銅
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外見 | |||||||||||||||||||
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光沢のある橙赤色 自然銅(約4 cm) | |||||||||||||||||||
一般特性 | |||||||||||||||||||
名称, 記号, 番号 | 銅, Cu, 29 | ||||||||||||||||||
分類 | 遷移金属 | ||||||||||||||||||
族, 周期, ブロック | 11, 4, d | ||||||||||||||||||
原子量 | 63.546(3) | ||||||||||||||||||
電子配置 | [Ar] 3d10 4s1 | ||||||||||||||||||
電子殻 | 2, 8, 18, 1(画像) | ||||||||||||||||||
物理特性 | |||||||||||||||||||
相 | 固体 | ||||||||||||||||||
密度(室温付近) | 8.94 g/cm3 | ||||||||||||||||||
融点での液体密度 | 8.02 g/cm3 | ||||||||||||||||||
融点 | 1357.77 K, 1084.62 °C, 1984.32 °F | ||||||||||||||||||
沸点 | 2835 K, 2562 °C, 4643 °F | ||||||||||||||||||
融解熱 | 13.26 kJ/mol | ||||||||||||||||||
蒸発熱 | 300.4 kJ/mol | ||||||||||||||||||
熱容量 | (25 °C) 24.440 J/(mol·K) | ||||||||||||||||||
蒸気圧 | |||||||||||||||||||
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原子特性 | |||||||||||||||||||
酸化数 | 4, 3, 2, 1 (弱塩基性酸化物) | ||||||||||||||||||
電気陰性度 | 1.90(ポーリングの値) | ||||||||||||||||||
イオン化エネルギー | 第1: 745.5 kJ/mol | ||||||||||||||||||
第2: 1957.9 kJ/mol | |||||||||||||||||||
第3: 3555 kJ/mol | |||||||||||||||||||
原子半径 | 128 pm | ||||||||||||||||||
共有結合半径 | 132±4 pm | ||||||||||||||||||
ファンデルワールス半径 | 140 pm | ||||||||||||||||||
その他 | |||||||||||||||||||
結晶構造 | 面心立方 | ||||||||||||||||||
磁性 | 反磁性 | ||||||||||||||||||
電気抵抗率 | (20 °C) 16.78 nΩ⋅m | ||||||||||||||||||
熱伝導率 | (300 K) 401 W/(m⋅K) | ||||||||||||||||||
熱膨張率 | (25 °C) 16.5 μm/(m⋅K) | ||||||||||||||||||
音の伝わる速さ (微細ロッド) |
(r.t.) (annealed) 3810 m/s | ||||||||||||||||||
ヤング率 | 110–128 GPa | ||||||||||||||||||
剛性率 | 48 GPa | ||||||||||||||||||
体積弾性率 | 140 GPa | ||||||||||||||||||
ポアソン比 | 0.34 | ||||||||||||||||||
モース硬度 | 3.0 | ||||||||||||||||||
ビッカース硬度 | 369 MPa | ||||||||||||||||||
ブリネル硬度 | 874 MPa | ||||||||||||||||||
CAS登録番号 | 7440-50-8 | ||||||||||||||||||
主な同位体 | |||||||||||||||||||
詳細は銅の同位体を参照 | |||||||||||||||||||
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銅(どう、英: copper、羅: cuprum)は原子番号29の元素。元素記号は Cu。
周期表では金、銀と同じく11族に属する遷移金属である。元素記号の Cu は、ラテン語の cuprum から。この語はさらに cyprium aes(キプロス島の真鍮)に由来し、キプロスにフェニキアの銅採掘場があったことに由来する[1]。日本語では、その色から赤金、銅(あかがね)または、素銅(すあか)と呼ばれた。赤銅(しゃくどう)は康煕字典に見える[2]。
