ダーククリスタル

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ダーク・クリスタル
The Dark Crystal
監督 ジム・ヘンソン
フランク・オズ
脚本 デビット・オデール
製作 ジム・ヘンソン
ゲイリー・カーツ
製作総指揮 デビッド・レーザー
音楽 トレヴァー・ジョーンズ
撮影 オズワルド・モリス
編集 ラルフ・ケンプレン
製作会社 ITC Entertainment
Henson Associates
配給 アメリカ合衆国の旗 ユニバーサル
日本の旗 UIP
公開 アメリカ合衆国の旗 1982年12月27日
日本の旗 1983年3月5日
上映時間 93分
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
興行収入 $40,577,001[1]
次作 "Power of The Dark Crystal"
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ダーククリスタル』(The Dark Crystal)は、1982年に公開されたアメリカ映画。1983年アヴォリアッツ国際ファンタスティック映画祭グランプリ受賞。1983年サターン賞最優秀ファンタジー作品賞受賞。1984年星雲賞メディア作品部門受賞。

スタッフ[編集]

キャスト[編集]

この映画においては、人間の俳優は登場せず、全て空想上の生物(クリーチャー)をアニマトロニクスで動かしたものであるため、キャストはすべて声の出演である。

  • ジェン、ゲルフリン族:スティーブン・ガーリック
  • キーラ、ゲルフリン族:リサ・マックスウェル
  • オウグラ、"秘密"の守護者:ビリー・ホワイトロウ
  • フィズギグ、友好的なモンスター:パーシー・エドワーズ
  • 侍従長、スケクシス族:バリー・デネン
  • 将軍、スケクシス族:マイケル・キルガリフ
  • 典礼長、スケクシス族:ジェリー・ネルソン
  • 皇帝、スケクシス族:ジェリー・ネルソン
  • 長老、ミスティック族:ブライアン・ミュール
  • 儀式守護者、ミスティック族:シーン・バレット
  • ナレーター:ジョセフ・オコナー

パフォーマー[編集]

ヘンソン社作品のキャラクターは、基本的に「パフォーマー(操演者)」がキャラクターの声を担当するというセオリーがある。[3]だが、この映画のプランにおいては、当初からそのセオリーは排除された。映画の性格上、主人公の声でカーミットが連想されるようなことは避けるべきという考えからである。

  • ジェン、ゲルフリン族:ジム・ヘンソン
  • キーラ、ゲルフリン族:キャスリン・ミュレン
  • オウグラ、"秘密"の守護者:フランク・オズ
  • フィズギグ、友好的なモンスター:ディブ・ゴールツ
  • 侍従長、スケクシス族:フランク・オズ
  • 将軍、スケクシス族:ディブ・ゴールツ
  • 典礼長、スケクシス族:ジム・ヘンソン
  • 科学者、スケクシス族:スティーブ・ウィットマイア
  • 長老、ミスティック族:ブライアン・ミュール
  • 織り手、ミスティック族:ジャン・ピエール・アミエル

日本語吹替版キャスト[編集]

役名 日本語吹き替え
BD VHS NHK-BS
ジェン(ゲルフリン族) 浪川大輔 三ツ矢雄二 鳥海勝美
キーラ(ゲルフリン族) 本名陽子 冨永みーな 天野由梨
オウグラ、"秘密"の守護者 麻生美代子 野沢雅子
長老(ミスティック族) 茶風林
将軍(スケクシス族) 銀河万丈 大塚周夫
典礼長(スケクシス族) 渡部猛
科学者(スケクシス族) 千葉繁
侍従長(スケクシス族) 龍田直樹
皇帝(スケクシス族) 中博史 納谷悟朗
ナレーター 小川真司 高木均 小林修

ストーリー[編集]

ここはダーククリスタルの城を中心とする不思議な世界。

暴虐な種族、スケクシス族が、惑星トラの覇権を握ってから、既に千年。不死と思われたスケクシス族であったが、絶大な権力を誇った皇帝が死に、残るはわずかに9人となった。彼らスケクシス族が権力の源泉としているのが、巨大な黒水晶ダーククリスタルだった。間もなく来る3つの太陽の「大合致」に、ダーククリスタルは巨大な力を得て、スケクシスの力は再び往時の勢いを取り戻すだろう。

スケクシス族のわずかな気掛かりは、預言に伝えられるゲルフリン族のことだったが、スケクシスの邪悪な兵士ガーシムによる大虐殺によって、ゲルフリン族は全滅した。だが、ダーククリスタルの城から遥かに離れた谷で、穏やかな賢者の種族ミスティック族に保護されて、ゲルフリン族の若者ジェンは生き延びていた。ミスティック族の長老の遺言として、スケクシス族と預言について知らされたジェンは、世界を破滅から救うというクリスタルを求めて、ミスティック族の谷を旅立った。

ダーククリスタルの城では、スケクシスたちの権力争いが表面化していた。皇帝亡き後の新たな皇帝の地位を巡っての、将軍と侍従長との争いである。決着は「石の裁き」に委ねられたが、最終的に将軍が新たな皇帝の座に就くこととなり、侍従長は地位を剥奪され、荒野への追放となった。だが、その時、ダーククリスタルが警報を発した。それは「クリスタルの蝙蝠」が捉えたジェンの画像だった。スケクシスたちは、ゲルフリン族が今なお生き残っていることに戦慄し、ガーシムたちに抹殺を命令した。ひとり、侍従長はゲルフリン族の生存を知ると何事かを思案し、荒野へと立ち去った。

