人形佐七捕物帳

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人形佐七捕物帳』(にんぎょうさしちとりものちょう)は、横溝正史作の時代小説シリーズ、またそれを原作とした映画テレビドラマ作品である。

神田お玉が池に住む岡っ引きの人形佐七が、次々と江戸の事件を解決してゆく。よく練られたトリックと冴え渡る推理、一見おどろおどろしい筋立てや濃密な性描写などが特徴である。人情話が主体で、成り行きで解決することも少なくない他の捕物帳ものとは一線を画す。美男で好色な佐七と焼きもち焼きの年上女房お粂との夫婦喧嘩、佐七の子分の江戸っ子の辰と上方っ子の豆六のやりとりなど、ユーモラスな描写もある。

全180編に及ぶ捕物(時代劇)シリーズで、岡本綺堂半七捕物帳』、野村胡堂銭形平次 捕物控』、佐々木味津三右門捕物帖』、城昌幸若さま侍捕物手帖』と並んで五大捕物帳と称される。

2016年までに映画作品が16作品、テレビドラマ8作品が制作されている。

シリーズ一覧[編集]

人形佐七捕物帳全集(春陽文庫)[編集]

  • ほおずき大尽 人形佐七捕物帳全集1(1973年 春陽文庫 / 1984年 春陽文庫【新装版】)
    • 羽子板娘 / 開かずの間 / 嘆きの遊女 / 音羽の猫 / 蛍屋敷 / 佐七の青春 / ほおずき大尽 / 鳥追い人形 / 稚児地蔵 / 石見銀山 / 双葉将棋 / うかれ坊主
  • 遠眼鏡の殿様 人形佐七捕物帳全集2(1973年 春陽文庫 / 1984年 春陽文庫【新装版】)
    • 屠蘇機嫌女夫捕物 / 福笑いの夜 / 雛の呪い / すっぽん政談 / 五つめの鍾馗 / 遠眼鏡の殿様 / 白羽の矢 / 猫姫様 / たぬき汁 / 冠婚葬祭 / どもり和尚 / 雪女郎
  • 地獄の花嫁 人形佐七捕物帳全集3(1973年 春陽文庫 / 1984年 春陽文庫【新装版】)
    • 恩愛の凧 / ふたり市子 / 神隠しにあった女 / 春色眉かくし / 幽霊の見せ物 / 地獄の花嫁 / 怪談閨の鴛鴦 / 八つ目鰻 / 七人比丘尼 / 女易者 / 狸の長兵衛 / 敵討ち人形噺
  • 好色いもり酒 人形佐七捕物帳全集4(1974年 春陽文庫 / 1984年 春陽文庫【新装版】)
    • 日食御殿 / 角兵衛獅子 / 呪いの畳針 / 花見の仇討ち / 艶説遠眼鏡 / 水芸三姉妹 / たぬき女郎 / 好色いもり酒 / 仇討ち走馬灯 / 恋の通し矢 / 万引き娘 / 妙法丸
  • 春宵とんとんとん 人形佐七捕物帳全集5(1974年 春陽文庫 / 1984年 春陽文庫【新装版】)
    • 春宵とんとんとん / 三河万歳 / 蝶合戦 / 女難剣難 / まぼろし小町 / 蛇性の淫 / 猫屋敷 / 蛇使い浪人 / 狐の裁判 / どくろ祝言 / 黒蝶呪縛 / 雪達磨の怪
  • 坊主斬り貞宗 人形佐七捕物帳全集6(1974年 春陽文庫 / 1984年 春陽文庫【新装版】)
    • 銀の簪 / 夢の浮橋 / 藁人形 / 夜毎来る男 / 離魂病 / 風流女相撲 / 坊主斬り貞宗 / 風流六歌仙 / 緋鹿の子娘 / 本所七不思議
  • くらやみ婿 人形佐七捕物帳全集7(1974年 春陽文庫 / 1984年 春陽文庫【新装版】)
    • 春姿七福神 / 血屋敷 / 女虚無僧 / 武者人形の首 / 狸御殿 / 化け物屋敷 / 雷の宿 / 鶴の千番 / くらやみ婿 / 団十郎びいき
  • 三人色若衆 人形佐七捕物帳全集8(1974年 春陽文庫 / 1984年 春陽文庫【新装版】)
    • 万歳かぞえ唄 / 神隠しばやり / 吉様まいる / お俊ざんげ / 比丘尼宿 / 幽霊姉妹 / 浄玻璃の鏡 / 三人色若衆 / 生きている自来也 / 河童の捕り物
  • 女刺青師 人形佐七捕物帳全集9(1974年 春陽文庫 / 1984年 春陽文庫【新装版】)
    • 女刺青師 / からかさ榎 / 色八卦 / まぼろし役者 / 蝙蝠屋敷 / 舟幽霊 / 捕物三つ巴 / 丑の時参り / 仮面の若殿 / 白痴娘
  • 小倉百人一首 人形佐七捕物帳全集10(1974年 春陽文庫 / 1984年 春陽文庫【新装版】)
    • 小倉百人一首 / 紅梅屋敷 / 彫物師の娘 / 括り猿の秘密 / 睡り鈴之助 / ふたり後家 / 三日月おせん / 狸ばやし / お玉が池 / 若衆かつら
  • 鼓狂言 人形佐七捕物帳全集11(1974年 春陽文庫 / 1984年 春陽文庫【新装版】)
    • 新春笑い薬 / 孟宗竹 / 鼓狂言 / 人面瘡若衆 / 非人の仇討ち / 半分鶴之助 / 嵐の修験者 / 唐草権太 / 夜歩き娘 / 出世競べ三人旅
  • 梅若水揚げ帳 人形佐七捕物帳全集12(1974年 春陽文庫 / 1984年 春陽文庫【新装版】)
    • 梅若水揚帳 / 謎坊主(二枚の絵馬) / お時計献上 / 当たり矢 / 妖犬伝 / 百物語の夜 / 二人亀之助 / きつねの宗丹 / くらげ大尽 / 座頭の鈴
  • 浮世絵師 人形佐七捕物帳全集13(1974年 春陽文庫 / 1984年 春陽文庫【新装版】)
    • 美男虚無僧 / いなり娘 / 巡礼塚由来 / 日本左衛門 / 二枚短冊 / 怪談五色猫 / 蛇を使う女 / かんざし籤 / 狼侍 / 浮世絵師
  • 緋牡丹狂女 人形佐七捕物帳全集14(1975年 春陽文庫 / 1984年 春陽文庫【新装版】)
    • 松竹梅三人娘 / 鬼の面 / 花見の仮面 / 身代わり千之丞 / 戯作地獄 / 緋牡丹狂女 / 影法師 / からくり駕籠 / ろくろ首の女 / 猫と女行者