性質
物理的性質
単結晶の銅は柔らかく、電気伝導度および展延性が高い金属であり、これは同じ第11族元素である銀や金と共通した性質である。このような性質は、閉殻構造を取るd軌道の外側にs軌道の電子が1つだけ存在しているという、第11族元素の電子配置に起因している。このような電子配置であるためにd軌道の電子の多くは原子間の相互作用に寄与せず、原子同士を結び付ける金属結合はs軌道の電子によって支配される。そのためこれらの元素は、d軌道が閉殻でなくd軌道の電子が結合に寄与する他の金属元素と比較して共有結合性が弱く金属結合性が強い結合が形成されることとなり、高い電気伝導度や延展性といった金属結合に起因する性質が強く現れる[3]。巨視的なスケールにおいては、結晶格子に結晶粒界のような拡張欠陥が発生して硬度が増すため、負荷応力下での流動性の妨げとなる。そのため、通常銅は単結晶形よりも強度の高い多結晶微粒子の形で供給される[4]。
銅は室温において、純粋な金属の中で2番目に高い電気伝導性 (59.6×106 S/m)および熱伝導率 (386 W·m-1·K-1[5])を有する[6]。室温における金属中での電気伝導の抵抗の大部分は結晶格子の熱振動によって電子が拡散されることに起因しているが、銅のような柔らかい金属ではこの熱振動が比較的弱いということがその原因の1つとなっている[3]。空気中における銅の最大許容電流密度は単位断面積あたりおよそ3.1×106 A/m2であり、それ以上になると過熱しはじめる[7]。銅は他の金属と同様に、他の金属と接触することで電気腐食を起こす[8]。
青みがかった色のオスミウム、黄色の金と共に、銅は自然の色が灰色もしくは銀色以外の色である3つの金属元素のうちの1つである[9]。銅は赤橙色をした金属であるが、空気中に曝されることで赤みがかった色に退色する。この特徴的な銅の色は、満たされている3d軌道と半分空になっている4s軌道の間での電子遷移に起因しており、これらの電子軌道のエネルギー差が赤橙色の光と一致するためにこのような色を示す。これは金が特徴的な金色を示すメカニズムと同一のものである[3]。
化学的性質
銅は+1(第一銅)および+2(第二銅)の酸化数を取り、豊富な種類の化合物を形成する[10]。銅は水とは反応しないものの、空気中の酸素とは徐々に反応して黒褐色をした酸化銅の被膜を形成する。生じた錆によって全体が酸化されてしまう鉄とは対照的に、銅の表面に形成される酸化被膜はさらなる酸化の進行を防止する。湿った条件下では二酸化炭素の作用により緑青(水酸化炭酸銅)を生じ、この緑色の層は、自由の女神像や高徳院の阿弥陀如来像などのような古い銅の建造物などにおいてしばしば見られる[11][12]。硫化水素および硫化物は銅と反応して、その表面に様々な形の硫化銅を形成する。硫化物との反応においては、硫黄化合物を含んだ空気に曝された際に見られるように銅は腐食される[13]。赤熱下では酸化銅(II)を生成し、更なる加熱により酸化銅(I)となる[12]。酸素と塩酸によって塩化銅が、酸性条件下で過酸化水素によって2価の銅塩が形成されるように、酸素を含んだアンモニア水は銅の水溶性錯体を与える。塩化銅(II)は銅と均化して塩化銅(I)となる[14]。
銅はイオン化傾向が小さいため塩酸や希硫酸といった酸とは反応しないが、硝酸や熱濃硫酸のような酸化力の強い酸とは反応する。
- 希硝酸との反応
- 3Cu + 8HNO3 → 3Cu(NO3)2 + 4H2O + 2NO↑
- 濃硝酸との反応
- Cu + 4HNO3 → Cu(NO3)2 + 2H2O + 2NO2↑
- 熱濃硫酸との反応
- Cu + 2H2SO4 → CuSO4 + 2H2O + SO2
溶融銅は酸素および水素ガスを吸収し、これらの気体を吸蔵した銅は脆性が高い。そこでリチウム、リン、ケイ素が脱酸剤として用いられ、このような処理をした銅を脱酸銅と呼ぶ[15]。
同位体
銅には29の同位体があり、63Cuおよび65Cuは安定同位体である。天然銅のおよそ69 %が63Cu、31 %が65Cuであり、共に3/2のスピン角運動量を持つ[16]。銅の他の同位体は放射性同位体であり、最も安定なものは半減期61.83時間の67Cuである[16]。7つの準安定同位体が明らかとなっており、最も長命なもので半減期3.8分の68mCuがある。質量数が64以上の同位体ではβ-崩壊によって崩壊し、64以下のものはβ+崩壊によって崩壊する。半減期12.7時間の64Cuは、β-崩壊とβ+崩壊の両方法で崩壊する[17]。
62Cuおよび64Cuには重要な用途がある。64CuはX線写真の造影剤として利用され、64Cuのキレート錯体はがんの放射線療法に対して用いられる。62CuはCu(II)-pyruvaldehyde-bis(N4-methyl-thiosemicarbazone) (62Cu-PTSM) の形でポジトロン断層法における放射性トレーサーとして利用される[18]。
化合物
二元化合物