旅を続けていたジェンは高山の頂きを目指していた。そこで、「オウグラ」と呼ばれる者を探していたが、やや途方に暮れていた。突然、醜怪な老婆が彼に目的を問い掛けた。彼女こそがオウグラ、その人だった。オウグラの館で、ジェンは不思議で美しい動きを見せる太陽系儀に魅せられる。ジェンは時間こそかかったがオウグラの持つ欠片の中から、本物のクリスタルの欠片を選び出した。だが、オウグラの館の壁が突然破壊されて、何かが乱入してきた。ガーシムたちの襲撃だった。ジェンは太陽系儀を利用して、館の高所に逃れ、逃げ出した。

炎上するオウグラの館を後にしたジェンは、沼地にいた。そこで出会ったのは、自分以外にはいないと思い込んでいたゲルフリン族の少女キーラだった。彼女が育てられたポッド族の村を訪れたジェンは歓待を受ける。キーラとともにささやかで幸せな一刻を過ごすが、それを襲撃し、破壊したのはやはりガーシムたちだった。ジェンはガーシムの餌食となりかけるが、なぜかそこにスケクシスの侍従長が現れ、あやうくガーシムたちから逃れる。一方、ミスティック族の谷では、ミスティック族全員が、ダーククリスタルの城への旅を始めようとしていた。

悲しみの中、森で一夜を過ごしたジェンとキーラは遺跡に迷い込む。その壁画より預言の意味を読み取ったジェンは、キーラが呼んだランドストライダーに乗り、二人でダーククリスタルの城を目指した。地下水道より、ダーククリスタルの城に侵入した二人を待ち受けていたのは、スケクシスの侍従長だった。抵抗するが、キーラは囚われの身となり、スケクシスの科学者より「生命のエキス」を抽出されそうになる。

同じく囚われたオウグラと意識を取り戻したジェンの励ましにより、キーラは動物たちの助けを借りて、危機を逃れる。二人はそれぞれにダーククリスタルを目指し、黒水晶の間に到達した。距離を置いても互いの無事を確かめ、心から安堵した。「大合致」まで残された時はあとわずかだった。


キャラクター[編集]

ゲルフリン族[編集]

羊を擬人化したような容貌と大きな眼、長い耳を持つ。女性は羽を持ち、空を飛ぶことが出来るとされる。この世界では、もっとも人間に近い種族だが、夢幻展開(Dreamfasting)と呼ばれる一種の精神感応の能力を持ち、ゲルフリン族相互や他種族とも、一瞬にして膨大な情報を交換することが出来る[4]

ジェン
ゲルフリン族の孤児の青年。彼の一族は予言を恐れたスケクシス族により、大虐殺を受け、すべて殺されたと思われていた。幼いジェンは、賢者の種族、ミスティック族に救われ、ミスティック族の谷で成長したが、谷の外の世界での行動を禁じられ、その危険を実感としては知らない。象形文字を読むことが出来、二叉フルートの演奏ができる。ミスティック族の谷を旅立って以降の服装は一貫して、ミスティック族独特の意匠をあしらった茶色のチュニックと灰色のホーズを着ている。彼の服装や持ち物は、複数のミスティック族による手作りであり、本来のゲルフリン族の民族衣装ではない[5]
キーラ
ゲルフリン族の孤児の少女。彼女も、スケクシス族による大虐殺の廃墟からポッド族に救われた。キーラという名もポッド族の養母ユドラによって、名づけられたもの[6]。ポッド族の中で成長したため、屋外での危険を避ける実用的な知識を身に付けている。動物たちと話が出来、薄膜状の羽で、滑空飛行が出来る。服装は膝下までの褐色のチュニックに、ゆったりとしたフード付のマントを羽織っている。彼女の服装もまた、ポッド族の手になるものであり、本来のゲルフリン族の民族衣装ではない。フィズギーと呼ばれる忠実な小モンスターをペットとしている。キーラはジェンと沼沢地で遭遇したことを発端として、行動を共にすることになる。

オウグラ[編集]

スケクシス族とミスティック族が出現するはるか以前から、この世界を観察し続けている年老いた魔女。大地に生える植物を操り、危険から身を守ることができるが、スケクシス族の暴政に正面から抵抗する力はない。かつて、宇宙からやってきたウルスケク族なる種族と親交を結び、彼らが大水晶を設置するのに協力した。半球形のドームとなっている彼女の館の太陽系儀もまた、ウルスケク族が作ったものである。預言に基づいて、クリスタルの欠片を携えて、彼女を訪問したゲルフリン族は過去に何人もいるが、彼女にはそれが本物であるかどうかを見分ける力はなく、彼女はクリスタルの欠片をいくつも保管していた[7]前回の「大合致」を見た際に、彼女は片目を光に焼き尽くされて失った。残る一つしかない目を取り外して、物を見ることができる。なお、オウグラの持つ予知能力を示す描写が本編中にある[8]

スケクシス族[編集]

猛禽類の鳥類に似た、この異世界の醜悪な支配者。手足二本ずつの種族に見えるが、実は退化したもう一組の手を、金襴緞子の分厚い衣装の下に隠している。ダーククリスタルの城を根拠とし、巨大な黒水晶(ダーククリスタル)が放射する負の力を利用し、千年もの間、覇者としての暴政と、退廃に満ちた生活を続けたが、長い年月の間に一族は減りつづけ、残るは皇帝をのぞいて、わずか九名に過ぎない。性別はなく、それぞれ一代限りの不死の存在だが、生命力の衰え自体はどうにもならず、「大合致」の際に三つの太陽からもたらされる膨大なエネルギーによる回春を待ち望んでいる。醜い権力争いを繰り返しているが、互いに殺しあうことだけはスケクシス族自体の破滅を招きかねないために自制し、代替の「石の裁き」などの儀式を行い、ガーシムなどの兵器にも、スケクシス族の同族には攻撃が出来ない禁忌事項を設けている。

