遙かなる山の呼び声
| 遙かなる山の呼び声 | |
|---|---|
| A Distant Cry from Spring | |
| 監督 | 山田洋次 |
| 脚本 |
山田洋次 朝間義隆 |
| 製作 | 島津清 |
| 出演者 |
高倉健 倍賞千恵子 |
| 音楽 | 佐藤勝 |
| 撮影 | 高羽哲夫 |
| 編集 | 石井巌 |
| 製作会社 | 松竹[1] |
| 配給 | 松竹[2] |
| 公開 |
|
| 上映時間 | 124分 |
| 製作国 |
|
| 言語 | 日本語 |
| 配給収入 | 6.1億円[3] |
『遙かなる山の呼び声』(はるかなるやまのよびごえ)は、1980年3月15日に公開された日本映画[4][5]。山田洋次脚本監督によるいわゆる民子三部作(1970年の『家族』、1972年の『故郷』、本作)の第3作[6]。松竹製作配給[1]。
概要
[編集]1977年の『幸福の黄色いハンカチ』の山田洋次監督と高倉健が再び顔を合わせ、警察に追われる男と、牧場を切り回す母子の出会いと別れを描く[5][8]。『幸福の黄色いハンカチ』と同じ北海道の根釧原野の小さな酪農の町、中標津町を舞台とし、ゆったり流れ移る四季やそこに暮らす人々の姿を丹念に描いた[5][9]。『幸福の黄色いハンカチ』の高倉、倍賞千恵子、武田鉄矢に吉岡秀隆、ハナ肇が加わり、渥美清が特別出演している[1]。
ヴィクター・ヤングによる映画『シェーン』の主題曲[注 1]の邦題「遙かなる山の呼び声」(原題:The Call of the Faraway Hills)から着想を得て制作され[10][注 2]、一種のオマージュ作品となっている[8][9][11]。
ストーリー
[編集]- 春
北海道、中標津の酪農地帯。ある嵐の夜、1人の男(高倉健)が酪農を営む風見民子(倍賞千恵子)のもとを突然訪れ、雨風しのぎにどこでもいいので泊めてほしいと懇願。民子は男を物置小屋に泊まらせる。深夜の牛の出産を手伝った翌朝、男は礼を言い立ち去るが、民子の息子から礼金を受け取るときに父親を亡くしたことを知る。

- 夏
再びその男、田島が民子のもとを訪れ自分を農作業員として雇うよう懇願する。民子は一人息子の武志(吉岡秀隆)を育てつつ、夫の精一が開拓した農場を女手一つで営む未亡人であった。民子は田島をしぶしぶ雇い入れたが、当初は田島に警戒感を隠さなかった。ある日、民子に好意を寄せる虻田太郎(ハナ肇)が現れ、民子に乱暴しかける。それを目撃した田島は水をかけて追い返したが、虻田太郎は兄弟を引き連れ仕返しにやって来る。そして草原で虻田3兄弟と決闘をする事に。しかし3人は簡単にやられてしまい、手打ちと言うことで逆に田島を兄貴と慕うようになる。民子が農場での作業中に腰を痛めて入院している間に武志は田島にすっかり懐いてしまい、その息子の姿や虻田3兄弟に慕われる田島の実直な性格を見るうちに、田島にだんだんと好意を寄せるようになる。田島も函館からはるばる訪ねてきた兄の駿一郎(鈴木瑞穂)に、しばらく民子の農場に居るつもりだと打ち明けるように、落ち着きたい気持ちが湧いていた。
- 秋
田島は草競馬に参加して見事優勝[注 3]。しかし長居することで身辺に警察の捜査が迫ってきたことを知り、田島は民子らのもとを去る決意をする。その晩、別れを告げると同時に、隠し通してきた過去を民子に告白。2年前、田島は借金を苦に自殺した自分の妻を葬式の席で罵った金融屋を殴り殺してしまい、警察の捜査から逃げていると言うのだ。それを聞いた民子はショックを隠せないで居た。その夜、牛が急病になる。民子は急ぎ飲み屋で飲んでいた獣医(畑正憲)を呼んで診察を受けさせる。稼ぎ頭の牛が危ないという辛い状況の中で、民子は田島に「行かないで、私寂しい」とすがりついてしまう。明け方までには牛の手術も終わり騒ぎも収拾した。と間もなく農場のそばにパトカーがやって来て、田島は立ちつくす民子と「おじちゃん!どこ行くの?」と泣きながら追いかける武志の元から去って行く。
- 冬
田島に傷害致死として懲役2年以上4年以下の刑が確定。ラストシーン、国鉄釧網本線弟子屈駅(現在のJR北海道釧網本線摩周駅、急行大雪は通らないがロケは弟子屈駅で行われた)に停車中の急行列車(「大雪」号)の車中に網走刑務所へ護送される田島を虻田が見つける。そして民子が田島の座る席まで来るのだが、護送職員の目を気にして声をかけられないでいる。そこで虻田は向かい側のボックス席に民子と座り、彼女が酪農を辞めて武志と中標津の町で暮らしながら田島を待っているということを民子との会話にして田島に聞かせる。そして民子は黄色いハンカチを田島に渡し、田島は涙を拭いながら窓に顔を向けるのであった[注 4]。
