悪魔の手毬唄 (1977年の映画)

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金田一耕助 > 石坂浩二の金田一耕助シリーズ > 悪魔の手毬唄 (1977年の映画)
悪魔の手毬唄
監督 市川崑
脚本 久里子亭
原作 横溝正史
製作 田中収
市川崑
出演者 石坂浩二
岸惠子
仁科明子
北公次
永島暎子
渡辺美佐子
草笛光子
若山富三郎
音楽 村井邦彦
主題歌 哀しみのバラード
撮影 長谷川清
編集 小川信夫
長田千鶴子
製作会社 東宝映画
配給 東宝
公開 日本の旗 1977年4月2日
上映時間 144分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
配給収入 7億5500万円[1]
前作 犬神家の一族
次作 獄門島
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舞台となった「亀の湯」のロケ撮影が行われた山梨県甲斐市某所の民家。撮影当時からほとんど変わっていない。2013年2月23日撮影。(一般家屋のため画像GPSデータは除去済み)
六道の辻(里子殺害現場)のロケが行われた山梨県甲斐市の某所。2013年2月23日撮影。(上記民家に隣接した位置のため画像GPSデータは除去済み)

悪魔の手毬唄』(あくまのてまりうた)は、1977年昭和52年)4月2日に公開された日本映画横溝正史作の同名長編推理小説の映画化作品。製作は東宝映画、配給は東宝

概要[編集]

市川崑監督・石坂浩二主演による金田一耕助シリーズの第2作で、東宝映画が製作した。キネマ旬報ベストテン第6位にランクインされている。

季節が夏ではなく冬に変更(撮影時期に合わせたもの)されているほか、おりんの名前がおはんになっている。同時期の東宝配給作品『はなれ瞽女おりん』(市川と親しい長谷部慶治の脚本でもある)に遠慮したものと思われる。

金田一が汽車の発車間際に磯川に「…(犯人)を愛してらしたんですね」と問いかけるが、汽笛に邪魔され伝わらないという『望郷』風のラストは、原作(汽笛の邪魔は入らない)の京都駅から伯備線総社駅に場所が変更されており、駅名を肯定の返事(そうじゃ)に引っ掛けた演出という指摘もある。実際、駅名「そうじゃ」を記したポールが画面中央で強調されている。

捜査主任立花役をシリーズレギュラーの加藤武が演じるほか、20年前の事件の未亡人への想いから再捜査の依頼者であり、金田一とは旧知の間柄の設定で磯川警部役に若山富三郎が配され、ダブル警部体制となっている。このシリーズは金田一を孤独な狂言回しとして徹底しており、加藤武の警察幹部も毎回初対面の別人として出てくるため(ただし口癖や仕種などはすべて共通)、シリーズを通して最初から金田一の知人として登場するのは、この磯川警部と『病院坂の首縊りの家』の老推理作家(横溝正史)のみである。

劇中、青池源治郎が活動弁士であったことを辰蔵が金田一らに話すシーンで、『新版大岡政談』三部作の解決篇の1シーン(丹下左膳(演:大河内伝次郎)とお藤(演:伏見直江)と火事装束の男たちが坤竜を奪い合うシーンで、現在も断片として現存している場面である)が挿入されており、マツダ映画社松田春翠が活弁の声を担当している。また、源治郎が村に帰るきっかけをリカが説明するシーンで、日本初の字幕スーパーが付いたトーキー映画『モロッコ』のラストシーンが登場している(この映画の公開により活動弁士が衰退することとなり、作品内でも触れられている)。

7億5500万円の配給収入を記録、1977年(昭和52年)の邦画配給収入ランキングの第10位となった[1]

ストーリー(原作との差異)[編集]

ストーリー展開は、最後の里子殺害後が大幅に改変されているのを除いて、概ね原作通りである。特に状況説明を兼ねている冒頭部分は、展開を速くすることによって原作の要素を限られた時間でなるべく残そうとしている。

一方、登場人物名や属性の変更は多い。時期は原作より3年早い昭和27年に設定されており、被害者たちの年齢も3年若い20歳である。千恵子ではなく千恵であり、大空ゆかりの芸名は使っていない。仁礼家の兄弟は直平と勝平ではなく直太と流次、五郎は別所ではなく村上姓である。歌名雄が芸能に秀でている設定は無く、葡萄酒生産の改善に懸命になっており、事件終結後は磯川警部が引き取って岡山の農業専門学校に通わせることになった。