自選人形佐七捕物帳(角川文庫)[編集]

  • 羽子板娘(1977年 角川文庫)
    • 羽子板娘 / 恩愛の凧 / 浮世絵師 / 石見銀山 / 吉様まいる / 水芸三姉妹 / 色八卦 / うかれ坊主
  • 神隠しにあった女(1977年 角川文庫)
    • 神隠しにあった女 / 好色いもり酒 / 百物語の夜 / 彫物師の娘 / ほおずき大尽 / 春宵とんとんとん / 緋鹿の子娘 / 三河万歳
  • 舟幽霊(1977年 角川文庫)
    • 舟幽霊 / 万引き娘 / くらやみ婿 / 女難剣難 / 遠眼鏡の殿様 / 風流六歌仙 / 夜毎来る男 / 恋の通し矢

人形佐七捕物帳(嶋中文庫)[編集]

  • 人形佐七捕物帳1 嘆きの遊女(2005年 嶋中文庫)
    • 羽子板娘 / 謎坊主 / 嘆きの遊女 / 山雀供養 / 宮芝居 / 三本の矢 / 幽霊山伏 / 屠蘇機嫌女夫捕物 / 座頭の鈴 / 花見の仮面
  • 人形佐七捕物帳2 音羽の猫(2005年 嶋中文庫)
    • 音羽の猫 / 二枚短冊 / 離魂病 / 名月一夜狂言 / 蛍屋敷 / 黒蝶呪縛 / 稚児地蔵 / 敵討ち人形噺 / 恩愛の凧 / まぼろし役者
  • 人形佐七捕物帳3 幽霊姉妹(2005年 嶋中文庫)
    • いなり娘 / 振袖幻之丞 / 佐七の青春 / 幽霊姉妹 / 二人亀之助 / 風流六歌仙 / 生きている自来也 / 漂流奇譚 / 怪談五色猫 / 本所七不思議
  • 人形佐七捕物帳4 嵐の修験者(2006年 嶋中文庫)
    • 紅梅屋敷 / からくり御殿 / 嵐の修験者 / 血屋敷 / 敵討ち走馬灯 / 捕物三つ巴 / 清姫の帯 / 鳥追い人形 / まぼろし小町 / 身代わり千之丞

その他[編集]