銅と他の元素との化合物のうち、最も単純なものは二元化合物である。主要なものは酸化物、硫化物およびハロゲン化物である。1価および2価の銅の両方の酸化物が知られている。多数の銅の硫化物の間で重要なものの例として硫化銅(I)および硫化銅(II)が含まれる。
1価の銅のハロゲン化物は塩素、臭素およびヨウ素とのものが知られており、2価の銅のハロゲン化物はフッ素、塩素および臭素とのものが知られている。2価の銅とヨウ素を反応させてもヨウ化銅(II)は合成されず、ヨウ化銅(I)とヨウ素が得られる[10]。
- 2 Cu2+ + 4 I− → 2 CuI + I2
錯体化学
銅は他の金属と同様に配位子との間で錯体を形成する。水溶液中において2価の銅は[Cu(H2O)6]2+の形で存在している。遷移金属の金属アコ錯体に対する配位水の交換速度は最も早い。水酸化ナトリウム溶液を加えることで明青色の水酸化銅(II)が沈降する。
- Cu2+ + 2 OH− → Cu(OH)2
アンモニア水を加えた場合も同様に沈殿を生じるが、アンモニア水の添加量が過剰になるとテトラアンミン銅(II)イオンを形成して沈殿が再溶解する。
- Cu(H2O)4(OH)2 + 4 NH3 → [Cu(H2O)2(NH3)4]2+ + 2 H2O + 2 OH−
多くのオキソアニオンは銅イオンとの間に錯体を形成し、それには酢酸銅(II)や硝酸銅(II)、炭酸銅(II)などが含まれる。硫酸銅(II)は青色の結晶の5水和物を形成し、それは研究室において最も一般的な銅化合物である。それはボルドー液と呼ばれる殺菌剤として用いられる[19]。
複数のヒドロキシ基を含むポリオールは一般的に2価の銅塩と相互作用を示す。例えば、銅塩は還元糖の検出に用いられる。特に、ベネジクト液およびフェーリング液を用いた糖の検出は、青色の2価の銅が赤色の1価の酸化銅(I)に還元される際の色変化によって識別される[20]。シュバイツァー試薬およびエチレンジアミンや他のアミン類との錯体はセルロースを分解する[21]。アミノ酸は2価の銅との間で非常に安定なキレート錯体を形成する。銅イオンに関する多くの湿式反応が存在し、例えば銅イオンを含む溶液にフェロシアン化カリウムを加えることで茶色の銅(II)塩の沈殿が生じる反応がある。
有機銅化合物
炭素-銅結合を含む化合物は有機銅化合物として知られている。それは酸素に対する反応性が非常に高く酸化銅(I)を形成し、化学において有機銅試薬として多くの用途が存在する(有機銅試薬の反応)。それは1価の銅化合物をグリニャール試薬もしくは末端アルキン、アルキルリチウムで処理することで合成され[22]、特にアルキルリチウムとの反応ではギルマン試薬が合成される。これらはハロゲン化アルキルによって置換反応を起こしてカップリング生成物を形成し、それらは有機合成の分野で重要である。炭化銅(I)は衝撃に非常に敏感であるが、カディオ・ホトキェヴィチカップリング[23]や薗頭カップリング[24]のような反応の中間体である。エノンへの求核共役付加反応[25]およびアルキンのカルボメタル化もまた有機銅化合物を用いることで実現された。1価の銅はアルケンおよび一酸化炭素との間で様々な弱い錯体を形成し、それは特にアミン配位子の存在下において顕著である[26]。
3価および4価の銅化合物
3価の銅化合物は有機銅化合物の反応において中間体としてしばしば見られる。ジ銅のオキソ錯体もまた3価の銅であることを特徴とする[27]。非常に基本的なフッ化物の配位子は高酸化状態の金属イオンを安定化させ、3価および4価の銅化合物にはK3CuF6やCs2CuF6[10]のようなフッ化物との錯塩がある。紫色をした3価の銅の化合物である、ジおよびトリペプチドは脱プロトン化されたアミド配位子によって高酸化状態が安定化されている[28]。
主な銅の化合物
歴史
銅器時代
銅は自然銅として自然中に存在しており、最初期の文明のいくつかにおいても知られ先史時代から使われてきた金属である。銅の使用には少なくとも1万年の歴史があり、紀元前9000年の中東で利用されはじめたと推測されている[29]。イラク北部で紀元前8700年と年代決定された銅のペンダントが出土しており、これは確認される最古の銅だと言われている[30][31]。金および隕鉄(ただし鉄の溶融は出来ていない)だけが、人類が銅より前に使用していたという証拠がある[32]。銅の冶金学の歴史は、1. 自然銅の冷間加工、2. 焼きなまし、3. 製錬および4. インベストメント鋳造の順序に続いて発展したと考えられる。東南アナトリアにおいては、これら4つの冶金技術はおよそ紀元前7500年頃の新石器時代のはじめに若干重複して現れる[33]。農業が世界中のいくつかの地域(パキスタン、中国およびアメリカ大陸を含む)でそれぞれ独立して発明されたのと同様に、銅の溶錬もいくつかの異なる地域で発明された。それはおそらく、紀元前2800年ごろの中国、西暦600年頃の中央アメリカ、および西暦9から10世紀頃の西アフリカでそれぞれ独立して発明された[34]。インベストメント鋳造は紀元前4500から4000年頃に東南アジアで発明され[29]、また、放射性炭素年代測定によってイギリス、チェシャーのアルダリー・エッジにある銅鉱山が紀元前2280年から紀元前1890年のものであると確かめられた[35]。