映画監督

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役者に演技指導するマイケル・ベイ

映画監督(えいがかんとく)とは、映画の映像作成を統括する責任者で、ディレクターとも呼ぶ。一般に、製作を担当する製作者(プロデューサー)に対して、その映画のトップ2となる。

テレビ番組やビデオ作品などについても「監督」、「ディレクター」という言葉が用いられるが、「映画監督」は、劇場用映画(劇映画)や、フィルムで撮影されたまとまったドキュメンタリー作品の監督のみを意味することが多い。商業映画であれば何百という人間が動くが、「映画は監督のモノ」と映画評論家に言われるほどその立場は重要で、程度の違いこそあれ制作現場では作品創作全体の統一のための権力を有しているが、映画は創作者集団による総合芸術であり、芸術としての映画を厳密公正に研究・分析する場合「制作者」は俳優やプロデューサーや監督以外にも制作創作スタッフ全体がその対象となる。

「映画監督」と「(テレビ番組やビデオ作品の)監督」の職務内容には、規模の違いこそあれ大きな差はないため、本稿では両者をまとめて扱う。

基本的な仕事の範囲[編集]

映画監督の基本的な責任範囲は「映画作品としての品質管理」である。「企画(どういう映画を作るかという案を策定する)」、「製作(製作費の調達や管理、作品の売り出しなどを決定する)」は基本的にプロデューサーの職分であり、監督という職種の本来の責任範囲ではない(ただし、監督がプロデューサーを兼ねる場合もある)。

もっとも、監督が作品を作り上げる上で複数の職務を担当することもあり、「脚本」や「編集」に多く見られる。さらに自分の作品で音楽家を兼任していたりする監督もいる。とはいえ、諸々の経済的事情を始めとする理由によって、主に商業映画を中心に仕事をする監督は自らが理想とする映画を完璧に作り上げることは困難とされる。少しでも理想に近づけるための交渉術なども、監督にとって重要な資質であるといえる。

また、映像作品を作り上げるためには、多くのスタッフが関係することがある。それぞれの専門的なスタッフのアイディアをくみ上げ、アイディア1つ1つについて吟味し、採用したり却下したりという判断を下すことも、監督の重要な仕事である。

監督の実務[編集]

劇映画の場合[編集]

監督の仕事は、完成した脚本を受け取ってから始まる(それ以前にも脚本を完成させるための議論に参加するなどの仕事が発生するが、脚本が完成するまでは、基本的に脚本家の仕事である)。ただし、監督自らが脚本を書く場合も少なくない。また、完成脚本に手を入れることで、結果的に脚本家との共同脚本としてクレジットされる場合もあるし、監督が手を入れていても特にクレジットはされない場合もある。

  1. 配役。どういう役に、どういう俳優を割り当てるかを決定する。主役級の俳優は、プロデューサー等によって決定済の場合もあるし、専門のキャスティング・プロデューサーが置かれる場合もあり、監督がすべての配役を決定するわけではないが、決定に際しては、何らかの意見を求められるのが普通である。
  2. ロケハン。撮影を行う場所を決定する。
  3. 衣裳合わせ。各シーンごとに、それぞれの俳優が着用する衣裳や、手に持つ小道具等を決めていく。監督の美意識がストレートに反映される部分であるため、最終決定権は監督にある。また、各人の衣裳により、カメラの位置、照明の方法、セットの組み方等も変わってくるため、各部門のチーフ級のスタッフも参加する。よって、これが俳優と各スタッフの、事実上の「初顔合わせ」の場になることが多い。
  4. 撮影。管理する。カメラ・ポジション(撮影場所)や画角、カメラの動き方を決め、絵柄を確定する。役者への演技指導を行う。撮影中の動きなどを把握した上で、OK/NGの判断をする(NGの場合は更に同じショットを繰り返して撮影する。撮り直しとその回数で「テイク」と称する)。日本のテレビの場合は本番に入る際にディレクターが3、2、1キューと合図するのが普通だが、映画では、監督の「よーい」に続き、助監督や各部門の助手らが「本番よーい」等と復唱し(これは、スタッフやキャスト全員に号令を行き渡らせるためでもある)、続いて監督の「スタート」、「アクション」と共に助監督がカチンコを鳴らして、本番に入る。その後はテレビでも映画でも共通で、予定された部分まで演技が進むか、または、NGの演技が出た瞬間に「カット!」と叫んで撮影を止める。NGでない場合、スクリプター(スクリプト・スーパーバイザー)らとも相談し、問題なければ「OK」として、次の撮影に進む。
  5. 編集。撮れている映像から必要なものを抜き出してつなぐ。映像と映像のつなぎ方などを決定する。音楽効果音を付けるかどうか、付けるとした場合はその付け方を決定する。監督によっては、簡単な指示を与えて編集担当者に全面的に任せる場合、編集者をオペレーターとして全面的に編集の指示を与える場合もある。またアメリカのようにプロデューサーが編集にかかわり、監督に編集権がない場合もある。

ドキュメンタリー映画の場合[編集]

ドキュメンタリー映画の場合は、劇映画ほど職務分担の違いが明らかではない(明らかにならないし、見つけられない)。

多くの場合低予算でスタッフの人数が少ない事や、その場その場で判断しなければならないことが多いなどの理由から、一般にドキュメンタリー映画の監督は、監督としての職務のほかに、「企画」「調査(リサーチ)」「取材(インタビュアー)」などを兼務せざるを得ない(「撮影」を兼任する場合も多く、それどころか「荷物運び」なども当然に監督が分担すべき職務と考えられている現場もある)。ドキュメンタリー映画の監督の場合は、権限が広いというよりは、不可分ないくつかの職域を横断し監督一人が総合的に責任を負うことになるという、構造的な違いがある。

監督の仕事のスタイル[編集]

なお、監督の仕事のスタイルは、人によって様々である。また、撮影現場には、国や文化圏によって異なる様々な慣習があり、そういった意味でも違いは大きい。最終的に「(条件の範囲内で)良い作品を作る事」のみが監督の職務であり、監督の仕事の進め方については、(無難な仕事の進め方というものは、もちろん存在するものの)定石と呼べるようなものはない。最近では映画のメイキング映像なども比較的入手しやすくなっているが、実に千差万別に各人が工夫をして作品の映像を作り上げていることが分かる。それらを見比べるのも、映画の楽しみの1つであるといえる。 関根潤三の著書の巻頭のコメントで北野武は「初めて映画監督をした時こんな大変な仕事はないだろうと思った」と述べるなど過酷な仕事であるのが現状である。

関連項目[編集]