皇帝(スケク・ソ)
物語の冒頭で、鉱物が砕け散るかのような醜怪な死を見せるスケクシス族の最高権力者。自らの生命力の復活のために「大合致」を死の床で待ち望んでいたが、それも叶わず、最期の言葉は自らの権力への執着だけだった。
侍従長(スケク・シル)
スケクシス族の死にゆく皇帝の側近であるが、忠実というよりは慇懃無礼な物腰で次の皇帝の座を狙う野心家である。皇帝の死により、野心を露わにするが、同じくスケクシス族の将軍と「石の裁き」の争いに敗れ、地位も衣服も奪われ、ダーククリスタルの城から荒野に追放の憂き目を見るが、「預言」に語られたゲルフリン族が生きていたことを知り、自分の地位を回復するために、さまざまな策謀を巡らす。鼻がかった声が将軍から嫌われている。
将軍/ガーシムの長(スケク・ウング)
将軍とは言え、スケクシス族が指揮する兵士は、科学者(スケクシス族)が魔術で作り出したガーシムたちでしかない。スケクシス族の中でも、もっとも乱暴な彼は、ガーシムたちを指揮して、ゲルフリン族の大虐殺や奴隷としてのポッド族の調達を行い、スケクシス族の覇権を永遠のものとすることに最も貢献していた。「石の裁き」に勝利して、侍従長を追放し、次代の皇帝となった。
典礼長(スケク・ゾク)
本来ならば、皇帝亡き後、侍従長、将軍と張り合うべき派閥の長のひとりだが、儀式を主宰するという立場を利用して、侍従長と将軍の争いに傍観者の立場を貫き、結果的には新たな皇帝=将軍に次ぐ地位を占めることに成功した。
科学者(スケク・テク)
スケクシス族の最大の武力であるガーシムや「クリスタルの蝙蝠」、「生命のエキス」製造装置などを作り上げたのが、科学者である。本来ならば、スケクシス族の覇権確立に最大の貢献を成したとして、もっと高い地位にいても不思議はないが、当人が自分の研究成果を示すことしか興味がないことと、あまりのマッドサイエンティストぶりに他のスケクシス族の誰からも理解されずに放置されている。研究のために自分の片腕や片目を取り除いて、自作の人工臓器に置き換えてしまっている。
記録保持者(スケク・オク)
スケクシス族の歴史を記録するのが、記録保持者の職務ながら、将軍などは残された記録が正確なのか、勝手に自分の功績を水増ししていないのか、いつも疑っている。長い嘴に3つの眼鏡をかけている。
装飾師(スケク・エクト)
スケクシス族は性を持たない種族だが、装飾師だけは明瞭に女性的なパーソナリティである。装飾師としての職務がどのようなものなのかは分からないが、少なくとも自分の身を飾ることには、熱心である。装飾師にはゲルフリン族は醜怪に見えるようで、美的感覚は人間とは相当に違う。
奴隷の長(スケク・ナ)
隻眼で、片腕は鉤爪の義手となっているのが奴隷の長である。生命のエキスを抜かれたポッド族は頭髪はほとんど抜け、灰色の眼となり、自発的な意志を奪われ、奴隷の長の命令に服す奴隷となる。奴隷の長が、失策をしでかした奴隷に下す刑罰は苛烈で、首を引き抜くなどは平然とやってのける。鉤爪はそのために使われる。
美食家(スケク・アユク)
一番肥え太っているのが、美食家である。スケクシスの宴席シーンは彼の最大の見せ場であった。スケクシス族の宴会の献立、酒肴、味付け等の采配は彼の役割だが、スケクシスたちの暴食を満足させるというものでもない。
財務官(スケク・ショッド)
将軍からは「金銀宝石にしか興味を持たない」と評されているのが財務官である。集めた宝石で身を飾っている。

ミスティック族[編集]

亀に似た穏やかな顔と四本の腕、長躯に長い尻尾を持つ種族。ミスティック族は長老を始めとして、みな個性的で、その役割を分担して生活していた。長躯にまとう衣服は基本的にはミスティック族の「織り手」が織り上げた布だが、螺旋パターンの意匠や文字としての結び目にそれぞれの長年の知識をたくわえた、データベースでもある。祈りなのか、合図なのか、時として和音の斉唱を始める不思議な種族である。ミスティック族はダーククリスタルの城から遥か離れた谷の洞窟をそれぞれの棲家としているが、そこはスケクシス族の暴力からなぜか見逃されている治外法権の地であった。

長老(ウル・ス)
幼いジェンを廃墟から助け出し、養育したのがミスティック族の長老である。ジェンが「預言」を成就する存在となることを、幼いうちから見抜き、そのための教育を行った。ミスティック族誰もが認める賢者であった。死に際して、彼はまるで存在しなかったかのように、光の粒子に還元していった。長老亡き後、ミスティック族は老いた体に杖をつき、長い住処である谷を捨て、ダーククリスタルの城に帰るための遠征の旅に出ることになった。
癒し手(ウル・イム)
長老亡き後、実質上、次代の長老として、ミスティック族を統べる指導者。ミスティック族が谷を発つ際に、先導の役割を果たした。護符、薬湯、鍼灸術といった技術で、ミスティック族の健康管理を担ってきた人物でもある。
歌い手(ウル・ソル)
ミスティック族の和音の詠唱をリードしているのが、「歌い手」である。[9]ハイピッチの詠唱と、ミスティックの谷の石柱すべてを震わせるほどの荘重な低音を操る。
儀式守護者(ウル・ザッハ)
儀式を取り仕切る職務上、他のミスティック族よりも多言ながら、その口調は謎めいている。長老の葬儀を取り仕切り、親代わりの長老を喪ったジェンに旅立ちを促した。長く深い思索が彼の体に螺旋を刻んでいる。
錬金術師(ウル・ティ)
科学者ながらも、自然以上に精緻なものは作れないと悟っていた人物である。特に見せ場と呼べる場面はないが、あるスケクシス族のひとりの死と時を同じくして、突然炎と化して、消滅した。スケクシス族とミスティック族に関する疑問を、確信へと導く重要な役割である。
書き手(ウル・アク)
書き手が記録するものは、ミスティック族の私心なき隠棲の歴史と、儀式のための祈りの言葉である。
織り手(ウル・ウット)
ミスティック族の衣服と毛布すべてを製作したのが、織り手である。彼の織る布はほつれるということを知らず、それぞれのミスティック族の知識と運命とが織り込まれていると言われる。ジェンの衣服の製作者でもある。
本草学者(ウル・ノル)
料理人(ウル・アマユ)
食べ物を通して、ミスティック族全員の健康管理を担ってきたのが、本草学者と料理人である。彼らの植物学と料理の知識は、霊肉のバランスを保つことを目的としたものだった。
数霊術師(ウル・ヨッド)
数秘術を専門とするミスティック族。映画冒頭シーンで、数霊術師は砂絵占いを試みて、来るべき「大合致」の時期を占っている。かつてはオウグラの天体観測の補佐をしていた人物でもある。