出演
[編集]本編クレジットの表記順に記載。
スタッフ
[編集]本編クレジットの表記順に記載。
製作
[編集]山田洋次監督は「『幸福の黄色いハンカチ』の場合、素材が先にあって健さんを選んだんだけど、健さんを知ることによって今度は彼を主人公にした物語を色々思い浮かべ、『遙かなる山の呼び声』はその一本です」などと述べている[12]。
演出
[編集]山田監督は演出の言葉として「大草原を駆け回るキツネやウサギ、草を食む馬の群れ、川に澱むマスやヤマベ、空を舞うオジロワシ。輝くばかりの緑に覆われた根釧原野の短い夏を舞台にさすらいの男と牛を飼う女との間に咲いた美しい花のような恋物語を描きたい」と述べた[5]。ただ牛と馬以外の生き物は出ない。棒読みの人がたくさん出るのは地元民[13]。
撮影
[編集]零細酪農家を取り上げた作品ということで、当初牧場所有者はロケ地提供を渋っていたが、倍賞千恵子との交流を通じて承諾した。倍賞はその後、毎年の半分をこの牧場で私的に過ごすようになった。
ロケ地
[編集]興行
[編集]梅田松竹会館(後の梅田ピカデリー)のこけら落とし上映作品でもある。
作品の評価
[編集]興行成績
[編集]批評
[編集]稲田隆紀は「こんな甘酸っぱい事があっていいのか、というのはたやすいけれど、ホロリとさせられてしまう。やはり腕なんでしょうね。但し、健さんのワンパターンには食傷気味です」などと[17]、宇田川幸洋は「題名にしろストーリーにしろ『シェーン』から頂いているのは誰の目にも明らかなのに、クレジットにわざわざ『原作 監督 山田洋次』と書くのはどういう神経なんだ」などと[17]、おすぎは「くやしけど、泣きました。あのラストシーンで泣けない人は鬼でしょう。いつもなら山田作品には★1つしか上げないけど、子役(吉岡秀隆)と健さんとラストに★3つです」などと[17]、金坂健二は「『シェーン』の焼き直しもいろいろあるが、これは農協版です」などと[17]、北川れい子は「幕が降りるか降りないうちに化粧室に飛び込んだら、涙の跡も生々しい女たちがドヤドヤとやってきて、鏡の前で一斉にお化粧直しでした」などと[17]、後藤和夫は「山田洋次は性と犯罪に関しては故意に盲目になる監督」などと評している[17]。
受賞歴
[編集]テレビドラマ
[編集]| 遙かなる山の呼び声 | |
|---|---|
| ジャンル | テレビドラマ |
| 原作 | 山田洋次 |
| 脚本 |
山田洋次 坂口理子(第1作) 石川勝己(続編) |
| 演出 | 朝原雄三 |
| 出演者 |
阿部寛 筧利夫 高畑淳子 佐藤優太郎 中原丈雄 常盤貴子 |
| 音楽 | 沢田完 |
| 製作 | |
| 製作総指揮 |
亀井威(松竹) 出水有三(NHK、第1作) 樋口俊一(NHK、続編) |
| プロデューサー | 嶋村希保(松竹、続編) |
| 制作 | NHK |
| 放送 | |
| 放送局 | NHK BSプレミアム |
| 放送国・地域 | |
| 放送期間 | 2018年11月24日 |
| 放送時間 | 土曜 21:00 - 22:29 |
| 放送枠 | スーパープレミアム |
| 放送分 | 89分 |
| 回数 | 1 |
|
公式サイト (2019年1月28日アーカイブ分) | |
| 続 遙かなる山の呼び声 | |
| 出演者 | 真飛聖 藤井隆 北山雅康 金田明夫 山下容莉枝 |
| 放送期間 | 2022年9月17日 |
| 放送時間 | 土曜 21:00 - 22:29 |
| 放送分 | 89分 |
| 回数 | 1 |
| 公式サイト | |
| 遙かなる山の呼び声 (再編集版) | |
| 放送局 | NHK総合 |
| 放送期間 | 2023年9月23日 - 10月14日 |
| 放送時間 | 土曜 22:00 - 22:50 |
| 放送枠 | 土曜ドラマ |
| 放送分 | 50分 |
| 回数 | 4 |
特記事項: 再放送は、BSプレミアム:2019年2月10日(日)午後2時30分から3時59分 BS4K:2019年3月6日(水)午後2時45分から4時14分 総合:2019年3月21日(木・祝)よる7時30分から8時53分(83分・再編集版)[19] | |