紀元前3300年から紀元前3200年頃のものと見られるミイラのアイスマンは、純度99.7%の純銅製の斧の頭とともに発見された。彼の髪に高純度のヒ素が見られたことから、彼が銅精錬に関わっていたのではないかと考えられている[36]。ミシガンおよびウィスコンシンのオールドカッパー文化(古代北米におけるネイティブ・アメリカンの社会。銅製の武器や道具を広く利用していた。)における銅の生産は紀元前6000年から紀元前3000年の間の年代を示している[37][38]。これらのような銅と関わった経験が他の金属の利用の発展の助けとなり、特に、銅の溶錬から鉄の溶錬(塊鉄炉)の発見に至った[36]。
青銅器時代
銅とスズとの合金である青銅の製造は銅の溶錬法の発見からおよそ4000年後にはじめて行われ、その2000年後には自然銅の一般的な用途となった。シュメールの都市から発見された青銅製品や、エジプトの都市から発見された銅および青銅製品は紀元前3000年頃のものと見られている[39]。青銅器時代は東南ヨーロッパで紀元前3700年から紀元前3300年頃に始まり、北ヨーロッパでは紀元前2500年頃から始まった。青銅器はまたエジプト、中国(殷王朝)などでも使われるようになり、世界各地で青銅器文明が花開いた。それは鉄器時代の始まり(中東では紀元前2000年から紀元前1000年頃、北ヨーロッパでは紀元前600年頃)によって終了した。新石器時代から青銅器時代への移行期は、石器とともに銅器が使われ始めた時代であることから以前は銅石器時代と呼ばれていた。この用語は、世界の一部の地域では新石器時代と銅石器時代の境界が重なっているために徐々に使われなくなっていった。銅と亜鉛の合金である真鍮の起源はずっと新しい。それはギリシャ人には知られていたが、ローマ帝国期の青銅の不足を補う重要な合金となった[39]。
古代および中世
ギリシャでは、銅はカルコス(χαλκός、chalkos)として知られていた。それはギリシャ人、ローマ人および他の民族にとって重要な資源であった。ローマ時代にはキュプリウム・アエス(aes Cyprium、キプロス島の銅)として知られており、アエス (aes)は多くの銅が採掘されたキプロス島からの銅合金および銅鉱石を示す一般的なラテン語の用語である。キュプリウム・アエスというフレーズはクプルム (cuprum)と一般化され、そこから英語で銅を示すカッパー (copper)となった。銅の光沢の美しさや、古代には鏡の生産に銅が用いられていたこと、および女神を崇拝していたキプロスとの関係から、女神であるアプロディーテーおよびウェヌスは神話と錬金術において銅の象徴とされた。古代に知られていた7つの惑星は古代に知られていた7つの金属と関連付けられ、金星は銅に帰されていた[40]。
イギリスでの真鍮の初めての使用は紀元前3から2世紀頃に起こった。北アメリカでの銅鉱山はネイティブアメリカンによって周辺部の採掘から始まった。自然銅は800年から1600年までの間に、原始的な石器によってアイル・ロイヤルから採掘されていたことが知られている[41]。銅の冶金学は南アメリカ、特に1000年頃のペルーにおいてで盛んであった。アメリカ大陸における銅の利用の発展は他の大陸よりも非常に遅く進行した。15世紀から銅の埋葬品が見られるようになったが、金属の商業生産は20世紀前半まで始まらなかった。
銅の文化的な役割は、特に流通において重要だった(銅貨)。紀元前6世紀から紀元前3世紀までを通して、ローマでは銅の塊をお金として利用していた。初めは銅自体が価値を持っていたが、徐々に銅の形状と見た目が重要視されるようになっていった。ガイウス・ユリウス・カエサルは真鍮製のコインを作り、一方でアウグストゥスのコインは銅-鉛-スズ合金から作られた。当時の銅の年間生産量は15,000トンと推定されており、ローマの銅採掘および溶錬活動(ローマにおける冶金)は産業革命の時まで凌駕されない規模に達していた。最も熱心に採掘された属州はヒスパニア、キプロスおよび中央ヨーロッパであった[42][43]。現代の日本の硬貨においても、5円硬貨が黄銅、10円硬貨が青銅、50円硬貨、100円硬貨、旧500円硬貨が白銅、新500円玉がニッケル黄銅という銅の合金が用いられている。
エルサレム神殿の門は色揚げによって作られたコリント青銅が使われた。それは錬金術が始まったと考えられるアレクサンドリアで一般的なものであった[44]。古代インドにおいて銅は、全体的な医療であるアーユルヴェーダにおいて外科用器具および他の医療用器具のために用いられた。紀元前2400年の古代エジプト人は傷や飲料水の殺菌のために銅を利用し、後には頭痛、火傷、かゆみにも用いられるようになった。はんだ付けされた銅製のシリンダーを持つバグダッド電池はガルバニ電池に類似している。年代は紀元前248年から西暦226年にさかのぼり、これが初めての電池であるように人々に考えられているがこの主張は実証されていない[45]。
近現代