ウルスケク族[編集]

遥かな昔に宇宙から来訪し、オウグラと親交を結んだとされる種族。神にも等しい能力の持ち主だったが、迷いと過ちにより破滅し、この世界から姿を消した。

ポッド族[編集]

孤児となったキーラを養女として、養育した心優しい農民の種族。成人でもゲルフリン族の半分ほどの体躯だが、非常に辛抱強い働き者であり、毎夜のように催す村全体での宴を楽しみとして厳しい労働の日々を暮らす人々である。ダーククリスタルの城に連れ去られた同胞に、生きて帰ってきた者がいないため、ガーシムや「クリスタルの蝙蝠」を非常に恐れ、森の奥に隠れ暮らしている。時間的概念のない(ようするにその日暮らしの)種族だが、家族意識や共同体意識は極めて強く健全で、ジェンと巡り合ったキーラを心から祝福し、あまりの居心地の良さにジェンは彼のクエストを放棄し、このままポッド族の村で暮らしていこうかとさえ、考えたほどだった。直後の惨劇さえなければ。[10]

ガーシム[編集]

本来の生物ではなく、スケクシス族の「科学者」の技術で作り上げられた一種の魔法生物である。甲殻類甲虫に似た姿は非常に硬く、この世界ではガーシムの甲殻を破壊できる者はいない。スケクシス族の命令を理解できる程度の知能は備えているが、個性はなく、自分で判断して行動することも苦手である。黒水晶(ダーククリスタル)が放射する負のエネルギーを動力としていて、スケクシスたちの命令が行われていない状態では、特に行動を起こさない。

ランドストライダー[編集]

長い足で風のように駆ける、この世界での最速の生き物。キーラから、「脚長さん」とも「スタニー・テイマー」とも呼ばれている。野生の状態で、草木を食んで生きているらしいが、キーラと会話をすることで、協力してくれる気のいい動物である。本来、攻撃的なところはまったくないが、自然の生物ではないガーシムに対しては敵意を剥き出しにする。

クリスタルの蝙蝠[編集]

透明なクリスタルの小結晶に蝙蝠(こうもり)の翼がついた形状をしており、これもスケクシス族が使役する魔法生物であるが、生物らしさが皆無で、自動機械に近い。世界に起きた異変をダーククリスタルの城に、映像信号で伝えることが出来る。判断力はむしろガーシムよりも高度なものを持たされており、目的に対する執念深さも驚くべきものがあるが、生物らしさを排除して作り替えられたために、俊敏さに欠け、劇中キーラが使用する武器で撃ち落とされたように、警戒さえ怠らねば、簡単に撃墜できるものと思われる。

背景・用語[編集]

異世界ファンタジー映画であるため、この映画にも独自の用語が多数存在する。(なお、用語は山田順子による邦訳に準拠している)

ダーククリスタル[編集]

スケクシス族が本拠とするダーククリスタルの城の中心、最上階に位置する巨大な黒水晶。それ自体が放射する力場によって、支えも無しに空中に固定されたかのように浮いている。その結晶構造の上部には、はるか昔に加えられた打撃による無残な亀裂がある。その直下は、ダーククリスタルの城を貫き、地中深く穿たれた竪穴となっており、遥か下に溶岩らしき炎の海が見えることから、地下の地殻層をも貫いていると思われる。ダーククリスタルは、スケクシスたちが斥候として放つ、「クリスタルの蝙蝠」が捉えた画像を映し出す受像機の役割も持っている。

本来、ウルスケク族が作り上げた破壊される前の大水晶は、三つの太陽からのエネルギーを変換・制御し、地殻変動を安定させ、三つの太陽を巡る惑星の複雑な軌道から来る激烈な気候を緩和し、生命力と言える波動を伝播する、惑星規模のエネルギーシステムというものであったが、中核となる大水晶がダーククリスタルと化した結果、それは計り知れない悪影響を惑星全体に及ぼすこととなった。大水晶がダーククリスタルと化して以降の時代は「暗黒の千年紀」(Dark Millenium)と通称されている。

クリスタルの欠片[編集]

この物語におけるキーアイテム。遥か昔、大水晶が破壊された際に分離した欠片(かけら)は、短剣状の透明の結晶体の小クリスタルとして、様々な種族の手を経て、スケクシス族にも所在が分からず行方知れずとなった。ダーククリスタルの放つ負のエネルギーを権力の源泉としているスケクシス族にとっては、欠片を破壊できなかったのは不本意なことだったが、代わりに偽の欠片を大量にばら撒き、どれが本物の欠片なのか分からないように欺瞞した。長い年月の末に、その試みは成功したかのように思われたが、ミスティック族は本物の欠片を見分けるための方法をそれとなくジェンに伝えていた。あたかも、時が至れば解ける暗号のように。

