堂の大学時代の友人の1人であり、ヒューマノイド専門医。休業した須堂新医院の建物を借り受けて開業する。
ヒューマノイドへの治療も過去の記憶を操作する(そのほうが報酬系などの操作を行うよりも効果的と主張する)など、須堂とは方針が異なる。
三好 レオン(みよし レオン)
リサの友人の1人。ヒューマノイドの女性。サバサバしているので「サバちゃん」と呼ばれる。
実は女性を愛する嗜好を持っており、リサを愛しているが、そのことで苦悩する。
MICHI(ミチ)
超高度AI。人間およびヒューマノイドの世界をコントロールしている。
カオル
須堂の大学時代の研究室の同僚。ヒューマノイド。現在は女性のボディだが、大学時代は男性ボディだった。
MICHIの改修審査に携わるメンバーの1人。
サラハ
「RED QUEEN」から登場。北ロビジアに住む女性であり、須堂と行動を共にする。
トオル
北ロビジア在住の元日本人の青年。ヒューマノイドのカオリといっしょに暮していて、愛情を抱いていた。しかし、カオリには須堂の母親のコピー人格が入っていたため、また電脳の悪用を防ぐ目的で、須堂によって殺害(破壊)され、トオルは須堂に復讐を誓う。

世界観・用語[編集]

ヒューマノイド
人間と同じレベルの知性、感情のあるヒト指向型人工知能を搭載した存在。世界の総人口の1割に達している[4]
作品内では既にヒューマノイドは人間同様の人権を獲得しているが、「ロボット倫理会議」などが存在し、人権獲得までの苦難の道のりがあったことを思わせている[4]
人間とヒューマノイド、ヒューマノイド同士の間で親子、夫婦、恋人、友だち、といった関係が成立しているが、人間とヒューマノイドの双方の考え方や接し方にはバラツキも残っている、そういった考え方が原因で起きるトラブルも多い[4]
寿命も存在しているが、それは超高度AIであるMICHIによってコントロールされている。
人間とはの描写が異なっており、読者が見分けるポイントとなっている。また、「RED QUEEN」で反ヒューマノイド派の北ロビジア兵士は「羊の目をした」とヒューマノイドを呼んでいる。
ナイル社
巨大企業。モデルはAmazonと推測されている[10]
ナイル社製の円筒形据え置き型コミュニケーションロボットがたびたび登場しており、ヒューマノイドや人間を問わずに登場人物の悩みを音声で聞き、音声で適切なアドバイスを返している。現実に存在しているSiriアマゾンエコーAmazon Alexaのようなもの[10]
ロビジア
かつて、暗号と人口知能の権威である南雲博士を招いて、超AIの開発、育成を行い、超AIの助言によってさまざまな問題を解決した国。
現在はヒューマノイド派と人間至上主義の反ヒューマノイド派に別れて南北で内戦状態にある。
RED QUEEN
反ヒューマノイド派で占められる北ロビジアを牛耳っていると言われるマフィアの名前。

書誌情報[編集]

出典・脚注[編集]

  1. ^ a b c 「バイナリ畑でつかまえて」作者の新連載&「弱ペダ」人気投票、週チャンで”. コミック ナタリー (2015年11月5日). 2017年8月30日閲覧。
  2. ^ 週チャンに「BEASTARS」板垣巴留の読み切り新作、「AIの遺電子」は新章へ”. コミック ナタリー (2017年8月24日). 2017年8月30日閲覧。
  3. ^ SFオムニバス「AIの遺電子」が別チャンに移籍、次号より「フルココ」続編”. コミック ナタリー (2017年10月12日). 2017年10月12日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h 松尾公也 (2016年4月13日). “ぼくらはなぜ「AIの遺電子」にこんなにも惹かれるのか (1/3)”. ITmedia. 2017年8月30日閲覧。
  5. ^ a b 大西赤人 (2017年3月1日). “人間のありようを考えさせる『AIの遺電子』”. レイバーネット日本. 2017年8月30日閲覧。
  6. ^ a b c 鴨志田公男 (2017年3月23日). “漫画でAIを考える”. 毎日新聞. https://mainichi.jp/articles/20170323/ddm/016/070/006000c 2017年11月24日閲覧。 
  7. ^ “文化庁メディア芸術祭 マンガ部門大賞に池辺葵の「ねぇ、ママ」 “母”を描いた短編集”. 毎日新聞. (2018年3月16日). https://mainichi.jp/articles/20180316/dyo/00m/200/019000c 2018年3月22日閲覧。 
  8. ^ 『このマンガがすごい!』にもランクイン ヒトと機械の境界線が曖昧な未来を描く『AIの遺電子』”. SPICE(スパイス) (2017年2月10日). 2017年11月24日閲覧。
  9. ^ 松尾公也 (2016年4月13日). “ぼくらはなぜ「AIの遺電子」にこんなにも惹かれるのか (3/3)”. ITmedia. 2017年8月30日閲覧。
  10. ^ a b 松尾公也 (2017年6月29日). “近未来SFマンガ「AIの遺電子」出張掲載 第33話「労働のない街」 (3/3)”. ITmedia. 2017年8月30日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]