また、原作で明らかでない咲枝の婚後の苗字が司と設定されている。おりんがおはんに変更されているほか、医師は本多ではなく権堂で世代交代しておらず、青池源治郎の芸名は青柳史郎ではなく青柳洋次郎である。なお、立花捜査主任は原作では警部補であるが、本作では「警部」と呼ばれている。

内容面では、以下のような変更がある。

  • 金田一を旧知の磯川警部が亀の湯に呼び寄せて20年前の事件について説明し真相解明を依頼する(金田一が休養の場を求めていたという設定は無い)。20年前の事件も現在の放庵宅で起こっており、放庵がそのあと転居した設定は無い。
  • 金田一は磯川の勧めで総社へ調査に行き、その途上で老婆に遭遇する。総社の井筒でおはん(原作のおりん)の死亡を聞いた金田一は磯川に電話して放庵宅へ先行してもらい、自分も急行する。放庵宅の停電は単なるヒューズ切れが原因であった。
  • 千恵の帰郷は派手な凱旋ではなく、仙人峠とは別ルートと思われる路線バスで鬼首村に現れており、総社で出迎える設定は無い。「ゆかり御殿」が建設されている設定も無く、春江の両親も登場しない。
  • 千恵の歓迎会は野外での盆踊りではなく仁礼家での同窓会である。里子は単に出発が遅れただけであり、老婆と共に行く泰子の姿をかなり離れたところから目撃する。
  • 泰子を呼び出した手紙は、見立て処理以後に死体から離れて岸辺に沈んでいたのを翌日に歌名雄が見つける。
  • 文子の死体は醸造用の樽の中に漬けられ、上に大判小判が吊るされていた。
  • 文子殺害後の喧嘩は、歌名雄が清掃していた亀の湯の浴場へ流次(原作の勝平)が怒鳴り込んで始まり、止めに入った磯川もろとも浴槽に転落する。
  • 五百子は泰子と文子が殺害されるごとに手毬唄の各々関連する部分のみを思い出す。
  • 泰子の通夜での老婆の影は千恵が見て悲鳴を上げる。この直後、里子は老婆に扮したリカを目撃して犯行を悟り、翌日に文子の通夜に出かけるときから高祖頭巾の着用をやめた。
  • 金田一は磯川が髭剃りに使った鏡に写った蜜柑を別の1個と錯覚したことをヒントに一人二役に気付く。
  • 里子は千恵に気づかれぬようにハンドバッグをスリ替え、呼び出しの手紙を入手した。
  • 文子の通夜では千恵も和装だったので、里子を着替えさせようとする展開は無い。
  • リカは歌名雄が里子殺害を知らせてくるまで人違いに気付いていなかった。
  • 里子殺害後、憔悴したリカは里子が暮らしていた土蔵に千恵を呼び出すが、殺害が目的ではなく真相を伝える。
  • 磯川は金田一の依頼で敦子も含めて3人を権堂医院に集め、狙われた娘たちが全て恩田のタネであったことや手毬唄の内容を説明しているところへ金田一が写真を持って到着し、恩田と源治郎が同一人物であることを確認する。
  • 日下が千恵の不在に気付き、磯川と金田一が土蔵だと見当をつけて様子を見に行く。そこへ放庵の遺体が最後の妻の墓に埋められていたのが発見されたという知らせが入り、リカを残して見分に行く。監視役の警官が県警からの電話に対応している隙にリカは抜け出し、人食い沼に入水する。
  • 犯人が沼から見つかったと呼ぶ声を聞いた歌名雄は現場へ駆け込み、母親であることを知って号泣する。
  • 金田一は磯川が事後処理を残しているうちに帰ることになり、磯川は総社駅まで見送る。このとき原作の京都駅でのエピソードに準ずるやりとりがある。

キャスト[編集]

本作では「青池」姓の読みを「あおち」としている。

  • 青池リカ(亀の湯の女主人):岸恵子
以下はノンクレジット

スタッフ[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ a b 『キネマ旬報ベスト・テン全史: 1946-2002』キネマ旬報社、2003年、223頁。ISBN 4-87376-595-1

外部リンク[編集]