本来、武器ではないが、短剣のような形状と、物理的に破壊不可という特性から、側面を刃のように使って物を切ったり、尖端を突き刺すような使い方は可能。

大合致[編集]

惑星トラから見て、複雑な軌道を描いて空を巡る三つの太陽も天頂にて、の状態となる時がある。二つの太陽による蝕を「小合致」、三つの太陽の蝕を「大合致」と呼ぶが、天窓から受けた太陽光をエネルギーへと変換としているダーククリスタルは、三つの太陽相互の陽光の増幅効果により、異常な高エネルギーのビームが降り注ぐ一種の臨界状態へと移行する。スケクシスたちはその瞬間を利用して、さまざまな邪悪な意図を達成してきた。三つの太陽が蝕となる「大合致」は、千年に一度しか起こらない。

預言[編集]

「三つの太陽が ひとつに輝くとき 分裂し、破滅したものたちは ひとつに統べられる ふたつをひとつにするのは ゲルフリンの手によって あるいは無なり」という内容の語り伝え。どの種族の者がいつ、どのように預言したのか一切不明ながら、この映画に登場する全種族にとっての前提的な知識となっている。後述の遺跡にも、壁画という形で遺され、ジェンとキーラにその正確な意味を伝えた。

石の裁き[編集]

スケクシス族は、倫理を持たない種族だが、スケクシス族同士での命の奪い合いをすることは禁忌としている。これは、不死と引き換えに、性というものがなく、生殖が不可能なスケクシス族にとって、殺し合いは種族そのものの存亡の危機に直結することからである。従って、互いの存在を賭けて、スケクシス同士が相争うような場合には、"裁定の石"を使った「石の裁き(Trial by Stone)」と呼ばれる方法が用いられる。"裁定の石"に専用の剣を振り下ろし、石に穿たれた傷跡の大小によって、いずれのスケクシスの意見を是とするかを判断するが、"裁定の石"が使い込まれた様子を見るに、たいていの場合はやっているうちにいずれかのスケクシスが主張を引き下げていたようで、争いがこじれることは滅多になかったと思われる。争いに敗れた方のスケクシスは、審議の重大さによって、典礼長の下す量刑を受けることになるが、最悪でも追放刑で、それも何かきっかけがあれば恩赦を認められる。

生命のエキス[編集]

スケクシス族が駆使する邪悪な科学力の産物が、「生命のエキス」である。活力や若さというべき無形のものを他の生命体から、液体の形で抜き取ることが出来る。スケクシス族はこの「生命のエキス」で、回春や若返りを果たすが、あまり多用すると、効果がなくなっていくという欠点がある。「生命のエキス」を抜かれた生命は、活力以外にも意思や判断力がなくなるため、奴隷として再利用されることになる。

夢幻展開(dreamfasting)[編集]

この世界でいくつかの種族が生来、備えている精神感応力。覚えているが、正確に意識できない記憶も含めて引き出し、文字通り互いの経験を疑似体験し、共有できるが、互いの許容と直接接触などのきっかけなしには、発動しないものと思われる[11]

遺跡[編集]

ポッド族の村を襲撃したガーシムより、辛くも逃れたジェンとキーラが森の奥で、一夜を過ごした後、偶然に迷い込む遺跡。実は遠い昔に襲撃され、廃墟となったゲルフリン族の住居、それも王宮というべき規模のものだった。ポッド族は以前から、この遺跡の存在を知っていたが、「古き者」たちの住まう処として、立ち入りを禁じ、禁忌の地としてきたために、キーラもその実態を知らなかった。ゲルフリン族のためと思われる建物(廃墟)と玉座があり、遺されていた壁画[12]により、ジェンとキーラは曖昧な「預言」の真の意味を悟り、スケクシス族打倒のための行動を決意する。

太陽系儀[編集]

オウグラの館そのものであるドームには、三つの太陽とその惑星、小惑星、衛星、はては彗星までの軌道を機械的な模型として表現した「太陽系儀」が設置されている。この「太陽系儀」の早い動きが、実際の天体の運行にシンクロしているとは考えられず、停止させることは不可能な永久動力による一種のモニュメントと思われる。劇中、停止したのは、ガーシムの乱入により破壊された後だった。

製作(コンセプト)[編集]

  • セサミストリート』、『マペットショー』などで、世界的にマペット操演者&クリエイターとして知られるジム・ヘンソンが、後に映画『ダーククリスタル』として結実する着想を得たのは、当時の米国の人気番組、『サタデー・ナイト・ライブ』の一コーナーのマペット劇を担当していた頃に、豪奢な貴族暮らしをする爬虫類たちの宴会というイメージを当時の著書のイラストに描いたことだった。この着想が、まさにスケクシスたちの宴会シーンとして映像化されている。
  • 「サタデー・ナイト・ライブ」でのジム・ヘンソンのマペット劇は、剥製用に使われる特製の眼球を使い、マペットに生物らしさを与えるという実験的なものであった。こうした試みを通して、ヘンソンは「マペットを用いた見たことも無いリアルな映像」の実現を決意した。『ダーククリスタル』のキャラクターに使われている眼球も、剥製用の技術による特注品である。
  • 1977年の始めの冬、『マペットショー』製作の打ち合わせのため、コンコルド便でニューヨークからロンドンへ行こうとしていたジム・ヘンソンと娘のシェリル・ヘンソンは、大雪のため、ケネディ空港近くのモーターロッジに3日間、足止めされた。『ダーククリスタル』の基本的なストーリー、登場人物が出来たのは、実にこの予期せぬ自由時間の父娘のフリートークにおいてだった[13]
  • 1977年8月、ジム・ヘンソンは様々なプロジェクトを並行させるかたわら、英国の新進イラストレーター、ブライアン・フロードに映画製作のための協力を取り付けることになる。映画『ダーククリスタル』はヘンソンとフロードが、共にフロードの作品世界を映像として現実化するために行った共同作業の成果である。
  • ジム・ヘンソンが、映画『ダーククリスタル』に対して抱いていた基本的な考えは、リアリティの追求そのものである。そのために、彼は『よその惑星で起こっている出来事をそのまま、撮影してきたような』映画を目指し、リアリティある異世界を創造するため、風景、気候、植生、生物等あらゆることをフロードと共同で考えていった。完成試写版では、観客に理解できる英語を話しているのは、主人公であるゲルフリン族二人とオウグラだけで、後の種族はそれぞれ独自の言語を話すという設定だったほどのこだわりである。