スウェーデンのファールンにある大銅山は10世紀から1992年まで操業された銅鉱山である。大銅山は17世紀のヨーロッパの銅需要の2/3を満たし、その期間にスウェーデンが行っていた戦争において戦費の大きな助けとなった[46]。それは国の金庫と呼ばれ、スウェーデンは銅に裏打ちされた通貨を有していた(スウェーデンにおける銅貨の歴史)[47]。
銅の利用は通貨に限られたものではなく、芸術においても利用されていた。それはルネサンス期の彫刻家や、ダゲレオタイプとして知られる写真技術、自由の女神像 (ニューヨーク)などで用いられた。船体への銅めっきおよび銅包板の利用は広範囲におよび、クリストファー・コロンブスの船はこれを備えた最初期のものの1つであった[48]。1876年、ノルドドイチェ・アフィネリー社はハンブルクで最初の現代的な電気めっき工場による生産を始めた[49]。1830年、ドイツの科学者であるゴットフリート・オサンが金属の原子量を測定していた際に粉末冶金が発明された。その前後に、スズのような銅合金の構成元素の量と種類によってベル・トーンに影響を及ぼすことが発見された。自溶炉はフィンランドのオウトクンプ社によって開発され、1949年にハルハヴァルタではじめて用いられた。自溶炉はエネルギー効率が良く、世界の主要な銅生産の50 %を占めている[50]。
1967年、石油における石油輸出国機構 (OPEC)と類似した役目を担うことを目的としてチリ、ペルー、ザイール、ザンビアによって銅輸出国政府間協議会が設立された。しかしながら、世界2位の銅生産国であるアメリカがメンバーに加わらなかったためOPECのような影響力を持つことができずに1988年に解散した[51]。
生産
2009年現在、世界における銅の全生産量のうち50-60 %が斑岩銅鉱床より産出されている。斑岩銅鉱床からは銅の他にモリブデンやロジウムなどが併産される。斑岩銅鉱床はプレートの沈み込みに関連して形成されるため、南米のアンデス山脈や東南アジアのフィリピン、インドネシア周辺などプレートの周辺部に偏在している。斑岩銅鉱床から産出される鉱石の銅含有量はおよそ0.2-1.0 %ほどである。斑岩銅鉱床から採掘される銅鉱山の例として、チリのチュキカマタ鉱山やアメリカユタ州のビンガムキャニオン鉱山などが挙げられる。斑岩銅鉱床に次いで産出量が多いのは堆積鉱染型鉱床で、銅の全生産量の20%を占める。堆積鉱染型の銅鉱床からは銀が併産され、中央アフリカのものではコバルトも併産される。堆積鉱染型鉱床は岩石の風化および堆積によって形成される堆積岩によるものであるため大陸部に偏在する。このタイプの鉱床としては、中央アフリカのザンビアからコンゴ民主共和国にかけて伸びるカッパーベルトが最大のものであり、他にポーランドのルビン鉱山などがある[52]。その他にも、熱水鉱床の一種である銅スカルン鉱床や火山性塊状硫化物鉱床、海底噴気堆積鉱床など様々な種類の銅鉱床が知られている[53]。これらの銅鉱山では、主に露天掘りによる採掘が行われている。他の方法として、採掘抗を掘り進める坑内採鉱や、希硫酸を鉱床に注入して銅を溶解抽出する原位置抽出法も行われているが、坑内採鉱ではコストや安全性の問題が、原位置抽出法では採用可能な地質条件が限られているなどの問題があるため主流な方法とはなっていない[54]。
2005年の銅鉱石の生産量は世界全体で1501万トンであった[55]。その内訳はチリが35 %と大半を占め[55]、以下米国7.5 %、インドネシア7.1 %、ペルー6.7 %、オーストラリア6.1 %、中国5.0 %、ロシア4.6 %と続く。かつて日本は日本三大銅山とされる足尾銅山、別子銅山、日立銅山等、多くの鉱山をかかえた輸出国であったが、現在は全て廃鉱となり100 %輸入に頼っている状態である。2005年の製錬銅の生産量は世界全体で1658万トンであり、そのうち38 %は中国および日本を中心とするアジア諸国が占めていた[56]。
生産量
- チリ - 約556万トン
- アメリカ - 約120万トン
- ペルー - 約100万トン
- 中国 - 約89万トン
- オーストラリア - 約86トン
- インドネシア - 約80万トン
- ロシア - 約73万トン
- カナダ - 約60万トン
- ポーランド - 約51万トン
- ザンビア - 約48万トン
- メキシコ - 約32万トン
- ブラジル - 約20万トン
- パプアニューギニア - 約17万トン
- モンゴル国 - 約13万トン
埋蔵量
銅は少なくとも一万年前から人類によって利用されてきたが、これまでに採掘、製錬された全ての銅の95 %以上は1900年以降に抽出されたものである。2005年版Mineral Commodity Summariesを元にした東北経済産業局の報告書によれば、地球上の銅の確認埋蔵量はおよそ9億4000万トン、可産鉱量はおよそ4億7000万トンである[57]。鉱業的に利用可能な銅の可産年数の様々な推定データは、銅生産量の成長率などの主な要素の仮定によって25年から60年の間で変動し[58]、2005年のデータを元に単純に可産鉱量を年間生産量で割り可産年数を算出すると32年となる[57]。そのため、銅は2040年頃に枯渇すると言われる事がある[59]。ただしこれは、現在の銅価格において、採掘コストに見合った採掘が可能な銅鉱山が枯渇するという意味であり、地球の銅埋蔵量はまだ十分にあると考えられている。当然ながらそのような事態になれば、銅価格は高騰し、現在では採算コストがあわない鉱山でも利益が確保でき、採掘が行われるはずである。採掘技術の進歩や、採掘が容易な銅鉱山の発見によって、銅価格高騰が回避される可能性もある[要出典]。