NHK BSプレミアム「スーパープレミアム」のスペシャルドラマとして、2018年11月24日の21時から22時29分に放送された[7]。主演は阿部寛[20][21]。
原作映画の設定に新たな登場人物や要素を加え、4K映像にて制作する[20][21]。
2022年9月17日に続編となる『続 遙かなる山の呼び声』が放送された[22][23]。
2023年9月23日から10月14日まで、『遙かなる山の呼び声』のタイトルでNHK総合の「土曜ドラマ」枠で放送された[24]。これまで放送された2作品に未公開シーンを追加したディレクターズカット版として放送される[24]。
キャスト
[編集]主要人物
[編集]その他
[編集]スタッフ(テレビドラマ)
[編集]関連番組
[編集]- 山田洋次と語る“遙(はる)かなる山の呼び声”
- 初回放送:2018年11月18日 23時20分 - 23時49分、NHK BSプレミアム
- 出演:山田洋次、阿部寛、常盤貴子、朝原雄三
- アナウンサー:桜井洋子
- 内容:メイキング映像、主演・阿部寛のインタビュー、山田洋次・常盤貴子・朝原雄三による鼎談など。
| NHK総合 土曜ドラマ | ||
|---|---|---|
| 前番組 | 番組名 | 次番組 |
やさしい猫
(2023年6月24日 - 7月29日) |
遙かなる山の呼び声
(2023年9月23日 - 10月14日) |
ガラパゴス
(2023年11月4日 - 11月25日) |
脚注
[編集]注釈
[編集]- ↑ 英語の原題は"The Call of the Faraway Hills"であり、この映画の英語名とは違っている。
- ↑ 困っている農民を流れ者が救うという構造が同じである。
- ↑ 男の子を持つ未亡人を風来坊が見守る構造は『無法松の一生』と同じである。無法松が男の子の運動会の徒競争に出場し、日頃鍛えた車夫の脚で大活躍するのだが、普段はおとなしいこの少年が熱狂して大声で応援する。 夫人は「この子が、あんな大きな声を出して夢中になったのを私は初めて見ました。この子は今日、生まれて初めてほんとうに血をわかせて興奮したんです。なにか、これから新しい性質が伸びてきやせんかと楽しみな気がします」と無法松に感謝する。高倉健が草競馬で優勝した後、倍賞千恵子が「この子が、あんなに大きな声を出したの、初めて見たわ」という。
- ↑ この演出には同監督、キャストで製作された『幸福の黄色いハンカチ』を思わせる描写がある。ただし両作品に関連性は無く、一種のファンサービスである。
- 1 2 3 『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花』とあわせて受賞。
- ↑ 『動乱』とあわせて受賞。
出典
[編集]- 1 2 3 遙かなる山の呼び声 - 国立映画アーカイブ
- ↑ 作品データベース】遙かなる山の呼び声 はるかなるやまのよびごえ – 松竹
- 1 2 「1980年邦画四社<封切配収ベスト作品>」『キネマ旬報』1981年(昭和56年)2月下旬号、キネマ旬報社、1981年、118頁。
- ↑ “遙かなる山の呼び声:作品情報・キャスト・あらすじ”. 映画.com. 2025年9月1日閲覧。
- 1 2 3 4 遙かなる山の呼び声 | 山田洋次 Official Site
- ↑ 『昭和55年 写真生活』(2017年、ダイアプレス)p39
- 1 2 “山田洋次監督の『遙かなる山の呼び声』、主演・阿部寛&常盤貴子でドラマ化”. ORICON NEWS (oricon ME). (2018年2月9日) 2018年2月9日閲覧。
- 1 2 作品データベース】遙かなる山の呼び声 はるかなるやまのよびごえ – WOWOW
- 1 2 『ぴあシネマクラブ 日本映画編 2004-2005』ぴあ、2004年、564頁。ISBN 978-4835606170。遙かなる山の呼び声、川本三郎の『映画のメリーゴーラウンド』 山田洋次監督『遥かなる山の呼び声』の話から…空中撮影と『張込み』、釧路を舞台にした映画…最後は原田康子原作『挽歌』につながりました。、高倉健主演「遙かなる山の呼び声」4K修復版がテレビ初放送、山田洋次のコメントも