製作(造型)[編集]

  • 異生物がほとんどを占めるこの映画の中で、主人公としてのゲルフリン族二人の造型には、細心の注意が払われた。人間であってはならず、なおかつ、映画の観客が感情移入できないほど「怪物」であってはならないという理由からである。初期の獣人的イメージから、デザイン・造型において、何度となく試行錯誤が繰り返された末に、決定デザインが採用された。造型者ウェンディ・ミッドナーの想定しているジェンとキーラの年齢は、人間でいえば16歳前後である[14]
  • スケクシス族のそれぞれの性格付けについて、キリスト教で言う「七つの大罪」を元にしたとの証言を、ジム・ヘンソンが行っている。
  • 『ダーククリスタル』の造型のプロトタイプとして、知られるものが『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』に初登場したヨーダである。デザイン画だけ存在して、ヨーダを実現するプランをまったく持っていなかったルーカス・フィルムから、ヘンソン社に協力を求めたのが、ゲイリー・カーツだった。ヨーダの実現のため、フランク・オズ、人形製作者のウェンディ・ミッドナーらがヘンソン社から参加し、映画キャラクターとしての人形に要求されるものは何かといった事柄を学ぶ貴重な機会となった。フランク・オズは最終的にヨーダの声優としても、スター・ウォーズシリーズに参加することとなる。『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』の後、ゲイリー・カーツは『ダーククリスタル』の製作にプロデューサーとして参加することとなった。
  • フィズギーは『ダーククリスタル』の中でも最も成功したキャラクターと言えるが、フラウドのデザイン画では「獣罠に似た歯を持つ毛皮の玉」だった。しかしながら、登場するほとんどのシーンで注目をさらってしまった。顔はライオンの毛皮、体はオポッサム、アライグマ、キツネ、羊の毛皮の縫い合わせで出来ている[15]。特徴的な歯はヘンソン・オズ両監督の指示によるものだ。フィズギーの声を担当したパーシー・エドワーズは英国の動物の声専門の有名声優であり、『ラビリンス/魔王の迷宮』でもキャスティングされている。
  • ポッド族のデザインコンセプトは「ジャガイモに目や口」というものであったが、映画の中では、ヘンソン社の得意とするマペットキャラクターに最も近いため、ヘンソン・オズ両監督の好みに合い、ポッド族の宴会シーンなどは非常に入念かつ丁寧に映像化されている。
  • ランドストライダーの名で知られる異生物は、もともとジム・ヘンソンとフロードが考えていた映画の生物ラインナップには入っていなかった。多くの切り捨てられたアイデアのひとつに「ランドリーパー」と呼ばれ、飛行蜘蛛そっくりのコンセプトで、空中を移動する異生物のアイデアがある。実現していれば、劇中でよりダイナミックに主人公二人の移動手段となっただろうが、結局不採用となった。代わるものを模索する過程で、映画スタッフのスタントマンの竹馬パフォーマンスが、フロードに長い足の高速で動く異生物のデザイン・コンセプトを与え、最終的にランドストライダーとして、映画に登場することになった。
  • およそ5年以上の歳月を費やした「ダーククリスタル」の製作スタッフには、さまざまな工芸・宝飾などの技術を持つ人々がいたが、ゲイリー・カーツが製作総指揮を取った1985年のディズニー作品の映画『オズ』(Return To Oz)にこれら造型スタッフの多くは引き続き、参加している。

製作(撮影)[編集]