銅の価格は歴史的に不安定であり[60]、銅のキログラム単価は1999年6月の1.32USドルから2006年5月の8.27USドルまでおよそ5倍に上昇した。それは2007年2月に5.29USドルまで下落し、そして2007年4月に7.71USドルまで反発した[61]。2009年2月には、前年の高値から一転して世界需要の後退と物価の急な下落によって3.32USドルまで下落した[62]。
リサイクル
リサイクルは主要な銅の資源となっている[63]。銅はアルミニウムのように、原料のままの状態であっても製品中に含まれている状態であっても関係なく、品質の損失なしに100 %リサイクルすることが可能である[64]。国際資源パネルのMetal Stocks in Society reportによると、社会で使用中の銅を備蓄と捉えて算出した世界1人あたりの銅備蓄量は35-55キログラムである。これらの大部分は途上国(1人当たり30-40キログラム)よりもむしろ先進国(1人あたり140-300キログラム)に存在している。
銅をリサイクルする方法は大まかに言えば銅を抽出する方法と同じであるが、必要な工程は抽出よりも少ない。高純度の銅スクラップは炉で溶融され、還元された後ビレットおよびインゴットに鋳造される。低純度のスクラップは硫酸浴中で電解製錬される[65]。
銅鉱石
銅鉱石を構成する鉱石鉱物には、次のようなものがある。
- 自然銅 (Cu)
- 輝銅鉱 (Cu2S)
- 斑銅鉱 (Cu5FeS4)
- 銅藍(コベリン)(CuS)
- 黄銅鉱 (CuFeS2)
- 硫砒銅鉱 (Cu3AsS4)
- 安四面銅鉱 ((Cu,Fe,Zn)12Sb4S13)
- 赤銅鉱 (Cu2O)
- 黒銅鉱 (CuO)
- 藍銅鉱 (Cu3(CO3)2(OH)2)
- 孔雀石 (Cu2(CO3)(OH)2)
製錬
銅鉱山で得られた黄銅鉱(主成分 CuFeS2)にコークスのほか融剤として石灰石とケイ砂を加えて溶錬炉で溶融し、鉄分を除く。銅分は銅マットや銅鈹(どうかわ。銅精製への中間製品。硫化銅と硫化鉄の化合物から成る)の形で濃縮される。同時に生じる鉄分はケイ砂によって取り除かれる。また、ケイ砂と石灰石からケイ酸カルシウムが生成し、これが融剤として銅の融点を下げる。
そして、銅マットを転炉に入れて、空気を吹き込んで不純物(硫黄、鉄など)を酸化除去し、粗銅(銅含有率は約98 %)を精錬する。このとき2000 °Cを越える高温になり、還元される。
その後、粗銅は電解精錬によって、99.99 %以上の純銅に精製される。電解精錬によって得られた銅は電気銅とも呼ばれる。精錬方法により、純銅はタフピッチ銅・脱酸銅・無酸素銅などと分類される。高真空中で溶融すると、含まれる酸化銅(I)が揮発して除かれ酸素含有量の少ない地金が得られる。
用途
銅は古代から人類とのかかわりが深く、重要な金属として扱われていた。日本でも、銅塊が発見され朝廷に献上されたことを祝い、年号が慶雲から和銅に改められた事例がある。銅は、金属製品や貨幣の材料として多くの文化で使用された。現代でも様々な場で使用されており、鉄に次いで重要な金属材料といえる。銅の主要な用途として電線 (60 %)、屋根ふき材および配管 (20 %)、産業機械 (15 %)が挙げられる。銅の大部分は金属銅として利用されるが、より高硬度が求められる用途に際しては他の元素を加えて真鍮や青銅のような合金が作られ、このように合金とされる銅は全体のおよそ5 %である[66] 。銅供給量のうちの少量は、栄養補助食品や農業における殺菌剤のための銅化合物の生産に用いられる[19][67]。銅の機械加工は可能であるが、通常複雑な部品を作るための良好な被削性能を得るには合金を用いる必要がある。
電子工学と関連デバイス
銅は工業をはじめあらゆる用途に広く用いられるが、特に電気器具の配線、電磁石のようなデバイス、銅線などの材料として用いられる。これは銅が銀に次いで電気伝導性に優れ、室温における伝導率が銀の94 %と遜色がない一方で、銀よりコストが格段に安いためである。またその優れた電気伝導性により、希少金属の価格高騰や伝導性の改善のために、集積回路やプリント基板において金や銀、アルミニウム配線配線の代替としても銅が用いられる。しかしながらニッケルやコバルトと比較しても他のプロセスへの汚染度が激しいため、同一のチャンバーやラインを使用することによる銅汚染が問題となる。また、銅装置に触れた器具や工具はもとより、エンジニアやオペレーターを介した汚染もある。そのため、半導体製造工程上は、銅が他のプロセスへの影響が出ないように隔離した状態で製造するため若干のコストがかかる。