  • 幽霊山伏 横溝正史時代小説コレクション―捕物篇1(2003年 出版芸術社)
    • 山雀供養 / 山形屋騒動 / 三本の矢 / 犬娘 / 幽霊山伏 / 名月一夜狂言 / 振袖幻之丞 / 漂流綺譚 / からくり御殿 / お化小姓 / いろは巷談 / 清姫の帯 / 笛を吹く浪人 / 殿様乞食 / お化祝言
  • 江戸名所図絵 横溝正史時代小説コレクション―捕物篇2(2004年 出版芸術社)
    • 凧のゆくえ / お高祖頭巾の女 / 水晶の数珠 / 影右衛門 / 人魚の彫物 / 相撲の仇討 / 山吹薬師 / 拝領の茶釜 / 通り魔 / かくし念仏 / 悪魔の富籤 / 女祈祷師 / 番太郎殺し / 熊の見世物 / 江戸名所図会

登場人物[編集]

佐七
岡っ引き。寛政6年(1794年)生まれ。「人形佐七」の通り名のとおり人形のような美男子ぶりに加え、気風がよく、度胸もある。男ぶりの良さに加え頭脳明晰で数多の事件を解決していることから、町娘たちを始終騒がせており、本人も女好きであるので、恋女房のお粂をやきもきさせている。
お粂
佐七の年上の女房。寛政5(1793年)生まれ。元花魁の美女。佐七とは事件を通じて知り合う。今でも佐七にべた惚れだが、もてすぎる亭主に「お前さん、あたしゃ悔しい!」と悋気が絶えない。佐七に頼まれて捜査に加わることもある。
佐七の手下。寛政8年生まれ(なお、同年は辰年である)。巾着の辰五郎。江戸っ子気質でそそっかしい。豆六の兄貴分で、上方出身の豆六をからかいながらもかわいがっている。が苦手。
豆六
佐七の手下。寛政10年生まれ(なお、同年は午年である。)。うらなりの豆六。馬面。上方の藍玉問屋の子で、御用聞きに憧れて江戸に下ってきた。いまだに上方言葉が抜けず、口達者なので、江戸っ子で兄貴分の辰とは口喧嘩が絶えない。蛇が苦手。
神埼甚五郎
南町奉行所与力。佐七を手下として、目をかけている。佐七も敬服しており、一時御改革のあおりで甚五郎が御役御免となったときは、佐七も十手を返上した。
吉兵衛
古顔の岡っ引き。このしろの吉兵衛。音羽周辺を縄張りとする。佐七の父・伝次と兄弟の杯を交わした仲で、現在も佐七の親代わりとして面倒を見ている。
茂平次
岡っ引き。海坊主の茂平次。浅草鳥越を縄張りとする。佐七より20年は年長だが、あからさまにライバル視し、張り合っている。とにかく怪しい奴はしょっ引いて吐かせるという荒っぽい捜査を行う。

映像化作品[編集]

映画[編集]

  • 羽子板の謎(1938年、松竹、主演:中村正太郎
  • 人形佐七捕物帖 通り魔(1953年、新東宝、主演:嵐寛寿郎
  • 人形佐七捕物帖 めくら狼(1955年、東宝、主演:小泉博
  • 人形佐七捕物帖 妖艶六死美人(1956年、新東宝、主演:若山富三郎
  • 人形佐七捕物帖 大江戸の丑満時(1957年、新東宝、主演:若山富三郎)
  • 人形佐七捕物帖 花嫁殺人魔(1957年、新東宝、主演:若山富三郎)
  • 人形佐七捕物帖 浮世風呂の死美人(1958年、新東宝、主演:若山富三郎)
  • 人形佐七捕物帖 腰元刺青死美人(1958年、新東宝、主演:若山富三郎)
  • 人形佐七捕物帖 鮮血の血房(1959年、新東宝、主演:中村竜三郎
  • 人形佐七捕物帖 裸姫と謎の熊男(1959年、新東宝、主演:中村竜三郎)
  • 人形佐七捕物帖 般若の面(1960年、東映、主演:若山富三郎
  • 人形佐七捕物帖 くらやみ坂の死美人(1960年、東映、主演:若山富三郎)
  • 人形佐七捕物帖 血染の肌着(1960年、東映、主演:若山富三郎)
  • 人形佐七捕物帖 ふり袖屋敷(1960年、東映、主演:若山富三郎)
  • 人形佐七捕物帖 恐怖の通り魔(1961年、東映、主演:若山富三郎)
  • 人形佐七捕物帖 闇に笑う鉄火面(1961年、東映、主演:若山富三郎)

テレビドラマ[編集]

漫画[編集]

脚注[編集]