  • マペットショーが、ヘンソン社とITCの共同制作となっているように、『ダーククリスタル』の製作においても、製作資金の調達にITCのオーナー、英国貴族のグレード卿の援助を受けている。だが、グレード卿の出した交換条件も一筋縄にはいかないもので、ジム・ヘンソンが望んだ『ダーククリスタル』の製作の前に、『マペットの夢見るハリウッド』(The Muppet Movie)の系譜に連なるマペット映画を一作撮れ、というのがその条件だった。そのまま撮影に入っても問題無いほどに、『ダーククリスタル』の準備に没頭していたジム・ヘンソンは、この条件を撮影の障害物とは思わずに逆に発想の転換をした。―――『ダーククリスタル』のために招いた撮影スタッフは、それぞれ一流どころながら、マペット映画というものには慣れていない。人形のためのセッテイングなど、人間だけの映画とは別の次元の苦労がつきまとうマペット映画は未知の世界である。予定には入っていなかったが、急遽撮影することになった作品、『マペットの大冒険/宝石泥棒をつかまえろ!』(The Great Muppet Caper)をその予行練習としたら、『ダーククリスタル』のためにも良い結果が望めるのではないか、という考え方である。こうした前向きかつ周到な発想から、『マペットの大冒険/宝石泥棒をつかまえろ!』は、『ダーククリスタル』と多くのスタッフを同じくして撮影され、しかもヒット作となった。
  • 本作がヘンソンとオズの共同監督となったのは、監督であり、また自らマペットの操演者として「主演」するヘンソンが、シーンごとの演出を分担して、負担を軽減することを考えたことによる。その目的において、長年の共同作業で気心の知れたフランク・オズはまさに適役であった。ヘンソンとオズが、互いの操演シーンを意図を外さずに演出していったことは余人に真似が出来ないものがあった。本作で得た経験を元に、フランク・オズは映画の演出においても実績を積み、映画監督としての才能を開花させることになる。また、プロデューサーであるゲイリー・カーツも、第二班としてスタントシーンを中心に、一部シーンの演出を行っている。
  • スケクシス族の操演に関して、日本の古典芸能である文楽人形の影響を見ることができる。人形師が観客に姿を晒したままで、人形が演じる物語世界に観客を魅了していく文楽のあり方を、ジム・ヘンソンは人形劇芸術の最高傑作と高い評価を与えていた。実際のスケクシス族の操演は基本的には、『セサミストリート』のビッグバードと同じく、衣装の内部でモニター画面を見ながら、操演をするというものだが、ステディカムのカメラ支持装置を改造したハーネスをパフォーマーに取り付け、重い衣装を支えると共に、人形に余分な振動や不自然な動きを与えずに、操演するという方法が採られた。
  • 映画製作当時のアニマトロニクス技術は、ほとんどがワイヤー操作によるものである。これは、一体のキャラクターの近くには必ず補助操演者が2~4人程度付添いしなければならないということを意味するが、人形操演者以外に補助操演者をどうやって隠すかという苦労もついてまわる。例外的に、主人公のゲルフリン族二人の表情などのアニマトロニクス制御は、無線制御が採用され、演技の自由度を高めることに成功している。
  • キーラのパフォーマー、キャスリン・ミュレンは女優としての経験を持つ操演者であり、この映画のために特に起用された。アニマトロニクス造形物としてのキーラはそれほど表情のバリエーションを持っているわけではなかったが、ミュレンの苦心の操演が、この映画の成功を支える力のひとつとなった。なお、キーラの声をミュレン自身が担当することも検討されたが、主に年齢的な理由でキャンセルされている。
  • 人間を登場させず、全てを人形で撮影するというのが、この映画のコンセプトではあるが、歩き回るスケクシスたちを小柄な俳優たちが、主人公二人の遠景シーンなどは、メイクアップや衣装を付けた子役俳優(アビー・ジョーンズとナターシャ・ナイト)が演じている。これらの俳優たちは、単にadditional performerとクレジットされているだけである。
  • ダーククリスタルの城内部のシーン、黒水晶の間、宴席の間、玉座の間等のシーンは同じセットの使い廻しである。垂れ幕を降ろし、扉を閉ざすことで流用できるように考えられているが、注意して見れば床には同じ魔法陣風の模様があるのでそれと分かるだろう。
  • 本作はほとんどのシーンが屋内セットで撮影されているが、セットとしてのライティングとは別に、フロントプロジェクションを応用して、フィルターによる緑や紫の着色光を付け加えるという方法が採られている。作り物らしさを隠し、異世界としての雰囲気を表現する上で大きな効果を上げている。

製作(音楽)[編集]

  • 通常の映画では、劇伴音楽は撮影がほぼ完了した段階で作曲し録音するというのが手順だが、本作の劇伴音楽担当のトレヴァー・ジョーンズは製作段階から映画に参加している。異世界イメージを考えた数曲の音楽が撮影現場でもBGMとして流されるという試みが為された。ジム・ヘンソンによる音響面でのイメージの統一の試みであり、それらBGMのモチーフは編曲の上、そのまま劇伴音楽に生かされている。
  • 本作の映画音楽は、ロンドン交響楽団のオーケストラにシンセサイザー、そしていくつかのあまり使われない楽器[16]によって録音された。映画製作当時としては前衛的な、オーケストラと電子音楽の融合である。

公開[編集]

完成試写版と公開版[編集]

映画が完成を観た時点で、業界関係者を中心にしたと思われる完成試写が行われ、アンケート結果により、完成試写版から公開版へと相当な改変が行われた。確認されているだけで以下のとおり[17]

  • ナレーションの付加、及びスケクシス族の台詞を独自の言語から、英語に変更[18]
  • 冗長なシーンの削除短縮。「スケクシスの皇帝の葬儀」「ミスティクスの長老の葬儀」「石の裁き」がこれに該当する。改変前の映像では、将軍と侍従長は"裁定の石"を、それぞれ3回叩いているが、一回ずつに編集された。他にも演出上の理由で、台詞のみ変更された場面がある。
  • 「ウル・ルー族」が「ミスティック族」と名称変更された。ネタばれを防ぐための措置と思われる。
  • オウグラ役声優の変更。ビリー・ホワイトローはオウグラ役としては、三人目の起用と言われる[19]
  • シーンの変更に伴う劇伴音楽の変更。

日本での公開[編集]

  • 公開時の宣伝コピー『不思議な映像へようこそ! 世界初の映像革命《ロボットロニクス》 三つの太陽が一つになるとき…クリスタルに奇跡が起こる』
  • この映画はアニマトロニクス技術を使用した映画の第一号と言えるが、公開当時にその用語はなく、日本公開においては、「ロボットロニクス」という造語で宣伝された。(用語として定着しなかったのは言うまでもない)
  • 人間の俳優が一切登場しないという特殊性ゆえ、日本公開においては宣伝と言えるほどの宣伝[20]も行われず、関連商品も日本版小説を除いてはまったく発売されずという不幸な公開だった。ロードショー公開時にはそれほど注目を集めることもなかったが、その後の口コミによるものか、各地の名画座での公開には行列が出来るほどの人気を見せた。

外伝[編集]