銅は比較的高い熱伝導率を持つため熱放散能力に優れており、かつ加工性にも優れているためヒートシンクや熱交換器のような廃熱・放熱部分にも銅が用いられる。真空管およびブラウン管、電子レンジにおけるマグネトロンなどでマイクロ波を伝送するための導波管にも銅が用いられている[68]。
銅は他の金属の電気伝導率をはかる国際基準としても使われ、温度20 ℃、長さ1 m、断面積1 mm2の条件における電気抵抗が0.017241 オームとなる「万国標準軟銅 (IACS)」の伝導率が基準値 (100 %)とされる[69]。
電気モーター
銅は他の金属材料と比較して優れた電気伝導性を有しているため、電動機の電気エネルギー効率を向上させる[70]。電動機および電動機の駆動システムによる電気消費は世界の全電気使用量の43から46 %、工業では69 %を占めているため、電動機のエネルギー効率は重要な問題である[71]。コイル内で銅の質量と断面積を増大させることで発動機の電気エネルギー効率は向上する。エネルギー節約を主要な目的とする電動機設計の新技術である銅製回転子[72][73]は、NEMAによるプレミアム効率規格を達成し、さらに上回る多目的誘導電動機の実現を可能にする[74]。
建築および工業
銅はその防水性および防食性、外観の美しさために古代から多くの建物で屋根葺として用いられてきた。これらの建物の屋根に見られる緑色は長期の化学反応によるものである。銅ははじめ酸化銅(II)に酸化された後第一銅および第二銅の硫化物を経て最終的に緑青と呼ばれる炭酸銅(II)となり、この緑青は酸化腐食に対する高い耐久性を有している[75]。この用途における銅はリンによって脱酸されたリン脱酸銅 (Cu-DHP)として供される[76]。銅は他の屋根材と比べると高価なため近年の日本ではは高級住宅や寺社建築などに限られる。尚、現在では酸性雨の影響もあり、「半永久的な」耐腐食性の建材というわけではない。
避雷針は、主な建築物が破壊される代わりに電流を地面へとそらすための方法として銅が用いられる[77]。銅は優れたろう付け性能およびはんだ付け特性を有しており、溶接することができ、最良の結果はマグ溶接によって得られる[78]。
生物付着防止
銅包板はフジツボやイガイ、フナクイムシなど固着性の水生生物から船底を保護するための静生物性(微生物が成長、増殖するのを抑制する性質。バイオスタティック)物質として長く用いられてきた。初期には純銅が用いられていたが、その後マンツメタルに代替された。銅は静生物性を有しているため、銅の表面上では微生物は生育することができない。同様に、銅合金は極限状態においても抗菌性および生物付着防止性を有しており[79]、また構造材としての強さと防腐性を持つ[80]という特性を海洋環境において示すため 、養殖業において重要な鋼材となった(養殖業における銅合金)。
その他
銅は花火の着色料としても用いられる。これは銅の化合物が炎色反応を示すことを利用したもので、青色を得るのに用いられる。炎色反応は青緑色である。また、オリンピックをはじめ、様々な大会やコンクールなどで、金、銀に次ぐ3位の色として使われる。
液体状態における銅化合物は木の防腐剤に用いられ、特に乾腐による損傷を修復している間に構造の元の部分を取扱う際に利用される。亜鉛と共に銅のワイヤーはコケの成長を阻害するため、被導電性の屋根材量の上に置かれることがある。抗菌性の紡織線維を作るために銅が用いられる[81]。銅は細い導線を容易に作成できるため、繊維に織り込んで絨毯やマットなどに使用されてる。また、このような絨毯は銅の高い導電性により静電気の発生を抑制する効果も得られる。同様に銅イオンの持つ殺菌作用を利用した用途として、抗菌仕様の靴下や靴の中敷などにも利用され、陶磁器の釉薬やステンドグラス、楽器などにも用いられる。
電気メッキにおいては、ニッケルのような他の金属をメッキする際の下地として銅が用いられる。
銅は鉛、銀と共に、博物館材料の保管試験であるオディ試験と呼ばれる試験方法に用いられる3つの金属のうちの1つである。この試験において、銅は塩化物、酸化物および硫化物を検出するために用いられる。
銅は化合物または触媒としても用途が広く、代表的な銅の化合物としては塩化銅(II)・酸化銅(II)・硫酸銅(II)などがあり、各種触媒や、防腐剤、殺虫剤、顔料などに用いられている。
銅はまた装飾品としても見られ、民間療法では銅のブレスレットは関節炎を和らげるとされるが、その証明はされていない[82]。
2006年、中国の北京オリンピックに向けたインフラ整備に伴う需要増により、国際的な価格高騰を起こした。
銅合金
