ボルドー液

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ボルドー液(-えき)とは、殺菌剤として使われる農薬の一種。有効成分は塩基性硫酸銅カルシウムである。生石灰硫酸銅より調製される古典的な農薬であるが、現在でも農業で使用されることがある。しかし、一般家庭での園芸、家庭菜園などでは、ほとんど使用されない。

なお、園芸店などでZボルドーという農薬が販売されているが、これはボルドー液とは違うが、硫酸銅(アルカリ性)を主成分とする類薬ではある。病原菌の駆除の他、銅イオンを嫌うナメクジやカタツムリへの忌避効果も高い。

ボルドー液の表し方[編集]

水1リットルに対して、硫酸銅と生石灰の分量(単位グラム)がそれぞれXグラムとYグラムを加えて調製したボルドー液を、X-Y式ボルドー液という表し方をする。

例えば、4-8式ボルドー液10リットルを調製するのであれば硫酸銅40グラム、生石灰80グラムを用意する必要がある。

調製の手順[編集]

ボルドー液は散布する人が自分で調製するのが普通である。

  • まず、調製に使う容器を2つ用意する。
  • 一方の容器に硫酸銅を入れ、ボルドー液の90%程度分の水を加えてよく溶かす。少量の湯で硫酸銅を溶かして、これを水で薄めてもよい。
  • もう一方の容器に生石灰を入れ、ボルドー液の10%程度分の水を加えてよくかき混ぜる。このとき化学反応により発熱するので注意。かき混ぜた後は白い不透明な液体になり、これを石灰乳という。
  • 石灰乳に硫酸銅液をよく混ぜながら少しずつ注いでいく。全量注ぎ終われば完成である。(このとき手順を逆にすると良いコロイド液にならないので、硫酸銅液に石灰乳を注がないこと。また、石灰乳に硫酸銅液を一度に注がないこと。)

注意点[編集]

  • ボルドー液はカビの病気だけでなく、細菌性の病気にも有効である。ただし、銅と石灰とが作物により薬害を出す場合があるので注意が必要である。梅・スモモ・白菜・大豆・柿・リンゴ・小麦・松苗は銅に弱く、ブドウ・胡瓜などは石灰に弱いので、調整時に防除対象の作物を考えて銅・石灰比率を加減しなければならない。
  • 銅剤は予防効果が高く、病原菌の繁殖を防ぐ保護的殺菌剤なので、感染してからの治療効果は期待できない。したがって、病気の始発生時期や病原菌の潜伏期間を考えて早めに予防散布を行う必要がある。
  • 硫酸銅は毒性的には劇物で魚毒性はC類である。また、他の農薬と混合するとまずい場合があるので、農薬混用適否表を参考にしなければならない。

歴史[編集]

1885年ワインの産地であるフランスボルドー地方で、ボルドー大学の教授だったピエール・ミラルデ(Pierre-Marie-Alexis Millardet)によって発見された薬である。当初は銅化合物の鮮やかな青色にブドウを着色して食欲をそぎ、農場からの盗難を防ぐために使われたが、菌類による植物の病気(露菌病もしくはべと病とされる)を抑制する働きがあることが、有名なぶどう園だったシャトー・ドーザックでの実験成功により発見されて、殺菌剤として使われるようになった。日本では、1897年頃から、ブドウなど果樹の病気の薬として使われるようになった。近代的な殺菌剤が開発されてからは使用頻度が減っていったが、植物に植物ホルモンの一種であるエチレンの分泌を促して、病気に対する抵抗性を強める働きがあることが発見され、再評価されるようになった。使用していても有機栽培の認定を受けることができる数少ない農薬として知られている。

殺菌剤 (農薬その他)#農薬#歴史も参照。

関連項目[編集]

備考[編集]

1985年9月7日、ボルドー液発見百周年記念碑の除幕式がシャトー・ドーザックの前庭で行われている。

参考文献[編集]

  • 松中昭一『農薬のおはなし』日本規格協会、2000年。

WEBリンク[編集]