"Legends of The Dark Crystal"#1 THE GARTHIM WARS ISBN 978-1-59816-701-6
Barbara Randall Kessel, Heidi Arnold and Max Kim
映画公開後、20数年を経て刊行された初の公式の外伝的作品。映画の続編ではなく、時系列では映画より前の時代をアメコミとして描いたものである。
映画本編のオマージュと思しき場面がいくつも描かれている。また、映画本編では臨終場面のみだったスケクシスの皇帝が本作では登場しているが、ミスティック族は語り手としてのみ、オウグラはまだ登場しない。
ガーシムの襲撃により、故郷の村を失ったゲルフリン族の少年Lahrと少女Neffiは脅威を警告すべく、ナポソ峡谷を訪れる。不死身と思われた怪物ガーシムだったが、折れたフルートによるLahrの捨て身の一撃で倒されたガーシムの一体が、勝ち目のない戦いではないことを証明していた。だが、生きるため楽器を武器に持ち替え、戦いの道を選ぶことは、ゲルフリン一族にとって、芸術と美を楽しむそれまでの生活をあきらめ、葛藤の道を選ぶことを意味していた。若きゲルフリンたちの愛と冒険が始まる。
"Legends of The Dark Crystal"#2 TRIAL BY FIRE ISBN 978-1-59816-702-3
Barbara Randall Kessel, Heidi Arnold and Jessica Feinberg
多くの同族たちの協力により、ナポソ峡谷の集落をガーシム集団の襲撃から守り抜いたLahrとNeffi。二人はナポソ峡谷の守りを人々に任せ、ダーククリスタルの城に連れ去られた自らの村の同胞の救出を目指す。一方、ダーククリスタルの城のスケクシスたちは、さらって来たゲルフリン族の管理を受け持つコレクター(収集者)と呼ばれるSkekLachが、報復の念をたぎらせ、策謀を巡らせていた。(完結。続巻未定)
オリジナルキャラクターとしてのスケクシス族SkekLach、SkekVar、ミスティック族の僧侶(語り手)UruSen、そしてオウグラが物語に登場する。

その他[編集]

脚注[編集]

  1. ^ The Dark Crystal (1982)” (英語). Box Office Mojo. Amazon.com. 2010年5月18日閲覧。
  2. ^ ただしインダストリアル・ライト&マジックの参加は異世界背景のマット画など限られたものである。
  3. ^ カーミットの声をジム・ヘンソンが担当していたことや、ミス・ピギーの声をフランク・オズが担当していることはよく知られる。
  4. ^ 短い尻尾を持っているが、映画本編では紹介されることはなかった。
  5. ^ なお、ジェンとキーラの誕生日は、ミスティック族の数霊術師の砂絵占いにポイントとして記されており、公式にジェンの方が歳上とされている。
  6. ^ 劇中、呼ぶ者によって、キーラの名は「キーラ」とも「キアラ」とも聞こえる。日本版小説では「キアラ」で統一されている。
  7. ^ 彼女は「預言」の本質に関わるスケクシス族とミスティック族の関係を知っているが、それが彼女の守る「秘密」である。
  8. ^ ダーククリスタルの城で、「生命のエキス」装置から逃れて、ジェンを探しに行こうとするキーラに「友を探せ、(お前の)死を探せ」と語りかけ、最終的にゲルフリン族のジェンの手で、ダーククリスタルが癒され修復される過程で、キーラの自己犠牲による死が避けられないことを示唆している。(マーベルコミック社より刊行されたコミック版には、より具体的に描写されている)
  9. ^ 長老の葬儀の際にも、長老の私物を詠唱に乗せ、死者の元に送り出す(非物質化する)描写があったが、葬儀シーンがカットされているため、分かり難くなっている。
  10. ^ ポッドの名は、巨大な植物の種子の殻(ポッド)を住処としていることが語源であり、「生命の河」でジェンとキーラが乗るボートも実は植物の種子の殻である。
  11. ^ ジェンとキーラの間に描かれた夢幻展開は、「初恋」のメタファー的表現ともいえる。
  12. ^ この壁画には羽を持った男性のゲルフリン族が描かれており、「女性にだけ羽がある」というキーラの言葉とは矛盾している。
  13. ^ このエピソードはよく知られているが、打ち合わせ相手の娘はリサ・ヘンソンとも言われる。
  14. ^ ウェンディ・ミッドナーはこれら作業の縁で後日、ブライアン・フロード夫人となっている。
  15. ^ 毛皮の調達元はすべて古着の毛皮コート等であり、造型のため希少動物を犠牲にしたということはないので、念のため。
  16. ^ 例を挙げれば、ジェンの二叉フルートは近代の楽器に対応するものがないため、18世紀の楽器であるdouble-flageletという楽器で代用されている。
  17. ^ 『ダーククリスタル』の米国公開は、元来1982年5月28日を予定していたが、これら改変によって延期され、結局同年のクリスマス公開となった。A.C.H.スミスによる映画ノベライズは、完成試写版の映画脚本を元にしており、公開された映画とは若干の違いを見せている。
  18. ^ スケクシス族が独自の言語を話すというのはコンセプトに由来するが、映画としては分かり難いという意見がジョージ・ルーカスから出たための改変である。なお、DVDの特典映像として、視聴できる「Making of The Dark Crystal」にて、スケクシスの将軍が「ハァクスケェカ」と叫ぶシーンがあるのは、改変前の名残である。
  19. ^ 公開当時ブエナビスタ社から関連商品として、発売されていたドラマ版LPはオウグラの声だけがオリジナルと違っていた。キャスト名が記載されていないため、詳細は不明ながら、変更前のキャストと思われる。
  20. ^ 映画で使われたキャラクターの人形の一部がソニープラザにて展示公開された模様。

参考文献[編集]

外部リンク[編集]