銅はいろいろな用途に向いている面も多いが、反面、さびやすさ、柔らかさ、粘り気の強さなどで機械加工部品材料としては使用しにくい。そのため銅の欠点を補い、利点を伸ばすため合金の用途も広い。銅と亜鉛を合金させたものを一般に黄銅とよび、亜鉛の含有率を変化させることで、連続的に色彩が変化し融点が低下する。金管楽器や仏具などに使われる真鍮は黄銅の1つである。真鍮は錆びにくく、色が黄金色で美しいことから模造金や装飾具などとしてもよく見かける金属である。古代から武器や通貨などとして用いられた青銅はスズと銅の合金であり、現在でもブロンズ像など、彫刻の材料である。しかし、最近では「青銅」という呼び名は変化してきており、一定以上のスズを含んでいるその他の銅合金や青銅と似たような色や結晶構造をもつような鋳造用合金の総称としても用いられる。また、工芸材料として用いられる赤銅、貨幣に使われる白銅(キュプロニッケル)はニッケルとの合金であり、アルミニウムとの合金であるアルミニウム青銅は延性に富んだ黄金色であるため金箔の代わりとして使われるなどされている。
青銅や黄銅と呼ばれる銅合金で代表的なものには、光輝黄銅・工業用青銅・赤色黄銅・ジュエリー青銅・低濃度黄銅・カートリッジ黄銅・黄色黄銅・ムンツメタル・鉛黄銅・リン青銅・シリコン青銅・アルミニウム青銅・洋銀(洋白)などがあり、その性質は様々で利用分野においても簡単に分別できないほど多岐にわたっている。
また、主な工業用の合金として、高純度銅合金や純銅と呼ばれる極めて高い純度の銅にごくわずかな添加物を加えた合金がある。代表的な高純度銅合金にはカドミウム銅・クロム銅・テリウム銅・ベリリウム銅などがあり、工業的には機械工業を初めとした分野で銀含有銅・ヒ素銅・快削銅などが利用される。
生体内での働きと毒性
植物における銅の役割としては、生体内における数種類の酸化還元反応にかかわる酵素を活性化する働きや、光合成に必要なクロロフィルに銅が結合しており、クロロフィルの合成に銅が不可欠であるということが分かっている。しかし、クロロフィルの合成段階において銅がどのような役割を担っているのかなど詳しいことについてはまだわかっていない。
植物において銅が不足すると、黄白化、光合成能力の低下、種子の形成異常あるいは枯死などが起こる。しかし、銅が過剰に存在する場合にも同様に毒性を示すため注意が必要である。下等植物の生育や増殖に少量の銅が不可欠であることが知られている。
動物においても、前項にもあるが、銅は必須微量元素の1つであり、ヒト一人当たり100-150 mgの銅が含まれ主に骨や肝臓に存在する。銅の役割としては、ヘモグロビンを合成するために不可欠である元素であることが知られている。しかし、ヘモグロビンそのものには銅は存在しない。一方、節足動物や軟体動物において、ほ乳類のヘモグロビンに相当する酸素結合タンパク質であるヘモシアニンの活性中心は銅である。さらには、スーパーオキシドアニオンを消去するスーパーオキシドディスムターゼ、ミトコンドリアにおける呼吸鎖関連酵素のシトクロムcオキシダーゼ、コラーゲン合成に必須なモノアミンオキシダーゼやリジルオキシダーゼの活性中心である。
銅が不足することでは、鉄の吸収量が低下し貧血となることや骨異常などが起こりうる。鉄吸収量減少の少なくとも一部は、トランスポーターが鉄を細胞に取り込む際に、銅による還元が必須であることに起因する。しかし、銅は要求量がそれほど多くなく、食品中に豊富に存在するためそのようなことはまれである。ただし、特に反芻動物は銅に対して敏感な性質を持つため、家畜などにおいては銅の不足により神経障害や貧血、下痢などが発生することがある。これは飼料に銅を含んだミネラル分を添加することで改善される。また、亜鉛の過剰摂取は小腸細胞において金属結合性タンパク質であるメタロチオネインが誘導され、銅がこのタンパク質にトラップされる結果、銅の摂取が阻害される。
このように、銅は生物の代謝が正常に行われるうえで必須の元素であるが、過剰摂取すれば金属中毒を引き起こす。例えば多くの動物にとって慢性的に過剰な銅の摂取は毒性であり、反芻動物では銅の過多により肝硬変や発育不全、黄疸、などが起こりうる。また無脊椎動物の多くは過剰供給となって代謝異常を起こす閾値が脊椎動物よりも低い。例えば水槽内で海産魚を飼育するときに魚病薬として硫酸銅の水溶液を少量飼育水に添加することがあるが、この処置をいったん行った水槽は、飼育水中に微量の銅イオンが溶け出すため、もはや海産無脊椎動物の飼育には不適当といわれている。植物にとっても銅イオンの過剰供給が毒性を示すことは同様であり、そのような環境下では銅イオン耐性の強い特殊な植物が繁茂する。例えば、寺社の銅屋根を伝った水が滴るような場所には銅イオン耐性の強いホンモンジゴケが優占することがよく知られている。
一日の所要量
- 成人男性 1.8 mg
- 成人女性 1.6 mg
- 許容上限摂取量 9 mg
欠乏、過剰症はまれ。貧血・骨異常・脳障害等が欠乏症として知られている、過剰症は遺伝病であるウィルソン病等極少数。
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関連項目
外部リンク
- 金属資源情報センター
- 銅解説 - 素材情報データベース<有効性情報>(国立健康・栄養研究所)
- 銅 - 素材情報データベース<有効性情報>(国立健康・栄養研究所)
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