- ↑ 増當竜也 (2016年4月10日). “西部劇不朽の名作『シェーン』に隠された アメリカの光と影”. シネマズ by 松竹. 松竹. 2018年2月9日閲覧。
- ↑ 山田洋次(インタビュアー:岡村洋一)「山田洋次監督との対話 映画『たそがれ清兵衛』によせて」『岡村洋一のシネマストリート』、かわさきFM、2002年11月11日。2018年2月9日閲覧。
- ↑ 春日太一 編「TALK 談話 映画に選ばれた俳優 山田洋次」『高倉健 みんなが愛した最後の映画スター』河出書房新社〈KAWADE夢ムック〉、2022年、161-163頁。ISBN 978-4-309-98044-7。
- ↑ 大下英治「第17章 ストイックな男の生きざま」『任俠映画伝説 高倉健と鶴田浩二 下巻』さくら舎、2024年、313-318頁。ISBN 978-4-86581-419-4。
- ↑ 「ズームアップ・ミスター日本映画 1980年陽春を連打 『動乱』&『遙かなる山の呼び声』 フルコース 高倉健 PART(1)森谷司郎インタビュー」『バラエティ』1980年3月号、角川書店、60-61頁。
- ↑ 八森稔「ルポ79 動き出した日本映画 監督たちは今ー VOL.3 森谷司郎」『キネマ旬報』1979年6月下旬号、キネマ旬報社、107頁。
- ↑ 佐藤忠男、山根貞男「日本映画界トピックス 松竹 文・永塚敏」『日本映画1981 '80年公開日本映画全集 シネアルバム(82)』芳賀書店、1980年、189-190頁。ISBN 4-8261-0082-5。
- 1 2 3 4 5 6 「ロードショー星取表『遙かなる山の呼び声』」『シティロード』1980年4月号、エコー企画、29頁。
- ↑ “第4回 日本アカデミー賞 優秀賞”. 日本アカデミー賞協会. 2025年10月11日閲覧。
- ↑ NHK 公式サイト
- 1 2 3 4 5 6 “山田洋次監督の「遙かなる山の呼び声」、主演・阿部寛&常盤貴子でドラマ化!”. NHKドラマ. 日本放送協会 (2018年2月8日). 2018年2月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年9月18日閲覧。
- 1 2 “主演・阿部 寛 × 常盤貴子 山田洋次 監督の名作がドラマでよみがえる! スペシャルドラマ「遙かなる山の呼び声」”. NHK_PR. 日本放送協会 (2018年2月8日). 2018年2月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年9月18日閲覧。
- ↑ “阿部寛&常盤貴子で山田洋次監督の名作リメイク NHK『遙かなる山の呼び声』続編を今秋放送”. ORICON NEWS. oricon ME. 2022年4月28日. 2022年4月29日閲覧.
- 1 2 3 4 5 “阿部寛と常盤貴子出演ドラマ「続 遙かなる山の呼び声」、藤井隆・真飛聖ら新キャスト発表”. WEBザテレビジョン. KADOKAWA (2022年6月17日). 2022年9月18日閲覧。
- 1 2 3 4 5 6 “山田洋次監督作『遙かなる山の呼び声』がドラマとして9月放送決定 主演は阿部寛×常盤貴子”. クランクイン!. ブロードメディア (2023年8月9日). 2023年8月9日閲覧。
- ↑ “真飛聖:ドラマ版「遙かなる山の呼び声」続編で阿部寛の妹役 「完成したものを見るとあまりに可愛げなくて」”. MANTANWEB. MANTAN (2022年9月13日). 2022年9月18日閲覧。
- 1 2 3 4 5 “土曜ドラマ「遙かなる山の呼び声」放送日時決定のお知らせ”. NHKドラマ. 日本放送協会 (2023年8月9日). 2023年8月9日閲覧。
関連項目
[編集]- 家族 (映画) - 民子三部作の第1作
- 故郷 (1972年の映画) - 民子三部作の第2作
- シェーン
外部リンク
[編集]- 映画
- テレビドラマ
-
- 遙かなる山の呼び声 | NHK スーパープレミアム スペシャルドラマ - ウェイバックマシン(2019年1月28日アーカイブ分)
- 続 遙かなる山の呼び声 - NHK
- スペシャルドラマ 遙かなる山の呼び声 - NHK放送史
- 【特集ドラマ】続 遙かなる山の呼び声 - NHK放送史
- 特集ドラマ「続 遙かなる山の呼び声」 - 松竹