石坂浩二の金田一耕助シリーズ

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石坂浩二の金田一耕助シリーズ(いしざかこうじの きんだいちこうすけシリーズ)では、俳優・石坂浩二が演じる映画版「金田一耕助シリーズ」を解説する。

概要[編集]

1968年、「週刊少年マガジン」で横溝正史の推理小説『八つ墓村』が漫画化され、若い読者の間でヒットした。このことに注目した角川書店編集局長(当時)の角川春樹は、1971年角川文庫版『八つ墓村』を刊行、出版直後に10万部のベストセラーとなったのを契機に、横溝作品を次々と文庫化、横溝ブームを巻き起こした[1]

角川春樹は当初からこの『八つ墓村』の映画化を考えており、『犬神家の一族』制作以前の1975年にすでに松竹との契約を発表している。しかし、『八つ墓村』制作の遅れと松竹経営陣との意見対立などから、角川は独自に横溝作品を映画化することを決意、角川映画第1作として『犬神家の一族』(1976年)を制作した。監督市川崑、主演石坂浩二の同映画は空前の大ヒット(17億円)を記録、「日本映画史上最高のミステリー」と称され、以後4作(第2作『悪魔の手毬唄』以降は東宝の自主制作)の横溝原作の映画が制作された。

金田一以外のレギュラー登場人物として、加藤武演じる等々力警部[2]ほかの役名による警察幹部がいる。仕草や口癖がすべて共通する同一キャラクターだが、金田一とは毎回初対面の別人という設定になっており、ラスト近くにはさりげない友情が芽生えながらも次作では「君は誰だね。 探偵? フン」を繰りかえすことになる。「よし、わかった!」というのを口癖[3]とし、ときたま自分の推理に自分で納得してしまうことがあるものの、金田一の推理には敵わないため、警部とはいえ金田一の助手的存在に過ぎない。

なお、シリーズを通して最初から金田一の知人として登場するのは第二作の磯川警部と最終作の推理作家(横溝正史)のみであり、出自係累不明の孤独な狂言回しに徹しながらも、加藤武、坂口良子らのレギュラー系出演者とは毎回ほのぼのとしたやりとりが展開される。

この作品は角川映画の大きな前進となり、「金田一シリーズ=角川映画」という図式が広く認知され、その後も角川映画は大藪春彦森村誠一赤川次郎などの小説を映像化し、それらも原作と映画のブームが起こりヒットを記録している。シリーズ自体の評価も高く、第1作と第2作はキネマ旬報ベストテン入りした。物語が連続しない、永劫回帰タイプのシリーズ映画としては『男はつらいよ』を除いては異例である。

石坂は、2006年末に公開された角川映画30周年記念作品『犬神家の一族』の再主演を記念して『金田一です。』というエッセイ集を著し、自分の金田一論を公に示している。

本シリーズにおける金田一像[編集]

『犬神家の一族』が制作される以前にも何作か横溝正史の小説は映像化されたが、石坂浩二版は和服に袴、お釜帽にボサボサ頭という、原作の記述を忠実に再現した最初の金田一耕助役者(演技者としては7人目)となった。

特徴であるボサボサ頭に関しては、最初2回ほどカツラを使用していたが、地毛で演じたときはまず銀髪に近いぐらい脱色して再び黒色に染め直し、パーマをかけてはパーマを抜く工程を繰り返し、あの金田一ヘアが出来上がった。ただし石坂によれば「髪の毛が細くなり切れるのが難点」だという。また、頭を掻いて出る雲脂には試行錯誤し、雲脂になりうるものを頭に塗り込んではこれを掻いて雲脂を出すテスト撮影を繰り返し、最終的にはパン粉砥の粉を混ぜたものが使用された。これを撮影中は毎日頭に塗り込んでいたので、石坂は「頭を洗うことがほとんど出来なかった」と言っている。

興奮すると頭を掻き始めたり、どもったりするという癖も設定として取り入れられている。また、劇中で金田一が持ち歩いているトランクは石坂の私物(神戸骨董品店で購入)である。

加藤武演じる警部(あるいは署長、または捜査主任)役がよく胃腸薬として粉薬を飲んでは吹き出すシーンがあるが、この粉薬は「龍角散」に森永乳業コーヒークリーミングパウダー「クリープ」を混ぜたものである。これは龍角散のみだと吹き出したとき粒子が細かくはっきり映らないので、クリープを混ぜたためである。

作品一覧[編集]

  1. 犬神家の一族1976年〈昭和51年〉10月16日公開) ※角川映画第1作
  2. 悪魔の手毬唄1977年〈昭和52年〉4月2日公開) ※この作品より東宝の自主制作となる(リメイク版『犬神家の一族』まで)
  3. 獄門島1977年〈昭和52年〉8月27日公開)
  4. 女王蜂1978年〈昭和53年〉2月11日公開)
  5. 病院坂の首縊りの家1979年〈昭和54年〉5月26日公開)
  6. 犬神家の一族2006年〈平成18年〉12月16日公開)

脚注[編集]

  1. ^ 一般に『犬神家の一族』公開が横溝ブームの原因となったと思われがちだが、1974年には角川文庫の売り上げが300万部、1975年には500万部、『犬神家の一族』開直前の1976年夏には1000万部を売り上げている(2007年現在、〈金田一耕助ファイル〉シリーズの売り上げは5500万部)。「横溝ブーム」の名称も1974年からマスコミに登場しはじめ、この頃から横溝本人もインタビューや新作の執筆など、メディアへの露出が高まっていた。
  2. ^ 等々力警部としての登場は第3~5作のみ。映画では「大志」という名前は設定されていない。他は順に、橘署長(『犬神家の一族』)、立花捜査主任(『悪魔の手毬唄』)、等々力署長(『犬神家の一族』2006年版)。加藤は市川監督の映画『八つ墓村』(1996年公開)にも轟警部として出演している。
  3. ^ これは加藤によるオリジナルであり、原作においては等々力警部にそのような口癖はない。